レビュー

PS5の”TVスピーカーで3Dオーディオ再生”を試す。約10秒測定で差は歴然

PS5の3Dオーディオがテレビ内蔵スピーカーにも対応

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは9月15日、PlayStation 5の大型システムソフトウェア・アップデート第2弾を配信した。これにより従来はヘッドフォンにのみ対応していた3Dオーディオがテレビの内蔵スピーカーでも利用できるようになったので、早速試してみた。

「Tempest 3Dオーディオ技術」を使った3DオーディオはPS5の目玉機能のひとつで、基本的にはすべてのゲームで楽しめるもの。しかし、これまでは純正のワイヤレスヘッドフォン「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」か、DualSenseワイヤレスコントローラーにヘッドフォンを有線接続した場合にのみ利用できた。それが今回の大型アップデートでテレビスピーカーにも“解禁”された。

測定は体感10秒。コントローラーを顔の高さに上げて待つだけ

テレビスピーカーでの3Dオーディオでは、通常の2チャンネルのテレビスピーカー音声が3次元の音声に変換され「ゲームプレイへの没入感を高める」という。設定時にはコントローラーに内蔵されているマイクを使って部屋の音響特性を測定、ユーザーの部屋に適した設定を反映できる。

設定のサウンドに「テレビのスピーカーで3Dオーディオを出力」の項目が出現
コントローラーを使って部屋の音響特性を測定できる

最新ソフトウェアにアップデートしたPS5では、設定のサウンドメニューに「テレビのスピーカーで3Dオーディオを出力」の項目が出現する。これをオンにすることでテレビスピーカーでも3Dオーディオを楽しめ、「3Dオーディオ用に部屋の音響特性を測定」を選べばコントローラーを使った測定ができる。

測定時にはコントローラーを顔の高さに持ち上げる必要がある

測定にあたってはコントローラーのデバイスソフトウェアを最新にする必要があるほか、普段ゲームをプレイする場所に座り、顔の高さまでコントローラーを持ち上げる必要もある。そのほか部屋をできる限り静かにすること、テレビのボリュームをゲームプレイ時と同じ程度にすること、コントローラーのマイクミュートを解除することといった注意点も表示された。

実際に測定を開始すると、テレビから「ビービービービー」という音が2回流れてくる。想像よりも大きな音で少し驚いたが、測定自体は体感10秒程度で終了。これでその部屋の特性にあった3Dオーディオが楽しめる。模様替えなどで家具の配置などを変えた場合は、その都度測定をやり直す必要があるが、面倒な準備や操作が不要で、測定に時間がかからないのは嬉しいところ。

ちなみに筆者の環境では、3Dオーディオを有効にすると、テレビのボリュームが大きくなった印象があった。そのため少し音量が大きめの状態では、PS5のメニュー操作音が少し割れて聴こえたが、ゲームプレイに影響はなかった。

テレビスピーカーでも没入感大。ヘッドフォンとの使い分けが吉

さっそく「LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶」体験版や「Ghost of Tsushima Director's Cut」、「Call of Duty:Black Ops - Cold War」などで3Dオーディオを体験してみると、どのタイトルでも3Dオーディオをオンにすると、音に奥行き感が感じられる。

例えば「LOST JUDGMENT」では、大型ビジョンから流れる音声が正面だけでなく、近くのビルから反射して頭上から音が降り注ぐような感覚を味わえた。また主人公の足音が画面下から響くような感覚で、より“足音感”が強くなった。

もっとも効果を感じやすかったのは「Ghost of Tsushima Director's Cut」の滝の前
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そして特に効果を感じやすかったのは「Ghost of Tsushima Director's Cut」で滝の前に立ったとき。滝の正面に立ったまま、視点だけを時計回りに移動させてみると、滝の流れる音が正面→左→後方→右と回っていくのを感じられた。3DオーディオOFFの状態でも音の発生源が移動する感覚はあったが、3DオーディオをONにするとよりはっきりと聴き取れる。戦闘シーンでも敵兵が放ってくる矢の音が立体的に聴こえ、どの方向に弓兵がいるのかが、わかりやすくなった。

次に、3Dオーディオの効果をテレビスピーカーとヘッドフォン、今回の場合は「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」と聴き比べたが、ヘッドフォンのほうが、どのタイトルでもより立体感、臨場感を感じられ、テレビスピーカーでの体験とは大きな差があった。

普段あまりゲームを遊ばない家族に聴き比べてもらうと、テレビスピーカーでは「音に奥行き感があるかも?」という感想だったのだが、PULSE 3D ワイヤレスヘッドセットでは「回る、回る! 音が視点に合わせて回ってる!」と大はしゃぎだった。

PULSE 3D ワイヤレスヘッドセットではなく、一般的なヘッドフォンをコントローラーのヘッドフォン端子に有線接続しても、テレビスピーカーよりはっきりとした音の定位感が得られ、没入感の高いゲームプレイが楽しめた。

PS5の3Dオーディオ再生にチューニングされたPULSE 3D ワイヤレスヘッドセットはもちろん、一般的なヘッドフォンとの比較でも、及ばない部分はあるが、ヘッドフォンなどを用意しなくても3Dオーディオを手軽に体感できるのは嬉しいポイント。対戦ゲームなど没入感が求められるものはヘッドフォンで、RPGのレベル上げやオープンワールドゲームのサイドクエストなど、のんびりとプレイしたい場合はテレビスピーカーで、といった使い分けも可能になった。

ヘッドフォンの3Dオーディオ調整画面。音源を左右に移動する機能やサンプルサウンドを変更する機能が追加されている

なお、ヘッドフォンでの3Dオーディオ調整機能にも変更があった。音が聴こえる高さの違う5つの音を聴き比べるという点は変わらないが、その際に試聴できる音が、従来は1種類だけだったのに対し、2種類に増えていた。音源を左右に動かすことも可能で、自分にあった設定をより見つけやすくなっていた。

またPULSE 3D ワイヤレスヘッドセットでのみ使える機能として、EQも用意された。PS5と接続後、コントロールセンターのサウンドから調整が可能で、プリセットでは「標準」、「ベースブースト」、「シューター」、「オーディオモード1~3」の6種類が用意されている。ベースブーストは名前のとおり低音が強調され、シューターではFPSゲームで試したところ敵の足音などが聴き取りやすくなっていた。

PULSE 3D ワイヤレスヘッドセットにはEQ機能が登場
EQプリセットは6種類
標準プリセット
ベースブーストプリセット
酒井隆文