【レビュー】ソニーモバイルの新Bluetoothヘッドセット「MW1」

-充実のスマホ連携が特徴。MW600と比較


スマートワイヤレスステレオヘッドセット MW1

 ソニーモバイルコミュニケーションズの新Bluetoothヘッドセット「スマートワイヤレスステレオヘッドセット MW1」は、Bluetoothによるワイヤレス音楽再生に加え、スマートフォンとの連携機能を装備するほか、単体のMP3プレーヤーやFMラジオ機能などを備えたユニークな製品だ。

 イヤフォンの着脱も可能なヘッドセット部を採用し、ソニーモバイルの新Bluetoothヘッドセットということから、'10年発売の「MW600」の後継と期待しているユーザーも多いだろう。MW1ユーザーの筆者もその一人だ。

 スペック面だけで見るとMW600と比較して、複数の機器と同時に同プロファイルで接続できる「マルチポイント」の数が3から2に減ったものの、イヤフォン部分が着脱式になっていることやFMラジオ機能などはほぼ同等。加えて前述のスマートフォン連携機能や単体でのMP3プレーヤー機能などがMW600と異なるポイントだ。価格はMW600が9,980円、MW1が12,800円と、ちょうど3,000円高い設定になっている。

 とはいえMW1は、デザインもMW600と比べると大幅に異なっている。本レビューではMW600と比較しながら、MW1の新機能や使い勝手を紹介する。


■ イヤフォンは交換も可能。microSDにも対応

 インターフェイスは本体前面に日本語表示に対応したディスプレイと、着信応答などに利用するアクションボタンを搭載。本体側面は片側にメニューボタンと早送り、一時停止、早戻しボタン、反対側の側面に音量ボタンを搭載。本体上部にはイヤフォンジャックと電源ボタン、マイクを搭載する。

 MW600では音量がタッチセンサー式になっていたが、慣れないと操作が難しいタッチセンサーよりも物理ボタンになったほうが操作はしやすい。

 ただし、本体前面のアクションボタンがかなり押しやすい場所にあるため、本体操作の際に思わぬところで触ってしまう誤動作が時折発生した。また、電源ボタンはイヤフォンを装着すると触れられる面積が少なくなり、指が大きい人にはボタンを押すのも一苦労かもしれない。

MW1のヘッドセット部。右側にアクションボタン日本語表示可能なディスプレイを装備背面のクリップ部にSONYロゴ
早送り/戻し、再生停止などのボタンを用意ボリュームボタンイヤフォンは着脱式

 本体下部はキャップ式になっており、キャップの下にはmicroSDカードスロットとmicroUSBポートを搭載。microUSB経由で充電が可能なほか、PCと接続することで音楽ファイルの管理も可能。対応音楽形式はMP3とWAV。背面はクリップ型になっており、衣服や鞄へ簡単に固定できる。

microSDカードに対応。カード内のMP3ファイルなどを再生できる同梱品

 イヤフォン部は着脱可能で、6mm径ユニット搭載のカナル型イヤフォンが付属。ケーブルも平型タイプのものを採用している。再生周波数帯域は10Hz~20kHz。

イヤフォン部。6mm径のドライバを採用したカナル型ケーブルは平型タイプ

 BluetoothはVer.3.0に対応し、プロファイルはA2DP、AVRCP、HFP、SPPをサポート。SCMS-Tにも対応し、ワンセグの音声をBluetooth経由で聴くこともできる。スマートフォンと接続した際には、本体内蔵のマイクを使ったハンズフリー通話も可能で、アクションボタンを押して通話を受けられる。

 Bluetoothのペアリングは電源長押し式ではなく、メニューボタンから設定アイコンを選びBluetoothペアリングを選択。MW1には最大2台までBluetooth機器を登録でき、新しい機器を登録する時は登録済みのデータを上書きする。

ペアリングはメニューから選択ペアリングした状態。2台の機器が接続されているメニュー画面。左からFMラジオ、音楽、新たに追加した「電話を検索」機能、設定。早送り・早戻しボタンでカーソルを移動し、再生ボタンで決定する
楽曲を再生する際は音楽アイコンを選び、さらに接続したい機器を選択楽曲再生時。曲名、アーティスト名も表示

■ 充実のスマートフォン連携

 MW1の特徴であるスマートフォン連携を利用する場合は、あらかじめAndroidスマートフォンに専用アプリ「LiveWareマネージャ」をインストールしてからのペアリングが必要。LiveWareマネージャをインストールした状態でペアリングを行なうと、MW1管理用のアプリをインストールするよう促され、Google PlayからMW1の管理アプリをインストールすると連携機能が利用できるようになる。このあたりはAndroid連携の腕時計「MN2」と共通であり、MN2のスマートフォン連携機能の一部をMW1に搭載した、というイメージだ。

LiveWareマネージャをインストールした状態でペアリングするとMW1の管理アプリをインストールするよう促される「はい」を選ぶとGoogle Playの該当アプリを表示初回接続時は更新も促された接続するとステータスバーに常駐

 設定が終わったら利用したい機能をGoogle Playからインストールして追加していく。標準では対応アプリとしてカレンダー連携アプリやメール連携アプリ、通話記録アプリなどが表示されているが、画面の「アプリケーションを検索」をタップするとその他のアプリも利用でき、Twitter対応アプリやFacebook対応アプリも利用できる。アプリはソニーモバイル公式のもの以外に一般ユーザーが開発したアプリも利用できるが、こうしたアプリは公式の動作対象外となる。


初期状態で表示されているアプリ。この時点ではインストールされておらず、タップして該当のアプリをインストールする他のアプリもインストールできるLiveWareマネージャには接続した機器が表示される「スマートワイヤレスヘッドセットプロ」の設定画面
インストールしたアプリは「有効にしました」と表示Facebookアプリの設定画面通知対象をカスタマイズできる
Twitterアプリ設定画面こちらもFacebook同様通知対象をカスタマイズできる通知間隔は最小で15分単位Gmailを通知するアプリも用意されている

 メールやTwitter、Facebookなどの通知はMW1そのもので通知を受けるのではなく、スマートフォン側のアプリで定期的にチェックを行ない、新着情報があると「プー」という音とともにMW1へ通知される。

 通知内容は再生・一時停止ボタンで詳細が表示できるほか、アクションボタンを押すことで通知内容を再度表示できる。TwitterやFacebookはメッセージのみ、リプライのみなど通知の対象をカスタマイズすることも可能だ。

Facebookの通知。TwitterとFacebookはアイコンで区別できる再生ボタンを押すと内容を確認できる「電話を検索」機能。スマートフォンのアラームをMW1から鳴らせる

 音で知らせてくれるのは便利ではあるが、聴いている音楽を遮って通知音が鳴るため、音楽を楽しんでいる時には邪魔に感じることもある。また、通知の直後は各種通知内容が表示されるため、早送りや早戻しボタンはメッセージの表示切り替えになってしまい、自由に楽曲を操作できない。このあたりはアクションボタンを押した時点で通知内容を表示するといった対応が欲しいところだ。

 スマートフォンを取り出さずにMW1で確認できるのは便利と言えば便利だが、着信内容を確認する場合にはMW1のディスプレイを目視する必要があり、本体を固定したクリップを外して液晶を確認するか、ポケットに入れたスマートフォンを取り出すか、というとどちらが手軽なのかは判断が難しいところ。とはいえ通知機能以外にも、MW1を操作してスマートフォンのアラーム音を鳴らし、部屋の中で見当たらなくなったスマートフォンを探し出す、といったアプリも用意されており、スマートフォン連携をいかに活用するかがMW1のポイントになりそうだ。


■ 単体MP3プレーヤーとしても動作

MP3プレーヤー機能

 MP3機能は付属のmicroSDカードリーダーまたは本体とPCをUSB接続し、microSDカードに楽曲ファイルを保存すれば再生できるシンプルなもの。ファイル形式はMP3/WAVのみでAACには非対応。プレイリストはm3u形式に対応しており、ソニーの音楽管理ソフト「Media Go」を利用してプレイリストや音楽ファイルを転送することも可能だ。


アーティスト別やアルバム別、プレイリスト、楽曲ごとのほか「すべてをシャフル」が選択できるMP3プレーヤー再生時は左のアイコンが「SD」になる楽曲の一部は日本語をうまく表示できなかった
単体のMP3プレーヤーとして利用できる

 microSDからの再生はメニューボタンから選択でき、ペアリング済みのBluetooth機器と並列に表示されるため、3つ目のBluetooth接続機器感覚で利用できる。シンプルながらアーティストやアルバム、プレイリスト単位で再生できるなど単体プレーヤーとしても十分な機能を備えているが、楽曲名が文字化けしたり、プレイリストに登録した楽曲が表示されなかったり、シャッフル機能が「シャフル」と表記されているなど、使用感としては一昔前のMP3プレーヤーを操作している気分になった。そもそもBluetoothヘッドセットとして利用するユーザーにとって、標準での再生機能はさほど必要ないのかもしれない。

 音質は良好で、低価格なBluetoothヘッドセットにあるシャカシャカ音もない。音質的には愛用しているMW600とほぼ同等と感じた。ただし、街を歩いていると周囲のレシーバーと干渉するのか、音が途切れることがあったほか、ペアリングしたばかりの時も音楽が遅延して再生されることがあった。使用環境に依存する点ではあるが、MW600ではこうした現象は体験していなかっただけにやや気になった。

 同梱のカナル型イヤフォンは遮断性が高く、音楽を再生していない時でも周囲の音がほぼ聞こえないレベル。音楽を再生しながら歩いていると低音量でも側を通る車に気がつかないこともあった。ただしイヤフォンは着脱型のため他の好きなイヤフォンやヘッドセットに交換して使うこともできる。Bluetoothの利便性と自分の好きなイヤフォンを選べる相性の良さは着脱型のメリットだ。


■ 豊富な機能は魅力だが粗さも。MW600とは別物

 MW600後継と期待した本機だが、実際に使ってみるとほぼ別物という印象だ。マルチポイントの登録数もMW600の3と比べてMW1は2までしか登録できず、Bluetoothペアリング時も環境によって音が途切れたり、1台がエラーのままもう1台が接続すると、片方のエラー音が鳴り続けて止まらないことがあるなど、ペアリング周りもMW600の性能が上に感じた。

 スマートフォン連携機能は腕時計型のMN2と同様の機能を搭載しているが、腕を見るだけで情報を確認でき、通知もバイブレーションで行なうMN2に対し、クリップで装着した液晶を確認する動作が必要であり、通知も音で行なうMW1は、同じ機能でも使い勝手は大きく異なる。音楽再生中に通知音が鳴ったり、通知の際には楽曲操作ができないという仕様は、スマートフォン連携に特化したMN2に比べると少々使いにくさを感じた。表示される日本語のフォントも粗く、MP3プレーヤーで文字化けがあったりと、全体的に粗い作りという印象が強い。

 とはいえBluetoothレシーバー1台でスマートフォン連携機能も使えるのは魅力。通知音については対象をカスタマイズすることで、Twitterのメッセージやリプライ、Facebookのメッセージがあった時のみなどに設定すれば数は抑えられる。普段スマートフォンは鞄に入れていて取り出すのは面倒、という時に、メッセージなどの内容をレシーバーだけでさっと確認できるのは意外に便利だ。

 MW1購入の決め手はこうしたスマートフォン連携機能に興味があるかどうか、に尽きる。MP3プレーヤー機能は性能もシンプルで、そもそもBluetoothレシーバーで接続する機器に聴きたい曲が入っていることを考えれば利用機会は少ないだろう。MW600の後継というよりも、スマートフォン連携機能を備えた別のBluetoothヘッドセット、として考えたほうがよいだろう。


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(2012年 7月 24日)

[ Reported by 甲斐祐樹 ]