レビュー

2万円を切るソニーの“多面体”ハイレゾBDプレーヤー

「BDP-S5100」はネットワークオーディオに使える?

BDP-S5100

 ソニーから7月27日に発売されたBlu-ray Discプレーヤー「BDP-S5100」。従来モデルから変わった点として、“多面体”の筐体デザインがまず目を引くが、それ以外にも最高24bit/192kHzのWAVやFLACの再生にも対応するなど、プレーヤーとしての基本性能が向上している。

 2012年モデルのBDP-S590(S590)から既にDLNA/DTCP-IPにも対応しており、映像面のネットワーク機能は充実していた。さらに、今回はハイレゾ再生にも対応し、ネットワークオーディオプレーヤーとしても進化、実売2万円を切る価格(直販19,800円)も魅力的だ。ただ、オーディオプレーヤーとして使うとなると、ビデオ再生とは使用スタイルが違うため、実際の使い勝手を試してみたいと思っていた。今回は、ネットワークプレーヤーとしての「BDP-S5100」(以下、S5100)の使用感を中心に試しているほか、BRAVIA「KDL-46W900A」や、ウォークマン「NW-F807」、iPadなど他の機器との連携機能についてもチェックした。

ブルーグリーンがアクセントの新筐体

従来機から大幅にデザインを変更

 冒頭でも触れたが、一見して他のプレーヤーと違うのが、アシンメトリーなデザイン。天板は4枚の三角形の板が組み合わさっていて、中央よりも右側に頂点をもつ低い四角錐のような形状だ。液晶テレビ・BRAVIAのデザインコンセプト“Sense of Quartz”の流れを汲む、鉱物のような幾何学模様が特徴的。

 頂点が右側にあるとはいえ、傾斜はそれほど急ではない。また、全体的に前方へ向けて緩やかに傾いていることもあって、正面や横から見ても頂点がトガっているというより、よく見れば“他よりやや高い”という程度。ただ、6月に掲載したニュース記事への反応では「上に物を置けなそう」という声がTwitterなどで多く上がっていた通り、確かに上に物を置くと滑り落ちるので、重ね置きはしない方が良さそうだ。

BRAVIA「KDL-46W900A」と組み合わせたところ

 BRAVIA W900シリーズのベゼル部分などと同様に、最近のソニー製品に多い“ブルーグリーン”を採用し、光が反射すると右手前の板だけが青緑に光る。製品写真ではこの色が目立っているが、カメラのフラッシュのような強い光を直接あてたりしない限り、普通の照明ではそれほど青緑が主張するわけではない。正面から見ると基本的にはブラックの筐体とほとんど変わらず、角度によっては少し違った色に見える程度といえる。

 本体の外形寸法は360×199×43mm(幅×奥行き×高さ)で、従来モデルと同様に薄型デザインを継承。今回組み合わせた液晶テレビのBRAVIA KDL-46W900Aはスタンドがそれほど高くないが、本体とラックの低い隙間にもS5100を置ける。ただし、天面の突起部のところまで奥に押し込もうとするとテレビ下部と干渉するので、テレビの真下よりはやや手前に置く形となる。

 出力端子はHDMIと同軸デジタル音声のみで、アナログ出力は搭載しないシンプルな構成。筐体は高級感のある見栄えだが、素材はプラスチックのようで、手に持つと見た目以上にとても軽い。重量は1.3kg。

横から見たところ
真横からよく見ると、前方に向かってやや傾斜している
前面
天板の右奥側に、ドルビーTrueHDやDTS-HDなどのロゴも控えめに表示
背面
付属リモコン

ネットワーク再生機能をチェック。タブレットのリモコンが便利

DLNAサーバーの楽曲を再生可能

 まず最初に、一番気になっていたネットワークメディアプレーヤーの機能を試した。起動すると、UIのクロスメディアバー(XMB)が表示。「ビデオ」、「ミュージック」といった用途別のメニューになっていて、基本的には、PS3などに近い操作体系となっている。

 ネットワーク再生では「ソニールームリンク」に対応し、DLNAのレンダラー(DMR)として利用可能。PCやNAS(LAN HDD)など対応サーバー(DMS)の動画や音楽、写真を無線/有線LAN経由で再生できる。付属リモコンから操作できるほか、スマートフォン/タブレットのDLNAコントローラ(DMC)対応アプリからも再生指示を出せる。ソニーは、iOS/Android端末向けに無料アプリ「TV Side View」を公開しており、このアプリからの操作が快適。リモコンと同等の操作がソフトウェアキーで行なえるほか、手元のタブレットで曲を選んでから再生することもできる。

 まずはDLNA対応NASのバッファロー「LS-XHL 2.0」にある楽曲を、BDP-S5100から再生した。このNASにはFLACやWAV、AACなど様々な形式のファイルが混在しているため、より多くの種類のファイルを再生できるネットワークプレーヤーが欲しいと常々思っていた。

 結論から言えば、新しく対応したFLACやWAVの24bit/192kHzファイルを含め、ほとんどのファイルを問題無く再生できた。FLACなどのハイレゾファイルは、最近はAVアンプやUSB DACなど多くの機種で再生可能となっているが、再生機器を切り替えず、このBDP-S5100だけでほぼ全て再生できるのは便利だ。楽曲タイトルをリスト表示すると、ファイル形式も合わせてアイコンで表示されるため、その楽曲がどの形式なのか判別しやすい。ただし、ジャケット(アルバムアート)は、どのファイルでも表示されなかったのは惜しい。

 また、WAVやFLACは、16bit/44.1kHz、24bit/96kHz、24bit/192kHzいずれも再生は可能なものの、MP3やAAC、WMAなどでは可能な早送り[>>]や巻戻し[<<]の操作が、「ただ今、その操作は禁止されています」と表示されてできなかった。試しにサーバーをWindows 7 PCのWindows Media Playerや、nasneに指定したところ、WAVの24bit/96kHzや24bit/192kHzも早送り/巻戻しができた(FLACは再生できない)。この辺はサーバーによって違いがあるようだ。なお、対応ファイルに含まれていないDSD(2.8/5.6MHz DSF)や、Apple Losslessは、当然ながら再生できなかった。

 オーディオプレーヤーとしての操作感は、XMBなのでPS3などとほとんど同じ。アルバムやアーティストなどで絞り込んでまとめて再生できる。全曲まとめて再生することもできるが、曲の並び順は変えられないので、できれば全曲ランダム再生機能もあればよかった。

 ネットワーク再生以外では、USBメモリやUSB HDD内の動画/音楽/静止画ファイルも再生可能。USB端子は、前面と背面に各1系統備える。USBメモリ内のファイル再生時だと、WAVやFLACの早送り/巻戻しは可能だった。

アーティストやアルバムなどで絞り込んで再生可能。このあたりはPS3などと同じだ
FLAC再生画面
WAV再生画面。アーティスト名やアルバム名などは表示されなかった

 スマートフォン/タブレットアプリの「TV Side View」は、付属リモコンと同じ操作をソフトウェアキーで行なえるほか、[Home Network]を選ぶと、テレビ画面に映さなくても、スマホなどの画面上で選曲などが行なえる。このアプリ画面での操作と、付属リモコンの操作ではS5100の動作が同じようで若干異なる。例えば、音楽を再生中に他の曲を探すとき、付属リモコンで[戻る]を押すと再生も止まるが、アプリ操作時は再生が継続する。また、アルバムなどで絞り込んで再生したとき、アプリだと1曲ずつしか再生できないが、付属リモコン操作だと1曲終わると次曲に自動で進む。このあたりは一長一短だ。

TV Side Viewの画面(iPad版)
対応機器とペアリングするときは、テレビに表示される4桁の数字をアプリに入力
Home NetworkからLAN内のサーバーを選択、ミュージックの項目を開いたところ
アルバム一覧。ジャケットも表示される
楽曲を選択して再生。この場合は1曲ずつの再生となる
付属リモコンと同じ操作を、アプリのソフトウェアキーで行なえる

 動画再生の対応ファイルは、AVCHD(3D/Progressive)、MPEG-1/2、MPEG-4 AVC/H.264、WMV、Matroska Videoに対応。静止画はJPEG、PNG、GIF、MPOをサポートする。AVCHDカメラで撮影したM2TSファイルなども、サーバーからDLNA経由で問題無く再生できた。

 DTCP-IPもサポートしており、レコーダなどで録画したデジタル放送の番組もLAN経由で再生可能。パナソニックの「DMR-BZT700」や、SCEのネットワークレコーダ「nasne」で録画した番組も視聴できた。nasneについては、ライブチューナ(放送転送)も視聴可能だった。

 そのほか、YouTubeやHuluといったインターネット動画/音楽サービスにも対応。ソニーのサービスであるVideo UnlimitedやMusic Unlimited、ベルリン・フィルのデジタルコンサートホールのほか、DMM.TVや、TBS世界遺産コレクション、vTunerなどを利用できる。

BDレコーダ内の録画番組を表示したところ
nasneのライブチューナを使って、オンエア中のテレビ放送を視聴
インターネット動画サービスも利用可能

 Android搭載ウォークマン「NW-F807」にあるファイルをワイヤレスで再生する「DLNA Throw」にも対応。ウォークマンで動画や音楽などを再生中に、Throwのアイコンをタップすると、そのファイルがS5100を介してテレビやオーディオ機器などで再生できる。この機能はBRAVIAだけでも利用できるが、S5100を経由することで、FLACなどBRAVIAでは非対応の形式も再生できる。

DLNA Throwで音楽を再生したところ。ウォークマンで曲を選び、レンダラーを選択すると、テレビで再生できる

 スマートフォン/タブレット連携で注意しておきたいのは、最近のミニコンポなどでも多くの機種がサポートしているBluetoothやAirPlayには対応していない点。筆者個人は両機能をあまり使わなくなったが、特にスマホが主な楽曲プレーヤーになっている人だと、これらに対応していないのはマイナスと思うだろう。このあたりは、パーソナル用途のオーディオと、主にリビングなどに置くBDプレーヤーとの違いかもしれない。

トリルミナス対応で鮮やかな色表現。素早く起動

BDビデオを再生

 続いて、基本となるBDプレーヤーとしての機能も試した。従来モデル「BDP-S590」と同様に、Blu-ray 3DやSACDなどのディスクを再生できる。

 再生対応ディスクはBDビデオのほか、BD-R/RE、DVDビデオ、DVD±R/RW、DVD±R DL、音楽CD、SACD、CD-R/RWなど。新たに広色域の「トリルミナスカラー」に対応し、対応BRAVIAとの組み合わせで鮮やかな色表現を可能にしている。

 今回接続した「BRAVIA KDL-46W900A」もこのトリルミナスカラーをサポート。アニメBD「言の葉の庭」(新海誠監督)を再生すると、この作品を象徴するカラーである新宿御苑の緑が、より鮮烈に描写されるのに驚く。作られたようなギトギトの発色ではなく、白トビしないギリギリのラインでまぶしく濃い緑が、梅雨〜初夏の木々が持つ生命力を思わせる。もちろん、このBDそのものが徹底して緑を美しく表現しているものなので「このプレーヤーだから格段に画質が違う」というほどではない。ただ、やはりKDL-46W900Aとの組み合わせは良好で、例えば3D版「アバター」を再生しても、青や緑といった色の微妙な階調が損なわれずに描写されていると感じる。3D再生についても、クロストークなどの破綻も無く楽しめた。

 映像設定では、HDMIの Deep Color出力を16/12/10bitから選択可能。また、HDMIからの映像信号の色空間変換は、YCbCr 4:2:2、YCbCr 4:4:4、RGBから選べる。ビデオ/フィルム素材それぞれに合わせる「シネマ変換モード」の選択も可能。3D表示時の画面サイズも1インチ単位で設定できる。

 特筆すべきは起動の速さ。約3秒で起動できるのは、前モデルのS590と同等だが、S5100は、起動からローディングまでの全体の時間も短縮。ローディング時間は再生するBDによって変わるので一概に「何秒」とは言えないが、ディスクを入れてから再生するまでの時間はPS3よりも早く、例えばPS3ではディスクを入れてから最初の表示が出るまでが約40秒だった「言の葉の庭」はS5100では約18秒、「アメイジングスパイダーマン」はPS3で約45秒、S5100で約19秒。「隠し砦の三悪人」はPS3が約42秒、S5100が約20秒だった。

再生したディスクの履歴から、関連動画の検索も
映像関連の設定
HDMI Deep Color出力設定
HDMI映像出力フォーマット
出力解像度設定
3Dテレビ画面サイズ設定
SACD再生

 続いて、藤田恵美「camomile Best Audio」などのSACDも再生した(アンプはパイオニアSC-LX75、スピーカーはELAC FS247を使用)。2ch/マルチチャンネル切り替えや、SACD/CDのハイブリッドディスクでどちらを再生するかといった設定はメニュー内で行なえる。なお、SACDは曲名表示ができず、全て「トラック0」と表示される。リモコンの10キーでトラック番号を押して選曲することは可能。

 FLACファイル(16bit/44.1kHz)をネットワークで再生したときに比べると、当然ながら同じ楽曲ではSACDの方が上。ボーカルの存在感や、その周りの空気を含めた全体の生々しさがSACDではよく伝わってくる。DSDファイルはS5100でネットワーク再生できないので、ディスクを入れる手間が必要とはいえ、手軽なネットワーク再生とは別の楽しみとして、ディスク再生もアリだと思える。

 ディスク再生時に少し気になったのは、BD再生時の回転音と振動。軽い筐体で、脚も小さいので仕方のない部分かもしれないが、BDビデオ再生時に、静かなシーンだと回転音がわかる。ただ、手持ちのPS3(CECH-2000A)に比べると、PS3の方が動作音は大きい。また、CDやSACD再生時の回転音や振動は、特に気にならなかった。

SACDだと「トラック0」と表示された
SACDの2ch/マルチチャンネル設定
本体底面。支えるのは簡単なゴム足だ

アプリの進化にも期待

 この価格のBDプレーヤーとしては、かなり多くの機能を詰め込んでおり、XMBのインターフェイスも特に迷うことなく使用できることから、マルチメディアプレーヤーとしてのスペックは他社製品と比べても高いと言える。

 ただ、ジャケット表示やランダム再生ができないなど、音楽に焦点を絞ると少し物足りないのも正直なところ。「オーディオプレーヤーではない」と言われればそれまでだが、BDプレーヤーの機能が横並びになって、価格も手頃になってきたのを考えると、ついもう一歩の前進を望んでしまう。最近は、AVアンプやミニコンポなどでもネットワーク再生機能を備えるものは多いが、「ただ再生できるだけ」では、毎日使う音楽プレーヤーとしては、どうしてもiPodやウォークマンなどの使い勝手に及ばない。実際に使ってみないと分からない細かな部分だからこそ、海外メーカーなどの“安いプレーヤー”と差別化して欲しい点でもある。

 今回、一番便利さを感じたのは、アプリ「TV Side View」との連携。もともとテレビの番組表として利用できるアプリで、関連する動画なども検索できるというものだが、DLNAのコントローラとしても使えることで、メディアプレーヤーのリモコンとして使い勝手がいい。

 テレビとBDプレーヤーの両方を交互に操作するときなどにも、各付属リモコンを持ち替えるのではなく、手元のiPadだけでまとめて操作できる(アプリ上で切り替える)。無線LAN経由なので、リモコンをいちいちプレーヤーやテレビに向ける必要もない。前述したように、付属リモコンとアプリでは少し動作が異なるが、アプリが今後さらに進化して「付属リモコンが不要」と思えるまでになったら、プレーヤーそのものの魅力もさらに増すだろう。

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(中林暁)