レビュー

放送通信連携サービスの本命「NHK Hybridcast」を試す

ちょっとリッチなデータ放送? シンプルな操作感

Hybridacstに対応したREGZA 58Z8X

 NHKは、次世代の放送/通信連携サービス「NHK Hybridcast(ハイブリッドキャスト)」を9月2日午前11時からNHK総合で開始した。

 Hybridcastは、放送電波で送られてくる番組と、インターネット経由で提供する情報を連携させるサービス。番組と連動したコンテンツをネットワークで送信し、番組画面と同時に表示したり、タブレットなどの携帯端末を連携させたサービスの開始も検討されている。

 ただし、9月にスタートしたNHK Hybridcastの第1弾は、ハイブリッドキャストのホーム画面を先行して展開した、限定的なもの。テレビの放送画面に最新のニュースや気象情報、スポーツ情報、為替情報などを組み合わせて表示することが可能となる。番組連動コンテンツやタブレット連携などは「(2013年)秋以降」のスタートが予告されている。

NHK Hybridacstのトップメニュー

 しかし、Hybridcastは官民連携しての推進が期待される新サービス。まずはその実力を検証してみた。9月3日現在のHybridcastの対応テレビは、東芝のREGZA Z8X/Z7/J7シリーズの10モデルのみ。今回は58型の4Kテレビ「58Z8X」を用意し、NHK Hybridcacstをテストした。

dボタンでHybridcastをスタート

 NHKは、9月開始のホーム画面からのニュースや気象情報提供は、「独立型サービス」と呼んでいる。放送から“独立”してサービス展開しているためだ。

 一方で、今秋以降には、放送に“連動”する形のサービスを提供開始する予定。放送中の番組に関連する情報提供や、オンデマンドで動画を提供するなど、年内にはいくつかの番組で連動型のサービスを展開する見込みだ。また、タブレットなどの携帯端末を連携させたサービスも検討しており、具体的には、双方向クイズ番組などをはじめとする視聴者参加型サービスや番組内容を補完する解説などを想定しているとのこと。

 今回テストするのは、9月からスタートした前者の「独立型」サービスだ。

【Hybridcastのサービス展開】
時期 サービス 概要
9月 独立型 ニュース、為替、番組表など
秋以降 放送連動型 放送に連動したコンテンツ
VOD(無料)など
dボタンでHybridcastをスタート

 REGZAシリーズ向けのHybridcast対応アップデートは、8月下旬より放送波やインターネット経由で提供されている。

 NHK Hybridcastを呼び出すためには、対応テレビのリモコンの「dボタン」を押す。これは、NHKが定めた動作で、IPTVフォーラムの定めるHybridcastの仕様で厳格に決められてたものではないという。そのため、他局がサービスをスタートする場合は、違うボタンで呼び出す可能性はある。ただし、基本的にはHybridcastはdボタンで呼び出すものと考えておけばよさそうだ。

Hybridacstのメニュー画面

 dボタンを押すと、NHK Hybridcastのホーム画面が表示され、表示されたメニュー内の各項目を選んでサービスを利用できる。dボタンを押すと、放送画面に透過オーバーレイする形で、ニュースや天気などの情報が表示され、その下部に「データ放送」、「ホーム」、「番組詳細」、「番組表」、「ビジネス」、「スポーツ」、「気象」、「スクロールニュース」、「おすすめ」などの項目が表示される。

 ボタンを押した後、Hybridastのホーム画面背景は瞬時に立ち上がるが、その後3〜6秒ほどで各メニューが描画される。この表示データを「放送波」ではなく「インターネット」経由で取得する、というのがHybridcastの最大のポイント。全項目が、表示されるまでは若干待たされるが、とりあえず背景画面は見えているので、体感上はそれほど待たされている感じは無い。

 ホーム画面を立ち上げると、放送画面に透過レイヤーが“被さる”形で表示される。つまり、放送画面の下部1/3程度をHybridcastのメニュー部で覆い隠してしまい、画面の一部が見えなくなる。データ放送では、画面を遮ることはせず、画面を縮小して、その枠に関連のデータ領域を表示するという形だったので、かなり見栄えとしては新鮮だ。

 長らくテレビ放送においては、こうした放送画面への「オーバーレイ」を禁じてきた。地デジ受信機の技術仕様を定めたARIB( 電波産業会)の規定において、「放送番組にの上に、関係がないコンテンツを混合しない」ことが定められていたためだ。

 この規定が変更されたわけではないが、Hybridcastではオーバーレイ表示が行なえるようになった。実際に表示されている「気象」や「ニュース」などの情報自体はデータ放送とほぼ同じものにもかかわらず、現代的でスマートな印象のユーザーインターフェイスと感じられる。

シンプルな操作性。30日分の過去番組表も

 操作はシンプル。「番組詳細」、「番組表」、「ビジネス」、「スポーツ」、「気象」、「スクロールニュース」などの画面下部の各項目をリモコンのカーソルキーの左右で選び、決定ボタンを押すことで、次の画面に移動する。

操作方法。リモコンのカーソルキーと決定ボタンで操作

 「番組詳細」は現在放送中の番組情報を表示するもの。番組タイトルや出演者情報などが確認できる。決定ボタンを一度押すとメニューの上部に現在視聴中の番組情報を表示、番組情報の枠を選択し、もう一度決定ボタンを押すと「番組表」に移動する。この番組表では現在放送中の番組のほか、前後の番組、さらに、「NHK教育」や「NHK BS1」、「NHK BSプレミアム」の前後の番組情報も表示してくれる。

 現時点で、NHK Hybridcastに対応しているのは、NHK総合だけで、他のNHKの各チャンネルでdボタンを押してもデータ放送が表示されてしまうが、番組情報については、NHK総合のHybridcastから他のチャンネルのものを見ることができる。

番組詳細
番組表に移行。NHK総合以外のNHK各チャンネルの番組情報も確認できる、
番組の詳細

 番組詳細には、出演者情報などのほか、再放送情報なども含まれている。

 番組表は、番組詳細から辿ってもメニュー画面の「番組表」から呼び出しても同じものが表示される。上部の「カレンダー」を選ぶと、過去30日分のデータと7日分の未来のデータが用意されている。番組表はデータ量が多いためか、カレンダーから日時を選んで一気にスクロールしたり、チャンネルを跨いだ際に、データの表示まで4〜10秒ほど待たされることがある。

 NHK Hybridcastの各機能は、基本的にカーソルキーの2-3回の操作と決定ボタンだけで操作できるようになっており、たいていの操作はキビキビと思ったように実行できる。ただし、番組表のようにカーソル移動が多い場合、時折、リモコンの操作に画面上の選択枠の移動が追従しなくなってしまう。カーソルを押してもその操作が反映されないので、どこまでの操作が受け付けられたかわからなくなってしまう。サーバーのレスポンスなのか、機器側の問題なのかはわからないが、この点は改善点と感じた。

 ただし、基本的なレスポンスは良く、リモコンのカーソルキーの操作という操作体系もシンプルでこなれていると思う。これまでデータ放送を使っていた人が戸惑うような部分は特に無い。

番組表から番組情報を確認
過去30日分と、未来7日分の番組情報をチェックできる
番組の再放送情報も
過去の放送番組の情報を確認できる

 番組表は、前後の日時のデータも多いため、いろいろ活用幅がありそうだが、残念ながら、現時点ではここから録画予約を行なったり、NHKオンデマンドの番組購入を行なうことはできない。

 秋以降には、放送に連動したコンテンツのVOD配信(無料)などは計画しているという。ここから「NHKオンデマンドで過去番組を購入/視聴できれば便利」と思うのだが、現時点ではできない。NHKでも将来的には、NHKオンデマンドなどへのリンクを入れ、過去番組表から有料で見逃し番組の視聴といったことも想定しているとのこと。

 ただし、現在は「放送事業とNHKオンデマンドは会計分離をし、別区分で運営する」ことが定められているという法的問題と、現在のNHK Hybridcastに課金/決済機能が無いことなどが課題となっているという。

ネット活用サービスらしい「スクロールニュース」

 「ビジネス」は、株価情報や為替をチェックできる機能。「TOPIX」や「日経平均」などの株式指数などがチェックできるもので、なかなか便利。画面を縮小せず、常に画面にオーバーレイして表示することも可能だ。

ビジネスで株価情報などをチェック
海外市場や為替情報も
海外市場

 スポーツは、プロ野球や、米メジャーリーグ(MLB)、Jリーグなどの最新の試合結果や順位表などを一覧で確認できるもの。機能はシンプルだが、見やすくちょっと結果が知りたい時には重宝しそうだ。また、NHKの今後のスポーツ(プロ野球、MLB、Jリーグ)の放送予定も確認できる。

スポーツ
放送予定や、プロ野球、MLB、Jリーグ情報を集約
MLBアメリカンリーグ東地区の順位表
Jリーグの結果

 「気象」は天気情報などがチェックできるもの。週間天気などが分かるほか、台風情報などもチェックできる。

気象
明日の天気や地域選択、実況など用意
あなたの街の天気
台風の進路予測
スクロールニュース。最下段にニュースを横スクロールで表示

 NHK Hybridcastならではの、特徴的な機能といえるのが、「スクロールニュース」だ。番組の最下部に小さくニュースの見出しを横スクロールで表示するもので、気になったニュースがあれば、カーソルキーで選択することで、全文を読むことができる。

 また、全文表示画面では、次の記事、前の記事への遷移やランキングなどのチェックも可能となっている。スクロールニュースの表示自体は、画面の下、ごく一部だけなので、これは常時表示しておいてもいいだろう。

ニュースを選ぶとサマリーを表示
記事全文も確認できる
ランキング
表示ニュースのジャンル選択も
おすすめの「旬美麗」。サンマの解説

 「おすすめ」では、「旬美麗」と呼ぶ高解像度写真をあつめた独自のコンテンツを提供しており、スライドショー表示などが行なえる。

 「データ放送」は、通常のデータ放送へ移行する機能。Hybridcast対応テレビでは[dボタン]を押すと、Hybridcastが立ち上がってしまう。Hybridcastでは、データ放送とほぼ同等の内容のコンテンツが配信されているが、番組連動型放送など、データ放送のみでしか展開しないコンテンツも想定されるため、こうした切り替え機能を有している。

「データ放送」を押すと、通常のデータ放送を表示
データ放送画面

 Hybridcastで気になるのが録画番組ではどうなるのか? ということ。

 基本的には放送番組のライブ視聴を前提としたサービス。ただ、放送連動番組が本格化すれば、例えばサッカーの試合で、選手の位置や各種情報を表示しながらの、連動放送なども予定されている。こうしたデータは録画後も使いたいものだ。

 NHKによる説明会では、「録画したもので使いたいというニーズを想定して議論はしているが、現時点では保証できないとしかいえない」とのことだった。HDDレコーダで放送波をそのまま録画した場合、放送に連動してサーバーからデータを出力するための情報も記録されているはず。ただし、機器側の対応も必要なほか、いつまでサーバーにデータを保存するかなどの課題もあるという。そのため、保証できず、「基本的にはライブ放送で楽しんで欲しい」とのことだった。

58Z8Xの通常録画番組でdボタンを押すとデータ放送が表示される

 今回は、実際にREGZA Z8Xの録画番組で試してみた。まずはタイムシフトマシン(全6チャンネルの常時記録機能)録画した番組を試したが、dボタンを押しても反応なし。データ放送など関連情報を削除して録画しているようだ。

 一方、通常録画番組については、dボタンを押すと、データ放送が表示されたが、Hybridcastは立ち上がらなかった。通常録画の場合は、データ放送領域もそまま記録しているためと思われるが、いずれにしろ現時点では録画した番組でHybridcastは体験できない、ということになる。

 今後、番組連動型のサービスが増えた際には、録画番組での対応も望みたいところだ。

わかりやすい新サービス。番組連動型コンテンツの登場に期待

 サービス開始したばかりのHybridcastだが、操作体系がデータ放送を基本としていることもあり、シンプルでわかりやすい。現時点の対応機器は東芝REGZAだけだが、Hybridcastの基盤技術は、HTML5を用いており、IPTVフォーラムで規格化されている。現状多くのテレビメーカーがHTML5ブラウザを搭載しているので、今後も対応テレビは増えると思われる。あわせて、テレビ以外のCATV向けSTBやレコーダでの対応も期待したい。

 なお、現在Hybridcastで表示しているニュースや気象情報などのデータは、実はほとんどの部分をデータ放送と共用している。データ放送は放送波と共に送られるが、それがインターネット経由かつHTMLベースになり、より多くのデータ量を使って美しく表示できるようになったといえる。そのため、番組表のような一部を除けば、機能としてはデータ放送とほぼ同等で、現状のNHK Hybridcastは「リッチかつオーバーレイ表示できるようになったデータ放送」といえなくもない。

 ただし、表示方法が大幅に見直されたことで、見た目の新鮮さは確実に感じられる。また、過去30日/未来7日間の番組表を見ていると、いろいろなサービスや機能強化の可能性がある、と思える。

 もちろんHybridcastの本質は、どういった番組連動コンテンツができるのか、そして他のデバイス連携がどうなっていくのか、というところだろう。その意味では今秋以降の本格サービス次第ではある。本格サービス展開を期待するとともに、確かな可能性を感じさせるプラットフォームだけに、NHK以外の放送局の参入も希望したい。2013年のNHK技研公開では、WOWOWやフジテレビ、日本テレビ、TBSなども関連サービスを提案していたが、NHK以外の各社にも放送通信連動の新しい可能性を見せて欲しいところだ。

(臼田勤哉)