レビュー

ボーズ対抗? ソニーの新Bluetoothスピーカー「SRS-X5」を聴く

ソニーのBluetoothスピーカー「SRS-X5」

 ソニーが2月15日から発売を開始したBluetoothスピーカー「SRS-X5」は、片手で持てるコンパクトさながら、デジタルアンプ「S-Master」を搭載するなど音質にこだわったモデルだ。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は23,000円前後。その価格とサイズを見ると、市場で人気のボーズ「SoundLink Mini(22,800円)」のライバル機になりそうだ。

 そこで、ライバル機との比較も含め、「SRS-X5」の音質に迫ってみる。

シンプルな外観と使い勝手

 SRS-X5のカラーはブラック、ホワイト、レッドの3色。今回はブラックをお借りした。

 デザインは非常にシンプルで、“横に長い箱”だ。外形寸法は221×51×118mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.2kg。手にすると程よい重さで高級感があるが、男性であれば片手で鷲掴みして簡単に持ち運べるだろう。

「SRS-X5」ブラックモデルの正面
側面はヘアライン仕上げ
カラーはブラック、ホワイト、レッドの3色

 天面はクリアパーツ、側面はヘアライン加工されたメタル風のパーツでシンプルだが高級感がある。前面と背面にはパンチングのグリルが配置されており、ユニットはよく見えない。中には前面に向けて38mmフルレンジ×2、58mmサブウーファ×1の2.1chスピーカーを内蔵している。また、背面にはパッシブラジエータ×2で低域を増強している。

操作パネルは天面に用意
片手で持てるサイズ
内部。正面に2基のフルレンジユニット。背面に2基のパッシブラジエータ

 デジタルアンプ「S-Master」も搭載。出力はACアダプタ接続時で20W(5W×2ch+10W)、バッテリ駆動時は8W(1W×2ch+6W)となる。再生周波数帯域60Hz〜20kHzだ。ソニーお馴染みの機能だが、高域補間などを行なう「DSEE」、独自の高音質化技術「ClearAudio+」も装備している。

【訂正】
 記事初出時に、20Wの出力部分に「ポータブルのBluetoothスピーカーとしては必要十分」と記載しておりましたが、20W出力はACアダプタ接続時でした。お詫びして訂正いたします。(2014年2月21日)

 Bluetooth Ver.2.1+EDRに準拠し、対応プロファイルはA2DP、AVRCP、HFP、HSP。コーデックはSBC、AAC、aptXをサポート。NFCにも対応し、天面にセンサーを搭載。NFC対応スマートフォンなどとワンタッチでペアリングできる。コーデックを含め、Bluetoothまわりの対応はパーフェクトと言っていいだろう。

 また、背面にステレオミニのアナログ入力も装備。Bluetooth非対応の機器とも連携できる。

背面。アナログ入力や「おすそわけ充電」用USB端子を備えている

 電源は付属のACアダプタを用いるほか、リチウムイオンバッテリも内蔵。約8時間再生できる。消費電力は26W(AC駆動時)だ。

 ユニークなのは、USB端子も備え、内蔵バッテリからスマートフォンやタブレットに充電する「おすそわけ充電」が可能な事。外出先でスマホのバッテリが無くなった時に、モバイルバッテリとしても使えるわけだ。徒歩&電車での旅行に1.2kgはちょっと重いが、車で出かける時に持っていけば、外部バッテリとしても重宝しそうだ。

NFC対応でワンタッチペアリング

 デザインがシンプルなだけあり、操作も簡単。天面にボタンは集約されており、電源、通話用、ボリューム、音響効果をかけるSOUNDボタン、アナログ入力への切り替えボタンなどを備えている。電源と通話ボタン以外はタッチパネルタイプで、軽く触れるだけで操作できる。

 Bluetoothボタンを長押しするとペアリングモードになる。だが、NFC対応のスマートフォンであれば、天面の左側にあるNFCマークに近付けるだけでペアリングが可能。特にマニュアルなどを見なくても扱えるだろう。

NFCマークも天面に
対応スマホとワンタッチペアリング

ワイドレンジかつ素直なサウンド

 さっそくスマートフォンのXperia Z1とペアリング。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」楽曲を再生してみた。なお、今回の試聴は置き場所を変えながら行なったので、バッテリ駆動で音を聴いている。

 Bluetoothスピーカーは、サイズが小さいものは低音が出なかったり、逆に大きなサイズでは出過ぎてボンボンと派手な音になってしまったりと、極端なモデルが多い。だが、X5の音は非常に素直だ。

 一聴して感じるのは、低域から高域まで、無理なくキッチリ出ているワイドレンジさだ。バランスの面では低域がちょっと強めに演出されているが、Bluetoothスピーカーとしてはニュートラルな部類で、ソニーらしい真面目なサウンドだ。

 特筆すべきは、ボリュームを上げても高域が濁らない事。筐体の剛性が低いと、プラスチックだったり、金属だったり、筐体が鳴いた音で再生音に色がつくが、X5の場合はそのような事が無く、キッチリと対策がとられていると感じる。部屋に音が充満するようなボリュームでも、音像はクッキリとしてブレない。

 低域はややパワフル寄りだが、ボンついたり、膨らみ過ぎたりはせず、節度がある。ボリュームを上げると胃に「ドスドス」と響くような、量感のある低音が感じられ、コンパクトな筐体から、よくこれだけの迫力が出せるなと感心する。

 ただ、音の広がりはそれほどでもない。スピーカーの周囲にサウンドステージが限定されており、真正面や、やや横から聴く分には問題ないが、部屋片隅に置いて、歩きまわりながらBGM的な聴き方をするという感じではない。

 そこで、天面にある「SOUND」ボタンを押すと、音がガラリと変化。音場が一気に拡大し、筐体サイズの横に2倍くらい離れた場所まで広がるようになる。左右だけでなく、高さも出る。ヴォーカルや楽器の音像が上空に打ち上げられるのだ。スピーカーが机の上、見下ろす位置にあるのに、音楽を聴いていると音像につられて目線が上を向いてしまう。このモードでは、スピーカーがどこにあるかをあまり気にせず使える。BGM的な聴き方にもマッチする。床など、低い位置に置かなければならない時にも重宝しそうだ。

 また、音が広がり、ダイナミックに展開するため、スマートフォンでYouTubeにアクセスし、アクション映画の予告編を再生すると、通常モードよりもドラマチックに楽しめる。ゲームをプレイする時なども、SOUNDモードをONにした方が気分が盛り上がりそうだ。

 ただ、このモードをONにすると、音の輪郭がクッキリとする反面、高域のエッジがキツめになる。スピーカーと正対して、じっくり音楽を楽しみたい時にはOFFにした方が、音質としてはニュートラルだ。

ライバル機と比較

BOSE「SoundLink Mini」

 ライバル機のBOSE「SoundLink Mini」と比べると、価格は同程度だが、サイズはかなり違う。SoundLink Miniは180×59×51mm(幅×奥行き×高さ)、重量は655gであり、X5(221×51×118mm/約1.2kg)と比べると高さは半分以下だ。横幅や奥行きはそこまで違わないので、専有面積は同じようなものだが、見た目の小ささは「SoundLink Mini」の方が圧倒的に上。重さも約半分なので、より手軽に持ち運べる。

左が「SRS-X5」、右が「SoundLink Mini」
「SoundLink Mini」の方が背が低い

 「これだけ小さいのだから、音は負けてしまうだろうな」と思いがちだが、その予想を良い意味で裏切ってくれるのがSoundLink Miniの凄いところだ。この小さな筐体から想像できないほど、量感のある中低域が「グォーン」と吹き出し、設置した机にビリビリと振動が伝わってくる。

 配置の仕方に違いはあるが、このスピーカーもX5と同様に、前面に左右各1基のユニットを内蔵し、その背後にパッシブラジエータを2基配置している。口径は小さいが、強力な磁気回路でパワフルに駆動しているのが特徴であり、驚くような低音再生能力を支えている。ドスドスと切り込むような低域には深さもあり、沈み込みはX5より少し深いとすら感じる。

 この中低域に負けじと、高域も鋭く突き抜ける。ニュートラルな音とはちょっと違い、筐体やグリルによるものと思われる金属質の鳴きが乗っているが、それが爽やかさを演出しており、ともすればモコモコしがちな中低域とのバランスがとれている。

 だが、しばらく聴いていて「このサイズでこの低音!」という驚きが薄れてくると、全体バランスの偏りが気になってくる。SoundLink Miniはいわゆる“ドンシャリ”系のバランスで、低域や高域はパワフルだが、その間にあるハズの音が、両者にかき消されて聴き取れない。

 例えば「Best of My Love」ではアコースティックベースの「グォーン」という低域と、ヴォーカルの声はキッチリ聴こえるが、その背後でパーカッションが奏でる「パコ、カコ」という音が問題だ。X5ではしっかり再生されているが、SoundLink Miniではほとんど聴こえない。「パーカッションが鳴っているはずだ」とわかって聴いているので、かろうじて「パ」の音は聴こえるが、その後はパワフルな中低域に完全に埋もれてしまっているようだ。

 試しに、音楽を再生しているプレーヤー側にイコライザがあったので500Hzや250Hzあたりを思い切って下げてみると、過多気味だった中低域の膨らみがスッキリして、かなりバランスの良い音になり、「パコ、カコ」も聴こえてくる。元の派手目なサウンドも心地良く、わかりやすいのだが、味の濃い食べ物が続くと飽きてくる。バランスの良いX5に切り替えると、元の音楽の細かな描写や旨味が感じとれる。高域のナチュラルさもX5の方が上手だ。

上位モデル「SRS-X7」の音は?

上位モデル「SRS-X7」

 なお、「SRS-X5」には上位モデルも存在する。DLNAやAirPlayに対応した、一回り大きな「SRS-X7」(実売33,000円前後)と、1BOXタイプで最高音質を目指したというハイレゾ対応最上位モデル「SRS-X9」(実売6万円前後)だ。

 今回は「X7」もお借りし、X5も比較してみた。スペック面では、総合出力が20W(X5)から32W(X7)とアップしている(いずれもACアダプタ接続時/X7のバッテリ駆動時の出力は3W×2ch+6W)。周波数帯域も60Hz〜20kHz(X5)から、50Hz〜22kHz(X7)と、よりワイドレンジになっている。サイズも300×60×132mm(幅×奥行き×高さ)で、X5よりも一回り大きい。重さは1.9kgだ。

 実際に聴き比べてもスペック通りで、特に低域の沈み込みがX5よりも深く、「SoundLink Mini」も超える。筐体サイズが大きいので当然ではあるが、“小さいながら頑張ってワイドレンジな音を出すX5”と比べ、X7には余裕が感じられ、音場の空気感も聴き取れるようになる。搭載ユニットも46mmフルレンジ×2、62mmサブウーファの2.1chでX5より大きく、パッシブラジエータも搭載する。

 X7が再生するスケール感のあるサウンドは、ポータブルスピーカーのX5ではなかなか出せない魅力だ。しかし、より大きく、重量も約2kgあるので、手軽に設置場所を変更するという使い方よりも、リビングや書斎など、決まった場所で利用する製品になるだろう。前述の通り、IEEE 802.11b/gの無線LANとEthernetを装備し、DLNAやAirPlayにも対応しているので、据置オーディオ機器的な使い方も可能だ。ハイレゾには非対応だが、非圧縮で16bit/48kHzまでのFLACやWAVファイルは再生可能。ハイレゾ対応の「SRS-X9」と比べると、X7は据え置きながらも、よりカジュアルな使い方がメインという立ち位置になるだろう。

上位モデル「SRS-X7」
手前が「SRS-X5」、奥が「SRS-X7」
「SRS-X7」の背面。無線LAN用アンテナを搭載している

飽きのこない正統派な音質

 SoundLink Miniは「このサイズでこの低音」という驚きを楽しみつつ、ちょっとした隙間にも設置できる“小ささ”が最大の魅力と言えるだろう。頻繁に置き場所を変えたり、持参して出先でも楽しみたい場合は、この小ささは大きな魅力だ。

 逆に、そこまで小ささにこだわらず、飽きのこない正統派な音質を重視するのであれば「SRS-X5」を選ぶと良いだろう。どちらもBluetooth以外にアナログ音声入力も備えているが、X5はNFC対応や広がりを出すサウンドモードなど、機能面では一歩リードしている。このあたりも購入時の判断材料となるだろう。

ル「SoundLink Bluetooth Mobile speaker II」

 なお、ボーズは2月14日に「ボーズBluetoothスピーカー史上最高のパフォーマンスを誇る」とする新モデル「SoundLink Bluetooth Mobile speaker II」をリリースした。外形寸法は256×48×132mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.37kgと、X5(221×51×118mm/約1.2kg)と比べると横幅や奥行きが若干大きいが、似たようなスケールだ。ただ、実売23,000円前後のX5に対し、「SoundLink Bluetooth Mobile speaker II」は31,500円と、価格としてはライバルと言うより上位モデルで、「X7」のライバルと言えそうだ。

 スマートフォンの普及により、市場が拡大しているBluetoothスピーカー。付加機能で差別化する製品と共に、純粋な音質を追求する製品の今後にも注目したい。

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(山崎健太郎)