レビュー

DSD対応NAS「RockDisk Next」でハイレゾ再生お手軽入門

AVアンプ「DN2030」とスマホで快適にDSDネットワーク再生

アイ・オー・データのNAS「RockDisk Next」(左)と、ソニーのAVアンプ「STR-DN2030」(右)

 2月18日に掲載した「これから始める“ハイレゾ”超入門」でも紹介しているように、各社からハイレゾ対応の製品が数多く登場している。USB DACやステレオアンプ、ポータブルアンプ、ヘッドフォン、スピーカーなど単品の製品をひとつずつ揃えていくのも楽しいが、一方で、より少ない初期投資で長く楽しみたいという人も多いだろう。

 そこで、楽曲ファイルを貯めるNAS(LAN HDD)と、再生機器としてAVアンプのエントリー機種を用意。これら2つのハイレゾ対応機器を使って、手持ちのスピーカーでハイレゾのネットワーク再生を始めてみる。使用したのは、アイ・オー・データ機器が“挑戦者”ブランドで展開するNAS「RockDisk Next」(2TBモデル)と、ソニーの7.1ch対応AVアンプ「STR-DN2030」だ。これら2つをそれぞれの直販で購入すると、RockDisk Nextが17,800円、STR-DN2030が59,800円。これで手持ちのスピーカーやLAN環境を使って、DSDを含むハイレゾのネットワーク再生が行なえる。

より低価格でハイレゾフル対応になる組み合わせ

 RockDisc Nextが“ハイレゾフル対応NAS”と言える理由は、DSDファイルのネットワーク配信に対応しているからだ。他社にもDSD対応NASは存在するが、RockDisc Nextが現状で最安のDSD対応モデルとなっている。一般的に、NASからのネットワークオーディオ再生といえば、現状ではDLNA/UPnPやiTunesサーバーがほとんどだと思うが、DLNAの規格上はDSDをサポートしていない。NASでもDSDを配信用ファイルと認識せず、ネットワークプレーヤー側からも見えないので再生できないのだ。

 そこで、アイ・オー・データは、DLNA上でDSD(dsf/dff)のファイルサーブ機能を独自で実装。WAVやFLACなどのハイレゾ音源にも対応しており、ファイルの種類を気にせず使える。なお、RockDisk Nextのページには、動作確認済みの再生機器が掲載されており、今回使うAVアンプの「STR-DN2030」もこれに含まれている。

RockDisc Next
背面
作りのしっかりしたEthernetケーブルも付属する
STR-DN2030

 STR-DN2030は、マルチチャンネルのホームシアタースピーカーを鳴らせるAVアンプであるだけでなく、エントリーモデルながらDSDを含む楽曲や動画のDLNAネットワーク再生にも対応。2012年発売のモデルだが、2月6日にもバージョンアップが行なわれてHDMI 2.0(4K/60pパススルー)に対応するなど、現行モデルとして十分なスペックを備えている。音楽配信サービスのMusic Unlimitedやベルリン・フィル デジタル・コンサートホール、映像配信のVideo Unlimited対応などを含め、ネットワーク接続でフル機能が活かせる製品だ。

 現在、パソコンやスマホ、コンポなど主に機器単体で音楽を聴いている人は、「NASでネットワークオーディオ」と聞くと、ハードルが高いと思っているかもしれない。今回の2機種を選んだもう一つの理由は、ネットワークの知識があまり無くても簡単に使い始められるという点。導入までの流れと、ハイレゾの気軽な楽しみ方を紹介していこう。

Webブラウザで簡単にNASを初期設定

 最初に、ハイレゾ再生開始までの今回の流れを簡単にまとめると下記のようになる。

  1. パソコンで配信サイトなどからハイレゾ楽曲を購入
  2. NAS(RockDisk Next)を家のネットワークに接続、パソコンから楽曲をコピーして保存
  3. AVアンプ(STR-DN2030)を設置。スピーカーやネットワーク接続など初期設定
  4. STR-DN2030からRockDisk Nextを検出して再生

 DSD楽曲は、ハイレゾ対応の音楽配信サイト「e-onkyo music」や「OTOTOY」で購入できる。DSD以外にも、CDを超える24bit/96kHz FLACなどのハイレゾ音源は、レーベルゲートの「mora」や、ビクターエンタテインメントの「VICTOR STUDIO HD-Music.」(DSDも配信予定)、クリプトンの「HQM STORE」、エムティーアイの「music.jp STORE」などでダウンロード販売されている。このほかにも、海外では「HDtracks」や「Linn Records」、「2L music store」などの配信サイトがある。

 クラシックやジャズだけでなく、ポップスやロック、最近はアニメ楽曲も強化しているe-onkyo musicや、メジャー楽曲だけでなくインディーズやライブ盤なども充実している独自のセレクトが魅力のOTOTOYなど、サービスによって楽曲ラインナップはさまざま。好きな楽曲などに合わせて購入サイトを使い分けるといいだろう。

WebブラウザでのiSharingログイン画面

 NASの初期設定については順を追って説明するが、結論から言うと簡単な数ステップで導入が完了する。アイ・オーの「挑戦者」というブランドは、名称こそ上級者向けのように見える(かつては無保証/非サポートの低価格ブランドとして展開していた)が、実際は詳細なPDFマニュアルがサイト内で公開され、FAQページや、ユーザー同士のBBSなども用意。製品に添付された紙のユーザーズガイドは簡単な内容だが、WebサイトのPDFマニュアルの方がページ内のテキスト検索もできて実は便利だ。電話サポート/1年保証も受けられる。

 RockDisk Next本体の端子やボタンは少なく、Ethernet端子を家のルーターなどにつないで、電源ケーブルをコンセントに挿すと自動で起動。設定はLAN内のパソコンから、Webブラウザで行なう。ブラウザのURL欄に「http://myisharing.com/」を入力すると「個人クラウドを探す」というページが表示。ここにRockDisk NextのMACアドレス(本体に記載されている)を入力すると、仮想デスクトップのようなアイコンが並んだ設定画面に移る。初期のログインユーザー名/パスワードは「admin」で、これらはセキュリティを考えて変更しておくといいだろう。

初期設定のユーザー名/パスワードを入力
ログイン後に表示される画面

 設定の前に必要なのが本体ファームウェアのアップデート。インターネット経由で最新バージョンの「20131121」(記事執筆時点)に更新する必要がある。オンラインでアップデートできない場合、手動更新用のファームもRockDisk Nextのサイトで公開している。また、最新ファームにアップデートした上で、メディアサーバー機能に関するアップデートも行なう。アップデート用のファイルは、同じくRockDisk Nextのサイトでダウンロード可能。先ほどのWebブラウザ画面上の右下にある歯車アイコン「プリファレンス」内にある「ファームウェア」項目から適用する。

 Windows PCから手持ちの楽曲を転送する場合に必要なのは共有設定。「プリファレンス」から、「アカウント」を選び、そこに、接続したいPCのユーザー名を新規に追加。「新規」ボタンを押して、Windowsのユーザーアカウントとパスワードを入力して「保存」すると、共有のためのアカウントが作成される。その後、同じプリファレンスのメニューから「SAMBA」の項目で「Sambaサービスを有効にする」のチェックボックスをONにする。後で音楽を再生するために「メディアサーバー」項目から、「メディアサーバーサービスを有効にする」もONにしておく必要がある。

ネットワークのホスト名。これがNASの名称として共有するPCやプレーヤーなどに表示される

 その後、Windows PCの「マイネットワーク」に、新しいホスト名(初期の名称は「isharing」)が表示されていれば成功。表示されていない場合も、フォルダ上部のアドレス入力で「\\isharing」を入力してEnterすればアクセスできるはずだ。なお、「isharing」という名称は、先ほどのプリファレンス設定で「ネットワーク」の項目を選ぶと変更できる(今回はホスト名を「avwatch」に変更した)。作成された共有フォルダ内に「Music」や「Videos」などのフォルダがあるので、Musicフォルダに楽曲をコピーしておけば、NAS側の準備は完了だ。なお、RockDisk Nextの前面にあるUSB端子へ、USBメモリからダイレクトコピーすることも可能だ。Macでの共有方法は割愛するが、製品サイトのPDFマニュアルに画像入りで詳細な手順が記載されている。

 このWeb画面からは、リモートでファイル共有の操作も可能。音楽ファイル以外に文書などの共有にも便利な機能が用意されている。さらに、iPhone/iPadやAndroid端末からファイルにアクセスできるアプリ「iSharing」も公開されている。本稿の趣旨とは外れるので詳細には触れないが、豊富な機能が用意されているので、音楽以外のファイルも管理したい人はチェックしてみると良さそうだ。

Windows共有のためにSAMBAをONにする
DLNA再生用に、メディアサーバーもONに
ホスト名に設定していた「avwatch」のフォルダ内

スマホ操作が快適。AVアンプながら高いオーディオ性能

STR-DN2030

 今回、アンプ兼プレーヤーとして使う「STR-DN2030」の設定はさらに簡単。使用するスピーカーを接続して、Ethernet端子を家のルーターなどにつなぐ。メニュー画面を表示するため、テレビなどへの映像出力も合わせて行なう。最近のAVアンプはGUI画面の分かりやすいものが増えているが、ソニーのAVアンプもとても分かりやすい。アイコンやクロスメディアバーのようなGUIを使っており、同社テレビなどに近い操作性。動作にもたつくことも少ない。Ethernetは4系統でスイッチングハブとしても利用可能だ。

 電源ONでEasy Setupという初期設定画面に移行するので、映像出力したテレビなどの画面指示に従って、スピーカーやネットワークを設定。今回はフロントスピーカーのみの接続だったが、付属マイクを使ったスピーカーの自動音場補正などを含めても、設置を含め10分ちょっとで設定が完了した。使用したスピーカーはELAC「FS247」で、フロント/サラウンドバックのアンプを使ってバイアンプ駆動している。

初期設定のスピーカー選択画面。イラストを見て接続方法などを選ぶ
ホームメニュー

 ネットワークオーディオ再生の操作は付属リモコンから行なえるが、iOS/Androidアプリの「ES Remote」が分かりやすくて便利。AVアンプのメニュー画面とほぼ同じデザインのホーム画面から「Listen」→「Music Servers」を選び、先ほど設定したRockDisk Nextの名称(初期はiSharing)を指定。アルバム/アーティストごとの表示や、全曲表示などが可能だ。イコライザやサウンドモード切替といった操作もこのアプリから行なえる。

本体背面
付属リモコン
アプリ「ES Remote」の画面
RockDisk Nextの楽曲をSTR-DN2030で再生、スピーカーはFS247

 さっそく、DSDを含む楽曲をいくつか再生してみた。STR-DN2030はAVアンプとはいえ、オーディオ再生として十分な力を持っており、単に「再生できる」というのとはひと味違う。

 今回はライブ盤を中心に聴いたが、レコーディングからミックスまでDSDで行なったという類家心平のアルバム「4 AM」の1曲目「KAGARI」は、小さなライブハウスで行なったという凝縮した熱気がトランペットから伝わってくる。Suaraの公開レコーディング「DSD Live session」から「POWDER SNOW」を再生すると、ボーカルに厚みがあり、スピーカーで聴いているとは思えないほど声を近くに感じられた。

 スタジオ録りに比べ広い音場を楽しめるライブ音源でも、それによって音のエネルギーが損なわれるのではなく、重厚な音が畳み掛けるように押し寄せ、曲に深く没頭できた。これはハイレゾならではの大きな魅力だと言える。本物のライブにはかなわないとはいえ、より“生”に近い響きを家のスピーカーで楽しめるのは気持ちが良い。ライブ盤ではない音源でも、例えば沖仁「Concierto」の「炎〜フエゴ〜(ブレリア)」は、フラメンコギターの超絶テクニックから生まれる明瞭な輪郭の音、それが流れるように次々と飛び込んでくるダイナミックな動きを再現。楽器そのものの音を贅沢に味わえた。

ES Remoteのアンプメニュー画面

 STR-DN2030はプレーヤーとしての操作性も不満は無く、ネットワークで再生していることをあまり意識せず、iPhoneの画面で選曲して再生する操作は快適だ。アンプの初期設定には映像出力が必要だったが、音楽再生はスマホアプリさえ立ち上げておけば、テレビを消しても何も問題無く使える。iPhoneの画面を下に向けて置くことでとっさにミュートしたり、シェイクして曲送りするといった操作も可能だ。

 楽曲転送時に、1アルバムを1フォルダで転送した場合、再生はアルバム単位あるいは全曲まとめて行なう形となる。試しに、普段使っている音楽管理ソフトの「Media Go」で作成したM3U形式のプレイリストファイルを、そのままRockDisk NextのMusicフォルダにコピーしたところ、対象の楽曲をプレイリスト再生できた。また、スマホアプリで任意のアルバムだけを選択して一覧表示/再生できる「My Albums」というメニューも用意している(再生はアルバム単位)。

 一つ気になったのは、今回試した限りでは、DSDの2.8MHz楽曲がDN2030の画面上は「DSD 5.6MHz」と誤って表示されていた点。また、手持ちの5.6MHz楽曲は再生できず、「ファイルが壊れているか、サポートしていない音楽ファイルです」と表示された。RockDisk Nextのサイトによれば、STR-DN2030で動作確認しているのは2.8MHzまでとのことだった。なお、同サイトには5.6MHzで動作確認済みのプレーヤー/アンプの情報も案内している。

Listenメニューから、Music Serverを選択。ホスト名として設定した「avwatch」がRockDisk Nextだ
アルバム別表示
再生画面
M3Uプレイリストも読み込めた
My Albumsの追加画面
選んだアルバムを一覧表示したところ
画面を伏せた時の操作を割り当てる画面
本体を振って操作することも可能

“スピーカーで聴くハイレゾ”の第一歩にも

 ハイレゾ楽曲をこれから楽しみたいという人だけでなく、既にPCとUSB DAC + ヘッドフォンでハイレゾ楽曲を聴いている人にも、より本格的にハイレゾ対応を進めるための最初のステップとして、DSD対応NASは十分におすすめできる。多くの楽曲を保存する母艦としてNASを活用し、プレーヤーは今回のようなAVアンプをリビングに、個室にはPCをプレーヤーとしてUSB DACやヘッドフォンを組み合わせるといった使い分けも可能。こうした自由な再生ができるのもネットワークならではだ。

 楽曲のハイレゾ対応は、まだまだ拡大途中で、手持ちの楽曲は圧縮音源やWAVなどが混在しているという人も少なくないと思う。ただ、今の段階からDSD化されている楽曲を一つのNASにまとめて管理しておけば、今後楽曲が増えてきた場合もハイレゾ移行がスムーズに行なえるだろう。ハイレゾと一口に言ってもDSDやFLAC、WAVとフォーマットの種類は色々だが、RockDisk Nextは今のハイレゾフォーマットをすべてカバーしている。DSD楽曲は、WAVや圧縮音源に比べると高音質な分ファイルサイズも大きく、1曲で数百MBに達する場合が多いため、できればストレージも大容量のモデルを選んでおきたい。

 なお、STR-DN2030の設計者である金井隆氏による「かないまるのホームページ」では、RockDisk Nextをより高音質で楽しむための詳細なテクニックも掲載されている。高音質をさらに突きつめたい人は、このサイトをチェックするといいだろう。

 STR-DN2030はオーディオ再生機としても十分な性能を備えることが確認できたほか、アプリを使った操作性の高さも魅力的。手持ちのスピーカーを活かしてハイレゾ対応をしたい人におすすめできるだけでなく、いまハイレゾをPC/ポータブルプレーヤーとヘッドフォンで聴いているという人も、最近充実してきた小型ブックシェルフスピーカーなどを使って、より広いサウンドステージでハイレゾを楽しむ第一歩とするのにも良さそうだ。もちろん、AVアンプとしてBlu-rayの映画鑑賞などのマルチチャンネル環境を構築できる。RockDisk NextとSTR-DN2030は、手頃な価格でハイレゾを長く楽しめる組み合わせと言えるだろう。

(協力:アイ・オー・データ機器)

(中林暁)