レビュー

Wi-Fi設定不要でレコーダ番組を楽しむ“お風呂テレビ”

簡単設定のツインバード「LINK ZABADY VW-J109S」を試す

LINK ZABADY VW-J109S

 リビングに設置したBlu-rayレコーダなどで録画した番組を、スマートフォン/タブレットとネットワークを組み合わせることで、寝室、書斎、さらには屋外でも視聴できる環境が整ってきた。しかし、そのためにはDLNA/DTCP-IPなどに対応したハードウェアとソフトウェアが必要。さらに、機器間の組み合わせによっては接続がうまくいかないこともあり、利用者にはある程度のネットワーク関連のスキルが求められる。

 今回紹介するツインバードの防水ワイヤレスモニター「LINK ZABADY VW-J109S」は、無線LANなどの接続設定が必要なく、レコーダから出力された映像をワイヤレスで視聴できる製品だ。モニター部分は防水仕様で、浴室やキッチンなどでリビングのレコーダ映像を視聴することを想定している。価格はオープンプライスで、ヨドバシ.comやJoshin webなどでは4万円を切る価格となっている(記事掲載の4月3日時点)。

 ツインバードは「『見たいもの』 と『見る場所』 の制限がなくなるので、もっと自由に映像を楽しめる」としているが、実際に“お風呂テレビ”として簡単に映像を楽しめるのか、自宅に設置して試した。

防水モニターと送信機でWi-Fi不要のワイヤレステレビ

モニター部を手に持ったところ

 まず、本体構成を見てみよう。この製品は10.1型液晶を採用したモニター部とレコーダとテレビの間に設置する送信部で構成。モニターの解像度は1,024×600ドットでIPX7の防水規格に対応。あくまで屋内での利用を想定したモニターのため、外形寸法は約260×57×160mm(幅×奥行き×高さ)と、一般的なタブレットと比べると一回り大きい。質量は450gと一般的だが、本体が大きいためか手に持つと重く感じた。入力切替やボリューム増減など、電源ボタン以外はすべてタッチ式となっている。

 付属するリモコンもIPX7相当の防水仕様。さまざまな機器の操作ができるようボタン数は非常に多いが、ボタン配置の分かりやすさにより、使い勝手はよかった。

10.1型「LINK ZABADY VW-J109S」のモニター部(充電スタンドに設置)
液晶テレビとBDレコーダの間に設置する送信機。IEEE 802.11nで入力映像を伝送できる。

 ディスプレイを設置するスタンドは充電台も兼ねており、寝室などでは設置したままで視聴できる。視聴スタイルに応じて、13段階に角度を調整することが可能。実測値では、最小傾斜時で約78度、最大傾斜時で約47.7度だった。なお、スタンドは防水仕様ではないため、浴室など水場で利用する時は、本体のみを持ち出す。本体背面に装備するスタンドを起こすことで、単体で立てかけることができ、内蔵バッテリで約5時間の視聴が可能。HDMIケーブル1本とAVコントローラ2本も付属。HDMIケーブルを買い足す必要がないのはうれしい。

付属リモコン
HDMIケーブル1本とAVコントローラが2本付属
モニター部の背面。防水仕様のため、コネクター部やバッテリー部はしっかりとロックされていた。
右背面のロックを外すとイヤフォンジャックと電源コネクタが登場。寝室など、水回り以外のシーンで利用できる
背面下部の両サイドのPushボタンを押すことでスタンドが飛び出す
同様に上部には収納式のハンドルも用意する
モニター部を設置する、拡張性ができる充電スタンドの最小傾斜時
最大傾斜時
送信機を設置。HDMIケーブル2本を接続する関係でテレビの近くに置かざるを得ず、置き場所はちょっと悩ましかった

 続いて送信機。本体背面にはHDMIの入力と出力端子を各1系統、コンポジット映像/アナログ音声の入出力端子を各1系統装備しており、BDレコーダからHDMIで入力し、テレビにHDMI出力することで、リビングのテレビにもそのまま、BDレコーダの映像をスルーで映し出せる。

 モニター部への映像配信は、5GHzのIEEE 802.11n規格によるワイヤレス伝送を採用。とはいえ、この無線部分は、あらかじめ送信機とモニター部1対1で接続されており、ユーザーがネットワーク接続の操作をする必要はない。送信機本体の正面には、映像の伝送レートの選択スイッチと、通信チャンネルの変更スイッチを装備。家庭内のWi-Fi(無線LAN)ルーターと電波が干渉する場合などには、通信チャンネルを変更することで改善できるようになっている。今回試した限りでは、伝送レートの設定でほとんど差異は実感できなかった

 前述したように2本のHDMIケーブルでテレビとBDレコーダの間に送信機を配置し、さらにBDレコーダをワイヤレスで操作するためのAVコントローラ(IRケーブル)をBDレコーダのリモコン受光部にセットする。この状態で送信機とモニターそれぞれの電源を入れることで、BDレコーダからの映像をモニター上に映し出せた。

 最初はBDレコーダを設置したリビング上で設定をしていたが、ワイヤレスで伝送される映像と液晶テレビに映し出される映像にあるズレはほんのわずかで、同じ空間で見ていない限り、遅延には気づけないレベルだと感じた。仕様上の伝送距離は、直線で約30m。

背面にはHDMI入出力、AV入出力端子をそれぞれ用意。BDレコーダとDVDプレーヤーなど、2台の機器も同時に接続できる
伝送レートと通信チャンネルの設定スイッチを用意。電波干渉がある場合などに利用できる機能
BDレコーダのリモコン受光部にあたるようにAVコントローラを設置する

簡単なリモコン登録で、離れた部屋からもスムーズに操作

 モニター部には無事映像が映し出せたが、このままでは単なるワイヤレスモニターに過ぎない。「VW-J109S」が便利なのはちゃんと離れた部屋からBDレコーダをコントロールできることにある。

 そのために行なうのがリモコンの登録だ。「VW-J109」では、大手メーカー製のレコーダ/プレーヤーのリモコン信号がプリセットで登録されている。筆者宅のリビングでは現在、2010年モデルのパナソニックの「ブルーレイディーガ DMR-BWT2100」をメインとして使っているが、付属リモコン上で、パナソニックのBDレコーダ用のプリセットコードを入力すると、すぐに操作できるようになった。このプリセットは複数用意されており、大手メーカーの主要製品なら簡単に使えるようだ。

 リモコンの登録は付属リモコンのAV1ボタンを押しながら、10字キーでプリセット番号を押すだけと簡単。複雑な設定をすることなく、スムーズに使い始められたことには非常に好感が持てた。プリセット登録で設定できない場合は、リモコン同士を向かい合わせて、信号を学習させることもできる。

リモコンの登録は付属リモコンのAV1ボタンを押しながら、10字キーでプリセット番号を押す
レコーダのリモコン信号を、LINK ZABADYのリモコンに記憶できる

解像感は低くなるものの画質は十分

BWT2100の録画一覧を表示したところ。細かな文字もしっかりと読める

 接続、リモコンの設定が完了したところで画質をチェックしてみた。

 「VW-J109」では、送信機に電源を入れると自動的に映像をワイヤレス伝送用に変換する。マニュアルによると、「送信機の電源をオンにすると自動的に映像解像度は720pに音声フォーマットは最高リニアPCM(2ch)に変換される」とのこと。地上デジタル放送のコンテンツを見た限りでは、テレビ画面に比べると解像度の低さはわかるが、映像視聴ができなくなるほどではなく、無線電波の環境がよい場所では、映像の遅延やコマ落ちなどもほとんど無かった。

 筆者宅は2階にリビングがあり、仕事部屋や浴室は1階にあるのだが、2階に送信機を設置した状態で、1階の仕事場でも問題なくテレビ映像が視聴できた。液晶モニターの解像度がそもそも1,024×600ドットしかないことと、リビングのテレビとは異なり、この手のポータブルモニターは視聴距離が近くなることもあり、映像から精細感はなくなったが、細かな文字を表示する電子番組表や録画リストの文字も十分に読むことができ、実用性は非常に高いと感じられた。なお、録画番組だけでなく、放送中の番組も視聴可能だった。

 音質に関してはスピーカーを背面に搭載していることもあり、広がり感はあるものの、直進性は乏しく、音の勢いは感じられなかった。また、中域はそれなりに厚みがあり、セリフやボーカル、バラエティ番組のしゃべり声などは聞き取りやすかった。しかし、低音域、高音域はそれなりの印象だ。

レコーダに取り込んだHD映像を視聴したところ、解像感が下がる以外の破綻はほとんどなかった
プリセット登録したリモコンから番組表を開き、録画予約もできた

 しかし、「VW-J109」にはひとつ注意したい点がある。HDMIケーブルで送信機を中継する形で、映像を伝送するため、送信機の電源を入れるとHDMI出力したテレビにも、720pに変換されたものが表示されるのだ。下の画面が送信機の電源をオフにした状態とオンにした状態の録画一覧画面の一部アップ。解像度が落ちたことで、全体に文字が太くなり「マル秘」などは文字がつぶれかけているのがわかる。

 筆者宅のテレビは東芝のREGZA「42Z7」を利用しているが、視聴距離2m未満では、明らかに映像から解像感が失われたのがわかった。特にBSデジタルの番組など、元々の映像の解像度が高い番組やEPG(電子番組表)など文字の多い画面では、その差が明らかに感じられた。もっと大きな画面の液晶テレビを使っている場合、「VW-J109」を利用することによる解像度の低下はよりハッキリとするだろう。

左が送信機の電源をオフにした状態。右がオンにした状態。明らかに解像度が変わっているのがわかる

 とはいえ、画質を重視するコンテンツでなければそれほど気にならないとも思えた。さらに、「VW-J109」は主要BDレコーダなどに搭載するネットワーク視聴機能とは異なり、あくまで出力している番組をワイヤレスで伝送するもの。つまり、リビングのテレビとモニターは同じ映像が表示される。このため、別の空間で「VW-J109」を介してBDレコーダの映像を見ているときに、同時にリビングでも映像を見るという使い方はあまり想定されていないのではないだろうか。なお、HDMI接続したままでも送信機の電源を切れば、テレビにスルーする映像は720pに変換されず元の解像度で表示できた。

 どちらかといえば、個人的にはテレビ出力映像の劣化よりも、ワイヤレスでは送信機の電源をオンにできないことが残念だった。

nasne + PS3接続でお風呂テレビを実現

 「VW-J109」の映像の安定性は、ワイヤレス伝送に5GHz帯を利用していることにある。前述の通り、2階のリビングから1階の仕事部屋への映像伝送は遅延もなく、非常に安定していた。そこで、今度は浴室での視聴を試した。

 筆者宅の浴室は仕事部屋の横にあるのだが、洗面所の途中までは映像が表示されるものの、浴室に入った瞬間に、音声は大丈夫だったが映像はストップしてしまった。送信機からの伝送レートを下げる機能を利用してみたが、残念ながら状態は改善しなかった。リビングのレコーダからだと、せっかくの防水機能を活かして、お風呂に入りながらBDレコーダの録画番組を見るといった使い方はできなかった。

PlayStation3と送信機をHDMI接続してモニタに映像を表示。PS3のコントローラでゲームもプレイできた

 そこで、仕事部屋にあるPlayStation 3に「VW-J109」を接続してみた。これなら、ネットワーク内にあるnasneで録画した番組が視聴できるはずだ。想定通り、PS3の画面を映し出すことができ、torneアプリを経由してnasneの録画番組を視聴できた。さらにDVDの再生もできたほか、PlayStation 3のDLNA機能を利用することで、リビングのBDレコーダの録画番組など、他のネットワーク機器に保存した映像も視聴できた。

浴室でnasne/PS3の映像を視聴しているところ

 ただし、PS3のワイヤレスコントローラはBluetooth接続のため、IRケーブルとLINK ZABADYのリモコンではコントロールできない。このため、PS3のコントローラなどで操作を完了してから浴室に入るという手順が必要だった。今回は試していないが、もしサードパーティ製のPS3用赤外線リモコンを、LINK ZABADYの付属リモコンに学習させることができれば、BDレコーダなどと同様の使い方はできるだろう。

 今回、リビングのBDレコーダ映像の浴室での視聴がスムーズにできなかったのは残念だが、これはあくまで筆者の自宅の環境によるもの。同じフロアにリビングと浴室がある家なら、問題なく視聴できる可能性は大きいだろう。

 最近では、DLNA/DTCP-IPにより、レコーダとスマホ/タブレットで同様のワイヤレス視聴のできる機器は充実している。一方で、LINK ZABADY VW-J109SはWi-Fiルーターや複雑なネットワーク設定も必要なく、浴室などリビング以外でも手軽にリモートテレビ視聴ができる機器として、非常に有効といえそうだ。

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コヤマタカヒロ