レビュー

BAイヤフォン到達点!? “神様”が手掛けた12ドライバ「Roxanne Universal Fit」を聴く

 いつの間にかイヤフォン=カナル型と言っても良いほどに市場を席巻したカナル型イヤフォン。搭載しているユニットも、従来のダイナミック型から、バランスド・アーマチュア(BA)型が多くなり、新しいイヤフォンが登場すると「BAを何個搭載しているか?」が話題に。そうした個数競争も落ち着いてくると、近頃はダイナミック型+BAのハイブリッド型などの派生型も登場している。

 そんな中、純粋なBAイヤフォンを追求し、BAユニットを片側になんと12個、左右合計で24個も搭載したイヤフォンが登場した。JH Audioの「Roxanne Universal Fit」だ。

JH Audioの「Roxanne Universal Fit」

 5月から発売されており、BAイヤフォンの進化の究極形と言ってもいい超弩級モデル。価格はオープンプライスだが、実売は138,700円前後だ。10万円を超えるイヤフォンは、おいそれとは買えないので、恐らく多くの人が「スゴそうだけど、やっぱり高いなぁ」と思うだろう。だがこのイヤフォン、詳しく見ていくと、注目すべき点がいくつもある要注目モデルなのだ。

カスタムイヤフォン「THE SIRENS SERIES - Roxanne」

 まず価格。単体で見るともちろん安くはないが、見方を変えると印象が変わる。すでにご存知の方もいると思うが、同じ“Roxanne”(ロクサーヌ)という名前のイヤフォンが、2月から発売されている。耳型をとってオーダーメイドで作るカスタムイヤフォン「THE SIRENS SERIES - Roxanne」だ。このカスタムイヤフォンを、イヤーピースを取り付けるカタチの、誰でも装着できる“普通のイヤフォン”にしたユニバーサルモデルが、今回取り上げる「Roxanne Universal Fit」なのだ。

 注目すべきは2機種の価格差、カスタム版は212,222円と、まさに“究極モデル”という値段なのだが、ユニバーサル版は前述の通り138,700円前後、約74,000円ほども安いのだ。さらにこのユニバーサル版、搭載しているBAの数や音質は、カスタム版とほぼ同じ。作っている工場も、作り方もほぼ同じというから、かかっているコストはほとんど同じハズ。つまり結構“お買い得”なモデルでもあるのだ。

 また、“ユニバーサルモデルである事”自体も注目ポイントだ。JH Audioはこれまでカスタムイヤフォンを手がけ、ユニバーサルイヤフォンを作っていなかった。そのため、カスタムイヤフォンに強い一部の専門店や、専門店が主催するイベントなどでしか試聴ができず、特に地方に住んでいる人は、どんな音なのか気になっても気軽に聴く事ができなかった。しかし、ユニバーサルモデルは家電量販店などでも広く販売されるため、近くのショップで気軽に試聴できる可能性が高まる事になる。つまり「Roxanne Universal Fit」は、「これがJH Audioの音です」という看板のような役割も担う、重要なモデルというわけだ。

そもそもJH Audioとは?

 先程からJH Audio、JH Audioと繰り返しているが、どんなメーカーか知らない、あまり聞いた事がないという人も多いだろう。だが、メーカー名に馴染みがないだけで、背景を知ると、恐らく大半の人が“知っている”はずだ。簡単に紹介しよう。

「第4回ポータブルオーディオフェスティバル2013 in 秋葉原」(ポタフェス)会場でのジェリー・ハービー氏

 JH Audioの“JH“は、ジェリー・ハービーという人の頭文字だ。このジェリー氏、「ジャンプ」などで知られるアメリカのロックバンド、ヴァン・ヘイレンの音響エンジニアだった人物。バンドのドラマーであるアレックス・ヴァン・ヘイレン氏が、音が充満するステージ上で、自分が演奏するドラムの音を確実にモニタリングする方法はないかと、'95年にジェリー氏に相談。ジェリー氏がカスタムイヤフォンを作って提供し、その評判を聞きつけた他のミュージシャンにも広まっていった。

 そんなジェリー氏が立ち上げたイヤフォンメーカーがご存知、Ultimate Ears(UE)。UEと言えば、BAドライバや、カナル型イヤフォンの普及にも大きく貢献した大ヒットモデル「Triple.Fi 10 pro」を連想する人も多いと思うが、実はあれもジェリー氏が手がけた製品だ。

米国にあるJH Audioの前に立つジェリー・ハービー氏

 なお、UEの初期には、お馴染みのWestoneもUEに協力していたほか、ジェリー氏はShureの初期製品の開発にも参加するなど、今日のBAイヤフォン市場に多大な貢献をしている人物だ。それゆえ“イヤモニターの神様”とも呼ばれ、「ヘッドフォン祭」のようなイベントに彼が来場すると、サインを頼むマニアの姿も珍しくない。

 JH Audioは、そんなジェリー氏がUEを跡にして立ち上げた会社だ。社名に自分の名前が入っている事からわかるように、彼が作りたいイヤフォンを形にしていくメーカーと言える。家族経営に近く、米国の本社で開発から生産までを行なっており、少人数で、ほぼ手作業の生産しているという。

カラフルかつユニークな印象の社内。自由な雰囲気が伺える
開発から生産までを米国本社で行なっている。カスタムイヤフォンはほぼ手作業で作られていくものだが、Roxanne Universal Fitも同様に手作業で作られる。そのため、一度に大量の生産はできないという。製品というより、“作品”というイメージだ

 こうした背景を踏まえて「Roxanne Universal Fit」を見てみると、昔から第一線で活躍してきたエンジニアのジェリー氏が、現在でも第一線でチャレンジを続け、片側12個という、ある意味で突き抜けた仕様のイヤフォンを完成させた、ちょっと“熱い”イヤフォンに見えてくる。

12個のBAを内包するハウジング。装着感は?

 外観を見ていこう。12個ものBAが内蔵されているだけあり、ハウジングは通常のカナル型イヤフォンより一回り大きい。丸っこいため、“太ったイヤフォン”という印象だ。

シルバーのロゴマークがデザインアクセント
うっすら内部が見える。多数のユニットがギッチリ入っている

 カスタムイヤフォンの場合は、ユーザーの耳穴に完全にフィットするため、筐体がちょっと大きかろうが、装着してしまえば抜ける事はまずない。“サザエの壺焼き”を想像するとおわかりいただけるだろう。

 イヤーピースで耳穴に挿入する「Roxanne Universal Fit」の場合、この筐体の大きさは、装着感にマイナスになるのでは……と、心配しながら装着したところ、思っていたよりも抜けやすくはない。指で触ってみると、耳からハウジングは出っ張っているのだが、耳穴に合うサイズのイヤーピースを選び、キチンと挿入すると、あまり不安定感は無い。ケーブルが耳かけタイプなのだが、そこに使われている形状記憶タイプのモールが結構“固め”で、イヤフォン全体を耳側へとキッチリ抑えてくれているようだ。

 まあ、小ぶりのイヤフォンと比べれば“収まりの良さ”は落ちるのだが、日常生活で抜けやすくてイライラするほどではない。12個もユニットが入っているにしては、上手く作られていると言えるだろう。

耳かけのモール部分が強めで、イヤフォンを頭にシッカリ押し付けている
装着イメージ

低音をユーザーが調整可能

 外観を見ていこう。ハウジングは半透明で、黒っぽいカラーなので内部はうっすら見える程度だが、それでもギッチリとBAユニットが内蔵されているのがわかる。ハウジング形状やフェイスプレートの感じは、まさにカスタムイヤフォンのそれで、ミュージシャンが使う機材という質実剛健なプロっぽい雰囲気が漂っていてカッコイイ。手作りされている事も含め、ほとんどカスタムイヤフォンと言ってもいいようなモデルだが、メーカーでは“セミカスタム”と呼んでいるそうだ。

 内部には独自のミニクワッドドライバを採用。前述の通り、低域×4、中域×4、高域×4の12個、3ウェイ構成だ。独自技術としては、各周波数帯域の位相を極限まで正確に制御するという「FreqPhase」も投入されている。

 ケーブルにも注目。途中に、黒いユニットがある。詳しい仕様は明らかにされていないが、一見リモコンのように見えるこのユニットに、クロスオーバーネットワークが入っているようだ。また、ユニットには白いダイヤルが2つ装備されている。これを付属のドライバで回すと、抵抗値が変化し、L/Rの低域をユーザーが調整できるようになっている。

ケーブル途中のユニット。ドライバでダイヤルを回すと低音をコントロールできる
JH-3A with JH16PRO

 カスタムイヤモニに詳しい人はご存知だと思うが、JH Audioは以前「JH-3A with JH16 PRO」というカスタムイヤフォンを発売しており、このモデルでネットワークをイヤフォンから分離、イヤフォンとセットになったポータブルアンプ側にネットワークを搭載していた。

 詳しい仕様はわからないので想像だが、従来は別筐体で行なっていたネットワークやタイムアライメントの制御を、Roxanneではケーブル途中の小さなユニットで実現できるようになったということだろう。

 ケーブルは着脱可能で、端子は独自のスクリューロック式。中を見ると、4ピンの端子がある。これは、低域、中域、高域、そしてグラウンドだそうだ。

ケーブルはスクリューロック式。4ピンの端子は低域、中域、高域、グラウンドだ

 良く見るとイヤフォン側に1カ所突起があり、ケーブル側にはその突起に合わせた切り欠きがあり、合わせると正しい向きで接続できるようになっている。固定はスクリュー式で強固な結合が可能。安心感のある機構ではあるが、この価格帯のイヤフォンであれば、リケーブルでいろいろなケーブルと組み合わせてみたいと考える人もいるだろう。できればMMCXなど、汎用の端子にしてほしかった……のだが、ケーブル途中のユニットも必要なので、そもそも汎用のケーブルは使えない構造だ。

 ただ、そこはJH Audio、ユーザーの要望はしっかり理解しているようで、この独自端子やケーブル途中のユニットをパーツセットのようにして、ケーブルメーカーなどに提供する予定があるようだ。恐らくしばらくすれば、各社から“Roxanne用ケーブル”がいろいろと登場してくることだろう。

 再生周波数特性は10Hz〜23kHz。入力感度 119dB@1mW。インピーダンスは15Ω。遮音性 は-26dBだ。アルミニウムとカーボンを使ったキャリングケース「DiamonDyzed Aluminum Round IEM Case」やイヤーチップなどが付属する。

パッケージ
アルミニウムとカーボンを使ったキャリングケース「DiamonDyzed Aluminum Round IEM Case」

複雑な構造を感じさせない、まとまりの良い音

イヤーピースを外したところ

 ハイエンドイヤフォンという事で、組み合わせにはハイレゾポータブルプレーヤーのAK240を使用した。

 低域の調整位置は、バランスが良好な10時あたりに設定。AK240側のボリュームを40程度に設定、大きくも小さくもない、普通の音量で192kHz/24bitの「イーグルス/ホテルカリフォルニア」を聴いてみる。

 12ユニットも入っているので、個々のユニットからの音の張り出しが強いと、ガチャガチャしたサウンドになってしまうのでは? と心配しながら装着したが、演奏がスタートすると、そんな心配は消し飛ぶ。ブワッと広大な音場が広がり、そこに極めてバランスの良いワイドレンジなサウンドが展開。複雑な内部構造のイヤフォンにも関わらず、一聴した瞬間に“まとまりの良さ”が感じられるのが凄い。

 低域は地面に響くような深さと重さがありつつ、BAらしく、ハイスピードで鮮明さも兼ね備えている。余分な膨らみを抑え、タイトでありながらも、音に奥行きがある。分厚いベースの響きに立体感と凄みがある。中高域もそれに負けない明瞭さを備えており、上から下まで高い分解能が貫かれている。

 特定の帯域だけが弱かったり、音が引っ込む部分が無いため、例えばヴォーカル、ベース、ギター、ドラムなど、楽器のどれかに意識を集中させると、カメラのレンズのように、その楽器にフォーカスして音を聴く事ができる。情報量の多さと音像の分離、低域のタイトさなどが無ければこの感覚はなかなか得られない。ダイナミック型イヤフォンではかなり難しい。BAイヤフォンであっても、レンジが狭かったり、低域のパワーが不足していたり、逆に低域が膨らみ過ぎて不明瞭な音では、フォーカスの自由度は生まれない。高い再生能力を持つハイエンドイヤフォンだからこその楽しみと言えるだろう。

AK240と組み合わせて試聴

 興味深いのは、これだけクリアに個々の音が、力強く再生されているにも関わらず、音像の位置関係や、ステージの広さ、奥行きがしっかり表現され、まとまりが良い事。ドラムの音が背後にあり、ギターがその前と、ステージ上の音の三次元的な重なりがキチンと聴き取れる。単に音が強く飛び出すだけでなく、その背後にある響きなどもおろそかにしていない証拠と言えるだろう。このボリューム値では、高域にも質感がしっかり感じられる。

 AK240のボリュームを50、55と上げていくと、ヴォーカルやギターなど、個々の音の出方がより強くなる。だが、低域の響きがボワッと肥大化したり、高域が破綻したりはしない。個々の音の明瞭度は低下せず、音の勢いだけが増していくので、音楽がパワフルになり、解像度も高いので清々しく、聴いていて気持ちが良い。

 例えば3分20秒あたりに入るエレキギターの短いフレーズ。ボリューム値40時では、広い音場に楽器が並び、そこからエレキの音が上空へと響き、虚空に消えるまで伸びていく様子が見える。ボリュームを50に設定すると、楽器から出る音はそれぞれ強くなり、音像と音像の隙間はそれなりに埋まって“ミッチリ”感は出てくるのだが、エレキの音に他の音がかぶさったり、空間全体に響きが充満して閉塞感を感じたりはしない。エレキの響きが虚空に消える様はこの状態でもキチンと味わえる。不要共振が抑えられていると共に、位相をそろえるなど、しっかりとした対策がとられているようだ。

 この特徴は「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生しても同じで、パーカッションやドラムの音が極めて鋭く、トランジェントも良好だ。まったりと、静かに聴きたい曲なのでAK240のボリューム値を40程度に落としてみると、音量が大きかった時と比べ、楽器の“主張具合”のバランスがあまり崩れない。ボリュームを下げると、急激に低音が弱くなり、中高域ばかり耳に入るイヤフォンがあるが、このイヤフォンの場合は、小音量時でもバランス良好。大事な帯域がキッチリ聴き取れるので、不必要に音量を上げる必要はない。

 なお、このイヤフォンを手がけたジェリー氏は、前述の通り、ヴァン・ヘイレンの音響エンジニアを担当。今でも開発時に、ヴァン・ヘイレンの楽曲を使っているという。そこで、192kHz/24bitの「ジャンプ」を再生すると、なるほど、確かに相性抜群。冒頭から低域のキレの良さと、音の響きが広がる範囲がニヤニヤしてしまうほど気持ち良い。高域の抜けも抜群で、外で歩きながら聴いているとつい空を見上げたくなる。「Eruption」は、冒頭からエレキギターのソロで、尋常ではない“速弾き”が披露されるが、描写が細かいRoxanneでは、速弾きの音がくっつかず、ほぐれて、キレ良く描写されるので、演奏テクニックの“凄さ”がよりわかる。かといって、線が細いだけの音ではなく、続くベースの「ヴォー」と唸る音には圧倒的な厚みがある。隙のないイヤフォンだ。

特別にバランスケーブルでも試聴

 なお、Roxanneには「AK240」用にオリジナルチューニングを施した「Astell&Kern AKR03」というバージョンもアユートから発売されている。これはRoxanneをベースに、AK240用にチューニングしつつ、AKシリーズのバランス駆動で使う2.5mm 4極のバランスケーブルも同梱した特別モデルだ。

 既に売り切れているが、特別に2.5mm 4極のバランスケーブルもお借りできたので、AK240に接続してバランス駆動の音も試聴してみた。

 一般的に、イヤフォン/ヘッドフォンをバランス駆動すると、音場が広くなったり、駆動力が上がり、中低域の押し出しが強くなるなどの効果がある。Roxanneも基本的には同じ効果がある。ただ、音場の奥行き方向が期待していたよりも深くならない。おそらく、音の出方が強くなる事で、音像と音像の隙間、背後の空間描写があまり聴き取れなくなるのかもしれない。ヴァン・ヘイレンのようなパワフルなロックをガンガン楽しみたいという時は、バランス接続も良いが、「Best Of My Love」のようなシンプルな編成の楽曲では、アンバランスケーブルの方が音のまとまりと、空間描写が整理されており、聴き取りやすいと感じた。このあたりは、今後サードパーティー製のバランスケーブルなどが登場すると、また変わってくるだろう。

使いこなしで音を理想へと追い込む

 このように標準(?)状態で高いクオリティを持つイヤフォンだが、ユーザーがその再生音をカスタマイズできるのも特徴だ。

 前述のように、ケーブル途中に備えたユニットのダイヤルを回すと、低音をコントロールできる。具体的には時計回しに回すと、低音の量感や勢いがアップしていく。

 低音増強機能を聞くと、「バスブースト」的なものを連想する人が多いだろう。ついつい「低音が単純に肥大化して、ボワボワな音になるだけじゃないの?」と疑ってかかってしまう。だが、このイヤフォンの場合、前述の解像度、分解能の高さをある程度維持したまま、低域の勢いが増していくので、非常に“使える”機能になっている。

 かなりダイヤルを回しても、音が破綻しない。これは恐らく、“ダイヤルを回した後の音”が、このイヤフォンの“素の音”で、抵抗を通す事で低域の量を抑えているからだろう。つまり低音を後から増幅したり、付け足しているのではなく、もともと沢山出ているものを、絞って聴いており、好みに合わせてそれを“開放”するイメージだ。それゆえ、低域を変化させても、音色など、全体のイメージは変化しない。

 実用的かつ楽しい機能だが、1つ注意点もある。小さなダイヤルを回して設定するので、左右の設定がピッタリ一致させる事が重要だ。耳で聴きながら、優しく、少しずつ回していくといい。力を入れると、調節ネジの頭をなめてしまう可能性もある。調整にドライバーも必要なので、例えば出先などで聴く曲に合わせて、ササッと設定変更という使い方は難しいだろう。家を出る前に、今日の気分に合わせて低音量をコントロールという感じの使い方になりそうだ。

 調整はこれだけではない。横からみるとわかるのだが、このイヤフォン、ノズル部分がかなり長めになっている。これにより、イヤーピースを装着する位置を、ユーザーが調節できるのだ。イヤフォンを耳穴に深くいれるか、浅めに入れるかで特に高域の特性が変化するが、イヤーピースの取り付け位置自体を工夫する事で、より装着しやすく、なおかつ音が好みに近いイヤーピースの取り付け場所を追い込めるわけだ。細かい話ではあるが、こういう“ユーザーが工夫できる範囲”が設けられているのは、イヤフォンマニア心をくすぐられる。

BAイヤフォンの1つの到達点

AK120IIと接続したところ

 実売138,700円前後と、高価な製品ではあるが、そこから出てくる音や、12ドライバにも関わらずまとまりの良い音に仕上げた技術力など、詳しく聴いていくと、完成度の高さに感心。それほど高価だと感じなくなる。むしろマルチウェイBAイヤフォンの一つの到達点と言える、ハイエンド機にしては、リーズナブルと言えるかもしれない。

 もちろん、装着感の良さ、遮音性の高さなどの面でも究極を求めるのであれば、より高価なカスタムイヤフォンという選択になるだろう。しかし、音質を重視しつつも、予算を抑えたいという場合は「Roxanne Universal Fit」という選択はアリだ。浮いたお金でハイレゾポータブルプレーヤーを買うというのもアリだろう。

 また、カスタムの場合は耳型を採取し、それを送付して、時間をかけて作ってもらって……と、いろいろと手間がかかる。店先で試聴し、気に入ったらパッと買える手軽さも、ユニバーサルモデルの醍醐味と言えるだろう。冒頭で書いたように、カスタムイヤフォンを手がけてきたJH Audioの音が、都会の専門店だけでなく、近くの量販店などで気軽に体験できるようになる事が、一番のポイントだ。“イヤモニターの神様”が手がけた最新モデルがどんな音なのか、ぜひ体験してみて欲しい。

 (協力:ミックスウェーブ)

(山崎健太郎)