レビュー

ついに登場。nasne純正スマホ視聴アプリ「torne mobile」

PS用の機能と完成度がスマホに。TV SideViewとの違いは?

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のテレビソリューション「torne」が5周年を迎えた3月18日、torneの名を冠したアプリケーション「torne mobile」が新たに登場した。mobileの名の通り、iOSやAndroid搭載のスマートフォン・タブレットからnasneの操作、番組視聴に加え、PS4のリモート操作なども可能になっている。アプリ自体は無料だが、録画番組を視聴するには追加500円が必要だ。

torne mobile

 nasneに対応した視聴アプリとしては、これまでデジオンの「DiXiM」、パケットビデオの「Twonky Beam」(Twonky)、アルファシステムズの「Media Link Player for DTV」(MLPlayer)といったサードパーティーに加え、同じグループであるソニーの「TV SideView」という4つのアプリが存在。今回のtorne mobile登場により、実に5種類ものアプリが存在することになる。

nasneと、既存アプリのTV SideView

 とはいえ以前のレビュー(TV SideViewTV SideView/nasne ACCESS/torne PS Vita)でもお伝えした通り、番組予約やリモート視聴にも対応している点で、他のアプリと比べてTV SideViewは頭ひとつ抜き出た存在だった。実際、筆者もすべてのアプリを購入しているものの、最近ではTV SideViewがほぼnasne専用アプリといっていいほど当たり前の使用環境になっている。

 TV SideView一強とも言える筆者の環境において、いよいよ登場したSCEの公式アプリはTV SideViewを置き換えるほどの使い勝手をもたらすのだろうか。今回のレビューではtorne mobileの機能や使用感をレビューしつつ、TV SideViewとの違いも比較していきたい。

nasneとtonre mobile

iOS版とAndroid版の使い勝手はほぼ共通。UIはスマートフォン向けに大幅変更

 torne mobileは前述の通りiOS版とAndroid版の2種類がリリースされているが、基本的な機能に違いはない。「戻る」ボタンがあるAndroidに対し、同等の機能がないiOSでは「戻る」の代わりに「×」ボタンが用意されており、操作がやや異なるもののそれ以外の機能は同等だ。今回のレビューでは特に明記がない限りiPhone 5sで行なっている。

 iOSとAndroidは決済プラットフォームが異なるため、異なるOSで新たに追加機能を購入する際は再度課金が必要になる。iOSまたはAndroidのどちらかしか使わないのであれば500円でいいが、両方のOSを使う人は合計で1,000円の追加課金が必要だ。

 初期設定は地域選択、性別、生年、ニックネームなどを登録が必要。PS向けのtorneであればサインインにPlayStation Networkを利用していたためこれらの情報は再入力不要だったが、torne mobileでは端末ごと個別にこれらの設定を行なう必要がある。

 初期設定の後は同一ネットワーク内に存在するnasneを自動で検出。すでにPS3やPS4などでnasneを使用済みであれば、チャンネルスキャンなど設定済みの項目はスキップ可能だ。

初期設定画面
地域選択
生年や性別などの初期設定が完了すると、続いてnasneの設定へ
ネットワーク内のnasneを登録
チャンネル設定済みであれば、スキャンはスキップできる
地デジのチャンネルリスト
BSの有効/無効を選択
110度CSの有効/無効を選択
設定完了

 PS3やPS4、PS Vitaで共通だったリング上のインターフェイスは、スマートフォン対応ということでアイコンが2列に表示するインターフェイスとなった。torneに慣れている身からすると最初は驚きを感じたが、スマートフォンであればタッチでリングを回す操作は逆に不便そうだ。実際に使ってみても違和感なく操作できた。

torne mobileのトップメニュー画面。PS向けのリングインターフェイスから打って変わってシンプルな2列構成
初回は機能を選択するたびにガイドが表示され、オンラインマニュアルで操作を確認できる
オンラインマニュアル

 基本的な機能はこれまでのtorneとほとんど変わらない。「TV」で放送中番組をリアルタイムに視聴でき、「GUIDE」で番組表から録画番組を予約、「VIDEO」で録画番組を視聴する。録画番組は初期設定では視聴できず追加機能を購入する必要があるが、1分間だけ無料で視聴できるお試し機能が用意されており、番組視聴時に表示される追加機能の購入ダイアログで「いいえ」を選択すると無料体験が可能になる。まずはこの機能で正しく視聴できているかを確認した上で追加機能を購入するといいだろう。

番組視聴には有料機能の購入が必要
購入のガイドに「いいえ」を選択すると無料体験が選択できる
購入前にも無料体験の機能が案内される

 視聴再生機能は前述のダイアログのほか、カートアイコンの「STORE」から購入可能。購入はiOSならApp Store、AndroidならGoogle Playを利用し、それぞれのプラットフォームで決済を行なう。視聴再生機能は同じOSであれば別の端末でtorne mobileを使用する際も「購入情報の復旧」を選択することで使用可能だ。

視聴再生機能の購入画面。このほか画面をブラックデザインに変更できる「トルネ・ブラック」も300円で購入できる
決済はOSごとのプラットフォームを利用。iOSはApp Storeで購入する

番組表は滑らかな表示で操作も快適。録画予約番組の同期が魅力

 番組表はPS3/PS4の画面とほぼ同じ構成になっており使い勝手はほとんど変わらない。驚くのはその操作性で、PS3/PS4と同じような感覚で滑らかに動かせる。TV SideViewも速いとまではいわないものの十分に快適だと思っていたのだが、torne mobileを使ってしまうとTV SideViewの操作がもたついて感じてしまうほどだ。

nasne mobileの番組表

 録画番組が同期されているのも嬉しい。TV SideViewでは、録画予約する時に初めて同じ時間帯で重複していることがわかるが、nasne mobileは録画済み番組が色表示されているの予約操作のまえに重複を把握できる。TV SideViewで録画しようと思った番組の時間帯が、すでに別の局の番組を録画予約済みだったというシチュエーションは何度も遭遇しており、そうした面倒が事前になくてすむのは細かいながらも嬉しいポイントだ。

TV SideViewの番組表。録画予約状況は番組表からはわからない
予約時に初めて同時間帯の重複がわかる

 なお、番組表のサイズは端末の画面サイズによって設定が異なるようで、iPhone 5sでは最大3サイズに対し、第4世代iPadでは最大11サイズから選択できた。文字が小さくなるとアイコンなども小さくなるため操作性も落ちてしまうのだが、画面の大きいタブレットは文字を小さめにしておいたほうが時間や放送局を確認しやすくなるのでおすすめだ。

iPhone 5sの文字サイズ設定は3種類
ipad 4では11種類から選択できる
文字サイズを最小に設定。アイコンも縮小表示される
文字サイズ最小に設定して第4世代iPadで番組表を表示

 該当の番組をタップすると録画設定が表示され、長押しすると番組情報や選局などの操作も選択できる。ダブルタップやピンチ操作で画面の拡大や縮小も可能になっているので、文字サイズを小さめに設定しておき、見たい番組でズームするという使い方もできる。

番組をタップして録画予約

録画番組はシリーズごとに集約。リモート視聴も対応

 録画番組の再生は「VIDEO」から可能。torneを使ったことがあるユーザーであればUIもほぼ共通で、使い方に困ることはないだろう。ドラマやアニメなどはシリーズごと表示が可能で、タップでそれぞれの放送回を表示できるほか、長押しで連続再生も可能だ。

録画番組一覧
ドラマやアニメなどのシリーズをまとめて再生できる

 視聴時は30秒スキップ/15秒戻しやチャプタスキップが可能。画面左側に表示されるアイコンからシーンサーチも利用でき、15秒から5分までの単位で好きなシーンから再生できる。さすがにこちらの処理速度はPS3/PS4と同等とまではいかないものの、長時間の番組で視聴したいシーンを探すのには便利な機能だ。

 なお、開発者インタビューにもある通り、iOSでは現状主音声、副音声の音が同時に出てしまい、主音声のみにすることができない。インタビューではあくまで「最初の公開の状態」と言及があるため、今後の対応を期待したいところだ。

再生画面
横表示にも対応
シーンサーチ
TV SideViewの録画番組は新着順のため、目的のタイトルだけをまとめて見たいときにやや不便

 再生機能では一覧画面が非常に便利。TV SideViewの場合、番組のジャンルごと表示はできるものの、表示は新着順のため、好きなドラマやアニメだけをまとめて見たい、という時は前週まで遡る必要があり、該当の番組を探すのが手間だった。その点、tonre mobileはシリーズごとまとめて表示され、連続再生もできるので、録画しておいたドラマやアニメを一気に見る、という時は非常に重宝する。

 一方で不満を感じたのが、番組の概要を知りたい時だ。PS向けのtorneでは該当の番組にカーソルを合わせると番組の概要が表示され、再生前にどんな番組か分かったのだが、torne mobileでは、タッチすると再生が始まってしまうため、番組を長押しして「番組情報を見る」を選択する必要がある。TV SideViewでは、タッチして番組情報が表示され、そこから再生ボタンを押して視聴を開始するため、番組を再生する前に概要を把握することができた。

バラエティ番組ではタイトルが全く同じ場合、概要がわかりにくい
TV SideViewは再生前に番組概要を確認できる

 細かい違いではあるのだが、ドラマやアニメなどは話数が表示されるからまだいいものの、お笑い番組やバラエティ番組でタイトルがまったく同じ場合は概要がないとどれも同じに見えてしまい、どの番組を見たいのかがわからない。操作の手数は増えてしまうが、タップで概要表示、さらにタップで再生のほうが個人的には使いやすいと感じた。

 nasneの特徴であるリモート視聴も対応。自宅にいるのと変わらない感覚でリモート視聴を利用できる。なお、リモート視聴時の制約はtorne mobileでも変わらず、リモート視聴時は30秒スキップ/15秒戻し、シーンサーチはできるもののチャプタスキップは利用できない。

リモート視聴時はチャプタスキップが利用できない

 リモート視聴は有効期間が3カ月に制限されており、再度ペアリングを行なうことで有効期間を延長する。SCEによれば、「torne mobileは、ホームネットワーク内にnasneを検出する度に更新を自動で行なっている」とのことだ。この仕様であれば、うっかり延長を忘れるということはなさそうだ。

【訂正】
記事初出時に、「ペアリングの延長を忘れないですむようなガイドが欲しい」と記載しておりましたが、「torne mobileをホームネットワーク利用時に自動更新する」という仕様のため、その旨を追記し、記事を修正しました(3月27日19時)。

新たにランキング機能を搭載。公式キャラ「トルネフ」を使ったお遊びも

 番組表や番組視聴はこれまでのtorneと大幅な違いがなかった一方で、番組の検索やリコメンド面では新たにRANKING機能が実装された。これはtorne独自の予約件数を元に人気番組を表示する機能で、これまでのtorneでもSEARCH機能で「トルミル」順にソートすることでほぼ同等の機能が利用できていたものを、わかりやすく別の機能に分類した、という印象だ。

ランキング機能

 ランキングは総合ランキングのほか、「地上アニメ以外」「BS全ジャンル」「CS全ジャンル」というカテゴリでも表示できる。「地上アニメ以外」というのは、よほどtonreのランキングがアニメに偏っているということなのだろう。確かに総合の上位はアニメが占めており、「地上アニメ以外」だとドラマやバラエティがバランスよく並んでいる。

「地上アニメ以外」のランキング表示

 SEARCH機能はトルミルでのソートがなくなったことで、番組を検索するシンプルな機能になっている。検索はキーワードのほか、番組のジャンルや放送局、日付や時間帯、番組種別での絞り込みも可能で、キーワード入力欄の三角アイコンから無料放送や再放送、新番組、最終回といった番組種別で簡単にソートできるようになった。同機能はこれまでのtorneにも実装されていたのだが、番組のキーワード絞り込みからでないとアクセスできないという目立たない位置にあったため、気がつかなかったユーザーも多いだろう。アニメやドラマなど新番組が多数始まる時期には重宝する機能だ。

再放送や新番組、最終回で絞り込める

 番組のリコメンドという点では、PS4からtorneの機能としても搭載されるようになったイメージキャラクター「トルネフ」もtorne mobile用にカスタマイズ。ホーム画面では常に画面の右下にトルネフが表示され、お勧めの番組などを自動で教えてくれるほか、羽のアイコンは「PICKUP」機能になっており、お勧めの番組が一覧で表示される。

画面下部のトルネフをタッチするとお勧め番組や録画状況を教えてくれる

 トルネフを上方向にスワイプすると、新機能「トルネフルーレット」が利用できる。トルネフルーレットは番組視聴には関係ないお遊び機能で、torne mobileの起動やアンケートの回答、ソーシャルメディア投稿などを行なうと貯まるポイントで挑戦できるルーレットゲーム。ルーレットが当たるとトルネフのボイスコレクションを手に入れることができる。

トルネフアンケート
トルネフルーレット

torne PS4のリモコン操作も快適

 torne mobileをtorne PS4のリモコンとして利用できる機能も搭載。なお、torne mobileではSony Entertainment Network(SEN)のアカウント不要で利用できるが、本機能に関してはSENのアカウントでのログインが必要。PS4の設定から「PlayStation App接続設定」を選び、テレビ画面に表示された数字を入力して同一ネットワーク内にあるPS4とペアリングを行なうと、スマートフォンをtorne PS4のリモコンとして利用できる。

SENのアカウントでログイン
PS4の設定からペアリング
画面に表示された数字を入力
リモコン画面

 リモコンは画面下部の四角いエリアでフリック操作を行なうと十字ボタンの役割を果たす。同じエリアをタップして○ボタン、長押しで△ボタン、ダブルタップで□ボタンとなり、×ボタンは左下のアイコンをタップする。

 最初に画面を見たときは機能を無理に詰め込んだ印象を受けたが、操作感はフリックの反応も良く快適。実際に使ってみるとボタン操作もほとんどは○と×のため、画面タップか×ボタンタップとフリックによる十字ボタンだけ使えればほとんどの操作はこなすことができる。

 torne PS4の操作はPS4コントローラのほか、HDMI CEC対応テレビのリモコンでも操作可能だが、前者は使いたい時にバッテリーが切れていることがあり、後者は連続再生など一部使用できない機能もある。リモコンやコントローラが手元に無いときでもスマートフォンから操作できるのは思いのほか便利だ。

公式アプリとして非常に高い完成度。シリーズの連続再生が魅力

 nasne対応のスマートフォンアプリとしては最後発となるtorne mobileだが、満を持してという言葉がしっくりくるほど完成度は高く、細かいところまで作り込まれたアプリという印象だ。特にこれまでPS向けtorneを使っていたユーザーであれば違和感なく使いこなせるだろう。

 機能面でも番組視聴に加えて番組表や録画予約、リモート視聴などほぼすべてに対応しているだけでなく、いずれも非常に使いやすい。予約済み番組の同期や連続視聴など、torneで便利だった機能もほぼ備えており、非常にクオリティの高い仕上がりだ。

 これからnasneのスマートフォンアプリを購入するユーザーであればtorne mobileを選んでおけば問題ないだろう。また、録画番組をドラマやアニメのタイトルごとまとめて見たかった、というユーザーであれば、改めてtorne mobileを購入するのもいい。筆者はまさにこのタイプのユーザーなので、torne mobileの連続再生機能が非常にありがたい。nasneユーザーにはぜひ使ってみて欲しいアプリだ。

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nasne

甲斐祐樹