レビュー

テレビ風に進化した映像見放題サービス「dTV」の実力は?

新STB「dTV」ターミナルとテレビ感覚の「ザッピングUI」

 エイベックス通信放送とNTTドコモが提供する定額制映像配信サービス「dビデオ powered by BeeTV」が、4月22日に「dTV」としてサービスを大幅にリニューアルした。

Nexus 7でdTVを視聴

 dビデオはスマートフォン向けの動画配信サービスとして2011年にサービスを開始、その後PC対応やキャリアフリー化など対象ユーザーを拡大。月額500円(税別)という低価格ながらも12万以上の作品を取り揃えており、現在は460万人の会員を抱える国内最大級の映像配信サービスに成長した。

 4月22日からは名称を「dTV」と変更するとともに、テレビ番組のようなチャンネル構成を意識した「ザッピングUI」を採用し、ユーザーインターフェイスを大幅にリニューアル。さらにテレビ向けのセットトップボックスとして「dTVターミナル」を発売、テレビでの視聴環境を強化するなど、「TV」の名の通りテレビ的なサービスに強化された。早速生まれ変わったdTVを試した。

アプリのアップデートでdTVに。タブレットは現在のところ非対応

対応アプリは「dTV」にリニューアル

 サービス名称は大きく変わったものの、ユーザーの利用方法に変更はない。これまでdビデオを使っていたユーザーは、4月22日のアプリ更新によってアプリがdTVへと変更される。新規ユーザーの場合は新たにIDを取得すればNTTドコモの回線契約がなくても利用可能だ。

 初回設定時はザッピングUIの操作チュートリアルが表示されるほか、ザッピングUIの特徴であるチャンネルや自動再生に関する設定を行なう。設定完了後はdTVの画面が表示され、アプリ自体はログインの必要なく利用可能。実際に動画を視聴する際に初めてdocomo IDを入力することになる。

初回利用時は操作チュートリアルが表示される
チャンネルと自動再生の設定
docomo IDでログイン

 なお、dTVの新ユーザーインターフェイスは現在のところスマートフォンのみのようだ。iPhoneおよびAndroidスマートフォンにインストールした際には新しいインターフェイスで表示されたが、7インチ液晶の「Nexus 7(2013)」ではインターフェイスをスマートフォンとタブレットどちらにするかという選択画面が表示され、タブレットを選ぶとdビデオと同じインターフェイスになった。また、iPadの場合はこうした選択画面もなくdビデオの画面インターフェイスになっている。

Nexus 7(2013)でアクセスするとインターフェイスの選択画面が表示される
スマートフォン画面を選択
タブレット画面を選択。インターフェイスはdビデオのまま

画面構成が大幅に変更。予告編の自動再生など機能も強化

dtvのホーム画面

 新しいインターフェイスはdビデオから引き続き黒を基調としているが、コンテンツの構成が大きく変わった。

 これまでのdビデオではコンテンツが縦に構成されており、映画やテレビといったチャンネルを見るには画面上から下に見ていく必要があった。これに対してdTVは、映画やテレビといったチャンネルは横に配され、画面を横に移動することでチャンネルの移動、縦に移動することで同カテゴリ内の動画を表示する。

 画面下部中央の検索アイコンは作品タイトルや出演者の名前などで検索することが可能。さらに動画の横に表示されるクリップマークをタッチすることで、気になる動画を「Myクリップ」に登録して後から確認できる。Myクリップは画面左下のメニューアイコンからアクセス可能だ。

検索アイコンからタイトルを検索できる
メニュー一覧。Myクリップをここから再生できる

 設定で自動再生をオンにしていると、ホーム画面では動画を表示した際に予告編が自動で再生される。予告編の自動再生はログイン不要のため、まずはアプリをインストールし、どんな動画が楽しめるかを確認してから改めてユーザー登録するということも可能だ。

映画作品の予告編は配給会社のロゴからスタート

 自動再生は面白い機能なのだが、通信状況が悪いと動画の再生が始まるまで待たされてしまうことがあり、テレビと同じ感覚で楽しむのは難しくなる。また、映画の予告編はそのほとんどが配給会社のロゴから始まるため、すぐに作品の内容を確認できず、最初の数秒待たされてしまう。一方、ドラマの予告編はすぐに番組紹介が始まるため番組の内容も把握しやすく気になる番組も多い。細かな違いだが、自動再生は予告編の内容でも差が生まれると感じたし、ザッピングUIにあわせた予告編の出し方などには工夫の余地はありそうだ。

 映画館のように1つのスクリーンを集中して見続ける環境と異なり、スマートフォンの画面は数秒の遅れも待たされた気になってしまう。しかも連続で動画を切り替えていくとその数秒の遅れがさらに大きくなる。予告編を流すというアイディア自体は面白いので、例えば用意されている番組の解説をニコニコ動画風にあわせて表示するなど、スマホ環境にあわせたスタイルにするのもいいかもしれない。

 また、縦表示と横表示でもユーザー体験は大きく異なる。縦表示の場合は動画が縦に複数表示され、一番上の動画のみが自動で再生されるほか、動画の詳細画面では配信中のエピソードや作品情報などが表示される。一方、横表示の場合は1つの動画のみが画面全体に表示され、詳細画面でも番組のタイトル表示と次のエピソードを表示するボタン程度しか表示されない。

縦表示
横表示は動画のみが画面全体に表示される

 利便性だけで言うと縦表示なのだが、他の動画が表示されているとそちらが気になってしまい、せっかく自動再生しても次の作品が画面の下に表示されてあまりザッピング感がない。一方、横表示は常に1つの動画しか表示されないことがテレビの視聴体験に近く、より臨場感を持って動画を楽しめる。

 こうした自動再生以上に便利なのが新しい画面構成だ。dビデオは映画やテレビといったカテゴリを切り替えるたびに読み込みが発生したほか、各カテゴリもさらに「洋画」「アジア映画」といったジャンルを選択しないと動画の一覧も表示されないため、配信されている動画を決め打ちで探す以外の使い方が難しかった。

 新インターフェイスは、起動時のホーム画面も含め常に動画が表示されていてわかりやすく、カテゴリ切り替えのレスポンスも早くなっている。今までのインターフェイスが使いにくかったとも言えるが、新インターフェイスの使い勝手はおおむね良好だ。

視聴動画に応じてお勧めの動画をレコメンド

 動画の詳細画面は画面上部に動画が表示され、タッチですぐに再生可能。画面下部にキーワードや解説、作品情報、ドラマやアニメなどの場合は配信エピソードの一覧が表示されるほか、画面中部にはMyクリップと動画ダウンロードのボタンが、海外作品の場合は画面上部には字幕と吹替の切り替えボタンが表示される。なお、前述の通り横表示の場合は動画のみが画面に表示されるが、字幕と吹替の切替は可能だ。

 動画を再生する際、dビデオではストリーミングかダウンロードを選択してから再生する流れだったが、dTVでは基本的にストリーミングのみとなり、ダウンロードの場合は別画面のダウンロードアイコンを選択する必要がある。また、dビデオでは視聴開始時にストリーミングの画質を3段階から選択できたが、dTVではストリーミング開始時の画質は自動選択になった。なお、横画面の場合はダウンロードアイコンも表示されないため、動画をダウンロードしたい時は縦表示で使うよう注意しよう。

動画の詳細画面
ダウンロードは画質を3種類から選択できる

 再生時は10秒スキップ/10秒戻しや再生、一時停止が可能。ストリーミングで視聴する場合、再生前に選択できない画質も再生中は左下の歯車アイコンから3段階に変更可能だ。また、dビデオでは縦画面で動画のみ表示されていたが、dTVでは動画の再生中にあらすじや解説、作品情報を読むこともできる。

再生中の画面
再生中はストリーミングの画質を変更できる

 インターフェイスの変更はあるものの再生中の機能はdテレビもdTVも大きな違いはないが、動画の再生後に別の動画をおすすめしてくれるのはdTVの特徴だ。すでに視聴した番組からユーザーの嗜好を判断し、まだ視聴していない動画を「あなたにオススメ」内でレコメンドしてくれる。

 試しにいくつか番組を視聴してみたが、「ウルトラマン」を視聴すると「帰ってきたウルトラマン」がレコメンドされるなど同じジャンルの動画が表示された。しかし、利用期間が短いからか、正直なところレコメンドならではの動画に出会えたという経験はまだできていない。

 dTVのレコメンド機能は、内容を示すメタデータ「フィルムメタ」を1,000以上用意し、「フィルムアナリスト」と呼ぶ映像の専門家が分類。それに基づいておすすめしてくる、というもの。ただし、今回レビュー用に試した限りでは、それほど特別な機能には感じなかった。

Android版のみシェア機能を搭載

 個人的には、映画が見たくなるのは、テレビや映画館の予告編も重要だが、友達の間で評判だったり、Web上で話題の作品というのも大きな要因だ。そうした友達間やWebレビューとの連動という点では、Androidアプリにシェア機能がある程度で、まだまだ弱い。好きな映画、思い出の映画を友達で教え合えるような、よりソーシャルなレコメンド機能も今後は期待したいところだ。

 なお、前述のように、スマートフォンではAndroidアプリのみシェア機能が搭載されており、FacebookとTwitterへ動画のリンクを投稿できる。ただし投稿できるのは作品のトップURLのみで、テレビ番組など複数エピソードがある場合もエピソード単位では投稿できない。同じドラマでもエピソードによって面白さやシェアしたい熱量は異なるため、できればエピソードごとのシェアできるよう機能を改善して欲しいと感じた。

dTVに加えてdアニメストアも視聴できる新STB「dTVターミナル」

 dTVへのリニューアルに合わせて発売されたSTBが「dTVターミナル」だ。テレビ向けの製品としては、HDMIスティック型の「dstick」が販売されていたが、dTVは赤外線型の専用リモコンが付属し、Miracastに対応するなど、dstickに比べて機能が強化されている。本体価格は7,538円(税込)で、先着30万人の購入者には500円相当のレンタルクーポンを最大14カ月プレゼントするキャンペーンも実施されている。

dTVターミナル

 本体はAndroidがベースになっており、OSにAndroid 4.2を搭載。ハードウェアスペックはCPUがデュアルコアCPU 1.5GHzのHi3719C、メモリが1GB、ストレージが4GB。インターネット接続は有線LANとIEEE 802.11b/g/nの無線LANに対応するほか、接続インターフェイスとしてHDMIの入出力×1、光デジタル音声出力、USB 2.0、microSDカードスロットを搭載する。

外形寸法は100×100×22mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約214gと小型だ

 dTVの名は冠しているもののdTV専用機器というわけではなく、dTVに加えてdアニメストアの動画も視聴可能。このほか簡易的なYouTube再生機能「お手軽プレイヤー(For YouTube)」、DLNA機能「マイメディア」、対応スマートフォンの画面をdTVターミナル経由でワイヤレスに表示できる「Miracast」などの機能が利用可能だ。

 HDMIが出力だけでなく入力も用意されており、すでに家で使っているレコーダやゲーム機などのHDMI機器を接続すれば、dTVを介してレコーダやゲームの画面をテレビにスルー出力することも可能。テレビのHDMIポートがすでに埋まっていて新しい機器を接続できない、という場合も、dTVを介することでHDMIポートを増やすことなく導入できる。

前面
側面にmicroSD
HDMI入出力を装備し、スルー出力できるのは魅力的だ
USB端子も装備
初回起動時に有線LAN接続か無線LAN接続かを選択

 設定は非常にシンプル。本体のHDMI出力とテレビやディスプレイのHDMI入力を接続し、本体の電源を入れると画面にネットワーク接続の設定画面が表示される。無線LANか有線LANどちらかを選択してインターネットに接続し、本体のアップデートを完了してからdocomo IDを入力するだけ。また、購入前にdocomo IDとパスワードをあらかじめ設定してくれる「docomo ID自動設定」を申し込んでおけば、インターネットに接続するだけでdTVが利用可能になる。

初回起動時に有線LAN接続か無線LAN接続かを選択
docomo IDでログイン

スマートフォンの横表示に近い画面構成

dTVターミナルはテレビにHDMI接続するだけ

 画面構成はスマートフォンの横表示に近く、起動すると「あなたにオススメ」チャンネルの予告編が自動再生される。操作はスマートフォンと異なり、横移動で同じカテゴリ内のコンテンツ、縦移動でカテゴリを切り替える。ホーム画面を押すと画面が切り替わり、コンテンツ一覧やマイページ、検索、Miracastなどの機能が利用可能だ。また、検索ボタンを押すと動画を直接検索できる。

ホーム画面。横方向でチャンネル内のコンテンツ、縦方向でチャンネルの切替
ホームボタンを押すとコンテンツ一覧やマイページが閲覧可能

 操作時のレスポンスは一瞬遅れがあるものの、動画の切り替え程度であればさほど気にならない。dstickでは操作をスマートフォンで行なうためカーソル移動もある程度手元を見る必要があったが、dTVターミナルの専用リモコンは手元を見る必要もなく操作しやすい。一方で、文字入力などカーソル移動が多い場面ではレスポンスの遅れが蓄積することでややもたつきを感じる。この点は文字入力しやすいスマートフォンのほうが使いやすい。

検索ボタンで直接検索画面を表示できる
文字入力はソフトウェアキーボード
五十音順に動画を検索できる

 もっとも、リモコンで文字入力をしないですむような配慮もされており、動画は直接検索だけでなく作品名やキャスト、アーティストの名前一覧から選択することも可能。名前一覧は五十音順に表示されるため、目的の作品が決まっているのであればこちらのほうが操作としては手軽だ。

 再生時はストリーミングのみで、ダウンロードには対応しない。動画を選択するとすぐにストリーミング再生が始まる。再生時は一時停止と早送り/早戻しが可能だが、スマートフォンと異なりスキップ機能は搭載していない。

 また、早送り/早戻し中は3倍速まで速度を変更できるのだが、画面の表示が変わらないため、目的の位置で動画を止めるのが難しい。早送り/早戻しに合わせて画面を切り替えるか、スキップ機能かどちらかが欲しいところだ。

再生中の画面

 また、海外作品の場合字幕と吹替との切替が可能だが、切替はコンテンツ詳細画面からでないと切り替えられず、メニューからコンテンツ詳細を表示して切り替える必要がある。機能が絞り込まれてシンプルで使いやすいのだが、再生中に使える機能をもう少し増やして欲しいと感じた。

再生中のメニュー表示は最初から再生かコンテンツ詳細表示のみ
コンテンツ詳細から字幕と吹替を切り替えられる
リモコン側面のボタンで音量調整が可能。
続き再生に対応

 続き再生機能にも対応しており、スマートフォンで視聴した続きをdTVターミナルで再生することやその逆も可能。ただし、同一アカウントで再生できる端末は同時に1台のみのため、自宅と外出先で同時に動画を視聴することはできない。

 スマホなどで再生した番組の続きを自宅でゆっくりみたい、といった場合に、引き続き再生するための機能となっている。

 細かな要望をいろいろ書いたが、dTVターミナルは、とにかくシンプルで非常に使いやすい。専用リモコンによるテレビらしい操作性のほうが馴染む人も多いだろう。やや機能を限定している感はあるが、それもわかりやすさを最優先しているからだろう。見放題のdTVをじっくり楽しむために、よく出来た端末だ。

Miracastでスマートフォンの画面をテレビに表示

搭載アプリケーション

 dTVおよびdアニメストア以外の機能としては「お手軽プレイヤー(For YouTube)」「マイメディア」「Miracast」の3機能が用意されている。お手軽プレイヤーはシンプルなYouTube再生アプリで、「人気の動画(日本)」「人気の動画(海外)」「ニュース」という3ジャンルの動画を視聴できるほか、好きな動画を検索することも可能。

 Googleアカウントでのログインやリスト登録などの機能は用意されておらず、その名の通りお手軽にYouTubeの動画を楽しむことができる。

お手軽プレイヤー(For YouTube)
YouTube上にある人気の動画やニュースを視聴できる

 マイメディアは同一ネットワーク上にあるDLNA機器の動画や音楽、静止画の再生が可能。自宅のNASにマイメディアから接続したところ、表示される楽曲が一部だったり、そもそも表示されないファイルも多かった。DLNAは機器の相性によってうまく再生できないことも多く、こちらもあくまで簡易的な機能という使い勝手だ。

マイメディア機能
NASにある音楽をdTVターミナルで再生

 Miracastは対応スマートフォンからワイヤレスでdTVターミナルに接続し、スマートフォンの画面をdTV経由で表示できる機能。ブラウザやアプリはもちろん、dTVやdアニメストアをスマートフォンのアプリから映し出すこともできる。YouTubeやマイメディアなどの機能はdTVターミナルを使うよりもスマートフォンからMiracastで表示したほうが使いやすいかもしれない。

dTVターミナルからmiracastを起動
スマートフォンからdtvターミナルに接続
スマートフォンの画面をワイヤレスでテレビに表示できる

リニューアルで使いやすさは向上。拡充機能は今後に期待

 名称変更とともに画面構成や機能拡充など大幅な変更を行なったdTV。画面は見やすくなり、操作性も高まって、明らかに使いやすいサービスになった。dTVターミナルの追加など、よりテレビでの視聴もよりシンプルかつ簡単になったといえる。

 もっとも、従来のdビデオが、階層が深く見たい動画を探すのが大変だったので、dTVに生まれ変わり、ようやく動画サービスとしてあるべきスタート地点についた、という印象もある。とはいえ、使いやすくなったことで、今までSVODを楽しめなかった人や、加入していたのに好きな番組を見つけられなかった人にとって、より良いサービスになることは間違いないだろう。

 dTVターミナルはシンプルながら非常に使いやすく、TVだけでなくdアニメストアも視聴できるため、見放題の動画配信サービスを利用するには非常に便利だ。7,538円(税込)という価格はdstickの7,128円(同)とほぼ同額で、Chromecastの4,536円(同)よりも高い。dstick/Chromecastでは操作はスマホだけ、dTVターミナルの操作は専用リモコンという点が最大の違いといえる。リモコンによる操作をどこまで重視するかが、dTVターミナル購入のポイントとなりそうだ。

 細かな機能強化を望みたい部分はあるが、今回のリニューアルでdビデオ時代より使いやすくなったことは間違いない。Huluが日本テレビの買収によってコンテンツ力を強化しており、Netflixも日本でのサービス展開を宣言するなど、SVOD業界の競争がにわかに激しくなっている現在、国内では最大級となるdTVのさらなるサービス強化に期待したい。

甲斐祐樹