レビュー

スタンプ風に曲をシェア。LINE MUSICの新しい音楽体験

LINEならではの音楽配信。楽曲数拡充に期待

 LINE MUSICが6月11日にスタート。メッセージアプリだけでなく、ゲーム、決済、バイト、タクシー、フリマ、マンガetcと、1大プラットフォームとなったLINEが、いよいよ音楽市場に参入した。

 いわゆる定額制のストリーミング型音楽配信サービスだが、LINE MUSICスタートの2日前にはApple Musicが発表され、月内にはサービス開始。さらに5月27日にはサイバーエージェントとエイベックス・デジタルによる「AWA」がスタートするなど、盛り上がりを見せているジャンルだ。

 グローバルで最も会員数の多いストリーミング型音楽配信はSpotifyだが、日本参入が遅れている理由として、“無料”のプランが問題視されているという。一方、LINE MUSICを含め、Apple Music、AWA、さらに以前からサービス展開しているKKBOXやレコチョクThe Bestも有料サービスだ。LINE MUSICの料金プランは1,000円(無制限/30日間)のほか、500円(20時間/30日間)のプラン、さらに学割も用意するなど、若年層に圧倒的な強みを持つLINEらしい料金展開となる。

 また、その特徴はなんといっても「LINE」との連携によるコミュニケーションツールとしての音楽活用だ。国内最大規模のユーザー数を誇るLINEが提案する音楽体験とはどんなものだろうか? 早速テストした。

LINE MUSICを利用できるのは1台

 LINE MUSICは、国内外の人気アーティストの新譜を含む150万曲以上をラインナップ、料金プランは500円(20時間/30日間)の「ベーシックプラン」と1,000円(無制限/30日間)の「プレミアムプラン」の2種類が用意されているが、2015年8月9日までの2カ月間はプレミアムプランと同等の全楽曲・全機能が無料で体験可能となる。

 学割はベーシックが300円、プレミアムが600円。決済方法はAndroidがアプリ内とLINE STORE、iPhoneがLINE STOREで、プレミアムプランのみApp Storeのアプリ内課金も利用できる。ただし、App Storeのアプリ内課金を使う場合は1,080円(30日)となる。

 ベーシックプランで20時間を超える利用の場合は、10時間の追加で300円(学割200円)となる。ベーシックとプレミアムの価格差を考えると、プレミアムプランのほうがお得に感じるが、学生や若年層には利用形態に合わせた選択肢があるほうがいいのかもしれない。

料金プラン
LINE MUSICにログイン

 6月11日のLINE MUSICの対応端末は、AndroidスマートフォンとiPhone。対応OSはAndroid 2.3以降と、iOS 6.0以降だ。7月にはブラウザ版を提供し、PCでも利用可能になるという。なお、メッセンジャーのLINEと同じく、同一アカウントで複数のスマホにログインすることは出来ないため、今回はiPhone(iPhone 5s)のみでテストしている。

 LINE MUSICでは、ストリーミング形式で音楽を配信。いつでもどこでも聴きたい曲・アーティストを選択して再生やプレイリストの作成などを行なえる。5月にスタートした「AWA」は、プレイリストを軸にしたサービスで、ムードやジャンルなどにあわせてプレイリストを選ぶ形だった。LINE MUSICはプレイリストも用意されているが、聞きたい曲やアルバムを選んで再生するオンデマンド型という点を強調している。

シンプルなUI。楽曲数は150万曲だが今後に期待

ホーム画面

 アプリのホーム画面を立ち上げると、イチオシのピックアップタイトル(Uverword、MACO、シシド・カフカなどの新作)、その下段にEDMや恋愛ソング、クリスタル・ケイのプレイリストなどのバナー、その下にニューリリース、オススメプレイリスト、アーティストなどの項目が並ぶ。

 音楽プレーヤーアプリというより、iTunes Storeような楽曲配信/販売ページを見ているような印象だ。曲やアルバムを選ぶとそのままフルで再生できるので、ストアの[試聴]が[フル再生]に変わったような感覚で使える。

 トップページで気に入る物があれば、そこで選曲/再生してもいいが、左上のアイコンをタップすると、トップ、テーマ&ジャンル、トピック、シェア、マイミュージックなどの項目が現れる。

 [テーマ&ジャンル]では、キモチ、シーン、イベントなど[テーマ]や、ROCK、邦楽、JAZZなどの[ジャンル]ごとのプレイリストを用意。ROCKであれば、ROCK全体のベスト、2010年代のヒット、'00年代のヒットなどのプレイリストを用意。歌謡曲、ワールドミュージック、キッズなどのジャンルから選べる。

メニューからテーマや、ジャンル、トピック、マイミュージックなどを選択
テーマ&ジャンル
ジャンル HIP-HOP
「野郎のみ」、「ウェイウェイ」などのプレイリストも
シェア用セレクトは誕生日用などのプレイリストを用意

 面白いのは、「シェア用セレクト」というテーマが用意されていること。前述のように、LINE MUSICには、LINEでつながっている友人やグループに、LINEのトークアプリ上から楽曲やプレイリストを送ったり、LINEアプリ内のトーク・タイムライン上で再生する機能を用意しているが、そのためのプレイリスト集だ。

 「祝★誕生日」、「お目覚めソングス」などのプレイリストが用意されているので、例えば、友人の誕生日にプレイリストを送って、お祝い代わりにしたり、それをきっかけにコミュニケーションするといったことも可能。このあたりはLINEならではの特徴だ。

 なおトップページのニューリリースの下には、再生やシェア数などに基づくランキングや、自分のLINE友だちがよく聞いている曲が表示される「フレンズチョイス」が出てくるはずなのだが、筆者のLINE友だちが少ないのか、今のところ表示されていない。

検索機能
LINEで通知が来た特別番組を視聴。アーティストからの告知などもLINE上で送られる

 ホーム画面の右上には検索窓が用意され、楽曲検索も可能だ。11日のスタート直後はうまく動いていなかったが、現在は復旧しており、インクリメンタルサーチにも対応している。障害発生時に「全然使えない検索機能だ」と思っていたが、LINE通知で不具合を教えてくれるなど、こまかなところでLINEならではの特徴を感じられた。

 LINE MUSIC制作によるプレイリストは豊富で、古めのものから最新楽曲まで、かなり網羅されているように見える。ROCKやJAZZの定番的なアーティストも一見多そうだ。ただ、検索してみると邦楽/洋楽ともに、ヒット数は少なめで、アーティストの項目はあってもアルバム数が少なかったりとやや寂しい。ソニー・ミュージックが、LINE MUSICに出資している関係で、SME関連のカタログは多めでバナー露出も多く感じるが、それでも150万曲という楽曲数はまだまだだ。例えば3月にサービス終了したソニーのMusic Unlimitedは、3,000万曲以上を揃えており、そうしたサービスを使った経験のある人にとっては物足りないだろう。

 個人的には、すでに多くを手放してしまった90年代のロックやヒップホップのプレイリストを中心に楽しめたが、今後末永く使うとなれば、楽曲の拡充は必須だ。もっとも、LINEでは「年内に500万曲以上、2016年には3,000万曲以上」との見通しを示している。早期の拡充こそが、LINE MUSICの魅力、価値を高めてくれるのは間違いないだろう。

LINEならではの[シェア]。LINE MUSICを使わずに共有

再生画面
右下のメニューからお気に入りやプレイリストに追加可能。シェアもここから

 実際に曲やプレイリストを選んで再生してみると、ジャケットが中央に大きく表示され、スキップ/バックなどの操作が可能。ストリーミング方式だが、3G/LTE環境でも、レスポンスはよく、再生開始後やスキップ直後に待たされることはほとんどない。

 再生画面ではリピートやシャッフルなどのも選択可能。また右下の[メニュー]を押すと、[シェア]や、[お気に入り]、[プレイリストに追加]、[アルバム情報をみる]、[アーティスト情報を見る]などが選択可能になる。

 楽曲やプレイリストをお気に入りに入れたり、好きなアーティストを[フォロー]しておけば、[マイミュージック]からすぐにアクセス可能になる。

プレイリストをお気に入りに。白抜き☆でOFF、黒塗りの★でONというのはわかりにくい
お気に入りでマイプレイリストに登録される
アーティストをフォローして、マイアーティストに登録
シェア

 シェアでは、LINE(トーク)とLINE(タイムライン)、Twitter、Facebookへの投稿が可能な機能。面白いのはやはりLINE(トーク)で、メッセージやスタンプと同じように友人に音楽を送れる。その音楽についてのコメントなど、コミュニケーションが可能になる。別に音楽を直接聞くだけでなく、こんな曲の気分と言った感じで、スタンプ的にも送れるし、話題の共有という点ではとても直接的で面白い。友人側はLINE MUSICアプリをインストールしなくても、iPhoneであれば30秒は試聴できる(Androidはインストール/ログインで30秒視聴できる)。

 個人的には、LINEは特定の友人とグループ用という感じで、さほど積極的なユーザーではないのだが、これはとても魅力的。これまでLINE以外でやりとりしていた友人との間でも使ってみたいと感じた。

LINE(トーク)でシェア。スタンプのように曲を送ることができる
LINE(タイムライン)に投稿

 TwitterやFacebookもシェア機能は、一般的なもので、タイムライン上に今聞いている音楽とLINE MUSICへのリンクを示すというものだ。AWAはUIは目新しかったが、ソーシャル機能は未実装(7月対応予定)だが、さすがにLINEはコミュニケーションのための機能の作りこみがよく出来ている。

音質も良好。64kbpsもなかなか

 音質は、高(320kbps)/中(192kbps)/低(64kbps)の3種類と、ネットワーク環境に合わせた音質で再生する[自動判別]が選択できる。[設定]-[プレーヤー設定]の中に設定項目が用意されており、LINEでは、「音楽ストリーミングサービスとしては最高水準」と音質もアピールしている。また、再生した楽曲をキャッシュを残すこともできるため、同じ楽曲を繰り返し再生する場合は、通信容量を圧迫せずに楽しめるとしている。

 まず、キャッシュをOFFにして、[高]と[低]を聴き比べてみた。ヘッドフォンはソニーMDR-1AとJVC HA-FX700などでiPhone 5sに接続した。

 まずは[高]で、森山直太朗の「若者たち」を聞いてみたが、音質は充分に満足、森山直太朗の声のアタック感や消え際も自然で、音場の広さやベースの量感も印象的。ストリーミングと感じさせることは全くない。これを[低]にすると、ダイナミックレンジが狭まり、ボーカルの高域がカサつきを感じる。ただ、数字の差ほど違いは感じず、電車の中などノイズが多い環境であれば違いはわからなそうだ。

 ローリング・ストーンズの「サティスファクション」も印象としては同じ。奥行き感やダイナミックレンジに違いはある。ただ、よりガサツ、というかガレージロック感が出てきて、これはこれでいいのでは、とも思った。

 オフィスや自宅では[高]が望ましいと思うが、[低]でも必要十分で、モバイル環境でパケット通信料を気にするケースでは[低]を中心にしてもいいかもしれない。ちなみに、[中]にすると、[低]のような音質面の課題はほぼ感じられず、正直[高]との違いもわからなくなる。無線LAN環境での利用が中心だったり、あまりパケット通信料を気にしない、という場合であれば、基本的に[自動判別]でいいはずだ。

再生画面
歌詞が用意されている曲も
ロック ベストヒッツ
モバイルデータ回線接続時にもストリーミング再生を許可
キャッシュの設定。[Wi-Fiのみでキャッシュを設定]は意味がちょっとわからない

 なお、LINE MUSICにはキャッシュ機能も装備。一度、再生した楽曲を端末側にキャッシュするため、同じ曲を難度も聞くのであれば、通信帯域をほとんど使わずに再生できるというものだ。便利かつ、通信環境が不安定な場合でも安定した再生ができるので、基本的にはONにしておきたい。

 ただし、楽曲再生時に、プラン確認のための通信を行なうため、いわゆる「オフライン再生」ができるというわけではない。LINE MUSICの利用時には、かならず通信環境が必要という点は注意したい。

LINE MUSICに感じる新しい音楽コミュニケーション

 LINEという基盤の上で、音楽とコミュニケーションが高いレベルで融合したサービスに仕上がっているLINE MUSIC。

 2週間先にスタートした「AWA」は、プレイリストを中心に据え、グラフィカルなUIとなめらかな操作感、大胆な機能の絞り込みで、スマホに最適化した新しい音楽サービスと感じた。一方、LINE MUSICは、オーソドックスな音楽配信サービスの姿を持ちながら、新しいコミュニケーションの形が感じさせてくれる。古くからの音楽配信ユーザーにもなじみやすく、かつ新しさも備えているという印象だ。

 LINE MUSICの課題としては、やはり第一に楽曲数となるだろう。ただし、LINE MUSICには、LINEのほか、エイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメントが出資し、ユニバーサルミュージックも資本参加を予定。レーベルの支持を得ていることもあり、タイトル拡充は進みそうだ。目標通り'16年に3,000万曲を揃えることができれば、音楽ファンの支持も獲得できるだろう。

 「キャッシュした曲についてはオフライン再生させてほしい」といった細かな要望もあるが、UIや再生操作の安定性から、シェア関連の機能充実まで、完成度は高い。ハイレゾやSACDを中心とした音質にこだわる人にとっても、今後曲数が増えれば広大な試聴ライブラリになるわけで、魅力的なサービスとなりそうだ。その際には、楽曲購入への動線なども整備して欲しい。

 スタート直後の2日間使っただけだが、個人的にはとても気に入ったし、今後のサービス拡充にも期待ができそう。1点気になるのは、外部機器連携やマルチデバイス対応だろうか。

 現時点ではLINE MUSICを楽しめるのは1台のスマホのみで、複数の端末での利用はできない。7月にPCに対応する予定だが、その他のデバイス対応についてはまだわからない。ただ既存の多くの音楽配信サービスは、複数台の同時利用はできないが、タブレットやスマートフォンなど様々なデバイスで利用でき、例えば自宅ではタブレット、外出先ではスマホといった使い分けができる。そうしたマルチデバイス対応は、LINE MUSICでは今のところ難しそうだ。

 もっとも(メッセージの)LINEスタート時から、マルチデバイス云々は指摘されているもののの、今日まで対応していない(おそらく多くのユーザーへのわかりやすさを優先しているのだろう)。LINE MUSICも、LINEと同様に基本的には1台のスマホに紐づいたコミュニケーションを中核にしたサービスになるのだとすると、ユーザーは、コミュニケーションとマルチデバイスの利便性のどちらを優先するのか、といった判断を迫られることになるのかもしれない。

 他のデバイス連携という点では、iPhoneのLINE MUSICアプリからでも、Bluetooth経由でワイヤレススピーカーに出力することはできた。ただ、例えばKKBOXやYouTubeはGoogle Castに対応し、Cast対応のスピーカーやテレビ、AVアンプなどでも音楽再生できるなど、周辺機器との連携もトレンド。そうした周辺環境も含めた拡がりにも期待したいところだ。

(臼田勤哉)