レビュー

新ハイレゾウォークマン「NW-ZX100」の実力は?

音楽専用でコンパクトに進化。ZX2/ZX1と比較

音楽専用、長時間、小型化のZX100

 ソニーは、ハイレゾウォークマン「NW-ZX100」を10月10日より発売する。2014年発売のNW-ZX1の後継機で、2月に発売した約12万円のフラッグシップ「NW-ZX2」と、2万円台からの「NW-A20シリーズ」の間のモデルとなり、実売価格は67,000円前後。

NW-ZX100

 特徴は、小型化とバッテリ駆動の長時間化、そして音質のブラッシュアップだ。また、OSもNW-ZX1/2のようなAndroidではなく、組込み系OSとなった。純粋なオーディオプレーヤーと位置づけられ、実際に、ZX1/2で備えていた写真やビデオプレーヤー機能も削除されている。

NW-ZX100

 OS変更の最大の要因は、バッテリ駆動時間の長時間化。NW-ZX100は組込み系のOSに変更。最大約45時間のハイレゾ(192kHz/24bit FLAC)音源再生に対応する。コンパクトかつ長時間利用が可能になるというわけだ。

 また、外形寸法/重量は、120.1×54.4×15.4mm/約145gと、最上位モデルの「NW-ZX2」(131.2×65.1×18.5mm/約235g)より軽量/コンパクトになった。

 ZX2譲りの音質を備えながら、コンパクトさやバッテリ持続時間を重視したウォークマンがNW-ZX100だ。その実力をチェックしてみよう。

小さくシンプルに。タッチ操作には非対応

 ディスプレイは、3型だがタッチ非対応。その下部のBACK、OPTIONボタンと操作パッド、側面の再生/停止、ボリュームボタンなどのハードウェアキーを用いて操作を行なう。基本的にはNW-A20シリーズと共通といえる。

 内蔵メモリは128GBで、メモリ拡張用のmicroSDカードスロットも装備。最大128GBのカード(microSDXC)を追加できる。このあたりは上位機のNW-ZX2と共通だ。

 対応音楽フォーマットは、FLAC、Apple Lossless、AIFF、WAV、MP3、AAC、WMA、ATRAC、DSD。ハイレゾ楽曲は、192kHz/24bitのFLAC、Apple Lossless、WAV、AIFFと、2.8/5.6MHzのDSDのPCM変換再生に対応する。ドラッグ&ドロップでの楽曲転送のほか、Windows用に「MediaGo」も用意される。

 アンプはソニー独自の「S-Master HX」で、ヘッドフォン出力は15mW×2ch(16Ω)。このあたりもZX2と共通だ。最近のポータブルプレーヤーでは、DSDネイティブ再生対応製品が増えているが、ZX100はPCM変換再生となる。これはS-Master HXのデバイス上の制限とのことだ。

底面にWM-Portとヘッドフォン出力
側面
背面にNFCを搭載
なめらかなカーブを描く背面

シンプルな操作性。タッチ非対応への慣れが必要?

ホーム画面がミュージック

 ディスプレイは3型液晶。Androndではないためタッチ操作には対応しないが、液晶下部に設定や各種アプリのショートカットを用意。その下部のBACK、OPTIONボタンと操作パッド、側面の再生/停止、ボリュームボタンなどのハードウェアキーを用いて操作を行なう。

 ユーザーインターフェイスは、かなり簡易化されており、例えばNW-A10/20シリーズで備えていたホーム画面相当の画面がなく、ホームに相当するのが、ミュージックの検索画面となる。

 AndroidベースのNW-ZX1/ZX2では、ホーム画面はAndroidのもので、NW-A10/A20にしてもホーム画面では音楽だけでなく、ビデオや写真などが選択できるようになっていた。NW-ZX100はより「音楽専用機」然とした操作系になった。

アプリのショートカットを表示

 ホームに類する機能として、[BACKボタン]を長押しすると、アプリのショートカットが表示される。ここでは[Bluetooth]、[ノイズキャンセル]、[SDカード設定]、[各種設定]、[ミュージック]、[再生画面へ]、[おまかせチャンネル]、[録音]の各機能/設定を呼び出すことができる。

 つまり、こまかな設定を行う場合は、BACKボタンを長押しして、各種機能を選ぶ必要がある。

 操作には、液晶下のBACK/OPTIONボタンと5方向ボタンを利用。4方向のカーソルで任意のアイコンを選んで、中央の決定ボタンを押すだけのシンプルな操作方法で、とても使いやすいし、レスポンスも高速。わかりやすさは全く問題ないのだが、使う側の人間がタッチ操作に慣れているため、どうしても画面をタッチして、曲を選びたくなってしまう。もっとも、2〜3日使っているうちにタッチはしなくなったが。

 楽曲検索方法として、アルバム、アーティスト、ジャンル、リリース年、プレイリストなどが用意されており、任意の項目で検索可能。また、楽曲再生画面で5方向ボタンの上/下を押すとアルバムアート(ジャケット)ビューとなり、ジャケット写真を見ながらアルバム検索が行なえる。ほとんどAシリーズと同じだが、わかりやすい。

アルバム検索
アーティスト
再生画面

 「おまかせチャンネル」も搭載。ウォークマンシリーズ共通の機能で、ソニー独自の12音解析機能で楽曲を「ダンスフロア」、「夜のおすすめ」など自動プレイリスト化し、気分に合わせて再生できるというものだ。

おまかせチャンネル
各種設定
音質設定

音質は良好。ZX2に近いアナログ感

 音が最大の特徴であるNW-ZX100だが、アンプはS-Master HXと従来から変わっていない。音質改善の取り組みは、シャーシや基板素材、はんだ、コンデンサなど、こまかなパーツ選択や設計時の工夫などで積み上げたものだという。

 それでは実際に音を聞いてみよう。ヘッドフォンには、ソニーの「MDR-1A」を用意し、ヘッドフォン選択は[その他]、DSEE HXやVPTといった音質補間技術も全てオフにしている。設定項目が多岐にわたるので、ワンボタンで推奨のハイレゾ再生設定を呼び出せる[ピュアオーディオ]的な設定があってもいいように感じる。

 印象的なのは、元々レスポンスとキレのよいNW-ZX1の低域に対し、さらに低域の量感が増え、音楽全体に勢いが出ているように感じたこと。もちろん高域の繊細な表現なども向上しているのだが、全体的にはナチュラルかつエネルギッシュなサウンド。セパレーションも良好だ。

 今回主に従来モデルの「NW-ZX1」と比較したが、ZX1に共通するレスポンスの良さを持ちつつも、低音の量感や音像定位、奥行き感は明らかにZX100が上回っており、ボーカルものでも、センターの音像がより明瞭かつ、音場もより広く感じられた。

MDR-1Aとの組み合わせ

 NW-ZX1に加え、ハイレゾウォークマン最上位モデルの「NW-ZX2」とも比較してみた。

 ダフト・パンク「Random Access Memories」を聞いてみたが、ZX1の後にZX100を聞くと、低域の量感と音場の広さは、明らかにZX100が上だ。また、セパレーションの良さもZX100ならではで、ギターのカッティングもより明瞭にかつアタック感も強い。全体的に音楽により勢いがあり、楽しめる。

 ZX2に変えてみると、ZX2のほうがダイナミックレンジがより広く、さらに低域の量感も一段深く、より繊細に感じられる。勢いで押すZX100に対し、音場の広さとセパレーションの良さ、低域の分解能など、しなやかなZX2という印象だ。

左からZX1、ZX100、ZX2
ZX2とZX100の比較

 コーネリアス「Fit Song」をZX100とZX1で比較したところ、激しくパンニングされる音の移動/定位がすっきり整理され、ZX100のセパレーションの良さを実感。音場も格段にZX100の方がよく感じる。ZX1にもギュッと音を凝縮したかのような勢いを感じるが、ZX100と比べると低域が細く、物足りなさが残る。

 ZX2に変えてみると、ドラムの消え際の響きなどZX2でしか感じられないようなディテールが見えてくる。また、低域の深さもZX100より一段上で、音場も広い。ただ、ZX100のほうが曲にマッチしているようにも感じた。

 Suara「Sakura」(DSD 2.8MHz)でも、ZX100のダイナミックレンジの広さは印象的で、ZX1との差はかなり大きい。ZX2に変えてみると、より繊細で、声の消え際やスタジオ内の残響がより明確に感じられるなどディテールの表現はZX2のほうが優れている。特にアコースティック系の楽曲では、ZX2が気持ち良いと感じる。

 なおZX100のDSD音源の場合、PCM変換再生が行なわれるが、その際に楽曲やジャンルに合わせて、2つの音質特性を選べるデジタルフィルタを備えている。DSD特有の柔らかさや温かみのある音で、ボーカルや弦楽器に適しているという「スローロールオフ」と、明瞭なアタック感やエネルギッシュな音が特徴な「シャープロールオフ」の2種類が選択できる。

 ディテールや空気感がグッと際立つスローロールオフに対して、音像がカチッと見えるのがシャープロールオフという印象だ。好みにあわせて選択したいが、個人的には「スローロールオフ」でいいと思う。

DSD再生設定
スローロールオフとシャープロールオフが選択可能
DSDのゲイン設定

 オールラウンドかつ、ZX1から2年分の進化も十分に感じさせるZX100。ZX2にかなり近づいていると感じるが、久しぶりにZX2を使ってみたら、フラッグシップモデルならではの良さを確かに感じた。もっともZX2は価格も約2倍であるが……。

 価格面での直接の競合といえるのは、Astell&Kernの「AK Jr」(直販価格69,800円/税込)だろう。実際に聞いてみると、ZX100よりもAK Jrのほうが低域が強く感じられる。周波数帯域の下まで出ているというより、バランスが低域寄りという印象だが、EDMやロック系の音をかなりパワフルに鳴らしてくれる。ZX1よりもかなりパワフルと感じていたZX100も、AK Jrの後は少し上品に感じられる。中/低域の解像感やセパレーションはZX100のほうが好ましい

左から、ZX1、ZX2、ZX100、AK380、AK Jr
ZX100とAK Jr
ZX100とAK Jr
編集部山崎のインプレッション

 ZX1を聴いた際に感じた、音の線の細さや、低域のパワー感の弱さは無い。音像の輪郭はクリアで、低域の沈み込みは深く、ドライブ能力の高さを伺わせる。安定感のあるドッシリとしたサウンドだ。“ZX2寄りの音”と言って良いが、低域の分解能や迫力面ではZX2が上回る面もある。ZX1とZX2の中間的なサウンドと言って良いが、ど真ん中というよりも、ZX2寄りだ。

 価格帯が近いAstell&Kern AK Jrと比べると、クリアでバランスの良い再生音という意味では似ているが、AK Jrが中低域を厚めに押し出してくるのに対し、ZX100はどこまでも広い音場を精密に描くというタイプの違いがあり、ZX100の方がピュアオーディオライクな音作りだ。ハイレゾ楽曲の細かな音の描写も見えやすく、音が無くなった時の空間の広さ、空気感にもハッとさせる部分がある。

 AK Jrの方は、中低域のパワフルさが旨味にもなっているため、音場の広さにこだわらなければこちらの方が“楽しくて魅力のある音”と感じる人もいるだろう。

グランド分離出力には非対応

 なお、最上位機NW-ZX2は「グランド分離出力」に対応しているが、NW-ZX100は非対応だ。

 グランド分離出力は、ヘッドフォンの左右チャンネルのグラウンドを分離した接続の事。一般的なイヤフォン/ヘッドフォンでは、左右のチャンネルから戻ってくるグラウンドを、1つのケーブルにまとめて入力端子まで戻すが、1本にまとめず、左右で分離したまま入力端子まで戻すのがグラウンド分離だ。

 効果としては、チャンネルセパレーションの向上などが見込まれる。そのためにはヘッドフォン、ケーブル、プレーヤー側の対応が求められるのだが、NW-ZX100は非対応だ。というのも、グランド分離出力では、通常のイヤフォンの3極入力端子(黒い絶縁リングが2本入った端子)に対し、グラウンド分離接続では4極(絶縁リングが3本)が必要になるが、NW-ZX100はノイズキャンセルの実現のため5極端子を採用している。そのため、グランド分離出力には対応できなかったようだ。

ハイレゾNCの効果は高いが、イヤフォンは別売

 NW-ZX100の特徴の一つが、「ハイレゾ」と「ノイズキャンセル」を両立できるということ。ただし、ノイズキャンセルイヤフォン「MDR-NW750N」は別売となる。実売価格は12,800円前後。つまり、ハイレゾNCのためには総額約82,600円(本体69,800円+12,800円)必要になる。

NW-ZX100とMDR-NW750N
MDR-NW750N。後方にマイクを装備
ノイズキャンセル設定

 早速、MDR-NW750Nを使って「ハイレゾでノイズキャンセル」を試してみよう。

 MDR-NW750NでNCを使うためには、[設定]の[ヘッドフォン選択]で「MDR-NW750N」を選び、さらに[ノイズキャンセル設定か]らNCをONにする。なお、ヘッドフォン選択画面で[MDR-NW750N]を選ぶと、その下に[オフ]と表示されるが、その表示はヘッドフォン自体はMDR-NW750Nが選択されており、その階層の「クリアフェーズ]の[オフ]を示すものだという。ヘッドフォンが選択できているかどうかわかりにくい表示と感じた。ちなみに、ハイレゾ再生では、クリアフェーズはオフが推奨とのこと。

 まず、室内で音楽をかけずにNCをONにすると、会社内の“ヒュンンヒュン“といったコピー機の印刷音がほぼカットされ、NCの逆相成分もほぼ感じられない。ノイズの削減効果はかなり高く感じられる。

 音質も良好で、NC ON/OFF時の音質変化も少ない。エネルギッシュかつ解像感もあるハイレゾらしさは十分に楽しめた。

 なお、NCモードは、環境選択として、[電車・バス]、[航空機]、「室内」と選べるが、外部騒音に応じて適応的にモードを変更してくれる「オートNC」があるので、基本的にはオートNCで良さそうだ。

 地下鉄でNCをONにすると、モータ音がバッサリカットされる。音楽を聞かずに耳栓代わりにしても相当のノイズ削減効果だ。特にクラシックや、アコースティックなジャズ、ジャズボーカルものなどをじっくり聞く際には外部ノイズの低減はかなり効果的。また、ボリュームをあまり上げなくても、しっかり音が聞こえるので、周囲に迷惑をかける可能性も減るだろう。

 ハイレゾを過度にアピールするような音作りではなく、「NCを感じさせないが、高音質が楽しめる」というバランスが気持よく、使いやすい。また、別売のNCイヤフォンのように、別体のバッテリボックスなどがなく、プレーヤーとイヤフォンだけで気軽にNCが使えるのは確かなメリットだ。

 ただ、複数のヘッドフォンを使い分ける際にはやや面倒だった。「MDR-NW750N」のNC ONから「MDR-1A」のNC OFFで聞く場合は、まずNCをOFFにして、ヘッドフォン選択で[MDR-NW750N]から[その他のヘッドフォン]に選択し、直す必要があるが、そのために[ヘッドフォン選択]と[ノイズキャンセル]の2つの設定をやり直さなければならない。

 なお、よりNC効果が高いという汎用のNCヘッドフォン「h.ear in NC(MDR-EX750NA)」も10月10日に発売されている。実売価格は21,000円前後。

ハイレゾウォークマン正常進化

 機能面では、ハイレゾ+ノイズキャンセルが大きな特徴であるが、イヤフォンは別売であり、付加的な機能。やはり、最大の魅力はコンパクトなボディで、高音質化を図ったことだ。

 バッテリ駆動時間は、FLAC(192kHz/24bit)で45時間に長時間化。1週間程度使っていたが、1日3〜4時間程度の利用でほとんど減らず、全く不満なし。Androidではなく、専用OSのため待機時にバッテリが大量に減っているという事がないのも、安心感が高い。

 使い勝手もこなれたNW-A10/20シリーズに近く、成熟しており、新しさは無いが使いやすい。

 67,000円という価格は、音楽プレーヤーとして決して安価ではない。ただ、専用プレーヤーならではの音質とストレージ容量、長時間駆動などの魅力は十分。NW-ZX2(約12万円)には手が出ないという人にとっても魅力的な選択肢になるのは間違いない。

 DSDネイティブ再生には非対応だが、それ以外にスペック面の不満はない。むしろ、正統進化すぎて、ガジェットとしての面白味や新鮮味が薄いという点は、“新しさ”を求めたい人にとっては物足りないかもしれない。そんな言いがかりのような感想を抱いてしまうぐらい、よく出来た正統派のプレーヤーだ。

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NW-ZX100

(臼田勤哉)