【レビュー】GoProをWi-Fi拡張。「Wi-Fi Combo Kit」登場

リモートからの映像プレビューなどの使い勝手は!?


「Wi-Fi Remote」と「Wi-Fi BacPac」

 各社から発売されている最近のウェアラブルカメラでは、標準で外部機器から無線でアクセスしてコントロールできるものが多くなってきた。しかしながら、この市場のデファクトスタンダードとして君臨している「GoPro」シリーズは、製品として登場するのが他社より早かったこともあって、そういったトレンドにはやや乗り遅れ気味。画質や性能面での信頼性は高いにもかかわらず、使い勝手でやや不満を感じることもあったのではないだろうか。

 そんなユーザーの不満を一気に解消する「Wi-Fi Combo Kit」が、ついに「GoPro HD HERO2」用として登場した。価格は14,595円。他のアクセサリーと同様に、カメラ本体に装着するバックパックとして利用でき、スマートフォンやタブレットから操作できるようになるだけでなく、専用リモコンも用意されているという充実ぶりだ。この「Wi-Fi Combo Kit」でどんなことができるのか、また、実際の使い勝手はどうなのか、さっそく試してみた。



■ リモコンはもちろん、バックパックもバッテリー内蔵

 Wi-Fi Combo Kitに含まれている主なものは、「GoPro HD HERO2」で無線LAN(Wi-Fi)通信を可能にする「Wi-Fi BacPac」と、専用リモコン「Wi-Fi Remote」の2つ。他にハウジングの交換用背面パネル、充電・データ通信用のUSBケーブルやリモコン固定用のバンドなども付属している。「GoPro HD HERO2」専用アクセサリーで、それ以前のモデルには対応していないことに注意しよう。

パッケージ「Wi-Fi Combo Kit」パッケージ内容GoPro HD HERO2

 「Wi-Fi BacPac」は他のバックパックと同じように、「GoPro HD HERO2」の背面にある拡張コネクタに接続する形で密着させて取り付ける。Wi-Fi BacPacはUSB充電可能なバッテリを内蔵していることから、Wi-Fi使用時にカメラ本体のバッテリを消費することがない。詳しくは後述するが、この“電源ボタンが独立している”というのがポイントだ。

「Wi-Fi BacPac」はカメラ本体の背面に装着する
バッテリーを内蔵し、電源ボタンもカメラとは独立している背面パネルを交換してハウジングに格納したところ

 「Wi-Fi Remote」は、Wi-Fi BacPacと組み合わせて使用することで、リモートからのカメラ設定の変更、録画開始・停止などの操作を行なえるようにするもの。大きめの2つのボタンとモノクロ液晶ディスプレイを備え、カメラの動作ステータスの確認や設定変更などが可能だ。水深3mまでの防水にも対応している。

 付属のストラップなどで腕に巻き付けたり、乗り物のハンドル近くに固定して使うことも想定しており、少し厚みはあるが十分にコンパクト。こちらもUSB充電できるバッテリを内蔵している。

Wi-Fi Remoteは厚みはあるが、十分に小さい独自形状のコネクタに接続してUSBで充電するバンドも付属。腕やハンドル周りなどに固定できる

 Wi-Fi Remoteを使う際には、まずカメラ本体とWi-Fi BacPacの電源を入れる。さらにもう一度Wi-Fi BacPacの電源ボタンを押すとカメラ本体の前面ディスプレイにWi-Fi設定のメニューが表示されるので、“WiFi RC”を選んでリモコン操作を有効にすればOK。

 あとはWi-Fi Remoteの電源ボタンを押せばすぐにカメラのコントロールが可能になる。Wi-Fi Remoteを使えば、録画開始・停止だけでなく、撮影モードの切り替え、記録する動画形式や静止画解像度の変更など、カメラ本体で設定できる項目をすべて操作できる。

Wi-Fi BacPacの電源ボタンを押すと、カメラ本体のディスプレイに制御元の機器を選択するメニューが表示されるリモコンのディスプレイに表示できる内容は、カメラのディスプレイに表示するものと同じだ

 Wi-Fi Remote側のボタンを押してからカメラが反応するまでは、わずかにタイムラグが発生する。とはいえ、何らかの操作をするたびにカメラ側でビープ音が鳴るため、カメラの近くにいるときは操作できているかどうか、確実にわかる。音の聞こえない離れたところからリモート操作するときでも、リモコン側のディスプレイでしっかり状態を確認できるため、不安は少ない。

 標準ではこのWi-Fi RemoteとWi-Fi BacPacの2つを用いてリモート操作することになるが、当然のように、最近の流行とも言えるスマートフォン・タブレットからのリモート操作にも対応する。


■ プレビューにラグがあるものの、使い勝手はまずまず

「GoPro App」

 スマートフォンやタブレットで「GoPro HD HERO2」をコントロールするには、無料で配布されている専用アプリ「GoPro App」をインストールする必要がある。10月26日現在、「Wi-Fi BacPac」に対応しているのはiOSのみ。iPhone 3GS/4/4S/5もしくはiPod touch(第4世代)、iPad全機種で利用できる。Androidスマートフォンにも対応予定のようだ。

 スマートフォンなどで使い始める前にはあらかじめちょっとした準備が必要。Wi-Fi対応の他社製品と同様に、Wi-Fi BacPacもWi-Fi Directで接続することになるが、その前にいったんPCとWi-Fi BacPacをUSB接続し、「CineForm Studio」というPC用アプリケーションでWi-Fiアクセスポイント名と接続パスワードの初期設定を行なわなければならない。


PC用アプリケーション「CineForm Studio」も無料で配布されている

 ここで注意しておきたいのは、USB接続の際にはWi-Fi BacPacの電源は“入れない”ということ。電源が入っているとCineForm Studio上で認識してくれず、設定できない。ちなみに、カメラ本体にUSB接続してCineForm Studio上で何らかの操作をしたいときは、逆にカメラ本体の電源を入れてからでないと認識してくれない。

 カメラ本体とバックパックで挙動が異なるのはやや不可解ではあるが、Wi-Fi設定を変えようとしない限りWi-Fi BacPacをPCと接続するのはほぼこの1回きりなので、問題となる部分ではないだろう。

 Wi-Fiの初期設定が終わったら、USB接続は解除し、カメラ本体とWi-Fi BacPacの電源を入れ、Wi-Fi Remoteのときと同じようにカメラ本体のディスプレイで“PHONE & TABLET”を選べばWi-Fiアクセスポイントとして動作し始める。設定したSSIDにスマートフォン(タブレット)から接続し、パスワードを入力してから「GoPro App」を起動すれば準備完了だ。

スマートフォンで操作したいときは“PHONE & TABLET”を選ぶ最初にPCで設定したSSIDにiPhoneから接続する

 「GoPro App」上ではカメラ本体の各種設定変更と、カメラ映像のプレビューが可能。ただし、iPhone 5で試したところでは、映像に少なくとも3秒以上のタイムラグが発生した。カメラの向きなどを確認するためにプレビューする際には、3テンポくらい遅れることを念頭に置いて少しずつ調整しなければならず、慣れないうちはなかなか思った通りのアングルに固定できないもどかしさがある。

 とはいえ、プレビューの画質自体は良好で、動画撮影中でもプレビューは可能。静止画撮影では、ワンショットずつの手動撮影モードならプレビューOK。1秒間に10連写するバーストモードや、タイムラプスモード、タイマー撮影モードで撮影している時はプレビューは不可となる。

動画解像度、画角、静止画撮影モードの各種設定など、細かいところまで変更できる撮影モードの切り替えも簡単。「Locate Camera」は、カメラをどこかに落としてしまったとき、ビープ音を鳴らすことで探しやすくするという機能
プレビュー映像を大きく表示したところGoPro Appでは、最大50台までのカメラをコントロールできるという。複数のカメラがある場合は、この画面にカメラごとの操作ボタンと映像を一覧表示するものと思われるバーストモードやタイムラプスモード、タイマー撮影モードでは、撮影中のプレビューはできない
カメラの映りをチェックしながらの角度調整も楽々

 Wi-Fi BacPacでもリモートからカメラの電源を入れることはできるが、スマートフォンではカメラ本体の電源オンだけでなく電源オフまで操作できるのが面白い。Wi-Fi BacPacのバッテリが完全に独立しているからこそ実現できた機能と言えるだろう。バッテリー消費の大きいカメラ本体は、撮影していないときはできるだけ電源を切っておきたいところなので、手元で簡単に電源を制御できるのは大変ありがたい。

 スマートフォンからのカメラ設定の変更などは、操作した瞬間即座に反映される一方で、録画開始・停止などの操作はボタンを押してからの反応が微妙に遅れることがある。録画停止したつもりがなかなか停止されず、もう一度停止ボタンを押したら瞬間的に再録画が始まってしまった、という状況に陥りがち。静止画の手動撮影モードでは数秒おきでしか連写できないので、もう少し応答性を高めてほしいと感じる部分だ。

 GoPro App上で撮影済みデータの再生を行なえないのは残念だが、カメラ本体とWi-Fi BacPacそれぞれのバッテリ残量のほか、装着しているSDカードの残り容量をもとにした撮影可能時間・枚数などを確認できる点は気が利いている。リモート操作する機器をリモコンからスマートフォンに、あるいはスマートフォンからリモコンに、相互に切り替えられるのも、シチュエーションによっては重宝しそうだ。

バッテリー残量と、SDカードに記録している映像の数、残り撮影可能容量も確認できる
設定画面にはBluetoothのアイコンもあった。現在は使えないが、Wi-Fiだけでなく、Bluetoothを使ったコントロールもできるようになるのかもしれない

■ 雨のジムカーナレースで試してみた

「Wi-Fi Remote」を腕に装着するときは、着ている服によってはバンドが少し短めに感じる

 10月21日に福島県西会津町で開催されたジムカーナのチャリティレースに参戦し、そのときの走行シーンをWi-Fi RemoteとWi-Fi BacPacを用いて撮影してみた。当日は雨が断続的に降り続くさえないコンディションだったものの、防水対応のWi-Fi Remoteは気兼ねすることなく長時間身につけていられた。

 ただ、付属のバンドで腕に巻き付けたところ、上半身に着用しているプロテクターのせいもあってバンドの長さがやや足りず、思った通りの位置に固定できなかった。人やシチュエーションによって体格も装備も異なるので、もう少しフレキシブルに対応できる作りにしてほしい。とはいえ、固定する部分の構造はシンプルなので、バンド程度であれば自作するのも難しくなさそうだ。

 フロントタイヤの動きがわかるアングルを狙ったため、カメラは車体の下の方、ちょっと手が届きにくい位置だ。できるだけカメラのそのままの画質をお見せするため、動画編集の必要がないよう毎回一発撮りしているのだが、Wi-Fi Remoteでの操作はこれまでにない安心感があった。スタート・ストップのためにわざわざカメラに手を伸ばすこともなく、きちんと動作しているかどうかまで手元でチェックできるのは、特にこういったレースのように時間に余裕がない中では気分的にかなり楽。最後は思わぬアクシデントでしばらくストップするのを忘れてしまったが……。

【720p/60fps】
動画サンプル
(220MB)

■ HD HERO2の活用幅を確実に広げる「Wi-Fi Combo Kit」

 ショップによっては実売価格が1万円台前半ということもあり、すでにカメラ本体を所有しているなら、追加費用はさほどかけることなくWi-Fi対応が実現する。リモコンのボタンの反応はきびきびしているとは言い難いものの、GoProの使い勝手を大幅に高めてくれることは間違いない。GoPro Appの完成度も高く、スマートフォンユーザー(いまのところiPhoneだけだが)であればWi-Fi Combo Kitはぜひ手に入れておきたいアイテムだ。

 新規に買い揃える場合は、たとえば「GoPro HD HERO2 Motorsports Edition」が実売3万円弱なので、「Wi-Fi Combo Kit」と合わせて購入すると4万円を超える計算となる。充実したオプションや利用事例の多さはGoProの最大の特徴だが、他社がトータルで3万円程度でWi-Fi対応を実現していることを考えると、やや高価に感じてしまう。

 ただ、Wi-Fi Remoteで全機能を手元で操作できるというのはGoProならでは。また、Wi-Fi Remoteが必要なく、「スマートフォンからのプレビューや操作だけが必要」といった場合は、Wi-Fi BackPacの単品販売も11月に予定されている。価格は未定だが、米国では50ドルを切っているので、GoPro HD HERO2とあわせても4万円以下になると思われる。必要にあわせて、機能を選べるという柔軟性はGoProならではといえるだろう。

 また、ここへきてWi-Fi/1080p 60fps(最上位機のBlack Edition)対応の「GoPro HD HERO3」も米国で発表された。今回のWi-Fi Combo Kitの日本発売が、米国から3カ月以上遅れたことを考えると、HD HERO3の国内発売も先になるとは思うが、なかなか悩ましいタイミングだ。とはいえ、GoPro HD HERO2を今秋、冬使いまわすアイテムとして、Wi-Fi Combo Kitの登場を歓迎したい。

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(2012年 10月 26日)

[ Reported by 日沼諭史 ]