日沼諭史の体当たりばったり!

使い倒したくなる4Kテレビ。Android TV搭載の4K BRAVIA「55X9300C」

 これからのテレビに求められるものってなんだろう。4Kはともかく、8Kのような高解像度は、業界が躍起になって進めているほどには、一般の視聴者は求めていないかもしれない。「面白い番組さえ見られればいい」、そう思っている人が殆どではないだろうか。

高画質・高音質をネタに親子の会話も弾む(?)BRAVIA「KJ-55X9300C」

 テレビをテレビ放送を見るためのアイテムとして純粋に捉えるなら、「面白い番組」が放送されていないとテレビを買う意味はない。でも、今やパソコン、スマートフォンアプリ、ゲームや音楽・動画配信サービス、その他もろもろのエンタメ機器やコンテンツが山ほどある時代。テレビやテレビ番組は、もはや「ワン・オブ・ゼム」でしかない。だとしたら、自宅の家電の中心的な存在として“でん”と置かれるテレビには、山ほどあるエンタメコンテンツを集約して、リビングでそれらを全部楽しめる端末であってもいい。

 と、そのためかどうかは分からないが、かくして各社テレビメーカーは、テレビにインターネット接続機能をもたせ、WebブラウザーやYouTube、独自の動画コンテンツ配信サービスなどを搭載してきた。最近ではNetflix、Huluといった動画見放題サービスにも積極的に対応している。ただ、テレビに搭載するOSが独自仕様だと、続々と登場する新しいコンテンツサービスに対応し続けていくのは困難だ。

 だったらOSごと汎用性の高いものにしてしまえ! という単純な考えで採用したわけではないと思うけれど、ソニーは'15年のテレビから、スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスと同じAndroid OSを基盤としたテレビ向けのプラットフォーム「Android TV」を全面的に採用した。

Android TVはAndroidらしく、このようなホーム画面がある

 そんなこんなで、スカパー! 4K放送を見るのと合わせてお借りした55型4Kテレビ「BRAVIA KJ-55X9300C」を触ってみたところ、これは4K放送を見るためだけのものじゃない、ということがはっきり分かってきた。「これからのテレビは、こういうものだ」と思える実に魅力的な1台だ。今回はX9300Cの個人的に「イイ!」と思えるポイントをざっくり紹介したい。

あらゆる音声をハイレゾ(相当)で再生できるのがイイ!

 スカパー!アンテナを自力で設置し、スカパー!プレミアムサービスの4K放送をX9300Cで見るところまでを紹介した前回。オンデマンド配信サービスとは違って「テレビ付ければすぐ4K」を実現できる4K放送対応テレビは、やっぱりすばらしい、と改めて感じたわけだけれど、4K放送はあくまでもX9300Cが扱える数あるコンテンツの1つにすぎない。X9300Cには、他にも楽しめる機能やコンテンツがたくさんある。

スカパー!の4K放送はもちろん高画質だし、いつまでも見ていたいが、X9300Cはそれだけじゃない
両サイドにあるスピーカー

 なかでも真っ先に紹介したいのが、「ハイレゾオーディオ」に対応していること。テレビ製品で正式にハイレゾ対応をうたうものは、発表当時の2015年5月時点で世界初。X9300Cの外観で一番目を引く、画面の両サイドにこれみよがしに並んだツイーター、サブウーファー、ウーファーの3つが、ハイレゾ対応への期待をいやおうなしに盛り上げる。というか、デカい。

 筆者の自宅リビングに設置した時は、この左右に張り出したスピーカーユニットのおかげで、幅2メートルの自作AVラックにオーディオ用スピーカーと一緒に載せている状態でギリギリぴったり収まるサイズだった。威圧感はかなりのものだ。が、ひとたびスピーカーで音を出せば、伊達に左右に張り出しているわけではないことが分かる。

本体はかなりデカい

 最近の大画面テレビは、できるだけベゼルを狭くしてコンパクト化と大画面を両立させているものが多いけれど、そのせいでスピーカーは本体下部や背面寄りの側面に追いやられ、結果として音質はこもりがちでぼんやりとした、いまいちシャキッとしないものになっていたりする。

 対してX9300Cは、潔いまでにスピーカーを前面に露出して、幅は取るけれども音質面でははるかに有利なスタイルとした。歪みを発生させるダンパーの代わりに磁性流体を用いたウーファーとサブウーファーに、グラスファイバーを採用したツイーターの組み合わせで、普通の地上デジタルのテレビ番組の音声ですら、これまで体験してきたテレビのどれよりもクリアに聞こえる。中低音のキレの良さも別次元だ。

 そして、USBポートに接続した外部ストレージに保存しているハイレゾ音源をX9300C標準の「ミュージック」アプリで再生すると、「ハッ」とするほどのリアリティある音を奏でる。ミュージックアプリはDLNAプレーヤーとしても動作し、DLNAサーバー機能をもつNASなどに保管したハイレゾ音源も再生可能だ。

USBポートにメモリやHDDなどのストレージを接続すると、アプリを選択するウィンドウがポップアップ
ミュージックアプリはホーム画面からも選択できる
ミュージックアプリでハイレゾ音源を選択
DLNAサーバー上の音源を再生することも可能

 対応するハイレゾ音源フォーマットは192kHz/24bitまでのWAV/FLACなど(残念ながらDSDには対応しない)。実際のスピーカー出力時は96kHz/24bitまでとなるが、ソニーの独自技術「DSEE HX」によってハイレゾではない圧縮音源やテレビ音声、動画配信サービスの音も96kHz/24bitにアップコンバートしてハイレゾ相当の音質で再生する仕組みになっている。つまり、X9300Cのスピーカーから流れる音声は、あらゆるコンテンツ視聴で常にハイレゾ(またはハイレゾ相当)なのだ。「4K+ハイレゾ」の究極のコラボをテレビ単体で体験できるのは、他にはない魅力と言えるだろう。

ダイナミックさも、繊細さも再現する、テレビとは思えないサウンド

 その他、ハイレゾの高音質を支えるデジタルアンプ「S-Master HX」や、「Clear Phase テクノロジー」、仮想的なサラウンドサウンドを実現する「S-Force PROフロントサラウンド」といった機能を搭載。テレビの設置方法に合わせた音声出力オプションも用意し、今回の筆者宅のように付属スタンドでテレビを置く場合は“テーブルトップ”、別売の金具を使って壁掛けする時は“壁掛け”を選択することで、それぞれに最適な音質で聞けるようになる。こうしたサウンド面の充実っぷりは、さすがソニーと言わざるをえない。

DSEE HXはスピーカー出力時にのみ有効となる
壁掛けか、付属スタンドで置くかを選ぶと、それぞれに最適な音質に調整される

アプリは少ないけれど「いじれる」のがイイ!

 もう1つ重要なポイントは、冒頭でも述べたようにX9300CがAndroid TVだということだ。ここで「Androidだから、好きなアプリをガンガン追加できるぜ!」と言うつもりはない。X9300CにはPlayストアアプリがあるので、これを使ってGoogle Playにアクセスし、アプリをダウンロードして追加することはもちろん可能ではある。けれど、スマートフォン・タブレット向けのアプリは利用できず、使えるのはAndroid TV対応アプリのみ。しかもそのAndroid TV対応アプリがまだまだ少なく、「Androidアプリを好きなだけダウンロードして楽しめる」と言い切れる段階にはないのが実情だ。

ホーム画面に並ぶアプリ
ミュージックプレーヤーを検索しても、3つしか見つからなかった

 それでもAndroid TVのメリットや楽しみ方はいくらでも見つけられる。動画配信サービス「dTV」にも対応できているのはプラットフォームがAndroidだからだろうし、Netflixの他にHuluやYouTubeなどの動画見放題サービス、動画配信サービスを簡単に利用できるうえ、PlayムービーやPlay Musicでスマートフォン上で視聴している内容と同期できるのもAndroidならではだろう。

Huluはアプリをインストールすれば利用可能
dTVは動画だけでなく、最近追加されたマンガやカラオケにも対応する
Netflix。4Kコンテンツの暖炉は趣があって良い
YouTubeの4K動画も視聴可能

 Google Playでは少ないながらもレース、アクション、RPGなどのバリエーション豊かなAndroid TV対応ゲームをダウンロードできる。リメイク版とはいえ55インチの大画面で「FINAL FANTASY VI」を再び遊べる日が来るとは思いもしなかった。これが、直接テレビの上で動作しているというのが不思議な感覚である。

ゲームはそれなりにバリエーションはあるけれど、全体的にはまだまだ少ない
FINAL FANTASY VIをプレイ。付属リモコンでちゃんと遊べる

 Chromecastと同等の「Google Cast」機能を標準搭載しているのもうれしい。X9300Cは無線LANだけでなく有線LANも備えているので、筆者は接続の安定性を考えて有線LAN接続にしたのだが、スマートフォンの画面をX9300Cに“キャスト”する際には、驚くほどスムーズにネットワーク上のX9300Cを認識し、動作も極めて安定していた。Chromecast単体をテレビのHDMI端子に接続して利用するパターンだと、無線LAN接続が不安定になることも多かったのだが、X9300Cではそんな問題は一切なかった。

Chromecastと同等の機能を実現するGoogle Cast
サクッとスムーズにつながる
スマートフォンで見ている内容を大画面で表示

 Androidということで、「システムをいじる楽しさ」を満喫できるのもすばらしい。これまでのテレビだと、画質の調整/追求余地はあったものの、Android TVになるとそれ意外にも、「いじれる場所」は桁違いに多くなった。もっとも、その大部分は普通にテレビを使っている限りは触れる必要のないものである。でも、X9300Cでどんなことができるのか、Android TVとしてどんな機能が用意されているのか、ホーム画面や設定画面から項目を1つ1つじっくり見ていくだけで、いくらでも時間をつぶせる(本当に時間がつぶれた)。

深掘りしたくなる設定画面
Wi-FiでX9300Cにスマートフォンから直接接続して、写真などをテレビに表示できる「フォトシェアプラス」という機能もある
おいしそうなデザートを自慢

 例えばX9300CのUSBポートにいろいろなUSB機器を接続して使えるかどうか試したり(メモリやHDDなどのストレージ類は認識するが、USB DACは認識しなかった)、端末情報のOSのビルド番号でリモコンのキーを連打して開発者向けオプションが表示されるか試したり(「表示されました」と画面には現れるが、開発者向けオプションが実際に表示されることはなかった)と、Androidスマートフォンとも共通する深掘りしていく楽しさがそこにある。

USBポートにいろいろ挿してみよう

 さらにOS(ソフトウェア)アップデートが適宜行なわれ、機能追加や動作改善がどんどん施されていくという点でも、そこにAndroidっぽい進化のダイナミズムみたいなものが感じられて、改めて従来型のテレビとは違うんだなあと思える。発売当初はかなり不安定の部分が残っていたようだが、今回2週間ほど試した限り、大きな問題は生じなかった。

 大げさにいえば、テレビなのにパソコンみたいに細部をいじる楽しみや、使い倒したくなる要素が盛りだくさんなのだ。

「テレビは見ない」という人にも、4K・ハイレゾテレビの魅力を

 X9300Cは、発売直後こそ安定性や外付けHDDで録画できないなどの課題があったが、現在はかつて不満とされていた点はほとんど全て解消され、フツーに使えるハイグレードな4Kテレビになっている。今後もある程度の機能アップや動作改善が続いていくだろうし、さらなる高画質・高音質化が実現される可能性も期待したい。

 「テレビを見ないからテレビはいらない」という人もいるだろうけれど、テレビ放送が膨大なコンテンツの一部となった今では、テレビを使って番組以外の映像・音楽コンテンツをどう楽しむか、どう楽しめるか、という点が重要となる。高解像度、大画面の臨場感と没入感は、スマートフォンやタブレットの画面サイズでは到底味わえないもの。4Kとハイレゾでそれらを堪能でき、しかもある意味据え置き型Android端末としていじりまくれるX9300Cは、初めて4Kを体験する人も、パソコンやAndroidを使い倒している上級者も、満足できるはずだ。

Amazonで購入
KJ-55X9300C

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。