小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第896回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

“Amazonが作ったオーディオアンプ”はひと味違う!「Echo Link Amp」

広がるAI製品

AIスピーカーもどうやらAmazon vs Googleという図式で均衡が保たれつつ、日本でも認知度は高まってきているのかなという気がする。そして当然こうした技術は、「スピーカー」で止まっているわけはなく、次のステップへ進まなければならない。

左から「Echo Link」、「Echo Dot」、「Echo Link Amp」

すでにAmazonは「Echo Spot」を、Googleは「Home Hub」をといった具合に、ディスプレイ製品を登場させ、サードパーティの参入も始まっている。加えてfacebookも、日本では未発売だが「Portal」というディスプレイ製品で参入を果たしているところだ。

そんな中、オーディオはもうちょっとやることあるじゃろという事なのかわからないが、4月10日にAmazonから「Echo Link」と「Echo Link Amp」の国内発売が発表された。

Echo Linkはいわゆるプリアンプで、24,980円(税込)。Echo Link Ampはプリメインアンプで36,980円(税込)となっている。オーディオ製品としてはなかなかリーズナブルだが、Amazonが作るからには当然普通のアンプではない。Echoデバイスと連携できるというのがウリとなっている。

今回はEcho DotとEcho Link Ampをお借りすることができたので、じっくり使ってみよう。

大胆な割り切り

さてそのEcho Link Ampだが、正面を見るとボリュームしかないという、超シンプル仕様。よく見ると右下角にイヤフォン端子がある程度だ。見た目はパワーアンプに見えるが、複数の入力を備えるプリメインだとはわからない。

正面にはボリュームしかないので、シンプルなパワーアンプに見える

背面に回ると様相が変わる。入出力として、同軸デジタル、RCAアナログ、光デジタルがある。加えてLAN端子と、ステレオスピーカー端子もある。サブウーファー出力もある。

正面からは想像もつかない豊富な背面端子

一方同時発売のEcho Linkは、ちょうどパワーアンプ部がない(スピーカー端子もない)だけで、入出力は同じである。別途パワーアンプがある人は、こちらでも十分だろう。

Echo Link(左)はパワーアンプがないだけ
背面はスピーカー端子がないだけで、あとは同じ

出力は同時に全部出るとして、入力がこれだけあれば、普通は入力セレクターがあるものだ。だがフロントパネルには何もない。このあたりはどうなっているのか、追々調べていこう。

Echo Link Ampの中身は、名前のとおりEchoデバイスである。つまりは、Echo Dotなどと同じように、アプリでのセットアップが必要になる。従来型Echoと違い、Echo Link Ampにはマイクがないので、ダイレクトに音声入力は受け付けない。

しかしアンプなので音は出せる。設定による反応も音で知らせてくるので、セットアップを始める前にスピーカーを繋いで音が聴けるようにしておくほうがいいだろう。今回はステレオスピーカーにKlipschの「RB-51」を、サブウーファーにソニーの「SA-CS9」を繋いでいる。

今回のテスト環境
サブウーファはソニーの「SA-CS9」を足もとに仮設

AlexaアプリのほうもEcho Link Amp発売と同時にアップデートされており、セットアップメニューにはすでに「Echo Link」と「Echo Link Amp」がある。そう言えば重要な事を言い忘れたが、本機には電源ボタンがない。Echo Dotと同じように、基本は電源は入りっぱなしで、使ってないときは省電力になる、という作りである。

AlexaアプリもEcho Linkシリーズに対応

背面にあるボタンは電源ではなく、アクションボタンだ。Echoの天面に付いているヤツと同じである。これを長押しすると接続モードに入るので、あとはアプリの指示に従ってWi-Fiをはじめとする基本設定を行なう。

背面のボタンを長押しして設定スタート

既存のEchoシリーズと連携可能

設定のポイントは、既存のEcho Dotとの組み合わせをどう考えるか、であろう。極端に言えば、Echo DotなしでEcho Link Ampだけでも使える。そのかわり音声コマンドには対応しなくなるので、すべての操作はアプリを使って行なう必要がある。

Echo Dot等と組み合わせると音声コマンド対応になる

一方Echo Dotと組み合わせると、音声コマンドも併用できる。Echo Dotに音声コマンドを投げ、その結果をEcho Link Ampへ返すというイメージだ。例えば「Alexa、ビリー・ジョエルの音楽をEcho Link Ampで再生」などと音声で指示する。

音質に関しては、Echo Dotよりも当然Echo Link Ampのほうが上質なので、いちいち「Echo Link Ampで再生」というのも面倒だ。そこでEcho DotとEcho Link Ampを一つのグループ内にまとめ、音楽再生のメインスピーカーに指定する。こうしておくと、通常の受け答えはEcho Dotから、音楽再生だけは自動でEcho Link Ampから行なわれるようになる。

今回は「仕事場」というグループを作り、メインスピーカーにEcho Link Ampを指定した。これでEcho Dotに向かって「Alexa、ビリー・ジョエルの音楽を再生」というだけで、自動的にEcho Link Ampから音楽が流れる。

複数のEchoを一部屋にまとめ、Echo Link Ampをメインスピーカーに設定

ボリュームは、回していくと音量をLEDが表示していくタイプ。LEDは円形に配置されているが、ボリュームノブはLED位置とリンクしているわけではなく、かなりの角度回してやる必要がある。逆に言えば微妙な音量調節の可能になるので、これはこれで使いやすい。

ボリュームを回すと、LEDでレベルが表示される

音楽を聴くための一番シンプルなセットアップが、この状態だ。音源はAmazon Music UnlimitedのEchoプランを契約しているので、ネットから流れてくる。つまりネットの設定さえすれば、特に音源を繋がなくても、ちゃんとしたスピーカーで音楽再生ができるというのが、Echo Link Ampのポイントである。

アンプとしての音は、若干腰高ではないかという評価もあるが、サブウーファを繋いでしまえばそうした印象はなくなる。今の音楽トレンドは低音重視なので、サブウーファ出力を付けたのは賢明である。

加えてアプリ側でも、3バンドのイコライザーが使える。アナログ入力レベルの「一般」と「プロフェッショナル」があるのは、-10dBと+4dBの切り換えだろう。

アプリ側でEQの設定も可能

ソース切り換えの仕組み

ではEcho Link Ampに複数の音源を繋いだ場合、どうなるのか。入力セレクタがないにも関わらず複数の入力を持つわけだから、内部的なプライオリティがあるはずだ。

そこでAmazon Music Unlimitedで音楽を再生しつつ、外部入力として光デジタルとアナログRCAに音源を接続して音楽を再生し、どういう順序で再生されるのかテストしてみた。

3ソース同時に再生している場合は、Amazon Music Unlimitedが優先される。Amazon Music Unlimitedの再生を止めると、光デジタル入力に切り替わった。光デジタル入力を止めると、今度はアナログ入力に切り替わった。

今回は同軸デジタルの音源ソースを用意できなかったので、光と同軸とどちらが優先されるのかは不明だが、プライオリティとしては、Amazon Music Unlimitedが最優先、そこがなければ光デジタル入力、そこもなければアナログ入力の順に切り替わっていくようだ。

加えて本機には、Bluetoothもある。スマートフォンとダイレクトにBluetooth接続すれば、いわゆるBluetoothスピーカーと同じ動きになる。この場合はボリュームなどのコントロールがBluetoothに取られる事になるが、Echo Dotなどを使ってAmazon Music Unlimitedを再生すれば、そちらが優先される。

Bluetoothもあるので、スマホ等とペアリングも可能

どのみち音楽ソースは同時に1つしか鳴らせないので、「音が行ってるヤツが鳴る」という考え方で間違いはないが、音源ソースを聴き比べるような場合は、ソース側の再生を止めずに切り換えられた方がよい。また、鳴ったもん勝ちで音が出てしまうと、今どのソースから音が出てるのかが把握しづらい。せめてアプリ側で、入力ソースの切り換えか、どの入力が鳴っているかの表示ぐらいはあってもいいだろう。

ただ普通の家庭であれば、そんなに音源ソースが一杯あるわけではないので、ある程度決め打ちで使っていくという格好だろう。まあ製品の成り行きからすれば、購入者のほとんどはAmazon Music Unlimitedメインで使うという事になる。

個人的には、音声コマンドでは音楽の細かい好みの指定まではできないので、プレイリストが自由に作れるGoogle Play Musicのほうを愛用している。これをChromeCast Audioに飛ばし、光デジタルでEcho Link Ampと接続している。

ちゃんとしたブックシェルフとサブウーファーの構成で、AmazonとGoogleが提供する音楽サービスを一元的に聴けるというのはなかなかいい。様々なスピーカーと組み合わせられるという可能性を考えれば、パワーアンプ付きで36,980円(税込)は、なかなかお買い得と言えるのではないだろうか。

総論

Echo Link AmpおよびEcho Linkは、説明が難しい商品だと思う。家電量販店に置いても、そもそもAmazon Echoが何だか分からない人や、ストリーミングサービスを使ったことがない人にこれが何なのか、説明するのは至難の業だ。つまり、分かってる人しか最初からターゲットにしていない商品なのである。

そもそもパッケージの中には、詳しい使い方や設定方法が書かれた説明書もないのだ。スマホのAlexaアプリがなければ、初期設定もままならない。だからこそ大胆にコストカットして、低価格でハードウェアが提供できるのだろう。

逆に「オーディオ製品」に囲まれて育っていない若い人は、これをきっかけにオーディオ機器のセットアップや、パッシブスピーカーの面白さに気付いて欲しいと思う。実家に余っているスピーカーや、中古販売店で格安で売られているスピーカーを買ってきて繋ぐというのも、面白いはずだ。

入門機並みの価格だが、奥深く楽しめる。いまどきなかなかないタイプの製品に仕上がっていると思う。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。