小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第914回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

サウンドバーにAndroid TVを入れるとこうなる! JBL「LINK BAR」

サウンドバーにOS?

2017年〜18年は、テレビ関連オーディオ製品の当たり年であった。各社から低価格ながらも高音質なサウンドバーが次々と登場し、加えてネックスピーカーも新参入が相次いで市場を賑わしたものだった。一方今年のオーディオ関係は完全ワイヤレスで大きな技術革新があり、今年後半の主戦場はそこになりそうだ。

JBLの「LINK BAR」

とはいえ、昨年・一昨年から火が付いたサウンドバーも、着実に面白い製品に仕上がってきている。今回ご紹介するJBLの「LINK BAR」は、サウンドバーの内部にAndroid TVを搭載した、ユニークな製品だ。8月23日発売で、直販サイトの価格は39,880円。

スピーカーにテレビOSを積んでどうするのか、わけがわからないかもしれないが、要するに“テレビにHDMIで外付けするタイプのネットストリーミングデバイスが、スピーカーを積んだ商品”と考えたほうがわかりやすいかもしれない。本機で使えるGoogleサービスは、Android TV、Googleアシスタント、Chromecastだ。テレビを拡張する機能を、ハードウェア的にもソフトウェア的にも1つにまとめたというわけだ。

今回はサウンドバーの新展開、「LINK BAR」をテストしてみよう。

スリムボディから重厚な低音

まず外観だが、見た目的には一般的なサウンドバーと特に変わったところはない。全長1,020mm、高さ60mm、奥行き93mmと、高さを抑えている。高さが低いとその分画面を邪魔しないので、テレビ前に置きやすい。

高さを抑えた細身のボディ

1,020mmという全長は、サウンドバーにしては長いほうだろう。40型程度のテレビでは横幅があまる。合わせるなら46型以上がいいだろう。

合わせるテレビは46インチ以上が妥当なところ

内蔵スピーカーユニットは、80×44mmの楕円形ウーファを4基搭載。低音は左右にあるバスレフポートから出力され、サブウーファなしで十分な低域を確保する。高域は20mmツイーターが2基。最大出力は100Wで、周波数特性は75Hz〜20kHzとなっている。

スピーカーは直接見えないが、ウーファを4基搭載する
両サイドに大きなバスレフポート

天板のボタンは、入力切り換え、Bluetoothペアリング、ボリューム、マイクのミュートスイッチがある。JBLロゴの両脇にある穴はマイクで、音声コマンドに対応する。天面右側には、Googleアシスタントのロゴがある。

天面のボタン類もシンプル

また正面中央には、Google Homeでお馴染みの4つの丸い白色LEDが仕込まれている。音量表示やGoogleアシスタント動作中のステータスを表示する。

背面の入出力端子を確認しておこう。左から光デジタル入力、アナログステレオミニ入力がある。イーサネット端子もあるが、もちろんWi-Fiにも対応する。HDMI入力は3系統で、レコーダやゲーム機を接続できる。もう一つあるHDMIは出力で、テレビのARCポートと接続することで双方向通信となる。本機はOSとしてAndroid TVを搭載しているが、そのUI画面はこのポートから出力される。

背面端子。スピーカーなのにHDMI出力があるのがポイント

USB-C端子もあるが、これは修理時に使用するサービス端子で、特にユーザーが利用できる機能はない。そのほか、ワイヤレスサブウーファーをペアリングするためのボタンも備えている。ただJBLブランドのワイヤレスサブウーファー単品は、日本国内では販売されていないようだ。

一般のサウンドバーと違うところは、電源ボタンがないところだ。Google Home同様、電源を入れたらずっとユーザーのボイスコマンドを待ち続ける仕様のため、「電源を切る」機能はない。

リモコンも見ておこう。十字ボタンを中心にしたシンプルな作りだが、入力切り換えと並んでNetflixにダイレクトに行けるボタンがある。リモコン上部にある電源ボタンは、LINK BAR経由でテレビの電源を切るためのものだ。

付属リモコン。音声コマンド入力にも対応する

また上部にマイクも備えている。Googleアシスタントボタンを押してリモコンに向かってしゃべると、いちいち「OK Google」と声をかけなくても音声コマンドを受け付ける。スピーカーから音が出ている時はサウンドバー本体のマイクからはほとんどボイスコマンドが拾えないので、リモコン側で受け付けるようにしたのだろう。本体との通信はBluetoothなので、音声コマンドまで伝送できるようだ。

【お詫びと訂正】記事初出時、“本体との通信は電波ではなく赤外線”と記載しておりましたがBluetoothの誤りでした。お詫びして訂正します。(10月5日19時)

スルスルとコンテンツが視聴できる

では早速使ってみよう。初期設定は簡単で、Androidスマホと本機を同じWi-Fiネットワークに繋げば、スマホ内のGoogleアカウント情報を本機に転送できる。

通常のサウンドバーなら、まずテレビ音声やらBlu-rayからの再生を試すところだが、本機の場合コンテンツが本機の中にあるので、テレビの外部入力でLINK BARを選ぶところから始まる。

文章で書くとややこしいが、結線から考えると簡単だ。本機のHDMI OUTと書かれた端子を、テレビのHDMI入力のうち、ARCと書かれた端子に接続する。つまりスピーカーであるLINK BARが再生機で、テレビが受け側となる。

一方でテレビ側でテレビ番組を見る時は、HDMI ARC端子から音声が逆流してきて、LINK BAR側で音が鳴る。したがってARC入力端子があるテレビであれば、HDMIケーブル1本接続するだけである。加えてテレビ側がCEC対応であれば、テレビのリモコンでLINK BARの音量を変えたり、LINK BARのリモコンでテレビを消したりといったことができる。

というわけで、テレビ側の入力切り換えでHDMI ARC端子を選ぶと、Android TV画面となる。

一番上の行は、インストールされているアプリのショートカットだ。そして次の行からは、Netflixをはじめとする各サービスお勧めのコンテンツが表示される。このホーム画面を使うと、どのサービスを利用するかをあまり意識することなく、コンテンツの中身中心で選ぶ事ができる。

アプリもGoogle Play対応なので、幅広いアプリがインストール可能だ。SpotifyやAWA、torne mobileなど、Google系ではない競合サービスも問題なく利用できる。

多彩なアプリが利用できるのは、Google Play対応ならでは
アプリなどをインストールするストレージ容量は、4.3GBのようだ

横幅が広いので、ステレオイメージはかなり広い。テレビの横にスピーカーがあるように感じさせる作りだ。音楽コンテンツを視聴してみたが、全体的に中低音域の密度が高い音作りだ。逆に古い音楽はそのあたりに音の重心があるので、ややもっさりした印象もある。

EQはユーザーが自由に設定できるわけではなく、4つのモードから選択する。「標準」、「映画」、「音楽」、「音声」の4つだ。

サウンドモードは4タイプから選択

「映画」は低域をかなり重視した音作りだ。「音楽」は正直、「標準」と違いがよくわからなかった。「音声」は中高域を強調してセリフを聞きやすくしている。手動で切り換えるには面倒なところに設定があるので、基本的にはオールマイティな「標準」を使って行くことになるだろう。

低音が物足りない場合は、「ベースレベル」で補強することができる。ただ元々低音が出る作りなので、ある程度の音量で聴く場合は、+2ぐらいで十分だ。

若干難ありな音楽再生時の挙動

サウンドバーは映像コンテンツの補強のために使われるので、普通はテレビと併用する事になる。だが本機はChromecastに対応しており、スマホで再生中の音楽を本機で再生させることができる。

これはBluetooth接続とは違い、ストリーミングを受け取るのはスマホではなく、LINK BARのほうだ。したがってスマホは別のことに使えるというメリットがある。音楽再生の場合、テレビは関係ないので消してしまうことも可能だ。

ただしテレビの電源を再投入したり、入力切り換えを行なうと、音が出なくなる。LINK BARの中からGoogle Play Musicなどで音楽再生しても、Bluetoothで接続しても挙動は同じだ。

どうも音楽再生中にテレビ側の電源がONになると、スピーカーの音量がミュートされてしまうようだ。ボリュームボタンを押せば、すぐに元の音量に復帰する。これはテレビの電源ONでいきなり大音量が出ないようにミュートする仕様か、バグかもしれない。

音質はいいので、スピーカー単体としても積極的に利用したいところだが、機能が多くて整理できていない部分もあるのかもしれない。

総論

Amazon Fire TV Stickなどが低価格で出回る中、未だテレビでネットサービスを利用していない家庭は次第に少なくなっていると思うが、これら外付けデバイスに加えてテレビにサウンドバーを繋げるとなると、とたんにハードルが上がる。どうやればいいのかわからないので手を出せない人も結構いるのではないかと思う。

だがLINK BARであれば、スピーカー内部にサービスが入っているので、それらの整合性を考える必要がない。テレビ側にARC対応は欲しいところだが、なくても基本機能は問題なく使える。テレビ番組の音声をLINK BARで聞きたいときにちょっと面倒なだけだ。

スマホで視聴できる商業コンテンツの多くに対応しているところは、やはりAndroid TV OS搭載ならではの強みだ。価格的にも税抜き4万円を切っており、テレビの近くにスマートスピーカーを置くぐらいなら、これを買ったほうが全然楽しめる。

リビングに居ても結局スマホでコンテンツを見ているような人は、LINK BARでもっとテレビを活用してみてはどうだろうか。

小寺信良