小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第681回:なぜかリコーも参戦。時計風デザインがイカス! 防水耐衝撃アクションカム「WG-M1」

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第681回:なぜかリコーも参戦。時計風デザインがイカス! 防水耐衝撃アクションカム「WG-M1」

一つのジャンルを形成するアクションカム

 前々回、新しくアクションカム市場に参入を果たしたカシオ「EX-FR10」を取り上げたところだが、今回も新規参入である。フィルム時代からコンパクトカメラを得意とするリコーが、「WG-M1」でアクションカムに初参入を果たした。

リコー「WG-M1

 すでにニュースなどで画像をご覧になった方も多いと思うが、時計っぽいルックスでなかなかイカス。同シリーズとしてはすでに今年4月より、防塵・防滴タフネスデジカメとして「WG4/GW-4 GPS」が発売されており、M1はそれに続くシリーズという位置づけとなる。なんとこのWGシリーズとして、似たデザインの本物の時計までリリースしてしまう本気ぶりだ。

WG-M1
似たデザインの時計も発売される

 「WG-M1」は10月中旬発売予定で、価格はオープンプライス、直販価格は39,700円(税込)。カラーはブラックとオレンジの2色展開だが、今回はブラックをお借りしている。

 本体のみで防水耐衝撃、モニター付きということでは、JVCのADIXXIONシリーズが先行するところだが、後発となるリコーがどれぐらいレースに食い込めるか、注目である。なお、まだ発売前の製品でマニュアルが無かったため、操作方法などが間違っている可能性もあることを、あらかじめご了承願いたい。

いかにも頑丈なデザイン

 まずボディだが、特徴的なモニター周りのリングは、目盛りなどが沢山付いている割には特に回ったりするわけでもなく、いわゆる時計っぽいデザインを取り入れた格好だ。ボタンの機能を示す名版も付いており、画面を見ながらボタン操作をする際には目印になる。

時計っぽいデザインがイカス
ハンドルに装着してもかっこいい

 大型レンズも特徴的だ。一見前玉に見えるのはレンズプロテクターで、陸上用と水中撮影用の2つが付属する。球形のほうが陸上用だ。

大型レンズも好印象
レンズプロテクターは着脱可能
水中用レンズプロテクター
水中用に付け替えたところ

 レンズは35mm判換算で約16.8mmの固定焦点で、F2.8。画角は静止画4:3の時に約160度、動画では約137度(1,280×960撮影時)となる。ただ画角設定でWide、Mid、Narrow、Waterの4モードを備えており、単一画角ということでもないようだ。このあたりはあとで試してみよう。

 撮像素子は1/2.3型CMOSで、有効画素数は約1,400万画素。手ぶれ補正は動画のみ、電子補正が使える。

 レンズ左右にはステレオマイクがあり、映像はMPEG-4 AVC/H.264だが音声はリニアPCMとなる。オーディオが非圧縮なのは、アクションカムとしては珍しい仕様だ。

レンズの左右にステレオマイク

【撮影可能な画質モード】

解像度フレームレート
1,920×1,08030fps
1,280×96050fps
1,280×96030fps
1,280×72060fps
1,280×72030fps
848×48060fps
848×480120fps

 本体左側には大型のRECボタン、電源ボタンがある。反対側は真ん中にOKボタンと、左右ボタンがある。左右ボタンは、横から見れば左右だが、画面方向から見れば上下ボタンとして機能する。

Recボタンのみ大きめ
反対側はメニュー操作ボタン

 端子類は背面の蓋を開けた中にある。充電用USB端子とmicro HDMI端子、その下はバッテリスロットだ。底部には三脚穴のほか、スピーカーがある。

端子類は背面の蓋を開けてアクセス
バッテリ駆動時間は動画で約150分

 アクションカムと言えば、いろんなところに装着できるアクセサリが必要になる。これも新製品として、10種類が発売される。

 本体に同梱されているのは本体をつり下げるためのカラビナストラップと、テープで様々な場所に固定する「WG粘着マウント」のみ。追加アクセサリの中で今回お借りしたのは、グリップアダプタ「O-MA1531」(2,500円)、アングルアダプタ「O-MA1532」(1,200円)、ヘルメットストラップマウント「O-CM1536」(2,500円)の3つである。

本体をつり下げるためのカラビナストラップ
WG粘着マウント

 基本的には三脚穴に取り付けるだけなので、汎用品でもなんでも使えると言えば使えるのだが、これらはM1の底部の形状にピッタリ合うように作られているので、バランスの良さという点では専用品を使うメリットはある。

 グリップアダプタは、装着するとガンスタイルで撮影することができる。まあ確かにまっすぐ手持ちすればいいという時には、今の形状では握るところが限られる。アクションカムではありそうでなかったタイプのアクセサリだ。

ガンスタイルのグリップアダプタ

WGアングルアダプターは、1つのジョイントだけでは角度が足りない場合に付け足すためのもののようだ。ヘルメットストラップマウントは、手持ちのヘルメットに固定できる穴がなかったので、今回は使用しなかった。

3つセットのアングルアダプタ
左右のベルトで固定するヘルメットストラップマウント

手ぶれ補正は良好

 今回もまたロードバイクのハンドル部分に装着し、1,920×1,080/30pで走りを撮影してみた。動画では手ぶれ補正が効くので、撮影された動画はかなりなめらかだ。ビットレートは映像で15Mbps弱、リニアPCMの音声と合わせてトータルで16Mbps程度となる。正直、アクションカムでリニアPCMのメリットが出るようなシーンがあるのか疑問ではあるものの、風切り音低減といったメニューもあり、ビデオカメラとしてはまずまずのクオリティである。

 画角モードで3タイプあり、標準はWideとなっている。Mid、Narrowと順に試してみたが、確かに画角は狭くなるものの、絵の解像感は落ちていく。デジタルズームではなく、おそらく撮像素子の画素読み出し範囲を変えているのだろうと思われる。もし単純なデジタルズームであれば、連続でズームできたほうがメリットがあるため、そういう実装にするはずだ。

画角3モード比較。寄れるのは便利だが、解像感は下がる
3mode.mp4(48MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 解像度が落ちるのは残念だが、たしかに用途によっては画角が広すぎるというケースはある。アクションカムの文脈で他にこの手の機能を実装しているのはキヤノンの「iVIS mini」ぐらいかと思われるが、単焦点レンズの弱点をカバーする方法としてスタンダードになっていくかもしれない。

 一方静止画の方でも画角が3段階選べる。元々画素数が4,320×3,240ドットあり、等倍で表示できるディスプレイがないこともあって、あまり拡大による解像感劣化の影響は見られない。

【静止画での画角3モード】

WideMid.Narrow
陸上用
水中用

 陸上用と水中用2つのレンズカバーを付け替えてみてわかったのは、水中用のカバーでは一番広い静止画のWideでは、レンズカバーで周囲が若干ケラレることだ。このため、画角モードとしてWaterがあるのだろう。Wideよりも若干狭くすることで、ケラレ部分を切っているようだ。

 ただこの画角設定は、オートパワーオフで電源が落ちてしまうと、デフォルトのWideに戻ってしまう。競技の撮影の場合、画角はこれと決めたら、ずっとそれで何テイクも撮るのが普通ではないだろうか。また水中撮影で勝手にWideに戻ると、それ以降はずっとケラレの絵ばっかり撮れてしまうことになりかねない。デフォルトでWideに戻るのは、あきらかに余計な機能であろう。

 動画と静止画は、横のOKボタンで切り替えが可能だ。同じように画角設定も、メニューに入らずなんらかのショートカットで変更できると良かったかもしれない。

 静止画の写りは、解像感はあるものの若干ビデオっぽい仕上がりで、もう少しコントラストが欲しいところだ。フォーカスはパンフォーカスなので、ワイド端が広い割には近接には弱い。最短近接距離は、空気中で60cm、水中では80cmとなっている。

静止画のトーンは若干ビデオっぽい
コントラストは良好だが、近接ではフォーカスが合わない

 メニュー操作のUIは、筆者がリコーのカメラになれていないせいかもしれないが、違和感を感じる。メニュー操作したあと、メニューを抜けて撮影画面に戻る方法が、Recボタンを押すという操作しか見当たらなかった。Recボタンをこのような操作に割り当てていると、いわゆる逆スイッチを誘発しやすい。

M1のメニュー。操作はわかりやすいが、メニューからの戻り方に難がある

 例えばメニューを抜けてすぐ録画するには、素早くRecボタンを2度押すことになるが、このとき2度目が押されていなかったりすると悲惨な事になる。アクション撮影は一発勝負であることが多いため、逆スイッチは致命的である。実際にメニューから素早く2度押ししてみたが、2度目の押下を取りこぼしており、Rec状態にはならなかった。メニューから抜けるには、電源ボタンでも良かったのではないかと思う。

ユニークな設計だが……

 続いて水中撮影をテストしてみた。レンズプロテクタは陸上用と水中用に分かれているが、基本的には前面のガラスが曲面かフラットかの違いだ。何が違うのか、両方水中撮影してみたが、空気中用のタイプは水中でフォーカスが取れなかった。屈折率の都合で、設計を変えているという事だろう。水中用のプロテクタでは、問題なく撮影できた。

1カット目は陸上用プロテクタのため、水中でフォーカスが取れない。2カット目は水中用プロテクタによる撮影
water.mp4(54MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 ハウジングなしで水深10mまで耐えるので、本格的なダイバーの方には物足りないかもしれないが、普通に海やプールで遊ぶ程度なら十分だろう。

 その他の撮影機能としては、タイムラプス撮影機能も備えている。1秒、2秒、5秒、10秒、30秒、60秒ごとの撮影が可能だ。撮影後は動画ファイルになっているので、現場で仕上がりを確認することができる。

1秒間隔のタイムラプス撮影
timelapse.mov(13MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 日付と時間が自動的に焼き込まれるが、これを外す設定は見つからなかった。まあ記録としてあったほうがいいとも言えるが、作品を撮りたいという人にとっては邪魔だろう。

 アクションカムとしては比較的珍しい機能に、動体検知録画がある。これは画面内で何かが動いたときに、その瞬間のみを記録する機能だ。検知してから10秒間だけ動画を記録、その後はまた次の動きがあるまで待機する。監視カメラなどでは多く搭載されている機能だが、コンシューマ向けの一般的なカメラとしては、あまり搭載例がない。

 実際に階段を見下ろすような格好で待機させてみたが、動体を検知してから録画が開始されるまで1秒程度かかるので、過ぎ去りつつあるところしか撮れない可能性が高い。本来ならばループレコーディングしておいて、検知ポイントから遡って3秒前から残すみたいな仕様のほうが望ましいのだが、待機電力との兼ね合いでそこまでは難しいという事なのだろう。

動体検知録画による撮影。検知して録画が開始されるまでタイムラグがある
sence.mp4(15MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 また階段の上り下りが早い子供は、録画は開始されたものの、姿は映っていなかった。またネコも何度も上り下りしたはずだが、この画角でネコ一匹は小さすぎるのか、まったく反応しなかった。

 防水カメラだし、屋外のちょっとした監視用途に使えるといいかなと思うが、あいにく動作中もそれなりにバッテリーを消費するため、長時間の待機は難しい。外部電源を供給するには蓋を開けないといけないので、そうなると防水・防塵機能が使えなくなる。ACアダプタに繋げば外部電源でも動くが、USBモバイルバッテリを接続すると、強制的に充電モードになってしまい、外部電源では動かせなかった。

 このあたりはモバイルバッテリの作りによっても挙動が変わってくるとは思うが、どういう仕様のモバイルバッテリーなら動かせるのか、条件がよくわからない。これは以前試したソニーのコンパクトデジカメでも同じだった。

総論

 とかく初参入モノというのは、他社製品と比較されるし、不満点や改良点が見つかるもので、厳しい評価になりがちなのは申し訳ないところではある。もちろん開発時点では他社の作りはよく見ているのだろうが、特徴を出そうとして「あーそこ違う」というところも出てくる。

 WG-M1は、仕様としてはなかなか凝った部分もあるのだが、実際使ってみてそれは便利なのか? という疑問も出てくる。このあたりは、市場に製品を出してみて、ユーザーのフィードバックを得ながらやっていく事になるだろう。

 デザイン的には、時計ライクなルックスが好きな人も少なくないはずだ。本来ならばカシオがやるべきデザインじゃないのかこれはという気もしないでもないが、リコーでは実際に時計も出すという事なので、どのようなブランド展開になるのか楽しみである。

 本機はWi-Fiによるリモート機能にも対応しているが、まだアプリがリリースされていないため今回はテストできなかった。多くのメーカーがスマホコントロールに力を入れてきているだけに、このあたりの使い勝手も気になるところだ。

 いずれにしても、アクションカムも機能一点張りではなく、デザイン的な選択肢が拡がってきたのはいい傾向だ。そんなに市場が広いのかということもあるとともに、さらに多種多様なアクセサリ類も製品寿命がある限り在庫しないといけないので、各メーカーとも失敗したら大やけどである。それだけにプロモーションにも力を入れてくるだろう。

 海外ではGoPro、国内ではソニーが優勢とされているアクションカム市場が、ここに来てもう一度盛り上がってきている。そんな中、新規参入メーカーに勝算はあるのだろうか。来年のこの時期まで、きちんと注目していきたい。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。