小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第716回:い、いいのか!? この値段で。4K撮影可能なミラーレス、パナソニック「DMC-G7」

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第716回:い、いいのか!? この値段で。4K撮影可能なミラーレス、パナソニック「DMC-G7」

パナソニックがまた!

 パナソニックの4Kにかける熱量というのは、すごいものがある。昨年は4Kカメラとして、アクションカムの「HX-A500」、コンパクトカメラの「DMC-LX100」、ネオ一眼「DMC-FZ1000」、ミラーレス「DMC-GH4」、ハンドヘルド「HC-X1000」を投入。今年に入ってからはハンディカムコーダ「HC-WX970M」、Android端末型「LUMIX DMC-CM1」と、もはや「動画なら4K撮れて当たり前」というイキオイで製品を投入してきている。

DMC-G7

 これまでパナソニックのミラーレス一眼は、動画機能もフルスペックを搭載した最高峰がGHシリーズで、Gシリーズはその下の廉価モデルという位置付けであった。そのため、Gシリーズは残念ながら動画機能には特筆すべきところもなく、“がっつり動画を撮るならGHシリーズ”という事になっていた。

 ところが6月25日から発売が開始されたミラーレス一眼「DMC-G7」は、Gシリーズでも、4K/30p、24pの動画撮影に対応してきた。これまではハイエンドモデルが4Kに対応してきただけだったが、今年は下のモデルまで徐々に4K化していきそうな気配だ。

 価格はボディのみの店頭予想価格で84,000円前後、ネットでもまだ、これより2,000~3,000円ぐらい安い程度である。だがDMC-GH4が実売116,000~144,000円、中古でも100,000を切らない中、同じレンズ交換式で8万円台は安い。

 これまでGH4に行けないユーザーは、ネオ一眼「DMC-FZ1000」に行っていたわけだが、やはりレンズが変えられるとバリエーションも拡がる。静止画については僚誌デジカメWatchにレビュー記事もあるので、そちらを参考にして頂いて、こちらでは動画機能としてGH4との差をじっくりテストしてみよう。

カックカクのボディ

 まずボディだが、前モデルのG6やGH4と比べると、フォルムがカックカク。これまでのオーガニックな曲線の多いスタイルから一変、直線を多用して、角の立ったイメージとなっている。スタイルとしては古くさいのだが、昨今は丸っこいカメラばかりになってきているので、一周回って新しい感じになっている。

グリップ部以外は直線を多用したボディ
レンズをつけるとかなり硬派なイメージに

 そうは言ってもグリップ部など人が握る部分は従来通り曲線となっており、直線の曲線の同居具合が絶妙なバランスだ。重量はボディのみで410gと、GH4(約560g)より150gも軽い(※バッテリ/メモリーカード含む)。この軽量化は外装が樹脂製なのも大きいだろう。

グリップ部は柔らかい曲線

 撮像素子は4/3型Live MOSセンサーで、有効画素数1,600万画素、総画素数1,684万画素。GH4は1,605万画素/1,720万画素だったので、同じセンサーではない。撮影可能な動画形式は、AVCHDとMP4の2タイプ。このうち4Kが撮影できるのはMP4のみだ。

動画フォーマットはAVCHDとMP4のみ
GH4とは別のセンサーを採用
撮影モード解像度フレームレートビットレート
4K/30p3,840×2,16030p約100Mbps
4K/24p3,840×2,16024p約100Mbps
FHD/60p1,920×1,08060p約28Mbps
FHD/30p1,920×1,08030p約20Mbps
HD/30p1,280×72030p約10Mbps
VGA/30p640×48030p約4Mbps

 GH4ではほかにもMOV形式で記録でき、音声はリニアPCMで記録できるというメリットがあった。解像度では、シネマ用の4,096×2,160で記録できるモードもあり、さらにHD解像度では、200MbpsでAll Intraフレームで記録できるモードも備えるなど、プロ仕様だ。一方でG7にはそこまでの機能はないが、コンシューマで動画を楽しむには十分だろう。

動画フォーマット一覧。2フォーマットしかないので、選択はわかりやすい

 GH4は底部に集合端子があり、別売の拡張ユニット「AG-YAGHG」を装着すれば、音声入力や映像出力を拡張できた。一方G7には底部の端子がないので、「AG-YAGHG」そのものが使用できない。

G7の底部は至って普通のカメラ
GH4+別売の拡張ユニット「AG-YAGHG」

 ビューファインダはアスペクト比4:3 、約236万画素のOLED(有機EL)。液晶モニタはバリアングルで、アスペクト比3:2/3型/約104万画素。GH4のモニタは、解像度こそ同じだがOLEDである。このあたりが価格の差という事だろう。

ビューファインダはOLED
バリアングルで明るい液晶は屋外で助かる

 背面のボタン類はGH4にかなり近いが、十字キーが回転ダイヤルではなく、分離型のキーとなっている。また動画の録画ボタンも背面ではなく、上部にある。

背面ボタンはGH4にも近いが、十字キーはダイヤルではない

 上部はシャッターボタンの周囲がダイヤルになっており、操作性はいい。背面側のダイヤルはセンターに機能切り替えボタンを備えている。連写モードダイヤルには、新たに「4K PHOTO」モードが追加された。撮影モードダイヤルは、センターのロックボタンがないなど、GHとGはシリーズが違うので、細かい違いが色々ある。なお、4K PHOTOモードとは、4Kで撮影した動画から1コマを切り抜き、800万画素の静止画を作成する機能だ。選ぶと、切り出しに最適な設定に一括で切り替わるようになっている。

コントロールダイヤルは2つ
「4K PHOTO」モードが連写モードに追加

 SDカードスロットは、側面ではなくバッテリースロットの近くとなっている。逆にGH4がサイドスロットだったのは、底部にAG-YAGHGを付けてしまうと交換できなくなるからだろう。グリップ部の横にはリモートやmicro HDMI端子、AV出力端子がある。なおUSBはAV出力端子兼用で、専用ケーブルが付属するが、USB給電やバッテリの充電はできない。

メモリーカードは底部から挿入
側面は端子類のみ

 なお今回のレンズだが、GH4の際と同じ「LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.」、「LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8/POWER O.I.S.」の2本をお借りした。キットレンズの「LUMIX G VARIO 14-140 mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」もお借りしたが、条件を合わせるため、特に断わりのない場合は上記2本のXレンズを使用していると思っていただきたい。

今回お借りしたレンズ3本
GH4の撮影でも使用したG X VARIO 12-35mm/F2.8
同じくG X VARIO 35-100mm/F2.8
キットレンズのG VARIO 14-140 mm/F3.5-5.6 は、倍率も高く軽量

さすがの解像感

 ではさっそく撮影してみよう。撮影日は雨上がりの穏やかな日で、風もあまり吹いていない。季節的にも昨年のGH4の頃と1カ月も違わないので、光の具合もだいたい同じような感じだ。

 まず解像感だが、そこはさすがに4KとXレンズだけあって、十分だ。ただ露出は明るめにとるような傾向があり、白が飛び気味になる。また明るめと言うことはクロマが下がるので、全体的に色味が淡泊な感じの絵になりがちだ。露出補正で-2/3~2ぐらい絞り目にするか、フォトスタイルで工夫したほうが、発色も満足できるだろう。

解像感はGH4と遜色なし
明るめに露出する傾向があり、発色が薄くなる傾向が
露出補正を-2で撮影

 動画の録画開始は、マニュアル動画モードにしておけば、シャッター半押しでAFを合わせたあと、そのまま押し込めば録画が開始される。このあたりはGH4と同じ動作だ。

 49点AFも画面タッチでAFエリアグループが選択できるため、普段はこれで十分だ。合焦はGH4と同じく空間認識AFを採用しているため、動画でもかなり速い追従が可能だ。

4K/30pで撮影したサンプル
sample4K.mov(135MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 撮影中にフォーカスポイントをタッチすると、フォーカス送りのような効果が得られる。ただし空間認識AFの特徴である、ちょっと行きすぎて戻る感じは、「フォーカス送り」という表現方法にはあまり向いていない。やはりフォーカスを送った先でピタリと止まる方が、動画としては気持ちがいい。

空間認識AF特有のフォーカシング
afHD1080p.mov(26MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 そこでG7には、決まった長さの動画を撮影する「スナップムービー」という機能がある。この機能の設定で「ピント送り」を使えば、ピタリとピントを送る動画が撮影可能だ。使い方は簡単で、スナップムービーをONにしたあと「ピント送り」もONにして、フォーカスしたい2点間をドラッグするだけだ。

スナップムービー機能にピント送り機能を実装
スナップムービーで撮影した「ピント送り」
P1010512.MP4(9MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 そうすると2点間のフォーカスポイントを記憶するので、あとは録画ボタンを押せば、規定の秒数の間でフォーカス送りの映像が撮影できる。ただしスナップムービーは4Kでは撮影できず、HD解像度となる。ゆくゆくはどの解像度でも使える機能として、実装して欲しいところだ。

 液晶モニタは日中でも明るく、視認性には問題ない。G6と同じ消費電力で輝度を50%以上アップさせた新モニタは、バリアングルという事もあり、使い出がある。ただ解像度がそれほど高くないので、枝葉の細い斜め線は、点線のようになる事がある。一方ビューファインダは高精細で、アイカップはそれほど深くないが、反射光が入る事もなく、見やすい。

 キットレンズの「LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」は、光学手ぶれ補正も内蔵した軽量レンズだ。ズーム倍率も14mmから10倍あり、最初の1本としては使いやすいだろう。ただワイド端でも解放でF3.5、テレ端だと5.6になってしまうので、解放でも背景があまりボケない。少し前まではこれぐらいのF値のズームレンズは普通だったし、多くのキットレンズはどれもこのぐらいだろうが、Xレンズの全域F2.8キープのようなものを見てしまうと、少し見劣りするのは致し方ないところだ。

G X VARIO 12-35mm/F2.8で撮影
同アングルでG VARIO 14-140 mm/F3.5-5.6で撮影

 G7に搭載された新機能として、星空AFがある。多くのカメラでは、星空のような無限遠に対してオートフォーカスさせると、迷ってしまって全然フォーカスが合わないが、G7では低照度時に夜空の星を検知すると、星にフォーカスを合わせる。合わせるというか、無限遠に固定するという事だろう。星空AFで検知できるのは、仮面の中央約1/3のエリアに限られる。

 ただ実際にはかなり周囲が暗くないと、星そのものが見えないため、都心部ではうまく動かないかもしれない。また月はさすがに明るすぎるのか、星空AFに切り替わらなかった。月は被写体としてよくあるので、月を上手く撮影するアルゴリズムがあってもいいかもしれない。

多彩な映像表現を内蔵

 GH4では、映像トーンのプリセットとして、カスタムも含めると9つのフォトスタイルを内蔵していた。G7も同じフォトスタイルを内蔵している。各プリセットはメニューに入れば、コントラストやカラーがいじれるようになっている。

 また動画撮影時でも、多彩なフィルタ効果の「クリエイティブコントロール」が使用できる。このあたりは4Kコンデジ「DMC-LX100」と同じだ。なお「ジオラマ」は実際の風景をジオラマらしく見せるフィルタだが、これで撮影すると10倍の早回し映像となる。またジオラマだけは4Kで撮影できないが、それ以外のモードは4Kでも使用可能だ。

クリエイティブコントロールの選択画面
モード名サンプル
フィルタなし
ポップ
レトロ
オールディーズ
ハイキー
ローキー
セピア
モノクローム
ダイナミックモノクローム
インプレッシブアート
ハイダイナミック
クロスプロセス
トイフォト
トイポップ
ブリーチバイバス
ジオラマ
ファンタジー
ワンポイントカラー

 「モノクローム」は、フォトスタイルにもあり、クリエイティブコントロールにもありということで、機能がダブっている。いろんなカメラで開発された機能を集めてくるとこうなってしまうのかもしれないが、このあたりはもう少し整理してもいいかもしれない。

 特殊撮影という点では、GH4に搭載されていたバリアブルフレームレート撮影は、G7には搭載されていない。このあたりは撮像素子の性能の違いだろう。

 また輝度レベル設定では、GH4が0-255、16-255、16-235と3パターンあったが、G7では0-255、16-255の2パターンのみとなっている。動画フォーマット的には16-235が妥当ではあるが、どうしても0~100%間の階調が狭くなるので、コンシューマでは敬遠する傾向にあるのかもしれない。今回のサンプルは、すべて0-255で撮影している。

輝度レベルの選択は2パターンのみ
16-255で撮影
0-255で撮影

 スマートフォンによるリモート撮影も、コンシューマユーザーには嬉しい機能だ。パナソニックのカメラは大抵「Image App」というアプリでリモート撮影が可能だが、これまできちんとご紹介した事がなかった。

 今回はiPhone版を使用しているが、カメラをWi-Fi接続したのち、リモート操作か画像転送かを選択する。リモート操作では、画面タッチによるAFや、動画と静止画のシャッターが可能だ。「ジャンプスナップ」は、カメラを固定しておき、スマートフォンを持ったままジャンプすると、それを検知してその瞬間を撮影するという機能。空中をいろんなポーズで撮影したいという人には楽しいだろう。

リモートアプリ「Image App」
リモート操作中の画面
ジャンプスナップは、感度を設定できる
動画の転送も可能だが、4K動画や「4K PHOTO」モードの動画は転送できない

 また、シャッタースピードを「T」に設定すると、スマホのタッチでシャッターの開閉ができる。長時間露光では、カメラに触れるとぶれたりするが、いわゆるレリーズの代わりとしても使えるわけだ。

 画像や動画の転送にも対応するが、4K動画は転送できない。そもそもスマートフォンに100Mbpsの4K動画を転送してもどうにもならないが、これも将来的にはどうにかなる時が来るかもしれない。

 「Image App」は、新しいカメラが出るたびにこまめにアップデートしており、機能もそのたびに少しずつ増えている。パナソニック製の対応カメラをお持ちの方は、使わない手はないアプリだ。

総論

 動画機能に関して言えば、LUMIXはGHシリーズが最高峰で、プロでも使えるよう隙のない作りになっている。一方Gシリーズは、そこまで動画機能が必要ない人、という位置付けであったかもしれない。だが今回のG7では4K撮影に対応した事で、話が変わってきた。

 写真ではまた別の評価もあるだろうが、実際に撮影された動画を見ても、GH4と遜色ない映像となっている。一部プロ向けの機能が削られたり、スロー撮影ができなかったりという違いはあるが、コンシューマでの利用においては、特に不自由はないだろう。

 DISPボタンとFn5(LVF)ボタンの組み合わせで、HDMI端子からメニューなしの4Kのライブビューも出るので、マルチカメラ用途としても使える。ただし絞りなどを操作すると数値が出てしまうので、マニュアルで操作しない固定カメラとして使うしかないが。

 なによりもこのボディ価格で、レンズのバリエーションが楽しめる4Kカメラというのは、市場に与えるインパクトは大きい。いよいよ“動画は4Kが当たり前”の世界が、コンシューマから拡がる可能性が出てきた。そうなるとテレビ向けに4K本放送が沢山スタートするよりも先に4Kテレビが欲しいというニーズにも繋がってくるわけで、4Kテレビの普及にも貢献する4Kカメラと言えるかもしれない。

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DMC-G7

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。