トピック

アンテナ不要で4K衛星放送。8Kも間もなく対応、視聴方法や料金は?

'18年12月からスタートした新4K8K衛星放送は、地デジや従来のBSなどに比べて高精細で鮮やかな映像が楽しめるのがメリット。ただ、実際に導入するには「アンテナなどの工事が面倒」と思うかもしれない。そこで今回紹介するのが「アンテナを使わずに観る」方法だ。その方法や、導入前にチェックするポイント、料金などをまとめた。

'18年12月からスタートした新4K8K衛星放送

4K画質で観るために必要なものは?

新4K8K衛星放送を、元の高画質のままで楽しむには「4Kまたは8K解像度のテレビ+新4K8K放送対応チューナー」のセット、または「対応チューナーを内蔵した4K8Kテレビ」のどちらかが必要。これはアンテナを使うかどうかに関わらず最低限用意するものだ。

放送サービス高度化推進協会(A-PAB)の調査によれば、6月は新4K8Kチューナー内蔵テレビの出荷が15万6,000台で、集計以来初めて単月で10万台を突破。累計出荷台数は127万台を超えている。'19年に発売された4K対応テレビなら、上位モデルに限らず4Kチューナー内蔵の割合は昨年よりも増えている。これからテレビを買うなら、後からチューナーを追加して部屋の設置スペースを増やしてしまうよりは、最初から4Kチューナー内蔵テレビを買う方が得策といえそうだ。

一方、4K8Kチューナーを内蔵していないテレビを既に持っている人は、単体チューナーを追加購入する方法だけでなく、4Kチューナー内蔵レコーダーを追加する手もある。これなら、観るだけでなく録画の環境も一度にそろえられる。

アンテナ工事無しで観るには?

次はいよいよ本題となる視聴方法。現時点の選択肢は、大きく分けると、放送波を受ける「パラボラアンテナ」、通信を使う「光回線(フレッツ・テレビなど)またはケーブルテレビ(CATV)」の2つがある。既にBS放送をいずれかの方法で観ているなら、その方法を継続して4Kも視聴するのがラクな方法。今回は、住んでいる地域や建物による制約も比較的少ない、光回線での視聴方法を中心に紹介したい。

アンテナ不要で8K放送を受信するデモ('18年のフレッツ・テレビ説明会より)
「フレッツ・テレビ」などの利用イメージ(右)。左はアンテナ利用の例(スカパー資料より)

光回線で視聴する場合、前提として住んでいるエリアに対象の回線が導入されていることが必須。NTT東日本/NTT西日本が提供する「フレッツ光」回線を使ったサービス「フレッツ・テレビ」が代表的だ。

フレッツ・テレビの概要(スカパー資料)

NTT東西と直接回線契約する以外にも、他社がNTT東西から回線を借り受けて提供する「光コラボレーション(光コラボ)」事業者のサービス(ドコモ光、ソフトバンク光テレビなど)でも、フレッツ・テレビがオプションとして使えるサービスがある。加入している光コラボのサービスがこれに対応しているかどうかは、NTT東日本NTT西日本に掲載されている光コラボ事業者の一覧ページで確認できる。

「無料の民放系4Kだけ」か、「映画など有料チャンネルや8Kも観たい」か

契約の前にまず決めておきたいのは、「どんなチャンネルが観たいか」という点。今ある18のBS/CS4Kチャンネル(9月1日からはBS日テレを加えた19チャンネル)は“2つのグループ”に分けられる。簡単にまとめると、1つ目のグループが「NHK 4K+民放BSキー局系」、2つ目が「NHK 8K+有料BS/CSチャンネル+通販」という分類だ。

従来のHD画質のBS放送と同じように、NHKや民放キー局の無料チャンネルだけを4Kで観たいなら、1つ目のグループだけに対応すればOK。前述した対応テレビ+チューナーがあれば、それ以外の機器はほとんどの場合は変更が不要だ。

一方、映画/スポーツなど専門チャンネルの有料4KやNHK 8Kも含めて全チャンネルを観たい場合は、2つ目のグループも視聴する形となる。その場合、専用機器の追加などが必要になることは押さえておきたい。

フレッツ・テレビでの新4K8K衛星放送視聴可能チャンネルと料金。赤が第1のグループ、青が第2のグループ(スカパー資料)

ちなみに、アンテナを使った視聴の場合、2つ目のグループの番組を観るには、古いパラボラアンテナ(左旋非対応)だと立て替えが必要になるだけでなく、電波漏洩対策などから、屋内配線も変更が必要なケースがある。今回紹介する光回線を使った視聴の場合は、そうした設備自体の大きな工事が不要なのも大きなメリットだ。

ただ、全ての面でフレッツ・テレビなどがアンテナ視聴よりも良いわけではない。それは、一般的なIPTV(テレビをネットにつないで観る映像サービス)や、CATVなどと同様に毎月の利用料金がかかる点。

NTT東西のフレッツ・テレビの場合、初期費用の登録料が2,800円~(テレビの台数によって異なる)、月額利用料が750円必要となる。なお、この月額料金にNHK受信料は含まれていない。先ほど“無料の民放系”と書いたが、それは、チャンネルを観るための追加料金が不要という意味。これに加えて有料チャンネルも観る場合は、各サービスの月額料金も必要となる。

また、フレッツ・テレビなら全く工事が不要なわけではなく、当然だがフレッツ光などの回線がまだ通っていない建物の場合は開通工事が必要になり、その後に、正しく受信できているかどうかの確認を含めた工事を各事業者に依頼することになる。

NTT東日本のサイトによれば、フレッツ光の工事は約1時間、フレッツ・テレビと屋内同軸配線工事は約2時間という目安が案内されている

各方式のメリット(+)とデメリット(-)

放送
+定額料金不要(NHKの衛星契約は必要)
+アンテナで受信できれば、提供エリアなどの制限なし
-電波の弱い地域、悪天候の影響を受ける場合がある
-アンテナ工事が必要な場合がある(建物や現状の設備、観たいチャンネルによって工事内容は異なる)
光回線テレビ
+フレッツ光などの回線ユーザーは、初期費用を抑えられる
+アンテナや設備のメンテナンスの必要なし
-回線の提供エリアのみ
-毎月の利用料金がかかる

8K含む全チャンネルを楽しむ環境も、まもなく提供開始

上記で説明した「2つ目のグループ」(BS/110度CS左旋の4K8K放送)は、記事初出時点ではフレッツ・テレビではまだ視聴できないが、いよいよ9月1日から提供が開始される。これにより、NHK BS8Kや、スターチャンネル4K、JSPORTS(4K)なども、アンテナ不要で観られるようになる。

サービス提供に先立ち、スカパーJSATはBS/110度CS左旋4K8K放送の視聴に用いる「光対応新4K8K衛星放送アダプター」の販売申込受付を8月26日より開始する。価格は9,000円。DXアンテナ製と、ミハル通信製の2機種があり、機能は同等だが、本体サイズなどに細かな違いがある。

スカパーが8月26日より予約受付開始する「光対応新4K8K衛星放送アダプター」
DXアンテナ製と、ミハル通信製のアダプターの違い

テレビ1台ごとにアダプター1台を付属の同軸ケーブルで接続。ユーザー自身で設置可能だが、フレッツ・テレビなどの新規開通工事と同時にNTT東日本の屋内同軸配線工事またはNTT西日本のテレビ接続工事を申込んだ場合は、基本工事(有料)でアダプターも設置する。

まだ8Kや有料系のチャンネルを観るつもりがないなら、とりあえずは第1グループ(NHK BS4Kや民放キー局系)を観るためにフレッツ・テレビなどに加入する形をとって、後で興味が湧いてきたら、追加で有料系を契約するという方法もよさそうだ。

A-PABのサイトには、「4K8K放送視聴方法かんたんチェック」というページが開設。戸建てや集合住宅、今利用している放送サービスなどを回答すると、適した視聴方法を案内してくれる。住まいや設備の状況によって、どの方法ならスムーズに4K8K放送を視聴できるか、判断の一つとして使ってみてもいいだろう。

中林暁