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“2045年のAIとゴースト”「攻殻機動隊 SAC_2045」で神山監督はなにを描くのか

2020年4月から、Netflixで全世界独占配信がスタートする「攻殻機動隊 SAC_2045」。「攻殻」史上初となるフル3DCGアニメであり、Production I.GとSOLA DIGITAL ARTSによる共同制作スタイルのシリーズであり、メインキャストとして田中敦子(草薙素子役)、大塚明夫(バトー役)、山寺宏一(トグサ役)など、「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズのオリジナルキャストが再び集結する、要注目の作品だ。今回、その内容や映像について、共同監督の一人である神山健治監督にインタビュー。2045年に到来すると言われる“シンギュラリティ”、そして「攻殻」の永遠の命題でもある“AIとゴースト”。非常に濃い内容となった。聞き手はマフィア梶田さんだ。

「攻殻機動隊 SAC_2045」
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

「SAC_2045」を手掛けるのは、「攻殻S.A.C.」シリーズを手掛けた神山健治監督と、「APPLESEED」シリーズを手掛けた荒牧伸志監督の“ダブル監督”体制。この体制は、同じくNetflixで配信されている3DCG作品「ULTRAMAN」と同じだ。

前述のように、4月に配信を予定。「攻殻S.A.C.」オリジナルキャストの集結や、戦場で活躍する元・公安9課メンバーを描いた予告編映像も公開されるなど、注目が高まっている。

左から神山健治監督、聞き手のマフィア梶田さん
『攻殻機動隊 SAC_2045』予告編 - Netflix

また既報のとおり、4月の配信開始に先駆け、3月27日には神山監督「攻殻S.A.C.」OVA 3部作をコンプリートしたBlu-ray BOX「攻殻機動隊 S.A.C. TRILOGY-BOX STANDARD EDITION」(品番:BCXA-1501/14,000円)もバンダイナムコアーツから発売予定だ。

Blu-ray BOX「攻殻機動隊 S.A.C. TRILOGY-BOX STANDARD EDITION」
(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
※ジャケットとは異なります

「攻殻S.A.C.」シリーズを振り返って

「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズのファーストシーズンが初めて放送されたのが2002年。なんと今から18年前だ。改めてシリーズを観返したというマフィア梶田さんは、18年も経過しているため「今観ると、ずいぶん“見え方”が変わるのではないかと思っていた」と予想。しかし、実際に通して鑑賞すると「モチーフとして、政治的、社会的な情勢を公安9課の目を通して描いた作品ですが、この18年、現実の社会の様相も変わっていない、『攻殻S.A.C.』で描かれたモノが一切古くなっていない事に衝撃を受けた」という。

神山監督:あまり時代は変わらなかったのだなと思います。残念な点が変わっていなくて、良いところもさほど増えなかったというか……テクノロジー自体は、ある意味で現実が「S.A.C.」を追い越すくらい進んだ部分もあると思いますが、肝心な人間の部分が変わっていない。政治では、あの当時を思い出すと、自民党の55年体制が終わって“新しくなっていくんだ”みたいな空気があったので。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

ファーストシーズンのテーマの一つは、僕が十代後半の多感な時期を過ごした昭和の後期を咀嚼しなおしてみよう、というものでした。作品の政治背景も、自民党の55年体制を下敷き、戦後から続く派閥政治など、一党支配の政治状況としました。当時はグローバル化と言われ始めた頃ですが、日本はアメリカの顔だけを見ていればよかった。ヨーロッパはあこがれの旅行先で、あとはハワイくらいしか日本人の意識には無く、中国については、なんとなく蓋をしていたような時代だった。セカンドシーズン(「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」)の最後に茅葺総理が、“アメリカに捨てられたとしたらどこに助けを求めるか”という状況になる。中国にもし助けを打診していた場合は、アメリカは、日本に対して、核の抑止力としての立場や、安保条約を破棄するかもしれない……とは(作品の中で)言えないので、「八一の軍旗(中国人民解放軍の軍旗)が見えたらボタンを押せ」という描写で表現しました。それがあの頃の精一杯の表現でした。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

当時は、未来予測をしようと思っておらず、“今を書いていたら、この20年くらい(日本は)何も変わらなかった”という感じですね。世界には変化があり、中国が台頭してきたとか、911が起きてまた戦争の時代がはじまるのか、という空気はありましたが、冷戦もなくなり、ヨーロッパはEUで国境も無くなり安定期に入っていくんだろうと思ってた。まさかイギリスが離脱するとは当時は思わなかった。当時日本は“失われた10年”と言われていましたが、それから20年を経て、30年目に突入しているという印象です。

梶田さんは「2020年と言ったら、ブレードランナーの時代を迎えるはずだった。それが、まさかこんな夢のない世界になるとは、正直がっかりしている面もある」と笑う。「我々が思い描いていた理想的な未来、もちろんブレードランナーが理想的な世界とは言えませんが(笑)、夢のあるパンクな世界を迎えられず、技術は発展したけれど、“想像の範囲をゆるやかになぞっているだけ”で、大きな変革が起きなかったことが残念。それが、物語にも影響しているのではないかと思う。『攻殻』のように未来像を描く作品において、“夢が失われている”のではないか」と、監督に問いかける。

神山監督:確かにSFは“アニメが得意としていたジャンル”なのに、作り手もいなくなってきたし、視聴者側も“そんなのいらないかな”という感じになっちゃったのかもしれない。新作を実際に作ろうとなった時に、テクノロジーでは追いつかれちゃっている部分もあるし、インターネットが登場した時のようなテクノロジーのビックバンはしばらくないという時期に入ってしまった。ビックバンがある時にSFが育つと感じていたので、それが無いと、“夢がないSF”を書いてもなぁと悩みました。

SFがダメな時は、ファンタジーに行くものなのですが、現実が厳しすぎるので、“逃避としてのファンタジー”しか描かれない。ファンタジーはもともと設定を楽しむものなのに、“設定を何もしなくていいフィールドとしてのファンタジー”になってしまっている。そういう中で、いざ(「攻殻」の新作を)作ろうと思ったら、たしかにあんまりやることがないんですよ(笑)。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

「攻殻機動隊を楽しくやろう」

そんな新作について、神山監督が最初に考えたのは「攻殻機動隊を“楽しくやろう”」だったという。

神山監督:よく“難し系”とか“社会派”とか言われていた攻殻を、入り口は“おバカ”ではじめようと思ったんですよ。もういいじゃん、(素子達は)自分達にスキルがあるし、自己責任で生きられるヤツらですよ。“何やっても生きていける連中が主人公”というのは揺るぎないので、この人達が、もう社会正義とかどうでもいいじゃんと(笑)、自分たちが今楽しいことをやるというところから、物語をスタートさせようと考えたんです。今の空気で言えば、どちらかというとそっちなんじゃない? とスタッフに話しました。

そのため、新作は9課のオリジナル・メンバーが“遊び暮らしている”ところから始まります。彼らは自分達のスキルが活かせる場所であれば、お硬い公安だろうが、どこでもいいんですよね。あれは楽しんでいるわけですから。現実がディストピア化してきている中でも、そこで面白おかしくサバイブしている。“ディストピアで楽しめばいいんじゃない? 俺達は死なないんだしさ”と。負ける気がしねぇしという連中ですから。だから、その人達が、どういう楽しみ方をしているんだろうかというところから始まるんです。でも、「攻殻」って僕の中では“今というものを切り取るツール”でもあるので、そこからスタートはするけれども、そんな彼らが、今の社会を見た時にどう感じるだろうか? というのが新シリーズの骨子ですね。

イリヤ・クブシノブがデザインした「攻殻機動隊 SAC_2045」の草薙素子
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

なぜ2045なのか?

新作タイトルの「2045」は、文字通り、作品の舞台となる2045年の意味だ。この2045年は、AIなどの技術が現在よりもさらに進化し、ついに人間の知能を追い越し、シンギュラリティ(技術的特異点)を迎える年として予測されたもので、“2045年問題”として以前話題になったものでもある。

神山監督:学者たちが、シンギュラリティが2045年に起きるよと言い出して、皆がザワザワしましたが、そこに照準を合わせてみようと思いました。素子たちがそこまで生きてきた時に、その世界にどうアプローチしていくのか? “ヒャッハー楽しもうぜ!! ”なのか、“面倒くさいけれど関わってやろうか”と思うのか? シミュレーションしてみました。

ですので、物語の入り口は「攻殻」らしくないと感じるかもしれません。PVも戦場でしたし。なんだ今回の「攻殻」は!? と、驚いて欲しいなと思っていました。

新しいテクノロジーは“敵”ではない

神山監督はこれまでのシリーズで、AIとゴーストを俯瞰的に描きながらも、例えば、タチコマにゴーストらしきものが宿った事で9課のピンチを救うなど、時にロマンチックにも描いてきた。2045年、さらにAIが発展した世界で、AIとゴーストはどのように描かれるのだろうか?

神山監督:攻殻の中でゴーストは、唯一のファンタジーなワードなんですね。科学的には証明しようがないので、“あるといいな”という存在として、新作の中でも相変わらずゴーストはファンタジーです。

AIが日常生活の中に入って来ましたが、思っていたより夢がなかった。人形使いが“私は生命体だ”と言うことはなさそうだなと(笑)。ただ、神道的な、万物に神が宿るというのは好きな考え方で、神道でない人でも、例えば、愛着のあるクルマに女の子の名前をつけたりするわけで、その延長線上にある考え方だと思います。そのつもりでタチコマも描いてきたので、わりと陳腐化してしまったAIに対して、どう夢をみれるかなというアプローチで描いています。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

4本足のロボットを人間が(テストで)いじめる動画が話題になったり、軍事用ロボットを人間がいじめる(フェイク動画)を本当の出来事だと思う人もいるくらいですから。ゴーストって、ある意味、こちらに主観があって生まれるものだと思います。大事にしているクルマにはゴーストがあると思う。そのクルマで“事故起きる寸前だったけど、こいつが今、俺を救ってくれたのかも”とか。人間が勝手に思っていることですが、思った時点で、ゴーストは存在しているんですよね。

それとテクノロジーは似ている気がして、思いを入れていかないと新しいテクノロジーも発見されていかないと思う。ハリウッド映画では多くの作品で、例えばターミネーターのように、“新たなテクノロジー”=“敵”として登場するじゃないですか。日本のアニメでも、どちらかというと新しいテクノロジーより、自然回帰というか、“これ以上発展しないほうがいいよ”とか“そこに正義がある”というスタイルが定着しちゃっているので。そんなところも含めて、日本が発展する時の足かせになっているのかなという気もしています。

実は、「“科学は悪役じゃない。未来に希望があるものとして存在するんだよ”という描き方をしなさい」というのは、最初に「攻殻」をやった時に、士郎正宗先生がおっしゃられた事なんです。その時に深く共感して、なるほどそうだなと。

手にしたテクノロジーを、人類はどうしても捨てられない。であるならば、それを使って問題解決していく。そういう発想が芽生えるキッカケになったのが、士郎先生の言葉でした。そこは、「攻殻」を作る以上、守り続けたいなと思っています。

そんな新作において、素子達の前に現れるのが、新たな支配種“ポスト・ヒューマン”。驚異的な知能と身体能力を持つ存在だ。ただ、彼らは単純な“敵”ではない。神山監督は「ポストヒューマンを敵として設定しつつ、じゃあ彼らがこの世界に登場したとしたら、どういう行動をとっていくのかを考えました」と語る。

梶田さんは、「AI同士が会話をしはじめると、人間の言葉にする必要がないので、何を話しているのか人間が確認できなくなるという話や、彼らが会話を始めたら、ヒューマンエラーを地球にとって害と判断して、人間を排除しようとする、といった話もある」と紹介。

神山監督:裏はとっていないので、面白ネタとして出回っているだけかもしれませんが、ありえる話だなとも思います。そういう危機感がある中で、取り扱わないわけにはいかないなと考え、ポストヒューマンを登場させようと思いました。

ただ、ゴーストというファンタジーワードも抜きに語れないのが「攻殻」なので、ファンタジー要素をスパイスとして入れた時に、エンタメとしてどう走らせられるのかが大切。リアルを突き詰めながら、ゴーストというワードをうまく使う事で、エンタメとしても面白くできそうだという手応えもありました。現実をシミュレートする手法として「攻殻」を使うのは、始めたときから一貫してやっていますが、そういうことも描けそうだなと、今回の「SAC_2045」に対しては思っています。

フル3DCGの可能性

ちなみに、梶田さんの好きな「攻殻」のキャラクターは、9課のオペレーターの女の子達、通称“オペ子”だという。「彼女達って、下等なAIだとか、タチコマからは見下されてるじゃないですか。でもオレは彼女達に特別な感情を抱きつつあって、壊されたりとか、容赦なく消費されているのを見るのが辛いところもある」と笑う。

神山監督も「愛着を抱いた時点で彼女たちにゴーストが宿っているので、“この個体を壊したくない”と思ったらゴーストがいるってことですもんね(笑)」と頷く。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
9課のオペレーターの女の子、通称“オペ子”達
(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

話はそのまま、もしオペ子やタチコマが現実世界に現れたら、人間は受け入れられるのか? という内容に。普通に考えると人間の形に近い“オペ子”の方が受け入れられやすそうだが、神山監督は「そうではないかもしれない」と言う。

神山監督:「攻殻」を描いているうちに僕らも気づいた事なのですが、人の形に似せていくと、かえって本当の現実の世界では愛されないかもしれないなと思います。タチコマやオペ子も、マンガのキャラだから視聴者に受け入れられたと思うんですけど、(オペ子の場合、現実の世界で)人間にソックリで、どれだけ可愛くても12人いたら“ウッ”ってなるじゃないですか(笑)。

実は、これは今までのアニメでうまく表現できていないのですが、以前から思っていた部分なんです。実際に(オペ子が)家にいたら、愛でる相手にならないかもしれない。でも、アニメキャラの素晴らしいところは、想像力で補完するので“(アニメとしては)気持ちの悪いものにならない”ところなんです。

(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

その点、人の形をしていないタチコマの方が、現実世界では可愛がれるのではないか? ソニーのaiboも、あの“ロボット感”が良いんじゃないでしょうか。四足の軍事用ロボも、あんなに“ロボットなのに”感情移入してしまう。逆にあれが人間ソックリだったら、嫌悪感が先に立って、“やっつけろ”と思うかもしれない。

これはいわゆる“不気味の谷”の問題とも絡んでいる。そして神山監督は、「SAC_2045」で採用した3DCGという表現が「“あえて不気味の谷を描く”際に使えるなと感じる」という。

例えば「攻殻」には、素子のようなゴーストを持った完全義体のサイボーグと、オペ子のようなゴーストは無いが見た目は人間とほぼ同じ量産機、オペ子とは異なり、愛好家による特注で作られた外観を持ち、量産機よりもハイスペックないわゆる“フェラーリよりも高価なお姉ちゃん”が登場する。だが、これら3人(体)の違いを、マンガの場合、絵だけで説明するのは困難だ。この困難さは、これまでの「攻殻S.A.C.」シリーズでも同じだったという。

神山監督:アニメでもやろうとしたのですが、(生身の)人間と素子の違いを描こうとしても、せいぜい“瞬きをしない”とか、作画をちょっと“硬く”したつもりなのですが、結果的にはあまりそうは見えなかったり……。例えば、「攻殻S.A.C.」の第1話で、荒巻と素子が久保田という男のところに挨拶に行くんです。そこで素子が直立不動で、人間で言うと“突然微動だにしなくなっている状態”になる。そこで久保田が荒巻に、「お前はアンドロイドを連れてきたのか、趣味が変わったな」と言うカットがあるのですが、(素子がサイボーグである事が)とてもわかりにくくて……そこで、お尻を丸出しにしたルックスで(彼女はサイボーグなんだよと)補完しています。

恐らくゴーストの無いアンドロイドの場合、動きと動きの間に、一瞬フリーズするような“間”があると思います。そして(ハイスペックな)“フェラーリよりも高価なお姉ちゃん”になると、その動作のラグがどんどん消えていく。もちろん、素子にもラグがない。そして素子は、やろうと思えば硬い動作ができ、ピタッと止まろうと思えば止まれる。

こうした部分は、興味があってじっくり描きたいなと思っていました。ただ、打ち合わせの時にアニメーターに、「例えば、戦闘時に痛みを遮断したら、蝋人形みたいになって、それから一瞬ラグがあって再起動してまた動き出すみたいな作画ってできないかな?」と相談したんです。そうしたら、「それを全話でやるのは難しい、やるのであればスペシャルなカットでやる事になりますね」と言われました。確かに、仕草としては一瞬ですが、そうした描写を視聴者がずっと見たいわけではない。その部分に労力を割くわけにはいかないと、今回の作品ではやめました。

ただ、本来であれば、攻殻機動隊という作品の第1話でやるべき表現だと思います。CGだと、それも表現できそうだなという可能性は感じました。

現実にそういう時代になった時は、もしかしたら、“フェラーリより高いお姉ちゃん”よりも、安い量産機に萌える人が出てくるかもしれない。僕も、もしかしたらそっちかもしれません(笑)。アニメのフィギュアみたいなものの方が良いという人も出てくるかもしれない。現実がそうなった時に、面白い枝分かれをするのではと思っています。

Netflixで世界配信される、という事

「SAC_2045」が、「攻殻S.A.C.」シリーズと大きく違う点は、Netflixによる全世界独占配信から始まることだ。スマホなどで手軽に楽しめ、SNSなどでの拡散しやすい場所で公開される。また、日本だけでなく、世界中で同時に配信されるというのも大きな違いだ。作品作りで、これまで以上に国際市場も意識したのだろうか?

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

神山監督:作る段階でそれを考えると、やらなければならない事が多すぎるので、あえて今までと同じ作り方をしようと思いました。

一方で、わかりやすくした方がいいだろうなとも考えました。そこで、わざと複雑にしていたような部分をわかりやすくしています。特にセリフ量は、3分の2くらいに減らしました。多い回は多いのですが、これは相当意識してやっています。

(「攻殻S.A.C.」シリーズのセリフの多さは)もともと、士郎先生のマンガの余白にある説明を、どう作品に取り入れるのかというところから出たアイデアでした。でも、海外の人が見た時に、わかりにくいし、翻訳の制限もある。その代わり、絵が3DCGになった事で、情報量や表現は増えたはず。“語らずとも伝わる”部分が増えたと考えています。

「ULTRAMAN」を作った時に、“巨大なウルトラマン”が受けているのは仏教圏の国で、キリスト教圏の国は巨大なヒーローが少ないと気づきました。神様に似せて、代理として人間がいるので、“神が巨大なもの”というのが馴染まないようです。逆にタイなどでは、大きな仏像があり、受け入れられやすかった。巨石や巨木信仰もそうですが、“神様は人知を超えた大きなもの”という認識があると、スッとウルトラマンが受け入れられる。

円谷の人からも「キリスト教の国でも、ブラジルだけは巨大ヒーローを受け入れられる。それは、巨大なキリスト像があるからだ」と聞いたことがあります。

日本人のように“万物に神様が宿る”という意識があると、ゴーストも受け入れやすいのかもしれません。これまでの「攻殻」シリーズも、海外ではその神道的な感覚を、神秘的なものとして、自分たちにない宗教観、オリエンタルなファンタジーとして受け入れた人達に支持されたんだなと思います。

「SAC_2045」は、シンギュラリティを迎えると言われている、2045年が舞台。凄く「攻殻」にピッタリな年代だと、あえて選びました。

現実に即しながらアイデアは出しましたが、その一方で、エンターテイメントとしてのファンタジー要素もたくさん盛り込んでいます。海外配信も意識しているので、“新しく”なっていますが、それと同時に、“これまでの「攻殻」シリーズの延長にある物語”だという手応えもあります。それらをどのように料理したのかを、皆さんにはやく観て、確かめていただきたいですね。

山崎健太郎