超小型ハンディプロジェクター「QUMI Q1」

 アドトロンテクノロジーの「QUMI」シリーズは、これまでの“プロジェクターは大型である”という常識を覆す製品として話題になっている。2012年に発売した「QUMI Q5」は500gを切る軽さと500ルーメンの明るさを実現し、2013年発売の「QUMI Q7」はコンパクトながら高機能・高性能な製品で、プロジェクターの使い方の幅を大きく広げた。

 そのアドトロンテクノロジーから9月5日、新たにQUMIシリーズに加わる「QUMI Q1」が登場した。今回の製品は徹底的に小型化を追求し、サイズはスマートフォンクラス。どんなときでも手軽に持ち運べるポケットサイズとなり、プロジェクターというもののあり方を一変させるような可能性を秘めている。どんな製品なのか、どういった使い方ができるのか、じっくり紹介していきたい。

超小型でMHLケーブルを標準装備。給電にも対応

 「QUMI Q1」は、従来にない小型化を実現したDLP方式のハンディプロジェクターだ。本体サイズは幅71×奥行き132×高さ14mm、重量約170gで、5インチクラスのスマートフォンとほぼ変わらない大きさ、軽さとなっているのが大きな特長だ。そんな小さな筐体でありながら、外部から入力した映像を最小6インチ(投影距離20cm)から最大60インチ(同2m)まで、幅広いサイズで映し出し、内蔵スピーカーで音声とともに楽しめる。

 映像入力の方法は2通り。1つは本体に用意されているMicro HDMI入力端子で、HDMI出力のあるPCやタブレットなどから映像出力する方法。もう1つが、MHL接続用のMicro USBケーブルを使用する方法だ。MHLは最近の多くのスマートフォンが対応する、Micro USB端子で映像出力できる方式だが、QUMI Q1にはこのMHL用のケーブルが本体に直付けされており、使用しない時は本体に巻き付けてコンパクトに収納できるようになっている。

本体底面には脚も用意。正面左側にあるのが電源ボタン
左側面前方にピントを合わせるためのダイヤルがある
右側面前方のボタンは映像のアスペクト比を切り替えるもの。本体給電用のUSB端子とHDMI入力端子も備える

 MHL対応のスマートフォンであれば、このケーブルを端末のUSB端子に接続してQUMI Q1の電源をオンにするだけで、即座に映像を大きく映し出すことができる。一般的な5ピンのMHLケーブルが標準装着され、さらにサムスンGalaxyシリーズの一部などで採用されている11ピンのMHLケーブルも付属しており、交換して使用可能だ。

本体に巻き付いているのがMHLケーブル
MHL対応スマホのMicro USB端子に接続するだけで映像出力できる
MHLケーブルは標準的な5ピンと11ピンのものが付属

 QUMI Q1の本体は5色のカラーバリエーションを取りそろえている。本体上面のラバー部分の色が異なっているが、これは滑り止めの役割も果たしており、上にスマートフォンなどを載せて、利用時もコンパクトにまとめておける仕組みだ。

ブラック、レッド、イエロー、ブルー、ホワイトの5色がラインアップされている
MHLケーブルを端末に接続した状態で本体底面のボタンを押せば給電モードに スペックは決して高くはないが、ハンディプロジェクターの用途は広い

 また、QUMI Q1は1850mAhの内蔵バッテリーでも動作し、満充電で最大約100分間映し出すことができる。しかも、プロジェクターとして使わないときはモバイルバッテリーとしても利用可能だ。バッテリー残量はLEDで把握でき、本体底面にあるボタンを押すだけでMHLケーブルから、Micro USBコネクターを通じて外部端末に給電できる。スマートフォンなどと一緒に使うのにうってつけのアイテムと言えるだろう。なお、USBで給電しながらの稼働もできるので、長時間利用もOKだ。

 ところで、プロジェクターの性能として気になるのは明るさと解像度だが、これについては超小型のハンディプロジェクターということもあり、50ルーメン、VGA(640×480ドット)とやや低めのスペックになっている。明かりのついた部屋での使用や細かい文字資料には向いていないと思われるが、それでもこのサイズを活かしたさまざまな用途が考えられる。利用シーンをいくつか紹介しよう。

友人宅に“とりあえず”持っていける

 たとえば友人宅のホームパーティに招かれたとき、手持ちの写真や動画をみんなで見れば、すぐさま場を盛り上げることができるだろう。でも、自分のスマートフォンの小さな画面では一度にみんなに見せるのが難しいし、1人1人に見せて回るのもなんだかしらける。テレビに映し出す方法もあるけれど、友人宅にテレビがなかったり、あってもケーブル接続が必要だったりして、面倒なことこの上ない。

 そんなときにはQUMI Q1の出番。小さなスマートフォンの画面を壁に大きく映し出し、写真・動画ネタをその場にいる全員で堪能できる。据え置き型のプロジェクターだと、どこかに設置場所を用意して壁にまっすぐ向けるようにするなど手間がかかるけれど、QUMI Q1の場合は手に持ちながら映すスタイルでもOK。内蔵バッテリーなので電源を借りる必要もない。友人宅にテレビがあるかどうか、なんて出かける前に心配することなく、とりあえず持っていけばいいか、と考えられるのがQUMI Q1の利点の1つでもある。

リアルポケットサイズのプロジェクターは、気軽にどこへでも持っていける
ホームパーティなどで写真・動画ネタを披露するのも簡単だ

自分だけのミニホームシアター環境に

 たとえば自宅で、テレビはないけれど動画コンテンツはよく見ている、という人は、QUMI Q1で“ホームシアター”を作って鑑賞するのもアリ。YouTube、ニコニコ動画、dビデオ、ビデオパス、その他端末に保存している動画コンテンツなど、手持ちのスマートフォンをサクッとMHL接続するだけで、最大60インチの大画面で鑑賞できる。

 子どもにテレビのチャンネル権を奪われてしまったお父さん、お母さんも、QUMI Q1さえあればテレビを見るのを諦める必要はない。別途DTCP-IP対応のレコーダーと組み合わせ、録画しておいた番組を宅内LAN経由でスマートフォンで受信し、それをQUMI Q1で映し出せばよい。薄暗くした部屋にQUMI Q1をセットし、ホームシアター環境を整えれば、大画面テレビに勝るとも劣らない没入感を得られる。VGA解像度とは思えない迫力だ。

部屋の壁一面に映してみた。建具が邪魔しているけれど、このサイズで映画を見るとかなりの迫力
DTCP-IP対応のアプリと組み合わせれば、録画したテレビ番組も自由に見られる
お一人様専用のミニミニサイズなホームシアターを作るのも面白い

子どもにも使えて、購入に障害なし!?

子どもに絵本アプリを見せてあげるため、と理由を付ければ、多少は財布のひもも緩みやすい、かも

 QUMI Q1の実売価格は2万円台。プロジェクターとしては安価な部類に入るものの、プライベートで購入するのは家計を管理する妻の目が気になる……。そういう場合はQUMI Q1が子ども用としても役立つことをアピールしてみよう。

 たとえば小さな子どもに絵本を読み聞かせるとき、最近はスマートフォンやタブレットの絵本アプリで見せたりする家庭も多いのではないだろうか。ただ、そういった端末で見せるとき、ちょっと心配なのがディスプレイのブルーライト。画面を近くから見せることで、子どもの目にあまり良くない影響を与えそうに思ってしまう。そこで、画面を直接見せるのではなく、壁などに映し出せるQUMI Q1はどうか、というわけ。

 ほどほどに離れた場所から大きめの画面で絵本を見せてあげれば、スマートフォンのような小さな画面よりも子どもは喜ぶだろうし、妻も納得するし、自分もQUMI Q1を使えるしで、みんなハッピーになるに違いない!?

オフィスへの導入もおすすめ。スマートスクリーンも併用したい

 ここまでプライベートの利用シーンを紹介してきたけれど、QUMI Q1は仕事でも大いに活躍する。普段自宅で使用しているQUMI Q1を仕事場に毎日持ち運んで使うのも、その軽さと小ささから考えれば全く手間ではない。数人で話し合うようなちょっとした社内の打合せで、Webサイトやアプリ、資料をその場で共有したいとき、さっと胸ポケットからQUMI Q1を取り出して壁に映し出せば、デキる人を演出することにもつながる……かも。

 無地の壁があまりないような場所では、別売の「スマートスクリーン 24インチ」を併用するのもおすすめ。細かな凹凸のある壁よりきれいに映像を見せることができる。QUMI Q1を自腹で購入してプライベートと仕事とで兼用するのもいいけれど、ビジネス用としては安価な製品なので、打合せスペースや会議室に1つずつ常備しておき、いつでも使えるようにしておくのも良さそうだ。

社内打合せで資料を共有
DTCP-IP対応のアプリと組み合わせれば、録画したテレビ番組も自由に見られる
別売の「スマートスクリーン 24インチ」もおすすめ

QUMI Q1とスマホだけを持ち歩く、モバイル特化のワークスタイルに

スマホとQUMI Q1を持ち歩くだけで、営業先でプレゼンができてしまう

 ビジネスシーンでは、やはり外回りの多い営業職の人にこそQUMI Q1の活用の場面は多いのではないだろうか。一般的にはPCやタブレットを使って営業相手に画面を見せたりしながら説明することになると思うが、重いので常に持ち歩くのは体力的にもけっこうつらい。相手に画面を見せるときも、いちいち画面の向きを変えなければならないのはおっくうだ。

 たとえばQUMI Q1と、必要な資料を入れたスマートフォンだけを持ち、フットワーク軽く相手先に訪問して、壁などに映し出しながら説明する。そんなモバイル特化のワークスタイルもQUMI Q1なら不可能ではない。なにより超小型のハンディプロジェクターは、相手に見せるだけでちょっとした会話のタネにもなる。QUMI Q1のおかげで普段より商談がスムーズにいく、なんてこともあるかもしれない。

Chromecastと組み合わせてワイヤレスプロジェクション

Chromecastと組み合わせるとワイヤレスプロジェクターになる。Chromecast用の電源はモバイルバッテリーで確保しよう

 プライベートにしろ仕事にしろ、QUMI Q1を使うに当たってはMHLかHDMIで接続可能な端末を所有していなければならない。一部のスマートフォンには、HDMI端子もなければMHL機能もない、ケーブルでは外部出力不可能な機種もある。それだとQUMI Q1を使えないのかというと、実はそうではない。手段の1つとして考えられるのが、Googleのコンテンツ出力デバイス、Chromecastを使う方法だ。

 変換アダプタを用いてQUMI Q1にChromecastをHDMI接続し、スマートフォンなどから接続設定すれば、Chromecast対応アプリの画面・コンテンツ表示が行える。Nexusシリーズなど特定の端末では、対応アプリ以外でも画面をそのまま映し出せるため、通常のHDMIやMHL接続と遜色のない機能を実現できる。むしろワイヤレスになる分、画面操作しやすくなるというメリットがあるだろう。ただし、Chromecastの場合は、給電しながらの使用はできないので、バッテリー残量が気になるときは、別途モバイルバッテリーやUSBからの給電が必要となる。

今までにないアイデアで普段使いしたくなるアイテム

 というわけで、ポケットサイズのプロジェクターであるQUMI Q1が秘める可能性を感じ取っていただけただろうか。今までは筐体の大きさ、重さのために、プロジェクターを携帯するという発想自体が生まれなかったが、スマホサイズのQUMI Q1であればそれが無理なく可能になり、プロジェクターというものをもっと普段から使い倒したくなってくる。

 ここで挙げた利用シーン以外にも、QUMI Q1の小ささ、軽さ、バッテリー内蔵、Chromecastとの組み合わせといった要素から、さまざまな活用アイデアが生まれてくるかもしれない。みなさんもぜひ自分なりの使い方で、QUMI Q1のある生活を満喫してほしい。

(日沼諭史)

関連情報

関連記事