ハイレゾ時代のスタンダード、来たる。 オーディオテクニカ独自の音響テクノロジーが結集 高解像度ポータブルヘッドホン ATH-MSR7 

オーディオテクニカ ヘッドホン事業40周年。注目の新製品が続々登場!

オーディオテクニカから、11月中旬から下旬にかけて続々と新モデルが発売される。オーディオテクニカと言えば、国内でも一、二を争うヘッドホンブランドだけに、楽しみにしている人も多いだろう。しかも、今年はオーディオテクニカのヘッドホン事業40周年の記念すべき年。ハイレゾ音源やPCオーディオの盛り上がりもあり、オーディオテクニカとしてもその分野で力の入った新モデルを投入している。

楽しみなヘッドホンの新モデルを紹介する前に、オーディオテクニカが取り組んできたオーディオの歴史に触れてみたい。同社の創業は1962年で創業以来53年目を迎えるということになる。ということは、創業当時はヘッドホン事業は行っていなかったことになる。

創業当時のオーディオテクニカの主力は、アナログレコード用のカートリッジ。当時の音楽ソースとして主流だったLPレコード用の針の製造・販売を行っていた。同社が特許を持つVM型カートリッジの開発などでも知られ、生産は現在も継続中だ。そして1974年にレコード用カートリッジの他にも主力となる事業を起こすべく、ヘッドホン事業を開始。1978年にはマイクロホン事業にも参入した。カートリッジの開発・製造で培ったトランスデューサー技術(音の変換技術)を活かし、新しいジャンルへと幅を広げていったのだ。また、日本ではヘッドホンメーカーとして知られるオーディオテクニカだが、世界的にはマイクロホンのメーカーとしても有名なのだそうで、オーディオテクニカのマイクロホンは、オリンピックやグラミー賞の授賞式などで活躍しているという。

このように、アナログレコード用のカートリッジから始まり、マイクやヘッドホンを中心として、さまざまなオーディオ製品を手がけているのがオーディオテクニカなのだ。

オーディオテクニカが手がけるさまざまなオーディオ製品を見ていくと、僕にはひとつの共通点が思い浮かぶ。レコード用のカートリッジ、マイクロホン、ヘッドホンと、特に微弱な電気信号を扱う分野に強いのではないか、と。微弱な信号をロスなく忠実に伝送するという点では、かなりのノウハウがあるに違いないと思う。それは、今年のオーディオテクニカのヘッドホンのひとつのテーマでもある「ハイレゾ」再生にとってはかなり頼もしい部分と言える。オーディオテクニカにとってハイレゾ音源は非常に相性の良い音楽ソースと言えるのかもしれない。

まずは軽く、オーディオテクニカの新製品の概要を紹介していこう。まずは、ポータブルタイプのオーバーヘッド型モデルの「ATH-MSR7」(実売価格 税込¥29,000前後)。新開発の45mmドライバーの採用をはじめ、数々の技術を結集したモデルだ。ガンメタリックとブラックのスタンダードモデルと、レッドの限定モデル「ATH-MSR7 LTD」(実売価格 税込¥30,000前後)がある。

ATH-MSR7

独自の音響テクノロジーを結集したハイレゾ対応高解像度ポータブルヘッドホン
スペシャルサイト | 製品情報

ATH-MSR7LTD

独自の音響テクノロジーを結集したハイレゾ対応高解像度ポータブルヘッドホン。限定レッドカラーバージョン
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インナーイヤー型では、バランスド・アーマチュアを使った「ATH-CKB70」(実売価格 税込¥8,500前後)、「ATH-CKB50」(実売価格 税込¥4,200前後)に加え、重低音再生で人気のソリッドベースシリーズにBluetooth対応のヘッドセット「ATH-CKS77XBT」(実売価格 税込¥16,000前後)、「ATH-CKS55XBT」(実売価格 税込¥9,600前後)もある。

このほか、オーバーヘッド型では、得意の天然木材をハウジングに使用したモデルとして、「ATH-ESW9LTD」(実売価格 税込¥43,000前後)、「ATH-W1000Z」(実売価格 税込¥70,000前後)がラインナップされている。

ATH-CKB70

バランスド・アーマチュアドライバー採用のインナーイヤー型。アコースティック・ホーン採用により、音響放射抵抗を減らし、音の伝播効率がUPしている
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ATH-CKB50

バランスド・アーマチュアドライバー採用のインナーイヤー型。独自のループ形状により、装着時の安定感を追求
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ATH-CKS77XBT

アルミニウム採用のエクストラチャンバーメカニズム機構でキレのある重低音を実現したBluetoothヘッドセット。aptXやAACコーデックにも対応
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ATH-CKS55XBT

アルミニウム採用のエクストラチャンバーメカニズム機構でキレのある重低音を実現したBluetoothヘッドセット
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ATH-ESW9LTD

世界三大銘木であるチーク天然木の無垢削り出しウッドハウジングにより、音場豊かな凛としたサウンドを実現した限定モデル
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ATH-W1000Z

天然チーク材のウッドハウジングにより華々しく暖かみのある音色を実現したハイレゾ対応ヘッドホン
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注目したいのは、ハイレゾ音源に対応した本格的なポータブルヘッドホンアンプ「AT-PHA100」(実売価格 税込¥60,000前後)。DSD 128/64に対応し、リニアPCMも最大384kHz/32bitという最新鋭のスペックを備えたモデルだ。そして、音源から振動板を駆動するボイスコイルまでフルデジタル伝送を行う技術「Dnote」を搭載したフルデジタルUSBヘッドホン「ATH-DN1000USB」(実売価格 税込¥65,000前後)などもある。このふたつは、のちほど詳しく紹介しよう。

AT-PHA100

独自の回路を採用したポータブルヘッドホンアンプ
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ATH-DN1000USB

音源からボイスコイルまでフルデジタル伝送する「Dnote」採用ハイレゾ対応ヘッドホン
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さまざまなタイプのヘッドホンはもちろん、ポタアンや今後人気が高まりそうなUSBヘッドホンまで網羅し、より高音質でより快適な音楽鑑賞を楽しめるモデルがずらりと揃っている。


最注目のATH-MSR7とは?

ここでは、一番の注目モデルでもあるATH-MSR7を詳しく取り上げたい。価格はおよそ3万円近くとそこそこの価格ではあるが、音質にこだわる人にとっては関心の高い価格帯。当然ながら他社の優秀なライバルも多く、実力が気になるモデルだ。

今回の新モデルの中でも最大の目玉、ATH-MSR7。ハイレゾ対応を謳うポータブルヘッドホン

カラバリは3色。通常販売のブラックとガンメタリックのほか、限定発売のレッドもラインアップ

このモデルは、オーディオテクニカのヘッドホン事業40周年における1つの集大成として開発されたモデルで、その意気込みも並みのものではない。出力音圧レベルは100dB/mW、インピーダンスは35Ω、周波数特性は5Hz~40kHzとなっている。

振動板は、口径45mmの「トゥルー・モーション・ハイレゾオーディオドライバー」を新開発。駆動力を最大限に高めることを目的とした設計で、磁気回路にはボビン巻きショートボイスコイルを採用。各音域のバランスを調整するデュアル・アコースティックレジスター、トップマウントPCB方式など同社の技術も惜しみなく投入されている。

ドライバーユニットにはオーディオテクニカの技術が結集

密閉型のハウジングは、「デュアルレイヤー・エアコントロールテクノロジー」を採用。不要な振動を抑えるレイヤードメタル構造、トリプルベントシステムなどを採り入れたもの。

ハウジングが2室に分かれた「デュアルレイヤー・エアコントロールテクノロジー」採用。

詳しく解説すると、ハウジングの構造を二重構造とし、ハウジング内部の空気圧を最適に調整。第1音響スペースには中央に空気孔があり、第2音響スペースにつながっている。第2音響スペースは側面に2つの空気孔を備える。こうした構造により、ハウジング内の空気の動きを最適化し、振動板がストレスなく駆動できるようにしている。モニターヘッドホン調のシンプルなデザインながら、最新鋭の技術が盛り込まれているのだ。

第1音響スペースから第2音響スペースに流れた空気が両端のサイドベントから流れ出る

ポータブル型としてはやや大きめのモデルと言えるが、ハウジング部分を水平に回転させて平らにでき、収納もしやすい作りを採用。持ち運び用のキャリングポーチも付属する。ヘッドホンコードは着脱式で、屋外で使いやすい片出し1.2m(3.5mm金メッキステレオミニ)、片出し3.0m(3.5mm金メッキステレオミニ)、スマートフォン用のマイク付きコード1.2m(3.5mm金メッキステレオミニ)が付属する。用途に合わせて手軽に使い分けられるのもありがたいし、よりこだわる人ならば交換用の高音質なヘッドホン用コードに交換してより自分の好みに合った音質を追求する楽しみもある。

高級感ある外箱

箱を開けると布張りの中にヘッドホンが。おもてなし感も最高

ヘッドホンコード3種とキャリングポーチが標準添付。ヘッドホンは写真のように折りたためる

コードは着脱式。もし断線しても気軽に交換できるのがうれしい。スマートフォン用のリモコンがついたコードが付属するのも便利

さっそく装着してみると、やや強めの側圧でしっかりとホールドされる。強めに頭を振ってみてもずれるようなことはない。側圧が強いと長時間のリスニングでは疲れやすいと思われそうだが、立体縫製のイヤーパッドは厚みのある低反発素材が充填されており、耳の周りを包み込むようにフィットする。ぐっと押される感じはあるものの、感触はソフトであまり圧迫感はない。これはなかなか良好なホールド感だ。

しかも、頭の形に柔軟にフィットするせいか、音漏れが少ない。遮音性も十分に高いので、快適な音量であれば音漏れで周囲に迷惑をかける心配はほとんどないだろう。

柔軟なイヤーパッドが耳をすっぽり覆う。遮音性はかなりのもの

ポータブルヘッドホンとしてはやや大きめのサイズだが、フィット感は良い


解像感の高い鮮明な音。俊敏なレスポンスの良さが印象的。

さっそく音楽を聴いてみよう。プレーヤーには手持ちのAsteli&KernのAK120を使用している。まずはCDからリッピングした44.1kHz/16bit WAV音源の「アナと雪の女王」から、劇中で流れる(エルザが歌う)「Let it Go」を聴いた。芯の通った力強い歌声で、エルザの心情がよく伝わる再現だ。単純にパワフルというわけではなく、声の伸びやニュアンスをしっかりと表現でき、発音も明瞭。力を入れたときの力感がしっかりとでる張りのある声だ。

イントロのピアノやその他の楽器の伴奏は、実に粒立ちがよく、個々の音が忠実感のある音色で再現される。かなり解像度の高い再現をするタイプと思えるが、音の輪郭のエッジがきつくなりやすいCD音源でも、中高域が鋭くなりすぎることはなく、感触は自然。だから、解像度の高さというより、楽器の音数や情報量の多い音と感じる。

――このATH-MSR7には、極めて優れた性能の良さを感じるのに加え、音の生き生きとした躍動感があり、それが音楽を存分に楽しませてくれる魅力となっている

続いて、上原ひろみの「Alive」(96kHz/24bit WAV)から表題曲を聴いてみた。早めのテンポで、ピアノとベース、ドラムの息のぴったりあった演奏が展開する曲だが、3者の音がきちんと分離し、その対話のようなフレーズのかけあいがしっかりと描かれる。ドラムやベースの低音はややタイトな気もするが、そのぶん、音階まで実に鮮明。ドラムのアタックの鋭さや響きの余韻まで聴き取れる俊敏さがあり、中盤で繰り広げられるハイテンポの演奏もまったくもたつきを感じさせない。テンションの高さや、3人がノリに乗って演奏をしている雰囲気がよく出る。

クラシックなどを聴いてみても、各楽器の粒立ちがよく、しかも音色は忠実感のある自然なトーン。ステージにいるオーケーストラを見ているかのように、個々の音が整然と立ち並び、生き生きとした音を奏でる。一言で言えば「リアルな演奏」だ。

オーディオテクニカのヘッドホンには、こういった忠実感のある音色やセパレーションの良さ、微小な音までしっかりと再現するダイナミックレンジ感など、優れた特性の良さがある。ただし、海外製ヘッドホンのような主張の強い音を聴いた後では、概して、性能は優れているが音楽を測定しているような生真面目さを感じることも少なくない。

ところが、このATH-MSR7には、極めて優れた性能の良さを感じるのに加え、音の生き生きとした躍動感があり、それが音楽を存分に楽しませてくれる魅力となっている。これが先ほど言った「リアルな演奏」の意味。まさに、40周年を迎えたオーディオテクニカのヘッドホンが新しい境地に到達したと感じる音だ。

しかし、これだけで済まないのが今年のオーディオテクニカ。続いては、ポータブルヘッドホンアンプの「AT-PHA100」を組み合わせて聴いてみた。AT-PHA100はステレオミニ端子のアナログ入力のほか、デジタル入力はマイクロUSB端子を備えている。そのため、プレーヤーはWindows PCで「Foobar2000」を使い、同じく上原ひろみの「Alive」を聴いてみた。

単体でもハイレゾ音源を十二分に楽しめる「ATH-MSR7」だが、あえて「AT-PHA100」と組み合わせてみた

まず違いを感じるのは低音の量感だ。ピアノの低音パートやウッドベースの唸るような胴鳴り感、そしてドラムのズシっと響く打音など、低音の伸びにふさわしい量感が伴い、ぐっと音が前に出てくるような力強さを感じる。それでいて、ベースの音階が不明瞭になるようなこもりもないし、リズムのキレ味がにぶることもない。アンプのドライブ能力も十分に高いが、ATH-MSR7の反応の良い低音の魅力がさらに際立ったように感じる。駆動力にこだわった設計という言葉が実感できる音だ。

低音のスケール感がしっかりと出てくるので、先ほど聴いた「Let it Go」やクラシック曲でも、重心の落ち着いた安定感ある。芯の通った粒立ちの良い音に厚みが出てきて、聴き応えも増す。両方を揃えると価格は10万円近くなってしまうが、これは多少背伸びをしてでもペアで使いたくなる音だ。

AT-PHA100についても軽く紹介しておくと、DACチップにESSのES9018K2Mを使い、プリ段にはNJR製のオペアンプMUSES8832を業界初採用。リニアPCM、DSD音源ともに、高解像度でしかも量感と伸びが両立した質の高い低音を楽しめる。

音色の忠実な再現はオーディオテクニカらしいもので、S/N感の良さと微小な音の再現性の良さも特筆しておきたい。


ハイレゾ音源の良さを存分に味わいたい人ならば、今年のオーディオテクニカは要チェック。

最後に、個人的にはかなり気になっているUSBヘッドホンのATH-DN1000USBにも触れておきたい。新技術である「Dnote」とは、冒頭でも触れたようなフルデジタルでの再生技術だが、一般的なデジタルアンプがドライバーユニットの直前でアナログ信号に変換してから出力するのに対し、あらかじめデジタル処理によって必要な音声信号だけを選別・抽出し、最適な状態に合成した上で、マルチ構成のボイスコイルへダイレクトにデジタル信号を送り出す。マルチボイスコイルはデジタル信号に応じて磁力で振動板を動かすので、ほぼドライバーユニットをデジタルのまま駆動しているのに近い。

ATH-DN1000USB

アナログ信号への変換ロスがないため、より情報量が豊かで、忠実度の高い音が得られるというものだ。

ATH-DN1000USBは、「Dnote」採用のヘッドホン第1号機ということもあり、入力はUSB2.0のみ。このため、今のところは再生にはWindowsまたはMacのPCしか使えない。iPhoneでのハイレゾ再生や、ハイレゾ対応プレーヤーでは光デジタル出力を備えるものもあるので、こうしたデジタル入力への対応も期待したいところ。

ハウジングはちょっと大きめのモニター風だが、大きさのわりには約380gとそれほど重くはなく、大型のヘッドバンドもあって装着してしまうと重さはほとんど気にならない。

その音は、驚くほどの高解像度に加えて、音の塊がダイレクトに耳に届くかのようなパワフルなもの。情報のロスが少ないことやS/Nの良さというデジタル駆動のメリットに加えて、高効率というメリットもありそうだ。一つ一つの音が明瞭に立ち、力強く押し寄せてくるような聴こえ方は、さきほどの上原ひろみの「Alive」は聴き応え十分だし、ロックの重厚なサウンドも迫力たっぷりに楽しめるはず。欲を言えば、音の質感や歌声がややドライに感じてしまうこと。潤いやなめらかさが出てくると、鮮明な音色と合わせてより表情が出てくると感じた。

また、再生機器がPCに限られる難点はあるものの、ダイレクト感というかレスポンスの良いパワフルな低音、解像感の高い再現は、映画のサウンドにも合うように感じた。音色のキャラクターなどは違うが、コンプレッションドライバー+ホーンと大口径のウーファー(昔の大きな映画館では定番のスピーカー構成)を組み合わせたスピーカーのような、音のスピードの速さを感じる。

今やポータブルプレーヤーとヘッドホンアンプの接続もデジタル接続が増えてきているなど、デジタルソースをダイレクトに入力できるヘッドホンの良さは注目したいところ。まさにダイレクト感と言っていい音の感触も魅力的だし、これからの展開にも期待したいところだ。

このほかの注目モデルとしては、やはりウッドハウジング採用の上級モデルも興味深い。ATH-ESW9LTD、ATH-W1000Zともに、今年は天然チーク材を使用しているところがポイント。厚みのある低音などリッチな音色に仕上がっているという。こうした優れたヘッドホンならば、PCオーディオの再生やハイレゾ音源の魅力を存分に味わえるはず。ハイレゾ音源は、可聴帯域を超える超高音域の再生と簡単に説明されがちだが、実際の魅力はそんなスペックで測れるようなものではなく、演奏している場所で聴いていると感じるような生の感触であり、リアルな音を体感できるところにあると思う。

忠実な音と、ヘッドホン開発から40年の間に蓄積したノウハウを持って優れた性能を引き出すオーディオテクニカの最新の音は、そんなハイレゾ音源のためのリアルな音を獲得したと言える。ハイレゾ音源とオーディオテクニカの新しいヘッドホンで、リアルな音楽を味わうという喜びと興奮を体験してほしい。

(Reported by 鳥居一豊)

 

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