“重低音の常識を超えろ”なるキャッチコピーが付与された、オーディオテクニカの新SOLID BASSシリーズ。第4世代となる同シリーズのオーバーヘッドとインナーイヤーそれぞれの最上位2機種に共通したコンセプトは、「重低音だけどハイレゾ」。一見相反するこの2つのキーワードを、新しい技術で高次元にバランスさせることが開発のゴールだ。

 ラップやヒップホップ、R&Bに代表される近年流行の音楽のキーワードは、「ビート」である。聴いていて思わず自然と身体が揺れそうな、響きが太くて分厚く、それでいて明瞭な芯がある低音への適応力が、今日のヘッドホン/インナーイヤーには求められている。その一方で、時代のニーズでもある「ハイレゾ」は、分解能とワイドレンジ再生が肝。これを前述の重低音と絡めるのは、決して一筋縄ではない。では、どんなアプローチとメソッドでその両立を目指したのか?

直径53mmのディープモーション・ハイレゾオーディオドライバー搭載

ATH-WS1100 圧倒的な重低音再生を体現する専用ドライバー構造

 まずは、オーバーヘッド型ヘッドホン「ATH-WS1100」。その鍵となるのが、ドライバーに採用されたダイアフラムにある。耳をすっぽりと覆うハウジング部に搭載されたそれは、直径53mm。口径のみに着目すれば、過去にも同社他機種で同じサイズのドライバーは採用されてきた。しかし「ATH-WS1100」の場合は、広いピストニックモーション領域で高いリニアリティが維持できるよう、素材の配合と硬さが綿密に吟味されている点が異なる。長年のノウハウの蓄積から、このドライバー口径でこのようなスペックにするならば、こうつくればいいという、言わばベーシックな“レシピ”が整っているのだ。

 「ディープモーション・ハイレゾオーディオドライバー」という、専用設計のこのドライバーは、高磁束密度による強力な磁気回路とのコンビネーションによって圧倒的なディープバスを実現している。大振幅に耐えつつ、ハイレゾならではの細かな描写力を再現するための英知は、ダイアフラムのみならず、磁気回路にも傾注されているのである。

 「制振デュアル・エンクロージャーデザイン」は、前述の大口径ドライバーのリアクションを構造的にがっちり押さえる後ろ盾としての役割も担っている。アルミニウム製で、ドライバーの不要共振を抑制することで中高域への影響を排除しているのだ。

 その一方で、振動のみならず、重低音再生では音漏れも重要なポイント。そのため楕円型のイヤーカップで耳全体を覆うとともに、二重構造の新しいイヤーパッド「2レイヤード・イヤパッド」によって密着性を高めているのが特徴だ。クッション性が高い内側の層で装着性を高め、外側の層が耳とドライバー間の音響空間を確保し、アコースティカルなパフォーマンスを高めている。

 「ATH-WS1100」で96kHz/24bitの女性ジャズヴォーカルを聴くと、声が自然と前にスーッと出てくる。その質感が非常に艶っぽく、瑞々しい。語尾のニュアンスやアクセントなどの微細な情報の描写力がすこぶる高い。ハイレゾらしさは、まずは合格である。

 では、肝心の重低音はどうだろう。ウッドベースの胴鳴りがとても豊かだ。たっぷりとした響きが心地よく、長時間聴いていても疲れない。このあたりが並みの重低音志向ヘッドホンとの違いだ。いわば“大人の重低音”である。

 ビートの効いたハードロックでも、リズムがグイグイと演奏を牽引していく様がよくわかり、ギターソロやシンバルといった中高音域のリフをマスキングしない。もちろんベースラインのピッチの明瞭さ、バスドラムの存在感も非常によくわかる。

 外部からの音は適度に遮断されている。さほど強くない側圧でこれほどの遮蔽効果が得られているのは、前述した2レイヤード・イヤパッドの恩恵だろう。この部分も本機の重低音再生のキーポイントといえそうだ。

専用設計のデュアルフェーズ・プッシュプル・ドライバー搭載

ATH-CKS1100

 インナーイヤーの最上位機「ATH-CKS1100」は、「デュアルフェーズ・プッシュプル・ドライバー」を採用している。向かい合わせた2つのドライバーで、ワイドレンジかつ歪みの少ない高解像度サウンドを可能にする同方式を、新生SOLID BASSシリーズに適合させるうえで新たに工夫されたのは、2つのドライバーの仕様を違えたことだ。具体的には、前方振動板にのみ高硬度の表面コーティング処理「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)」を施し、2つのマグネットのサイズを調整することで、高音域までのレスポンスを高めながらも、重心の低いパワフルな低音再生が意識されている。

 また、ボディにアルミニウムを採用したのは、中高域に関わる再現力を吟味した結果だ。無垢のアルミの塊からの切削加工で、不要共振を徹底的に押さえ込むとともに、いたずらに響きを殺し過ぎないようにしたのである。デザイン上の特色は、スリットにベント的な働きを持たせ、それが意匠と機構とを絶妙にマッチさせている。

 「ATH-CKS1100」で一聴して感じるのは、周波数レンジの広さだ。高域はまっすぐに伸びていて一点の曇りもない。低域は深く沈むように響く。じつに気持ちのよい広いレンジ感で、こけおどし的に低域を盛った印象はまったくない。

 前述の女性ジャズヴォーカルでは、思いのほか、豊満な声の質感が実感できる。音像のフォルムは決して華奢ではなく、実体的な肉付きを感じさせる。そして、伴奏との距離感がとても自然だ。

高い遮音性とすぐれたフィット感を両立

 ゴージャスなビッグバンドジャズを聴いてみたところ、アンサンブルの様子を重厚に響かせながら、ドラムやベースがそれをグイグイと鼓舞する様子が明瞭に伝わってきた。リズムセクションが演奏全体の推進力として作用しているのがわかる。そのエネルギーはまったく危なげなく、どっしりと鎮座したところで繰り出される。このあたりがSOLID BASSたる所以だろう。

 試聴時の注意点としては、この種のカナル型インナーイヤーでは、耳への挿入具合で低音の印象が変化するので、はじめにグイッと力をいれて押し込むことだ。そうすることで、イヤーチップと耳孔の密着性が向上し、遮音性と低音感が向上するのである。

オーディオテクニカのブレないモノづくりに期待

 筆者が思うに、オーディオテクニカが他社のようなビート重視/低音偏重のチューニングをしたところで、消費者はついてこない。そういう音づくりは他社に任せておけばいいし、リスクを負ってまでそのフィールドに臨む必要はない。オーディオテクニカには、流行に左右されず、時代に迎合しないモノづくりを期待したいのである。

 ハイレゾのコンテンツが今後充実してくれば、ニーズの多様化も予測される。すなわち、さまざまなジャンルにハイレゾが浸透していくことが推測されるわけだ。そうした点から見れば、新たなチャレンジにもなる4代目SOLID BASSシリーズは、次代を見据えたリニューアルと捉えることもでき、市場でどう受け取られるかが楽しみである。

(小原由夫)

“新ソリッドベース発売記念” プレゼントキャンペーン実施中

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