【第3回】動画もハイレゾも4Kも!
「インテル® Compute Stick」は
極小マルチメディアWindowsマシンになる!
(2015/06/29)
「インテル® Compute Stick」が発表された時、最近のWindows界隈ではあまり見られないくらいに市場の反応は好意的、というか、かなりの驚きをもって迎えられたのではないかと思う。とにかく小型で、ディスプレイのHDMIポートに差し込むだけでレディ・トゥ・ゴーなWindows 8.1マシン。至ってフツーのWindows PCが、リアルに手のひらに収まるサイズになって登場するだろうとは、ほとんど誰も想像していなかったのではないだろうか。
でも個人的にはちょっと不安もあったのだ。そんなに小型だと性能はやっぱりそれなりなんじゃないかと。Webブラウジングがまあまあ快適で、WindowsだからFlashゲームの「艦これ」もプレーできて、日本全国の提督のみなさん大歓喜みたいな、せいぜいその程度でお茶を濁されるのではないか……なんて思っていた時期が僕にもありました。実際に使ってみたらそんなもんじゃない、本格的なマルチメディアマシンとして使えるポテンシャルを秘めていたとはつゆ知らず。
高解像度動画をなんなく再生する高いポテンシャル
改めてもう一度言うと、インテル® Compute StickはWindows 8.1 for Bingを搭載する、小型のスティック型PCだ。一般的なPCと何ら変わりない機能を持ち、直接テレビなどのHDMIポートに接続できるようになっている。似たようなデバイスと言えば、Android OS搭載のスティック型端末とか、Chromecastなんかが思い浮かぶが、それらはインテル® Compute StickのようなフルスペックPCとは全く別の、圧倒的に機能が限定されたものだ。
例えばAndroid搭載機だと、閲覧できるWebコンテンツは一般的なスマートフォンやタブレットと同等のものになってしまうし、Chromecastはあくまでもモバイル端末の画面や特定の映像コンテンツを大画面に映し出せる、というだけのものだ。
一方、インテル® Compute Stickは、れっきとしたWindows PCであり、WebコンテンツでいえばFlashが正式にサポートされ、閲覧できるWebページも当然ながらPC版のもの。ニコニコ動画はもちろん、話題のアニメが配信されていたり人気演者が映像配信しているニコニコ生放送も、アプリなどを使うことなくWebブラウザー上でそのまま再生できる。
HDMIポートを備えた最近の多くのテレビに接続して使えば、それらのコンテンツを最大でフルHD解像度の大画面で楽しめるのだ。大画面にするとニコニコ動画の一般会員向けの画質ではノイズが目立つので、プレミアム会員になりたくなってしまうのが、ある意味デメリットかもしれない……。
同じようにYouTubeもWebブラウザー上で再生でき、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示、どちらでも好きな方法で閲覧できる。高画質の映像を大画面で楽しめるのは大きな利点ではあるけれど、実は地味にもっとうれしいのは、多くの関連動画を一覧するのが容易で、他のユーザーが書き込んだコメントも見やすいこと。
さらには自分で動画をアップロードする時やアップロードした動画を管理する画面も、PC向けのフル機能をきっちり使えるのがありがたい。見るだけでなく、自分のオリジナル映像をアップロードしたいという人にとっては、やっぱりPCを利用するのが最も都合がいいのだと改めて感じる。
Windows 8.1に標準インストールされているメディアプレーヤーから利用可能な、マイクロソフト公式の動画配信サービス「Xbox Video」でも、大画面はやはり活きてくる。ノートPC程度の画面サイズだと、HD画質のコンテンツはきれいに見えても、なんとなく感動が薄まってしまうもの。でも大画面テレビにインテル® Compute Stickを接続した場合は、HD画質の美しさをしっかり堪能しながら映画に没入できるのだ。
動画再生も実に滑らか。インテル® Compute Stickが搭載するのは、比較的廉価で小型のデバイスに搭載されることの多いAtomプロセッサーだけれど、それでもクアッドコアCPUのおかげか、高解像度の動画再生でもコマ落ちするようなことはなく、きれいに映し出してくれる。
使い慣れた、高機能なPCそのものを使い倒せる
インターネット上の動画コンテンツを楽しむのもいいが、自分で撮影した動画や写真を大画面で、家族と一緒に見たいといったときにも、インテル® Compute Stickの“PCであること”の利点は計り知れない。
例えばスマートフォンで撮影した動画・写真を大画面テレビで見たいとき、あなたならどうするだろうか。Micro USBをHDMIに変換して映像出力するMHLを使って、ケーブル接続で映し出す? それともChromecastやMiracastを利用してワイヤレスで画面や映像を転送する?
いずれの方法もアリなんだけれど、MHLのようなケーブル接続では、見たくなったとき、必ずそのたびにケーブルを持ち出さなければならず手軽さが失われてしまう。MHL非対応のスマートフォンもあるし、そもそもケーブル接続は今どきのスマートな方法ではないように思う。
ChromecastやMiracastは、そのデバイス自体と対応機器を所有しているのであれば便利だ。しかしこの2つデバイスの最大のメリットでありデメリットでもある点は、無線LANで映像をストリーミング送信していること。ワイヤレスで気軽に映し出せるものの、静止画像ならともかく、動画は無線LANの電波状況に画質が大きく左右され、場合によってはブロックノイズだらけになったり、コマ落ちが激しく発生したりして、とても視聴に耐えられなかったりする。
対してインテル® Compute Stickを使ったときはどうか。Windows PCであるインテル® Compute Stickの場合、物理的にスマートフォンからファイルをコピーしてから再生してしまえば、わずらわしいケーブルや不安定な電波状況に左右されることなく快適にコンテンツを楽しむことができる。1つ目のやり方は、ややアナログな手段だが、スマートフォンのmicroSDメモリカードをインテル® Compute Stickに直接差し込んでファイルコピーするものだ。
周辺機器拡張用の端子としては、USBポートが1つという最小限の装備しかないインテル® Compute Stickだけれど、ちゃっかりmicroSDスロットが用意されているのが面白いところ。これを使えばスマートフォンとのデータのやりとりに苦労することはまずないだろう。
2つ目は、同じ無線LANに接続し、Windowsのネットワーク共有機能を使う方法。スマートフォンからは、Sambaなどのネットワーク機能に対応したファイル管理アプリを使ってインテル® Compute Stickにアクセスし、ファイルを直接転送できる。言ってみれば、これも少し“古い”手法かもしれない。けれど、PCの扱いに慣れたユーザーであれば、このようにファイルのネットワーク共有が“フツー”にできるのはありがたいもの。昨今のデバイスに採用されることの多いAndroidではできない、Windowsマシンならではのアドバンテージではないだろうか。
以上2つの方法を使った場合、ファイルはインテル® Compute Stick上に物理的に存在することになるわけで、そのままWindows Media Playerなどで画質の劣化なく、滑らかに、しかもレスポンス良く再生可能だ。たしかにワイヤレスで映像伝送して再生するのはスマートなんだけれど、そのために高品質な映像を諦めなくてはならないのは、なんだか本末転倒に思える。
とはいえ、インテル® Compute Stickの内蔵ストレージは32GBと、大量に動画・写真を保存しておくには厳しいサイズ。だから、1つだけ用意されたUSBポートを有効活用するべく、USBハブを接続し、そこに大容量のUSBメモリやUSB HDDなどを接続したり、あるいはネットワーク上にNASを置いて、そこにアクセスするのもおすすめだ。Windows PCだからこそ可能な小回りの良さや拡張性の高さも、インテル® Compute Stickの優れたポイントではないだろうか。
ハイレゾ再生&4K出力もOK!
ところで、これまで述べたようにインテル® Compute StickはUSBポートとmicroSDスロットしか備えておらず、映像出力もHDMIオンリーなわけだけれど、実は昨今話題のハイレゾサウンドにも、さらには拡張機器によって4K出力する方法もあることをここでアピールしておきたい。
音声信号は通常HDMIの映像信号とともにテレビ(ディスプレイ)に送られるので、テレビ内蔵のスピーカーや、テレビに接続しているステレオコンポ、ヘッドフォンなどから音声が出力されることになる。HDMI規格自体はハイレゾ音源のデータ転送に対応しているし、そのままテレビ経由で再生しても、データがハイレゾ音源で、テレビやAVアンプがハイレゾ対応であれば、一応ハイレゾで楽しめていることにはなる。
ただ、せっかくの高音質なハイレゾ音源を鑑賞するのなら、きっちりハイレゾ対応のオーディオ機器を組み合わせて満喫したいもの。というわけで、ここで再び1つしかないUSBポートが活躍することになる。今では多彩な製品がラインアップされているハイレゾ対応のUSB DACと、ハイレゾ対応のヘッドフォンやスピーカーを接続して、あとは「foobar2000」などのプレーヤーソフトでハイレゾ音源を再生できるようにすればOK。
ネットワーク上のストレージ(NAS)や専用ストレージ上にあるハイレゾ音源をオーディオシステムで再生するのと本質的には大きな差はないのだけれど、インテル® Compute Stickでは再生とファイル管理が全く同一の環境で行えるのが最大のポイント。新しい音源をハイレゾ配信サイトからダウンロードし、プレイリストに加え、再生する、この一連の手順を1つの環境で行えるわけ。
そしてインテル® Compute Stickで4K出力する手段もある。何度も言うように、映像出力用のHDMIは1つしかない。規格としてはHDMI 1.4aに対応しているので、映像信号としては4Kも通すはずなんだけれど、実際には内蔵グラフィックスがフルHDまでの対応となるので、たとえ4Kディスプレイに接続したとしてもフルHD解像度になる。
ではどうやって4K出力するのかというと、やっぱりここでもUSBポートの出番となる。USB接続の4K対応ディスプレイアダプターを用いることで、インテル® Compute StickのHDMIポートから出力したフルHD映像と、USBディスプレイアダプターから出力した4K映像のデュアルディスプレイ構成が実現可能だ。
実際に試してみたところ、拍子抜けするほど簡単に、何の問題もなくフルHD+4Kのデュアルディスプレイ環境を構築でき、広大なデスクトップを手に入れることができた。もちろんYouTubeなどにある4K動画も美しく再生する。ただし、今回利用したUSBディスプレイアダプターの仕様上の制約で、30Hz(30p)までにしか対応しないため、すごくスムーズ!と言えるような映像が得られるわけではない。
動画鑑賞のために4K化するのは適切ではないが、高解像度の写真をスライドショー表示したり、広いデスクトップでとにかくたくさんの情報を1画面にまとめて表示させる、といったような用途であれば、十分にその役割を果たしてくれるはずだ。
本格的なマルチメディア利用を考えている人にも
というわけで、インターネット上の動画コンテンツの再生や管理、自身が撮影した動画・写真の閲覧、多彩な手段を用いたファイルのやりとり、周辺機器を用いた機能拡張など、そもそもがWindows PCであるからこそ可能となった多彩なマルチメディア性能を実現しているのが、「インテル® Compute Stick」という極小コンピューターなのだ。
スマートフォンやタブレットと連携する新しいOSプラットフォームで遊ぶのも面白いのだけれど、長年の歴史とノウハウ、資産が積み上げられてきたWindows PCには、それらにはまだない充実の機能と自由さがある。こだわればこだわるほど、自分の思い通りの使い方を実現できるWindowsを搭載した、しかも超小型のインテル® Compute Stickは、きっと映像や音楽を思いっきり楽しみたいユーザーも100%満足できるデバイスに違いない。
関連情報
- インテル® Compute Stick 製品情報
- http://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/compute-stick/intel-compute-stick.html