木の音と聴く。ハイレゾ対応ウッドドームユニット搭載 JVC WOOD HA-SW01 / HA-SW02 野村ケンジがレビュー

「上質な音楽がいつも身近にある生活」をテーマに、サウンドクォリティはもちろんのこと、ユーザビリティやデザインまでも細部までトータルにコーディネイト。現在のライフスタイルのなかで、最良のサウンドをスマートに、かつ存分に楽しめる環境を提案しているのが、JVCの「CLASS-S」コンセプトだ。

その第1弾である「SIGNA」シリーズは、この秋に登場(→レビュー記事)。新技術を惜しげもなく投入することで実現した表現力豊かなサウンドや、オンイヤーヘッドホンならではの使い勝手の良さ、服装とのコーディネイトにも配慮されたシックなデザインなどにより、発売以来、多くの人から注目を集めている。そんな「SIGNA」に続く「CLASS-S」コンセプト第2弾となるモデルが、この12月に早くも登場する。それがこの「WOOD」シリーズだ。

その名の通り、「木」を素材にした「WOOD」シリーズの魅力を探っていく

本格派ヘッドホン然としたディティール

JVCといえば、スピーカーにおいてもイヤホンにおいても、振動板にウッド素材を使ったモデルは有名だ。特に、イヤホン版「WOOD」シリーズに関しては絶大な人気を誇っていて、現在はレギュラー3モデルに加えてスペシャルモデルまでラインアップ。JVCカナル型イヤホンシリーズのフラッグシップシリーズとして、大いに人気を博している。そんなウッドドーム振動板採用モデルに新たなラインアップ、オーバーヘッドタイプのヘッドホンが登場したのだ。

当然ながら、ウッドドーム振動板を採用するオーバーヘッドタイプのヘッドホンはJVCとしても初めて。しかも、イヤーパッドはアラウンドイヤータイプ、ケーブルも左右独立タイプ(「SIGNA」シリーズはユーザビリティに配慮してか片側出し)というように、一見するとオーソドックスなスタイルの、音質最優先の本格派ヘッドホンのようにも見え、「SIGNA」シリーズとは、正反対のポジショニングに位置する存在といっていい。そんな「WOOD」シリーズが、いかにして「CLASS-S」コンセプトとしてのアイデンティティを持ち合わせているのか。サウンドとともに、ユーザビリティも含め、製品を細部までチェックさせていただこうと思う。

WOOD 01(左)と02(右)のパッケージ

高級感ある内箱を開けると、専用キャリングケースに包まれた本体が姿を現す

セット内容

“ウッドドーム振動板採用した世界初!?のヘッドホン

さて、まずは「WOOD」の概要から紹介していこう。先に述べたとおり、この「WOOD」シリーズは、JVCの「上質なサウンドとライフスタイルにマッチしたスタイル」を提供する「CLASS-S」コンセプトの第2弾となるヘッドホン。遮音性、サウンドクォリティのコントロールともに優位性の高いアラウンドイヤータイプのイヤーパッドを採用する、音質重視派の本格ヘッドホンだ。ラインアップは、プレミアムモデルの「WOOD 01」とスタンダードモデルの「WOOD 02」という2バリエーション。

愛称

WOOD 01
(プレミアムモデル)

WOOD 02
(スタンダードモデル)

型番

HA-SW01

HA-SW02

高音質技術

新開発バンド用40mm大型ウッドドーム振動板

ウッドドーム振動板専用設計 ハイエナジー磁気回路

音響用ハンダ

-

響棒

-

整振ウッドプラグ

-

ウッドバッフル

-

ウッド・オン・ハウジング

ウッドプレート(ユニット内部)

ブラスリング制振構造

アンチバイブレーションジャック、L/R独立グランドプラグ&ケーブル

快適性

ハイレゾ仕様コンフォータブルイヤーパッド

利便性

スイーベル構造&キャリングケース付属

最大の特徴となっているのが、本物の木製である「ウッドドーム振動板」を採用していることだ。

同社のイヤホン「WOOD」シリーズでも同様のウッドドーム振動板を採用していたが、今回の「WOOD」シリーズは、そのウッドドーム振動板を採用した初のオーバーヘッドタイプのヘッドホンとなる。アウターハウジング(ヘッドホンのいちばん外側)にウッド素材を採用するヘッドホンはいくつかあるが、振動板そのものにウッド素材を採用しているプロダクトは、筆者が知る限りこれが初めて。当然ながら、JVCとしても初の試みとなっている。

どうやって、加工の難しいウッドを、今回のような大口径ユニットに採用できたのか。そのエンジニアリングは大いに気になるところだろう。技術面について、「WOOD 01/02」シリーズの開発者であるJVCケンウッドのエンジニアリングスペシャリスト、北岩氏に話を聞いた。

WOOD 01/02の開発を担当した北岩公彦氏

「基本的にドーム形状の振動板にバーチ(樺)ウッド素材を採用する、という構成はイヤホンの「WOOD」と変わりありません。しかしながら、今回の「WOOD 01/02」ヘッドホンに採用されている振動板は、口径が40mmとイヤホンに比べて約11倍もの面積があるため、以前の素材をそのまま採用することはできず、開発には様々なトライを行うことになりました。

最大のソリューションは、ウッド素材の厚みでしょうか。従来モデル(イヤホン)では80μmあった厚みを、50μmまで薄型化。具体的には、髪の毛の半分くらいの厚みにまで薄くしました。これによって、一般的な振動板素材に比べて比重の高いウッド素材を採用しながらも、レスポンスの良い軽量な振動板を作り上げることができました。さらに「WOOD 01/02」では、ウッドドーム振動板の特性にマッチしたプレート形状を持つ、専用の磁気回路を新開発しています。この組み合わせによって、リニアリティの高い動作を実現、良質なサウンドを生み出すことができました」

右がインナーイヤー型「WOOD」の振動板素材、左が今回の「WOOD 01/02」の振動板素材。背面に敷かれた布の透け具合から、その圧倒的薄さがわかる

厚さ50μmのウッド素材を特殊な接着剤でフィルムに接着したウッドドーム振動板

新開発のWOOD 01/02専用ハイエナジー磁気回路によって、ウッドドーム振動板を強力に駆動。エッジ部分を切り落としたようなテーパー形状のプレートも、リニアリティを増すために新たに考え出された

もうひとつ、ウッド素材の薄型化によって新たなメリットが生み出せたという。

「今回のウッドドーム振動板素材に関しては、50μmという薄型化とともに、素材の均一化も行ったのですが、これによって、音質的なクォリティの向上とともに、個体差の発生を解消することもできました。ウッドは自然の素材ですから、当然ながらひとつひとつ微妙に特性が変わってきてしまう。イヤホンのような小型ユニットならともかく、40mmもの口径サイズとなると、それが音質にも影響を及ぼしてしまいます。50μmという超薄化によって、クォリティの安定化も実現しています」

徹底的に音を作り込んだプレミアムモデル「WOOD 01」

振動板素材以外にも、様々な部分にウッド素材を採用し、木の素材ならではの自然な響きを追求しているのが、この「WOOD」シリーズヘッドホンならではの特徴となっている。たとえば、アウターハウジングは当然のごとくウッド素材を採用している。また、ドライバーユニットの内側にもウッドプレートを配置。ユニット内の反射音を吸収することで、高分解能を実現しているという。

さらに、プレミアムモデルの「WOOD 01」では、ハウジング部の振動をコントロールするための「整振ウッドプラグ」や、イヤーダイレクトバッフル(ドライバーを取り付ける耳側の部分)との固定部をブラス(真鍮)リング+ウッドバッフルという構成にしたりと、ウッド素材ならではの特長を活かしたサウンドチューニングが行われている。

「このあたりのエンジニアリングには、カナル型イヤホンのノウハウを活かして進化させた部分もありますが、振動板のベース素材に「SIGNA」とおなじPEN素材を使い、それにウッド素材を組み合わせる手法を採ったり、ユニットホルダーにポリアミドを採用することで振動を抑制したり、ウッド素材の響棒によってサウンドキャラクターをコントロールしたりと、「WOOD」シリーズヘッドホンならではの新たなるノウハウが数多く盛り込ませています。スピーカーやイヤホンとは異なる、第3のウッドシリーズ、と捉えていただけると嬉しいです」

WOOD 01/02の内部構造。赤字部分はWOOD 01のみに搭載

ユニットをイヤーダイレクトバッフルに固定する部分にブラスリング(中央右)がはさみこまれている。WOOD 01ではさらにウッドバッフル(中央左)が追加されており、制振性に寄与

WOOD 01は微妙な響きを調節するための「響棒」も搭載。もちろん木製

素材の種類や厚みなどのちょっとした変化で大幅に音質が変わってしまうのが木素材のむずかしさ。完成までには様々な素材でトライ&エラーが繰り返されたという

デザイン的には、ブラック&ガンメタリック、そしてハウジングのウッド素材もややダークなカラーリングと、ウッドドーム振動板素材を採用するアイデンティティを主張しつつも、全体的にはシックなイメージでまとめられている。とても上品な、とても大人びたコーディネイトだ。第1弾の「SIGNA」シリーズも大人っぽい雰囲気があったが、それをさらに高めたイメージといえる。とはいえ、決して“音以外に全く興味ないマニアックなカタチ”にならず、屋外でも積極的に使いたくなるデザインなのは嬉しい。また、アラウンドイヤータイプながらスイーベル機構を採用、持ち運びもしやすいよう工夫されている。両出しとなったケーブルは着脱が可能。純正ケーブルは布製編組アウターを採用するなど音質/外観ともになかなかのものだが、将来的にはリケーブルを行うなどして、大いに楽しめそうだ。

WOOD 01のアウターハウジング。環境変化に強い木製の積層材をカットしているため、断面の積層が見えているデザイン。木素材の周囲を縁取るメタルパーツは、控えめな輝きを演出するため、エッジをダイヤカット後に再度アルマイト処理を施したもの。JVCらしいシックな雰囲気だ

ちなみにこちらはWOOD 02のアウターハウジング。WOOD 01に比べると素材がやや明るめで、カジュアルな雰囲気に仕上がっている

「L/R独立グランドプラグ&ケーブル」を採用。両出しで着脱可能。リケーブルも楽しめる

着脱可能なイヤーパッド

個性豊かな2モデルを試聴

さて、ここからは「WOOD 01」「WOOD 02」の実機を手にしつつ、そのサウンドについてレビューしていこう。ただし、試聴を行った個体に関しては、発売前の最終サンプルとなるため、マテリアルについては製品版とほぼ同じであるものの、サウンドチューニングに関しては多少なり変更される可能性が残されている。音質レビューについてはあくまでも参考としていただき、発売後、実際に製品を試聴して確認して欲しい。

まずはスタンダードモデルの「WOOD 02」から。

ウッドドーム振動板のイメージ通りといった自然な響きを持ちつつも、同時にダイレクトで奔放な鳴りをも持ちあわせる、特性の良いサウンド。溝口肇『亜麻色の髪の乙女』を聴くと、チェロはややウォーミーな音色傾向を持ちながらも、ボーイングの強弱がしっかりと伝わる、リアリティの高いサウンドを楽しませてくれる。何よりも、弦楽器の響きが心地よい。ニュアンス表現の階調がとてもきめ細やかで、しかも音切れがなく粘りの良いサウンドを聴かせてくれる。中域を最重要視したバランスなので、人によっては違和感があるかもしれないが、カナル型イヤホンでウッドドームの特徴を知る人にとっては、ウッドドーム振動板の魅力がしっかり引き出されている、と感じてもらえるはずだ。

続いて、プレミアムモデル「WOOD 01」を試聴。

サウンドクォリティについてはかなりの違いがある。確かに、音色傾向については「WOOD 02」に近いものがあり、同じシリーズの製品とわかるのだが、よりクォリティを向上させたうえ、随分とワイドレンジな印象へとシフトしているのだ。

おかげで、様々なジャンルの音楽がフラットに楽しめるようになっている。たとえばTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの『BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD )』を聴くと、ピアノの音が心地よく響き、その一歩手前で2人の女性ヴォーカルが張りのある歌声を聴かせてくれる。普段よりも抑揚が大きめに表現されていて、メリハリのはっきりした歌声や演奏が、とても心地よい。こういった臨場感の高さは、ウッドドーム振動板ならではのもの。既存モデルで例えるとすれば、カナル型イヤホン「HA-FX1100」のキャラクターに近く、さらに音質的なクォリティを高めたイメージだろうか。ヘッドホンならではの音数の多さ、抑揚のダイナミックさが、しっかりと活かされている印象だ。

もちろん、本命といえるアコースティック楽器も得意。チェロは高域方向に伸びやかな、広がり感のある音に変化しており、音色もとても自然な印象にシフト。細やかなニュアンス表現がしっかりと伝わってくるので、音がリアルになると同時に、演奏の表現も随分豊かに感じられる。

「SIGNA」シリーズと全く異なる個性派プレミアムモデル

このように、「WOOD」シリーズはウッドドーム振動板ならではの特徴的なサウンドをヘッドホンでも楽しむことができる、個性的であり、斬新なモデルといえる。さらに、「WOOD 02」は中域重視の活き活きとした表現、「WOOD 01」はワイドレンジさも持ち合わせたバランスの良いサウンドといったように、それぞれが特徴的なサウンドを持ち合わせているのも興味深い。同じ「CLASS-S」であっても、「SIGNA」シリーズとは使い勝手もサウンドも全くの別物で、懐がさらに広がった「CLASS-S」の今後の展開へ期待感も高まる。こういったバリエーションの幅広さは、大歓迎だ。

(野村ケンジ)

関連情報

WOOD 01 製品情報

WOOD 02 製品情報

WOOD スペシャルサイト

CLASS-S スペシャルサイト

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