美優Navi RX01のサポートで親子ドライブへ・番外編
ずっとクルマで過ごしたい!プロが音創りした圧倒的なオーディオ性能に迫る

 前編後編と、パナソニック「美優(ビ・ユー)Navi CN-RX01WD」がいかに親子2人きりのドライブに適した機能・性能を備えているか、じっくり説明してきた。

 後部座席に座る子どもの様子をバッチリ確認できるカメラ付きのリアモニターに加え、市販初のBlu-rayディスクプレーヤー搭載、HDMI出力端子を備えていたり、リッチなエンタメ機能も充実。さらに、道路標識情報を表示と音声で知らせる「安心運転サポート」、フロントインフォディスプレイを活用したわかりやすいナビ表示により、安心・快適に最大限配慮した、より楽しいドライブを可能にするのが美優Navi RX01の特徴だ。

 前編でも少し触れたのだけれど、快適なドライビングをさらに支援してくれる要素が、実はもう1つある。それが、美優Naviのオーディオシステム「ストラーダサウンドエンジン」に含まれる、プロによってチューニングされた「音の匠」と呼ばれるオーディオ機能。音にこだわりのある人も、そうでない人も、一度聴いたら「これにしたい!」と思うこと間違いなしの、感動的なサウンドを聴かせてくれるのだ。親子や家族とのドライブシーンでは父親が運転することが多く、Blu-rayや写真・動画の再生などを運転中に楽しむことはできないけれど、音楽ならば運転中だって問題ない。父親にとっては最大のエンタメ機能がスゴイのはやっぱり魅力的だ。

十人十色の“いい音”を、万人が納得する“いい音”に

ストラーダサウンドエンジンの開発に携わったパナソニック(株) オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の仲野清裕氏

 そもそも、パナソニックのストラーダで「音の匠」というオーディオ機能を搭載し始めたのは2008年のこと。それまでも、同社ではカーオーディオとしてのあり方や、音質改善に向けた取り組みについて模索してきたそうだが、やはりあくまでも“クルマの中で聴くもの”という枠に収まる無難な音創りに落ち着いてしまっていた。

 いくら創り込んだところで、“いい音”と感じるものは人それぞれ。では、“いい音”というのは本質的にどういうものなのか。開発者が模索する中、転機が訪れたのは2007年のことだった。音楽CDのレコーディングなどを手がけるプロ集団「ミキサーズ・ラボ」に、ストラーダで再生した楽曲を試聴してもらった際、イコライザーを少し調整してもらっただけで、それまでとは格段に違う高品質なサウンドに一変したのだという。

 それを機に、パナソニックでは音響設計家の豊島政実氏が監修したリファレンスルームを設置し、さらにミキサーズ・ラボが手掛けたCDをリファレンスとして用いて、まずベースとなるストラーダサウンドエンジンを構築。これにプロの耳でベストとなるようにイコライジングを施し、その値を簡単にセットできる機能を設けることで「音の匠」というオーディオ機能が形になった。

音楽のプロが、スタジオマスタークオリティへと引き上げる

美優Naviのサウンドを、スタジオマスタークオリティへと引き上げたミキサーズ・ラボ

 かといって、それ以前のストラーダの音創りが失敗だったというわけではない。カーナビ業界でしのぎを削る各メーカーのオーディオ機能は、パナソニックも含め、それぞれに個性があり、長所もあれば弱点もある。その個性を活かしながら、どのようにしてスタジオマスタークオリティに引き上げていくか、というのが音楽のプロであるミキサーズ・ラボの目指す方向性だった。

 パナソニックがそれまでに創り込んでいたのは、あくまでもクルマで聴くものとしての音楽。狭い空間で効果的な音場を実現し、いかに気持ちよくユーザーに聴かせるかにこだわってきたものだった。対して音楽のプロが重視していたのは、音楽性。空間の広さやスピーカー構成などの制約を考慮するのは当然として、その中で音楽に込められたさまざまな音や思いを100%出し切るには何が必要か、といった部分をチューニングテクニックで再現し、楽曲が本来もっている躍動感、音楽感みたいなものを感じ取れるようにしたのだという。

 このようにして完成したイコライジングのベース設定が、ストラーダの「音の匠」の「匠(TAKUMI)」モードというわけ。2wayスピーカーを搭載する多くのクルマで、音楽CDやDVD、Blu-rayなどに収録された楽曲、あるいはMP3/WMAなどの圧縮音源を再生するのに、そのクルマの中でよりスタジオマスターサウンドに近い音で音楽を再生するようになっている。

最上の音楽をデフォルトの「音の匠」で味わえる

 美優Navi RX01では、このスタジオマスタークオリティを実現する2wayスピーカー向けの「匠(TAKUMI)」モードの他に、フルレンジスピーカー(1way)を搭載する車両向けにメリハリの良い音を響かせる「極(KIWAMI)」モード、人の声の周波数帯を抑えて車内での会話を聞き取りやすくしながら“いい音”で音楽を聴ける「和(NAGOMI)」モードという2つの機能も搭載した。

 これら3つのモードはナビ画面のタッチ操作で簡単に切り替えられるようになっているので、じっくり音楽を聴きたい時、もしくは家族や友人とのドライブで会話も楽しみたい時、といったシチュエーションに合わせ、最高のサウンドを味わえる。

 デフォルトの「音の匠」では、あらゆる音楽ジャンルにマッチするイコライジングが最初から施されているので、多くの場合、おそらく標準設定で音質には十分に満足できることと思う。それでも、ユーザーの好みで自分のクルマに合わせて、低域をもっと響かせたいとか、中高域をにぎやかにしたい、と思うこともあるだろう。そんな時は「音の匠」を選択した状態で13バンドの調整が可能なイコライザー機能を微調整することで、画面上には表れない「音の匠」の設定値をベースとした自由自在な音創りが楽しめるようにもなっている。また、スピーカーとサブウーファーの音が出るタイミングの変更が可能な「スピーカーディレイ」機能を搭載しているので、環境に応じたセッティングも可能だ。

標準の「音の匠」状態ですでに「音の匠」の実力が発揮されている
イコライザーを用いて自分好みの音創りももちろん可能だ

1つの電解コンデンサーがストラーダサウンドエンジンを変えた

 ここまではプロの手によるチューニング、いわばソフトウェア部分について解説してきたわけだけれども、そこまでのチューニングを可能にするには、当然ながらハードウェア側もそれに見合った進化が必要だ。果たしてどんな変化があったのだろうか。

 開発者によれば、美優Navi RX01も含めスタジオマスタークオリティの音質を実現し高めていくには、パーツレベルでの改善が常に欠かせないという。

 デジタルデータとして記録されているものをアナログ信号に変換して音として聴こえるようにする部分については、オーディオ業界で信頼と実績のあるバー・ブラウン製の32bit D/Aコンバータを採用。さらに、開発者が「精度が他と比べて群を抜いて高かった」という電解コンデンサが、高音質化のもう1つの大きなポイントとなっている。

 この電解コンデンサ、実は2007年当時「音の匠」プロジェクトを始めた頃「低域が締まらず、どうしても平坦に聴こえていた」音を改善するため、20種類以上ものコンデンサを付け替えながら試行錯誤している中、たった1つだけサンプル品として提供を受けていたものだった。そのサンプルのコンデンサに付け替えたところ、それまで悩んでいたのがうそのように明らかに低域が改善。音に囲まれるような臨場感に生まれ変わったのだとか。

 大量生産された安価なものとは異なり、1つ1つ丁寧に職人技で作られたという電解コンデンサは、美優Navi RX01を含むストラーダシリーズで採用するに当たり、「カスタムストラーダコンデンサ」と命名された。

 力強さと繊細さを併せ持った滑らかな音質を実現する高性能D/Aコンバータや、これまでにない臨場感を再現するカスタムストラーダコンデンサなど、吟味に吟味を重ねたパーツチョイスに、ミキサーズ・ラボが手がけたスタジオマスタークオリティのイコライジングが組み合わされることで、誰が聴いても納得できる“いい音”が完成したといえるだろう。

バー・ブラウン製の32bit D/Aコンバータ
中央にロゴが刻まれる「カスタムストラーダコンデンサ」はストラーダ専用に開発された。音質においてもっとも大きなポイントとなっている

空気感まで捉えられる高音質。思わずクルマに乗りたくなる!?

Blu-rayディスクに収録された96kHz/24bitなどの楽曲は、48kHz/20bitで再生される

 最近オーディオ業界で話題になっている“ハイレゾ”については、残念ながら美優Naviでは正式には対応してはいない。しかし、Blu-rayディスクの映画や音楽コンテンツのサウンドについては、192kHz/24bit、96kHz/24bitなどで収録されている音源を48kHz/20bitに変換して、CDより高音質で楽しむことができるようになっている。

 実際にBlu-rayに収録された音楽を聴いてみると、まるでクルマの中とは思えない臨場感で、心地よい音で車内が満たされるのを感じた。たとえばクラシックでは、打楽器の連続する音の粒度が高い解像感をもって、しかも奥行きをともなって耳に届く。高域のバイオリンやフルートも、細部の音の揺らぎまでしっかり捉えられた。

思わずボリュームも大きくなる

 何より、オーケストラの存在やその場の雰囲気が肌で感じ取れるような“空気感”さえ堪能できたのは車内では初めての経験で、こんなにリッチなサウンドをクルマの中でしか味わえないのはもったいない! と思ってしまうほど。今回はお借りしたクルマで聴いたのだけれど、もしこれが自分のクルマに搭載されていたら、出かける用事がなくても乗り込んで自宅の駐車場で音楽鑑賞にハマってしまうかもしれない。少なくともドライブの回数は間違いなく増えるだろう。

 開発者によれば、今回プロの協力で実現できた“音楽性”を元に、本来目指していた“クルマに最適なもの”へと再び発展させていくのが目標だという。また、ハイレゾ対応についても、パナソニックとしてクルマにおけるハイレゾがどういうものであるべきか、じっくり練ったうえで検討していきたい、とのこと。今後も車内エンタメの品質がますます磨かれていくことに、大いに期待が持てそうだ。