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世界初の真空技術がもたらす解像度の高いサウンド スピーカーユニットをパイオニアと共同開発!! サーモス「VECLOS 真空ワイヤレスポータブルスピーカー」

 最近、ところどころで、見かけるちょっと不思議なスピーカーがある。「VECLOS(ヴェクロス)」という名称の小さな機材で、「150cc程度の缶?」という雰囲気の妙に軽いBluetooth対応スピーカーなのだ。ところが、実際に音を出してみるとビックリするほど解像度の高い、しっかりとしたサウンド。実はこれ、魔法びんメーカーとして知られるサーモスが開発したもの。なぜ、サーモスが……!? と思ったが、サウンドにおいてサーモスの持つ技術にも深いつながりがあったのだ。

一見、小型のマグカップのような外見だが……
底部のスタンドを展開してスピーカーに
Bluetooth搭載のアクティブスピーカーとパッシブスピーカーがセットになった「ステレオタイプ SSA-40S」(写真)のほか、アクティブスピーカーのみの「モノラルタイプ SSA-40M」もラインアップ
ステレオタイプの場合、スピーカー同士を有線で接続してステレオ化する。もちろんアクティブスピーカーのみでモノラル利用も可能
ブルー、レッド、ブラック、ホワイトの4色を用意

“重たいほうがいい”という一説を払拭した小型スピーカー

 一般的にスピーカーは「重たいもののほうがいい」とされている。その理由はいろいろあるが、1つにはスピーカー本体の制動性が挙げられる。軽いスピーカーだと、大きな音が出せなかったり、音による振動でスピーカー自体が揺れてしまい、異音がしたりする。それに対し、重たいスピーカーであれば大きな音も出せるし、安定するからだ。ところが、そうした一説とはまったく異なるアプローチで、小型のBluetooth対応スピーカーを作り上げたのがサーモスなのだ。

重さは約160g。手のひらサイズで持ち運びも簡単。専用のキャリングケースも付属する

 実際に持ってみるとわかるが、VECLOSは、ステンレス製のマグカップのような形をしていてとても軽い。これまでの常識に照らし合わせて考えれば、まともに音が出るはずはないのだが、実際に音を聴いてみると驚く。中高域がとてもキレイなサウンドで、かなりクリアなモニタースピーカーといった印象。低域は若干弱めには感じたものの、十分な音圧がある。なぜ、こんなに軽い筐体から、これだけの音が出てくるのだ……と不思議に感じられるのだが、その秘密はやはり、サーモスが長年培ってきた魔法びんの技術にあったのだ。

 ご存じのとおり、魔法びんやステンレスマグカップなどには、真空断熱という手法が用いられている。ステンレスが二重構造となっており、その間の空間が真空になっているため、断熱性に優れ、結果として長時間保温が可能になっているのだ。

 一方、音も空気と密接な関係がある。そう、音は空気を振動させることで伝わるが、真空状態ではまったく伝わらない。つまりVECLOSは、魔法びんの技術を活かした世界初(※)の「真空二重構造」によるエンクロージャーの優れた振動減衰特性と、(雑音の原因となる)振動を伝えないという真空自身の特性を活かして開発されたスピーカーだったのだ。

真空二重構造のエンクロージャーを採用。真空の特性がスピーカーユニットからの振動を抑える

 実際、大きな音を出している状態でボディーを触っても振動はほとんど感じない。スピーカーの開発は振動を測定しながら行っていたようで、同社の測定データでは、それがしっかり表れている。測定方法は、スピーカーにインパルスレスポンス=非常に短いパルス信号を与えて「バンッ」と鳴らした際、スピーカーの外面がどのように振動するかをレーザーで捉える、というもの。

 VECLOSの真空二重構造ユニットでは、ほとんど揺れがなく、その揺れも7msecと短時間で消えている(図1)。それに対し、ほぼ同じ大きさの樹脂無垢構造ユニットで同じ実験を行うと、明らかに揺れていることがわかる(図2)。この図を見ると1kHz周辺が大きく揺れるとともに、その倍音などでの揺れも確認できる。また1kHzでの揺れは、それが止まるまでに30msec程度かかるなど、立下り累積スペクトラムにおいても真空二重構造ユニットとはまったく違う特性となっているのだ。

真空二重構造ユニットのスピーカー側面では、最初の揺れの大きさは≒40dBだが、7msec後には消えている(図1) 同じ実験を樹脂無垢構造ユニットで行った際のスピーカー側面の立下り累積スペクトラム。振動が大きく、長く続く(図2)

 さて、筐体に仕掛けがされていることはわかったが、オーディオの世界においてはまったく実績のないサーモス。「魔法びんの会社が、ホントにまともなオーディオ機器を作れるのか?」、そんな疑問を持つ方もいるだろう。それも心配無用。

 実は、スピーカーユニットをパイオニアと共同開発しているのだ。そのほか、エンクロージャーの構造などでもノウハウが活かされており、音質の面ではパイオニアが全面的にバックアップしている。パイオニアがスピーカーユニットを提供したというわけではなく、真空二重構造による遮音特性、減衰特性を最大限に活かしたスピーカーユニットとして、新しく開発されたものなのだ。

コーン紙、ダンパー、マグネットへのコダワリ

 このスピーカーユニットには3つの特徴がある。まずはスピーカーの良し悪しを決める一番の要素といってもいいコーン紙の組成。真空二重構造の内側に入るため、金属によるコーンが検討されたものの、それだとやはり重くなってしまう。そこで、紙のコーンにマイカを固着させた「マイカ混沙コーン」というものを採用している。これは普通の紙と比較して、圧倒的に硬い特性を持っている。その結果、前述のように中高域がクリアに出るようになるのだ。

 一方低域はというと、パッシブラジエーターを用いたり、DSPでブーストするといったような手法は取らず、あくまでも「原音に忠実な自然な音」という方向性にしたがい、一般的なコルゲーションダンパーではなく、「バタフライ・ダンパー」と呼ばれる特殊なダンパー構造が採用されており、切れ目が入っているのが特徴。これを採用することにより、小口径ながら余裕のあるストロークを実現し、豊かな低域再生が可能になっているのだ。

 もう1つの特徴は、スピーカーユニットの磁石部分にネオジウム・マグネットを採用しているという点。これによって十分な駆動力を得て、豊かな音量を実現させているのだ。ただし、ステレオタイプのSSA-40Sという製品で2.7W+2.7W、モノラルタイプのSSA-40Mで3Wという出力なので、部屋全体で聴くような大出力というわけにはいかない。この筒のような構造からビームが飛び出すようにまっすぐに音が届くため、スウィートスポットは狭い。だからこそ、豊かな音量に感じるわけであり、使い方としてはPCのディスプレイを挟むように設置するのがよさそうだ。

スピーカーユニット。コーン紙には普通の紙より硬いマイカ混沙コーンが使われている。磁石にはネオジウム・マグネットを採用

 ところで、このVECLOSは前述のとおりBluetooth対応のスピーカー。「いくら高音質といったって、A2DPで音を圧縮しているのでは、使えたものではない」という人もいるだろう。確かに、真空二重構造で高品位なスピーカーユニットを使っているのに、A2DPがボトルネックになってしまうのは、惜しい気もする。が、ここには回避策もある。

 そう、ステレオミニ端子のアナログ入力も装備しているので、USB-DACなどからここに接続すれば、音質が劣化することなくスピーカーユニットへと音を届けることができるのだ。カジュアルに使う場合はBluetoothで、じっくりと高音質で楽しみたいときはアナログ接続で、というのが賢い使い方といえるのではないだろうか。

アナログ入力に接続することでBluetooth非対応のプレイヤーでも楽しめる

Bluetooth接続でも納得の音質! アナログ接続で高域がさらにクリアに!!

 実際に、VECLOSをいろいろな機材に繋ぎ変えながら音を鳴らしてみた。まずはiPhone 6sとBluetooth接続し、iTunesライブラリ内の楽曲を視聴してみたが、かなり高品位に再生することができた。低域はブーストされることなくとても自然な音だし、音量を上げていくとかなりのレベルとなり、自宅で使う用途であれば十分な感じだ。Bluetooth接続をWindowsマシンに切り替え、WAVやMP3などを聴いてみたが、もちろん音質やレベル的には同様だ。96kHz/24bitのハイレゾ音源も鳴らしてみたが、そこそこのサウンドという印象で、ハイレゾだから劇的に音質向上という感じがしないのは、やはりA2DPで圧縮されているからかもしれない。

スマートフォンとBluetooth接続。手軽に高音質が楽しめる

 そこで試してみたのが、USB-DAC出力をVECLOSのAUXに入力し、同じハイレゾの音源を聴いてみるということ。ここで使ったのはUSB-DACというよりも、192kHz/24bit対応の手頃なオーディオインターフェイス「UR22mkII」だ。これは明らかに変わる。違いを感じたのは、Bluetooth接続よりもさらに音量が大きく出せるという点。そのため、ダイナミックレンジが広がるからか解像度が高くなったと感じられ、レベルを合わせても、その印象はある。

 また、DACが異なることが影響しているとは思うが、こちらのほうがさらに高域がクリアに聴こえるように感じられた。このへんは好みの問題もあるので、必ずしもアナログ接続がいいとはいえないし、Bluetooth接続でも十分納得いく音は得られると思う。いろいろ試してみるのも面白いのではないだろうか。

※真空二重構造エンクロージャー搭載のBluetooth対応アクティブスピーカーとして(2015年2月時点 サーモス株式会社調べ)