4K/HDR時代のリファレンスとなれるテレビ「ビエラ DXシリーズ」

このところ、毎年のように“今年は4Kテレビの年”と言われている。今年こそ本命と言われると「また今年も?」と感じる人もいるかもしれない。過去の4Kテレビ動向は、低価格化で購入しやすくなったり、フルHD映像をより高画質に映せるといった、従来型テレビの延長線上にあった。

ところが今年のトレンドは「映像コンテンツのイノベーション(刷新)」が基本軸にある。

4Kテレビは、フルHDの縦横2倍、画素数で4倍もの解像力を持つデジタルテレビのことだ。液晶テレビは高精細化が容易なため、テレビを構成するLSI回路が高性能化すると、あっという間に4Kテレビを商品化できるようになり、毎年のように安価になってきている。

本稿ではまず、今年の映像製品トレンドについて注目していきたい。今、テレビ業界は大きな節目に差し掛かっているのだ。

4Kテレビの年に、パナソニックが投入する「DX850」

4K化を契機に、映像のあらゆる面を進化させる

かつてのテレビは、ブラウン管を使うことが前提で設計されていた。これはハイビジョン放送においても同じだ。ブラウン管には階調表現が滑らかでコントラストにも優れるという利点がある反面、色再現範囲や輝度に制約がある。

よって、ハイビジョン放送では解像度だけしか向上しない。ハイビジョン以前の標準解像度では解像力が圧倒的に不足していたため、解像度だけでも充分に美しいと感じられた。ゆえに現在では、ハイビジョン対応テレビが我々の生活に浸透したのだ。

では、4K化によって同じように価値を高められるかといえば、当時ほどのインパクトはない。なぜなら、解像度を高めることも画質向上には有益だが、標準解像度時代ほど解像度に対する渇望感はないからだ。単純に4Kにするだけならば壁がある。

しかし、現在ではブラウン管が使われなくなり、液晶パネルが表示装置の主流になっている。液晶パネルはブラウン管の10倍以上の輝度を出すことができ、色再現域も圧倒的に広い。色というのは平面ではなく、明暗を含めた立体で表現されるのだが、現在では、表現できる光の範囲(色立体)の体積ははるかに大きい。

そこで、映像コンテンツを4Kに移行させる際、有機ELディスプレイ(OLED)や来たるべき将来の表示技術まで新規格の中で表現できるよう、カメラやネガフィルムが捉えることができる光の範囲を、すべてコンテンツの中に入れようということになった。

色再現範囲に関してはBT.2020という規格で決められていたが、加えて明暗差もより大きな範囲を収めるために本格普及し始めているのが、HDR(ハイダイナミックレンジ)という技術だ。

BT.2020は、スカパー! やNexTV-Fの実験放送などでも採用されており、世の中にある4K映像の多くがBT.2020で制作されている。4K対応機器であれば、同じくBT.2020に対応していると考えていい。

しかし、鮮やかな色を表現できるBT.2020に対応していても、HDRに対応していなければその良さを活かすことはできない。なぜなら、明るい窓の外や、暗い部屋の中にボンヤリと浮かび上がる被写体などは、HDRに対応することでカラーボリュームが明暗方向に拡大されていないと表現できないからだ。

つまり、BT.2020とHDRの両方に対応することで、4K化に映像イノベーションとしての大きな意味が生まれてくる。解像度だけでなく、映像で表現できるあらゆる要素がグレードアップされるのである。

ネット配信、ブルーレイ、放送、いずれも4K/HDR化が一気に進行

このムーブメントをコンテンツサイドで見ると、市場にいち早く参入しているのがネット配信だ。その中でもNetflixは、オリジナル制作ドラマのうち、4K撮影している作品の多くをHDRで配信しようとしている。北米ではHDR対応コンテンツが増加中だが、日本ではマルコポーロなど一部のみ。

しかしこの春に対応テレビが急増することもあり、日本でのHDRコンテンツも増えるとみられる。日本市場向けには、フルCG制作された「シドニアの騎士」に出資し、HDR版に仕上げたものが配信される計画もある。

またHDR化は、Netflix以上にハリウッド映画スタジオが積極的だ。ハリウッド映画スタジオは、Netflixには4K/HDRコンテンツを供給していないが、時間限定のレンタル型VoDなどでの配信はあるだろう。

また6月からは日本でも、ワーナー、20世紀フォックス、ソニーピクチャーなどがUHD Blu-ray対応ソフトを発売。購入しやすい対応プレーヤーの発売も予定されているほか、ミドルクラスのBlu-rayレコーダーにもUHD Blu-ray再生機能が入るという。

まだUHD Blu-rayを発売していないディズニーも、近く、グローバルでUHD Blu-rayを発売するとのこと。収録解像度はフルHDとなるが、広色域とHDRに対応することで画質が大幅に高まる。

HDRに対応する映画という点では、UHD Blu-rayが当面、もっとも高画質かつ手早く入手出来る4K/HDRコンテンツになる。

そして放送では、Hybrid Log-gamma(HLG)という技術が採用される。これは従来のテレビにそのまま表示しても違和感なく、対応テレビで観るとHDRとして機能する特殊な明暗情報を記録するもの。すでに、欧州でBBCが放送実験を終えており、日本でもNHKが夏以降に実験放送を予定しているほか、HLGの実証が終了次第、スカパー! 4KがHDRでの放送を開始すると予想される。

このように、4K/HDRの映像を楽しめる環境が今年、一気に進行する。

再び消費者が積極的にテレビを選ぶ時代へ

テレビは長年、色再現や輝度の範囲を変えられず、単に解像度がフルHDになっただけで技術の進歩が止まっていた。標準解像度とハイビジョンの違いを除けば、はじめてのカラーテレビ放送から、カラーボリュームは変化しなかったのだ。

これでは、不安定だった液晶テレビの画質が安定し、フルHDパネルが安価になれば、あとはテレビに新しい要素を求めなくなるのも当然のこと。消費者はテレビを選択するよりも、目先のお買い得な商品を選んだ方がいい。消費者が積極的に、より良いテレビを選ぶ利点が少なくなってしまったのだ。

機能面が評価されても、どれほど画質にこだわっても、消費者はどんどん冷めていってしまう。しかし、4K化にはその状況を変える可能性がある。

前述のBT.2020とHDRで表現できるカラーボリュームは、液晶テレビが再現できる範囲も、OLEDテレビが再現できる範囲も超えている。

従来は大きな器(ディスプレイ)に小さな内容物(コンテンツ)を入れていたが、4K時代は内容物の方が大きくなるため、どのように器にコンテンツを収めるのかというノウハウ、そもそもどこまで大きな器にできるか? というディスプレイ性能への要求という2つのテーマがテレビ開発に重要になっている。

言い換えれば、この2つのテーマに対して、どこまで真剣に取り組んでいるかが明確な形で商品に現れるため、再び消費者が、テレビの画質や音質などの性能を評価して選ぶ時代がやってくるだろう。そして、この2つのテーマに対し、正面から取り組んだのが今年の「ビエラDX950/850」だ。

画質よりも音に注力したDX850でも高画質

まず、LEDに工夫を施すことで“赤”の発色を改善。広色域対応のコンテンツに対しても、ヘキサクロマドライブで高精度の色補正を行い正確な色を導く点は昨年モデルから引き継ぎつつ、さらに進化させている。特に暗部における的確な色相表現が印象的だったが、今年は広ダイナミックレンジ、すなわちHDRを活かすための仕掛けと組み合わせることで、さらに暗部における再現性を高めた。

具体的にはバックライトの部分制御(ローカルディミング)の精度を高めるため、映像分析と輝度制御のキモとなるLSI回路を完全に新規設計している。暗部でのディミング(絞り込み)を積極的に行うようになったため、光漏れが減り発色がさらに良くなったのだ。

LSIの一新によって、従来はまれに見られたバックライトを絞り込んだ際の高輝度部への影響などが解消されており、両シリーズともに業界トップクラスのローカルディミング制御を実現した。

マニア向けのスポーツカーDX950、ファミリー向けのプレミアムカーDX850

さて、広色域と広ダイナミックレンジの両方への準備を深めた今年のビエラDXシリーズだが、DX950とDX850には明確なコンセプトの違いがある。

DX950はいわば、最新技術とノウハウを注入し、画質を高めることにフォーカスしてチューンしたスポーツカーだ。512分割という分割数はローカルディミング制御のネガティブな部分を払拭し、高コントラストを実現できるVA型パネルを採用することで、正対時に最高の画質が得られることを重視した。

バックライトからの導光板構造を工夫し、各エリアごとの漏れ光を抑え込むといった手間とコストのかかる手法も採用している。その成果は、UHD Blu-ray版の「マッドマックス」など、HDRを活用した映像を観れば明らかで、全編にわたってHDR対応マスタリングモニターでも観ているかのような的確な描写を行う。

これに対してDX850は、ファミリー層も含めて家族みんなで楽しめる、カジュアルではあるがプレミアムなテレビである。

液晶パネルはIPS方式を採用した。IPS方式は視野角が圧倒的に広いため、正面でなくとも色やトーンカーブの変化をさほど気にせずに映像を楽しめるという、いい意味でのルーズさがある。

暗いシーンの多いマニアックな映画では、DX950とDX850には大きな差があるが、全体に明るい、たとえばCGアニメのような映画や、テレビ番組であれば、さほど大きな違いは感じないだろう。

むしろ、完全な光沢仕上げで光の純度を高めるDX950は、画面への映り込みが気になる場合がある。その点、アンチグレアと低反射処理を組み合わせて表面処理されたDX850のほうが、しっとりと落ち着いた風合いとなる。

またDX850は、サイドエッジ型のバックライトを採用しているため、ファミリー層にはうれしいリーズナブルな価格を実現した。

さらに、内蔵スピーカーのグレードアップを行っている。中央にツイーターを置く3Wayスピーカーは、ロングストロークの応答性が良いスピーカーユニットを採用しているのはもちろん、音像を決める上で重要なスピーカーを上下に配置。これにより人の声が画面中央から聞こえる。これだけでも自然な音に感じるのだが、Technicsブランドを冠した合計100Wのアンプで鳴らす音は、とりわけ中域の充実感があり、セリフなどが聞き取りやすい。

画面の中央から迫力のある音が鳴るのが特徴画面の中央から迫力のある音が鳴るのが特徴

ハイレゾリマスター機能などもあり、音楽鑑賞もできるよう設計されている。ファミリー向けのテレビとして、テレビ番組における声の聴きやすさが明らかだったことはお伝えしておきたい。

“メーカーごとの作り込み”が活かせる4K/HDRの時代

現在の液晶テレビは、最新・最高のDX950でも、4K/HDRコンテンツに含まれているすべての表現力をディスプレイ上に再現できない。映像収録規格としては、まだまだ余裕がある。言い換えれば、ディスプレイの技術が進歩すれば、それに合わせて画質が向上する余白があるのだ。

その余白部分を少しでも多く家庭のテレビで再現しよう。その創意工夫はメーカーごとに異なるものだ。テレビのカラー放送が始まって以来の大きなイノベーションにいち早く対応し、基本の映像制御LSIから再設計したパナソニックの新ビエラは、テレビ評価の基準が大きく変化する4K/HDR時代のリファレンスとなれるテレビである。

メーカーの独自性が問われる時代がやってくるメーカーの独自性が問われる時代がやってくる
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