第1回:ロケットは好きですか? 宇宙に憧れますか?
さわやかな涙を流せる隠れた(?)名作
「遠い空の向こうに」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入する価値のあるDVDはどれなのか? 「買っとけ!DVD」では新旧かかわらず、厳正なる“独断と偏見”に基づいて、毎週金曜日に“買い”なDVDタイトルを紹介します。週末の購入プランの参考になれば幸いです。



ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
品番:SUD-31163、価格:3,800円
片面1層
画面
サイズ
スクイーズ
(シネスコサイズ)
収録
時間
約107分
音声
仕様
1.ドルビーデジタル 5.1ch
 (英語オリジナル)
2.ドルビーデジタル 5.1ch
 (日本語吹替)
特典メイキング・ドキュメンタリー(約10分)
オリジナル劇場予告編
プロダクション・ノート
キャストとスタッフ紹介
■ 悲運な単館ロードショー

 今回紹介する「遠い空の向こうに(原題:October Sky)」は、米国では'99年2月に劇場公開されて以降ロングランとなり、興行収入は3,000万ドルを越えた。そして、日本では米国の1年後の2000年2月に劇場公開となった。

 しかし、米国での前評判がありながら、なぜか日本ではいわゆるミニシアター系、都内では単館ロードショーとなった。そのため、劇場で見た人はあまり多くはなかったが、見た人の評価は総じて高いものだった。

 こういった、劇場公開時には恵まれなかった作品を、後でじっくり見ることができる。それも、高画質、高音質で。DVDのありがたさを感じる瞬間である。




■ 炭坑町に住む高校生の青春物語

 '57年、ウエスト・バージニア州の炭坑町をソ連が打ち上げた「スプートニク」が横切る。その下には、スプートニックが描く軌跡を見上げる高校生、ホーマーがいた。

 ホーマーは、その衝撃から、ロケット作りに心を奪われ、3人の仲間を集め「ロケット・ボーイズ」を結成する。しかし、そこは炭鉱の町。炭鉱の仕事に誇りを持つ父親と対立し、町の人達からも白い目で見られてしまう。

 そんな彼らを理解し、サポートしてくれるライリー先生。そして、次第に町の人たちも協力してくれるようになり、多くの困難な問題を乗り越えて行く……。

 ロケット・ボイーズの4人達にとっては、ロケットの打ち上げは、町を抜け出し炭鉱夫にならないための方法でもあった。つまり、映画の主題はロケットの打ち上げだが、そこには普遍的な親離れをして、自立していく過程が描かれている。




■ これは実話だ!

 「遠い空の向こうに」の原作は、ホーマー・ヒッカム・ジュニア著「Rocket Boys」(日本では草思社から「ロケットボーイズ 上・下」として発売されている)。Rocket Boysはホーマー氏の自伝的小説であり、つまり「遠い空の向こうに」は実話に基づいた映画である。ホーマー氏は、実際に自家製ロケット打ち上げを続け、その後20年間NASAに科学エンジニアとして務めた(現在は引退している)。

 「遠い空の向こうに」のストーリーは単純だし、ありがちといえなくもない。よくある日常風景が繰り広げられる。しかし、なぜか、心を揺さぶられる。そんな作品だ。それは、やはり、実話に基づいていることや、監督が「ロケッティア」のジョー・ジョンストンで、絵作りが暖かく、派手ではないが雰囲気を盛り上げるサラウンド音声、約107分という絶妙な長さ。こういった、すべての面がこの映画を支えているからだろうか。


■ DVDとしてはどうか?

 画質、音質ともに、現在のDVDの基準でいえば、飛びぬけて優れているとはいえない。標準は十分クリアしており、映像はスクイーズ収録、音声はオリジナル(英語)だけでなく、吹き替え(日本語)も5.1chで収録されており、仕様の面でも抜かりはない。サラウンド感も、音がぐるぐる回るような派手さはないが、ロケットの打ち上げシーンなどでは、しっかりその場の雰囲気を再現している。

 DVDの楽しみの1つである特典は、メイキング・ドキュメンタリー(約10分)、オリジナル劇場予告編と、あまり多くはない。しかし、メイキングにはホーマー・ヒッカム・ジュニア本人が出演してその思いを語っており、必見である。

 また、プロダクション・ノート、キャストとスタッフ紹介も収録されているが、こちらは英語のみなのが残念なところ。しかし、対訳ブックレットがパッケージに入っているので、内容を理解することには問題ない。


■ 邦題について

 ちなみに、「遠い空の向こうに」の原題はOctober Skyである。これは、原作のタイトル「Rocket Boys」のアナグラムになっているという、心憎い演出がされている。邦題にも、こういった遊び心を活かして欲しかったところだ。


□ソニー・ピクチャーズエンタテインメントのホームページ
http://www.spe.co.jp/
□製品情報
http://www.spe.co.jp/Movie/dvd/200007/SUD-31163.html

(2001年2月23日)

[furukawa@impress.co.jp]


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