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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第3回:3万円前後の低価格5.1chシステム聴き比べ

~ 第2弾:NEC、クリエイティブ、オンキヨー ~

【サラウンドに歴史あり!】 【セッティング】 【出音】 【総評】 【真のベストバイは……!!】


■魅惑のサラウンドシステム

“サラウンド。”

 ああなんという魅惑的な響きであろう。パリパリッとした揚げ麺にまったりとした具がこってりまとわりつき、その芳醇な香りが、ってそれ「さらうどん」ですな。マニアの間では太麺細麺どっちが旨いかでモメてるらしいですな。ていうかさらうどんて明らかにうどんと違うもんですな。さらに言えばサラウンドとは全然関係ありませんな。

 さぁて今週も軽快なトークで読者の熱いハートをがっちり掴んだところで(そうか?)、Zooma!は先週に引き続きホームシアターシステムをご紹介しよう。


■サラウンドに歴史あり!

 サラウンドの歴史ってのはコンシューマ・オーディオを追っかけてた人なら、ずいぶん歴史があることをご存じだろう。ざっとここでおさらいするならば、筆者の知る限りでは'70年代にSQという4チャンネルステレオ方式があった。SQ専用にレコーディングされた特殊レコードを使ってサラウンドにするというシステムだったのだ。うわーこんなの知ってるなんて、筆者っておっさーん。でも実際筆者はそれがどんなものだか本物は聴いたことはない。

 そのSQシステムから10年ぐらい後に、かのブライアン・イーノが考案したという3チャンネルのアンビエントシステムってのが登場した。「ミュージック フォー エアポート」とかあの辺の、思いっきり'80年代ですな。これはアンプのスピーカ端子LRの+同士を繋いだ第3のスピーカを背後に置くというもので、専用アンプを用意しなくてもそこそこサラウンドになるということでお手軽ではあった。ええ、これは筆者もやりました。がしかし、ブライアン・イーノ以外の音楽ではなんだか妙な具合に聞こえてしまうというのが欠点であった。というかもうこれはイーノ洗脳システムですな。

 そして'90年代では映像を主体としたいわゆる「お金持ちのためのホームシアター」の時代になる。ブームの中心になったドルビーサラウンドは、アナログ2chのオーディオトラックに細工することで、L, R, Rear(Surround)、プロロジックではさらにCenterを加えた4chサラウンドを得る方式。実際この時代は永く続いたし、アナログで実現可能ということでVHSや放送などでも利用でき、今でも現役の規格だ。

 そして21世紀初頭の今日ではDVDの普及により、「ほらあなたのすぐそばに5.1chサラウンド」の時代を迎えたのである。今までのサラウンドブームと今回のブームが決定的に違うのは、「ソースの普及がシステムを牽引している」という点だろう。オーディオに関しては、今まで2チャンネルになったりサラウンドになったりと、それこそ離散集合を繰り返してきたわけだが、従来のフォーマットがあってもソフトがあんまりなーいという「規格先行型」ではない。そのためおそらく「映画をサラウンドで見る」というこのスタイルは、今後定着するのではないかと思われる。

 さらに先を見るならば、現在の5.1chの配置に加えて、リアのセンタースピーカーも加えた6.1chというものも出現している。しかし、そこまでいくと今度は、頭の上とか尻の下とか股の間にもスピーカーがいるような気がしてくる。そこで筆者は予言しちゃうけど、6.1chシステムってのはたぶん普及しない。そこまでやっても聴き手は違いがよくわかんないと思うし、作り手の立場から考えても面倒が増えるだけで、それに見合った効果が得られるかは疑問だ。映画館ではアリかもしれないが、ホームシアターではナシだろう。だからみんな、安心して5.1chシステムに突っ込んで欲しい。



■セッティング

 さて、今回テストしたのは、NEC「PK-SP500」、Creative「DeskTop Theater PlayWorks 3500」(以下「PlayWorks 3500」)、そして滑り込みで登場した新製品ONKYO「GXW-5.1」の3機種だ。先週のシステムがすべてDTS対応に対して、今週はDTS非対応という分け方だったのだが、滑り込みの「GXW-5.1」だけはDTSに対応している。

【第二弾のテスト製品】
NEC「PK-SP500」 Creative「PlayWorks 3500」 ONKYO「GXW-5.1」
標準価格39,800円 44,800円 39,800円
実売価格3万円台前半 3万円台前半

 テスト方法は前回と同じ、同じ部屋に3セット同時にセットアップし、DVDプレイヤーからの光デジタル出力をアンプに差し替えることで、音の違いなどをテストしている。プレーヤーは前回同様「Pioneer DV-535」を使用した。

 今回もセットアップしながら、製品の特徴を大まかに把握していこう。こうやってセットをいじっているときが、AVマニアには至福の時だったりするんだよね。もっとも筆者の場合はこれを後で全部片付けなければいけないことを考えると、かなりトホホなんだけど。

サテライトスピーカー アンプ/デコーダ/サブウーファ部 リモコン
左から、NEC「PK-SP500」、Creative「PlayWorks 3500」、ONKYO「GXW-5.1」 サテライトスピーカー以外の構成要素。左から、NEC「PK-SP500」(アンプ+デコーダ、ウーファ)、Creative「PlayWorks 3500」(デコーダ、アンプ+ウーファ)、ONKYO「GXW-5.1」(アンプ+デコーダ+ウーファ) 左から、NEC「PK-SP500」、Creative「PlayWorks 3500」、ONKYO「GXW-5.1」


■実際の出音は?

 さて、セッティングも滞りなく完了し、いざ音出しだ。視聴ソースも先週と同じく、映画はリドリー・スコット監督「グラディエーター」、音楽ものはKing Crimsonの「deja VROOOM」とUnderworldの「EVERYTHING, EVERYTHING」だ。今回はDTS非対応製品中心と言うことで、音声はすべてドルビーデジタルでテストした。


■総評

 では今週の3機種をまとめてみることにしよう。

 DVDソフトの種類としては、映画、アニメ、ライブものといったジャンル分けが可能だと思うが、一般に一人のユーザーが視聴するものは、ユーザーの嗜好によってかなり偏りがあるのではないかと思われる。かく言う筆者も、映画はまあレンタルでいいか、でも音楽ものは買う、といったスタンスである。したがって視聴の中心となるソースの種類でシステムを選んでいくというのも、また正しいのではないかと思う。

 その切り口で行くと、音楽中心に聴くのであればやはりONKYO GXW-5.1はダントツでいい。アンプとサブウーファ一体型なので設置にも場所を取らないし、音楽CDをヘタなミニコンポで聴いているぐらいなら、ポータブルCDプレイヤーと組み合わせてオーディオセットをこれに置き換えちゃってもいいぐらいだ。ただし入力ポートが少ないので、ビデオもテレビもあれもこれも、というわけにはいかないのが惜しい。

 NEC PK-SP500は、セッティングに手間をかけず、スタイリッシュに決めるのであればいい選択肢だ。リビングなどに設置しても、今のコーディネートを壊さない。デザインも音も激しく主張しないで、自然にそこにある、という演出が可能だ。セッティングの簡易さやデザイン、機能の面など総合的に見て、今回の中では唯一女性にも安心して勧められる製品だ。

 Creative PlayWorks 3500は、値段とデザイン、そして音を考えると、筆者の好みのセンスではないということもありどうしても辛口に評価せざるを得ないのが正直なところだ。ただCreative製品はパソコン量販店でも入手しやすいし、下位モデルもキャッシュバックキャンペーンなどを行なっており、買いやすい状態にある。いや、だからどうした、と言われると困っちゃうのだが。エートいいか、みんなもう大人なんだからその辺言わなくてもわかれ! 熱いハートで感じ取れ!


■真のベストバイは……!!

 先週、今週と2週続けて6製品をテストしてきた。「さあところでお前は一体どれを買うのだえっ、どうよどうなのよ!」と詰め寄られると、うーん、やっぱり後発の強みで「ONKYO GXW-5.1」だなぁ。新製品なだけに実売価格がまだ出ていないが、標準価格で39,800円、それでこの音ならもう全然文句なしのベストバイだ。こういう売れ線の商品は、どうしても新しい方が有利になる。そういう意味では発売から半年経つSONY HT-K215を同じ土俵に上げたのはちょっと気の毒だった。今回はギリギリで間に合わなかったが、新製品「SA-PSD5」が リリースされるので、ぜひこれですんごい巻き返しを期待したい。

 価格と性能の比、早い話がコストパフォーマンスを考えると、YAMAHA TSS-1も捨てがたい。若干作った感じの音ではあるものの、実売25,000~26,000円と、他社実売価格からほぼ1万円安でこれだけの音がすれば御の字だろう。今回ONKYO GXW-5.1が飛び込んでこなければ、NEC PK-SP500と並んでベストバイとしてプッシュしているところだ。

 筆者のサラウンド環境は、手持ちのスピーカーを生かしていろんなものをバラバラに購入、設置したものである。今回ホームシアターシステムという1パッケージ製品を視聴した正直な感想は、「こんなことならシステムを買えば良かった……。くくく。」AVアンプ1つの値段でこれだけの音が買えるなら、最初からそうすりゃ良かったのだ。セッティングも楽ちんだし、バランスは最初から取れている、そして見た目もカッコイイ製品ばかりだ。皮張りのソファーにシルクのバスローブで腰掛けてブランデーグラスの氷コロコロ言わしちゃってるようなものすごくゴージャスなホームシアターを指向するならともかく、普通の人から昔はオーディオにもハマったなクラスの人までなら、実売35,000円クラスのホームシアターシステムでも十分に応えてくれるだろう。テレビとプレイステーション2、後はホームシアターシステムがあれば、お茶の間はもう21世紀に向けて発進!なのである。


□NEC「PK-SP500」
http://www.amuseplus.com/press/sp500/index.asp
□クリエイティブ メディア「PlayWorks 3500」
http://japan.creative.com/products/speakers/playworks3500/
□オンキヨー「GXW-5.1」
http://www3.onkyo.co.jp/what/news.nsf/view/gxw0313

(2001年3月14日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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