世界初!! 両面再生対応300+1枚DVDチェンジャを買って見ました

~ 目からウロコの両面再生システムに感動!! ~


■日本で売れないもの、売らないもの

 「秋葉原を見れば、世界のパソコン市場がわかる」と、よく言われる。実際、CPUはいうに及ばず、HDD、マザーボードなどパソコンに関わる製品は、世界でいち早く販売されているのはご存知のことと思う。今では、有名な台湾の光華商場に行っても、秋葉原でまだ売っていないパソコン製品を探し出すことは難しくなっている。

 しかし、家電製品はどうだろうか? 家電製品は各メーカーとも、米国、欧州、日本と、それぞれのエリアにあわせた製品が販売されている。だから、日本のメーカーの製品でありながら、国内で買えないものもかなりある。その中で、個人的に日本で発売されなくて不思議に思っているのが、「DVDビデオ“メガ”チェンジャ」だ。

 日本でも3枚程度のDVDチェンジャなら、各社から発売されている。でも、そんな中途半端な枚数で、どう使うというのだ! “持っている、ディスクを全部入れたい!!”。それが、素直な欲求ではないだろうか。CDの方では、日本でも300枚クラスの製品が登場しているが、逆にCDでは300枚ぐらいでは、おさまりきらない人が多いだろう。でも、DVDならまだ300枚越える人は少ないはずだから、需要は大きいと思うのだが……。

 しかし、国内で販売されていないというのに、海外ではパイオニアや、ソニーから300枚クラスのDVDチェンジャが発売されている。でも、国内では市場がないと見ているのか、いっこうに発売されない。このような状況で、個人輸入してもいいと思っていたのが、CDのチェンジャではありえない、DVDならではの問題点が2つあり、踏み切れないでいた。


■CDになくて、DVDにあるもの

 踏み切れない2つのポイント。それは、「両面DVD」と「リージョンコード」だ。そう、CDにあって、DVDにないもの。それがB面である。ご存知のとおり、DVDには規格上、片面1層、片面2層、両面1層、両面2層の4種類がある。まあ、実際のところ両面収録のタイトルは少ない。それに、両面の場合でも、片面に2話、もう片面に2話とか、片面にレターボックス収録、もう片面にワイドスクリーン版というように、見ている間には、ひっくり返す必要がないことが多い。つまり、シングルプレーヤーなら、あまり問題にならない。しかし、チェンジャになると話は別だ。

 考えてみてほしい、せっかくチェンジャに全部放り込んだのに、裏面を再生するために、わざわざ取り出してひっくり返すなんて、チェンジャの意味がないのではないか? 同じタイトルを2枚購入して、1枚を裏返して入れるという荒技もあるが、それはいくらなんでもスマートさに欠ける。

 そして、もう1つの問題であるリージョンコード。個人輸入するのはいいが、米国のプレーヤーということは、当然ながらリージョンコードは1に設定されている。リージョンコードが1のディスクも持っているが、やはりメインはリージョンコード2の日本のタイトル。つまり、プレーヤーを個人輸入しても「持っているディスク全投入計画」を実行できない。

 以上のような2つの理由でなんとか、今まで購入せずにすんでいた(?)。


■世界初の両面再生プレーヤー「DVP-CX860」

 あー、それなのに。米Sonyはやってくれました。2000年9月にニュースリリースによれば世界初という両面再生対応300+1枚DVDチェンジャ「DVP-CX860」、「DVP-CX870D」を発表したのだ。

 ちなみにDVP-CX870Dには、ドルビーデジタルデコーダを内蔵している。ストリートプライスはDVP-CX860が699ドル。DVP-CX870Dが899ドル(いずれも発表時点の予想価格)。全然高くない。これで、両面再生という1つの問題点は解決できた。あとは、リージョンコードだ。

 ご存知の方は多いと思うが、世の中には市販のプレーヤーにチップを追加するなどして、リージョンコードを任意に設定できるようにしてしまうショップが存在する。もちろん、チップを購入して自分で取り付ける(半田付けする)こともできるが、それなりに高度な技術がいる。「あー、それに面倒だな」と思って、いろいろとショップサイトを覗いていたら、見つけました。希望のもの。リージョンコードをリモコンで設定できるように改造した「DVP-CX860」が。それを見つけたときは、既に2001年2月に入っていた。

 そこのショップは、日本人がやっているのかホームページも日本語、価格も円建て。改造済みの「DVP-CX860」のお値段は89,800円。なんとか、購入できる値段だ。しかし、米国からの発送なので送料が心配。それに、やはりそれなりの値段なので、発送方法もEMSぐらいにはしたいところ。で、問い合わせると、少々割引きしてもらって送料込みで99,800円にしてくれた。

 もう、その見積もりがメールが来た3分後には、オンラインバンキングで相手の指定口座に振り込んでしまっていた。


■待ちに待って、やってきた

 しかし、そのショップは在庫は持っていないとのことで、取り寄せてから発送とのこと。ということで、あーだ、こーだ、やり取りがあった後、1カ月近くたった3月にそれは届いた。

 ワクワクしながら、箱を開ける。「こんなにワクワクしたのは、一番最初にパソコンを買った小学6年生以来かも」と思っていると、なんかカラーコピーが入っている。よく見るとリージョン改造ポイントの写真だった。さらに、リモコンでの設定方法を書いた紙も入っていて、「あー、改造機なんだ」と実感がわく。

 そして、箱から、とりあえずマニュアル一式をとりだすと、英語版とフランス語版(たぶん……)の2冊入っていた。ちなみにページ数は85ページ。思ったよりは少ない。

 いよいよ、本体を取りだすと、なんか重いような、軽いような、大きいような小さいような。微妙な感じの大きさ重さ。

 ということで、ここで基本スペックを。外形寸法は430×415×158mm、重量は7.0kg。数字だけではわかりにくいので、ビクターのプログレッシブDVDプレーヤー「XV-D721」と重ねてみた。幅はほぼ同じ、高さは見た目でD721が2台分といったところ、DVDが縦に入るのだから仕方のないところか。奥行きもD721よりかなりある。しかし、この中に301枚のDVDが入るかと思うと、決して大きくないとも感じた。

 出力端子はコンポジット2系統、S端子2系統、コンポーネント1系統。音声はアナログが2系統、デジタル出力は光と同軸を各1系統を備えている。多くはないが、必要十分といったところ。

 また、同社のCDチェンジャと連係するために「MEGA CONTROL」コネクタも備えている。

 再生可能なディスクはDVDビデオ、音楽CD、ビデオCD。シングルサイズ(8cm)のディスクについてはアダプタをつけて、「EAZY PLAY Slot」(後述)のみで再生可能となっている。

 付属のリモコンはジョグの付いた結構大きなもの。個人的には蓄光式であることも含めて、気に入っている。ただ、手が小さい人だと手に余るかもしれない。


■どうやって使うの?

 早速、実際に使ってみた。まず「OPEN/CLOSE」ボタンを押すと、フロントカバーが開いて、ディスクスロットが現われる。本体のダイヤル回すとディスクタンブラーが回転するので、順々にディスクを立てていく。

 入れ終わったら、フロントカバーを閉じる。すると、タンブラーが回転して、Slot 1のディスクから再生が始まる。その様子を本体のカバーをあけて撮影した動画(MPEG-1)を用意したので、ご覧いただきたい。何10枚のディスクが回転している姿は、なかなか壮観だ。

 また、タンブラーには、すぐに再生したいときに使う「EAZY PLAY slot」というスロットも用意されている。これが300+1の“+1”だ。

 本体、あるいはリモコンの「EAZY PLAY」ボタンを押すと、フロントカバーが開いて、タンブラーがちょうどEAZY PLAY slotのところで停止。そこにディスクを入れ、「EAZY PLAY」ボタンをもう一度押すと、すぐに再生が始まる。

【ディスクチェンジ動作】
MPEG-1形式
49秒
約7.21MB

 以上、色々と説明したが、チェンジャで最も気になる項目の1つである、動作時間を計ってみた。結果は以下のとおり。

電源を入れて1枚目が再生される時間約26秒
1枚目再生中に2枚目に切り替える時間約21秒
1枚目再生中に150枚目に切り替える時間約25秒
1枚目再生中に300枚目に切り替える時間約22秒

 表を見てわかるように、最も遠いディスクへのチェンジには約25秒かかる。これが長く感じるかどうかは、人によるだろうが、個人的にはフロントカーバーの窓から見えるのディスクの回転をみているとあまり気にならなかった。なお、実際に再生が始まってからの早送りや、巻き戻し再生の反応はなかなかよかった。


■PS/2キーボードが繋がる!!

 CX860のもう1つの特徴は、PS/2キーボードが繋がること。では、キーボードを使ってなにをするのか、もちろんタイトル入力だ。

 CX860には、「Disc Explorer」というモードがあり、301枚のディスクを一覧できる。ディスクごとに、タイトル(半角16文字)、ジャンル(16種類から選択)が設定可能で、ディスクにDVD TEXTやCD TEXTが入っていると自動的に入力される。

 キーボード使った入力は便利なのだが、米国製だから当然日本語入力できない、16文字しか入力できない、ディスクにDVD TEXTやCD TEXTが入っていると変更できないなど、不満点も多い。なお、タイトルや、ジャンルなどでソートして表示することも可能となっている。

 また、一度入力したディスクは301枚までメモリされており、1度抜いても同じスロットに戻すとタイトルが表示されるようになっている。

 さらに、DVDにジャケット写真が収録されていると、自動的にサムネイルが登録される。それ以外については、基本的に選択したジャンルに合わせたサムネイルが表示される。しかし、このサムネイルがかなりアメリカンなデザイン。はっきりいって、タイトルとは似つかわしくないサムネイルになることが多い。

 このことを補う面白い機能として、ジャケット写真を収録した特殊なビデオCDが付属している。これを再生すると、収録されているジャケット写真をDisc Explorerのサムネイルとして表示可能になる。

 しかし、入っているジャケット写真はグループ会社であるSony Music Entertainment、Columbia Tristar Home Videoのものだけ。それも米国版なので、ほとんど使えなかった。しかし、ジャンル別のサムネイル画像も複数入っているので、300回繰り返すことを考えると億劫だが、時間と手間をかければそれなりの体裁にはできる。


■裏面再生システムに目から鱗が落ちる!!

【FLIP動作】
MPEG-1形式
14秒
約2.46MB

 CX860の最大の特徴である、肝心の両面再生システムについては、実はあまり調べずに購入したのでどういったシステムになっているかほとんど知らなかった。しかし、実際に目のあたりにして、まさに目から鱗が落ちた。

 まず、ムービーを見て欲しい。FLIPボタンを押すとディスクがタンブラーの中央にあるヘッド部から出てきて、スロットに戻る。すると、タンブラーが180度回転して、ディスクがさっきの真裏からヘッド部に入る。

 「おー、そうか裏側から入れれば、ヘッドはそのままで裏面が再生されることになるんだ!」。言われてみれば、当たり前のことだが、この方式だと、チェンジャでは、ほとんどコストをかけずに両面再生が可能になる。

 思わず、深夜の編集部で「スゲー!!、目の付け所が……」と、つぶやいてしまった。ちなみに、FLIPボタンを押して、裏面が再生されるまでの時間は約26秒だった。つまり、1枚目から150枚目に切り替える時間とほとんど同じ。


■はたして買いなのか?

 送料を含めると、最近安くなってきたプログレッシブDVDプレーヤーが、余裕で購入できる価格。それに、日本ソニーのサポートを受けられるわけでもない。そういったことも含めて、高いか安いか、意見の分かれるところだろう。

 しかし、個人的には、久しぶりに、購入して充実感が得られた製品であったことは確かだ。

■■ 注意 ■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害はAV Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・AV Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

□米Sonyのホームページ(英文)
http://www.sony.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.sel.sony.com/SEL/corpcomm/news/consumer/625.html
□製品情報(英文)
http://www.sel.sony.com/SEL/consumer/ss5/home/dvd/dvd/dvp-cx860.shtml

(2001年3月22日)

[Reported by furukawa@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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