気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第16回:街にあふれるノイズをカットする科学の耳栓!?
ノイズキャンセリングイヤホン「ソニー MDR-NC10」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

電車の中でにらまれる日々

 イイですねぇ、オープンエア型ヘッドフォン。手持ちのヘッドフォンではAKG「K501」とKOSS「PORTA PRO」がオープンエア型なんですが、密閉型にはない抜けの良さがお気に入り。とはいえ、電車に乗っているときに「PORTA PRO」を使用していると、外の音がガンガンと入り、音量を上げないと音楽がクリアに聞こえない。結果、音量を上げることになるのだけれども、そうすると周りの人間の視線が……。

 電車の中でのリスニング、これはなかなか難しい問題。アニメソング聞いているのがバレて変な目で見られたこともあったなぁ(ちなみに初代ガンダムのOP)。

 密閉型はソニー「MDR-CD700」を使っていたのだけれども、こちらも結局外の音が聞こえるし、音量を上げると音漏れするのは同じ。まあ、オープンエアに比べればかなりマシではあるけれど、抜けがよろしくないのがどうもねぇ。


科学の力でノイズをキャンセル

 しかし、そんな問題も解決してくれそうなヘッドフォンがあるのです。それが「ノイズキャンセリングヘッドフォン」。なんでも外部の騒音を低減して、その上音楽もクリアに聞かせてくれるモノだそうな。おお、そりゃスゲェ。ぜひともゲットしなければ。

 いつもの通り量販店で物色開始。あれぇ、見あたらないな。「すみません、ノイズキャンセリングヘッドフォンってありませんか?」と聞くと、「今はインナーイヤタイプしか在庫がないんですが」といってモノを出してきてくれました。それがソニーの「MDR-NC10」。お値段は9,850円でした。

 パッケージを見ると、「電子回路の働きで周囲からの騒音を低減!」とのコピーがある。裏面の「主な特徴」には「40~1,500Hzの音を聴覚上約1/3」に低減するそうな。周囲の音と逆位相の音を出すことによって、聴覚上ノイズを聞こえなくするという原理。「40~1,500Hz」というのは「不快と感じる音域」だからとか。

 おお、なるほど。そういう原理なのね。戦車の表面に火薬をのせて、弾が当たったとき火薬の爆発で弾の威力を低減する「リアクティブアーマー」と似てますねぇ。

 ほかにどんなタイプがあるのかと思い、カタログを見せてもらうと、ヘッドフォンタイプの「MDR-NC20」という製品もみたい。ヘッドフォンタイプもいいけれど、電車の中で聞くことを思えばインナーイヤでもいいか。それに「MDR-NC20」は今時ケーブルが両耳出しのタイプだから、少々使い勝手が悪そう。んじゃ、そのインナーイヤタイプください。

 
パッケージ。イヤフォンなのに、表記はなぜか「ヘッドフォン」 騒音源の位相を拾い、その逆位相を作る 位相と逆位相を重ねると、音は発生しているが、それぞれの波が干渉して無音に聞こえる  


巨大なレシーバユニットと電池ユニット

 パッケージの内容物は、レシーバユニットと、接続ケーブル、説明書、単4型乾電池、それに「仕様上のご注意」という構成。パッケージも説明書もステレオイヤフォンなのに「ヘッドフォン」で表記を通しているのに少々違和感あり。まあ、「インナーイヤヘッドフォン」は定着した感はありますが、「ステレオイヤフォンに頭は関係ねぇじゃん」と常日頃考えている自分にはどうにも。

 それはそれとして、この「MDR-NC10」、外観上も普通のステレオイヤフォンにない特徴が目に付きます。まず、耳に入れるユニット自体がデカイ。それはもう、普通では考えられないほどデカイ。「逆位相を聞かせる」という原理上、どこかにマイクをつけないと元の位相を拾えないわけで、しかも耳に一番近い位置といえばユニットそのもの。というわけで、ユニットにはマイクが内蔵されているため、大きくならざるを得ないんでしょう。

 で、もう1つが電池ボックス。逆位相を聞かせるには電源と回路が必要な訳で、その収納場所として機能しているわけですな。こちらもポータブルプレーヤーのリモコンと比較しても少々大きめ。しかし、洗濯バサミ方式クリップが付いているので、胸ポケットのある服や、カバンのストラップに挟んでリモコンが1つ増えると思えばよろしいかと。

 耳に入れるユニットは、電池ボックスから直出し。機器との接続は接続ケーブルを用いるのだが、電池ボックス側のプラグがソニー独自の「マイクロプラブ」で、付属ケーブルはマイクロミニ←→ステレオミニ、という変則的な構成。そういえばマイクロミニオンリーの接続ケーブルってあったっけ? う~ん、少しでも小型化したかったとか?

同梱品一覧。キャリングポーチも付属する レシーバユニット。マイクを内蔵しているので巨大 「使用上のご注意」冊子。装着の仕方が指導されている

電池ボックス。「MONITOR」ボタンを押すと、再生中の音をミュートしてマイクで拾った音を再生する 電源スイッチ。スライド式スイッチで、ON時には赤色LEDが点灯する 電池ボックスの接続プラグ。なぜか「マイクロミニ」仕様。ううむ、さすがソニー


ノイズキャンセルは良好、しかしホワイトノイズが……

 普通のステレオイヤフォンに比べれば使い勝手は少々劣るみたいだけれども、まあ、とりあえず試してみましょう。

 巨大に見えるユニットは、耳に押し込むプラグ型で、長時間使用時には耳が痛くなりそうな印象を受けていた。けれども、実際にはそれほど圧迫感を感じることもなく、装着感もいい感じ。密閉度も高く、装着した段階で「普通の耳栓より少しうるさい」程度の感覚。

 しかし、装着には少々手間がかかり、ぐりぐりと耳の奥まで押し込まないとすぐに外れてしまうし、密閉度も保てない。急いで押し込むと耳内の気圧が高くなって、鼓膜に圧迫感を感じるのも難点かと。まあ、「ゆっくり、ぐりぐり」と押し込めばよろしいので、慣れてしまえば問題になることではないと思う。

 電池ボックスにはON/OFFのスイッチが付いていて、OFFにすれば普通のステレオイヤフォンとして使用も可能。音楽を聴かないときでも電源を入れれば「ノイズキャンセリング」機能が働き、ノイズを低減してくれる。つまり耳栓代わりにもなるというわけ。ボックスにはマイクで拾った音をそのままドライバユニットで再生する「MONITOR」ボタンも付いている。

 とりあえず、ノイズキャンセリング機能を試すべく無音状態で電源ON。すると今までうっすらと聞こえていたPCのファン回転音がほとんど聞こえなくなってしまった。おお、科学の力は偉大だなぁ! ……しかし、ホワイトノイズが乗ってますぜ。

 このホワイトノイズはノイズキャンセリング機能の仕様。「使用上のご注意」にも「サーという音がしますが、これはノイズキャンセリング機能の動作音で故障ではありません」との記述がある。ざっと聞いたところ、音量もさほど大きくなく、それほど不快ではないけれども……。


ホワイトノイズも慣れれば快適

「使用上の注意」にあるホワイトノイズについての記述。まあ、慣れれば気にならないです

 リスニングに際して、やはりホワイトノイズは気になる。無音状態でノイズのみを聞いた印象では、中域の少々高めといった所の帯域で、ノイズの量は多くはないが、はっきりと聞き取れるというレベル。ん~、音を鳴らしてみないとなんともいえませんな。とりあえずプレ~イ!

 聞いてみるとノイズは音楽に紛れてさほど気にならない。女性ボーカル、テクノ、オーケストラなどでは、曲間を除いてホワイトノイズはほとんど気にならない。ノイズに集中しないと聞き取れないレベルである。まあ、フツー音楽に集中するからねぇ、これはこれでいいんでないですか。

 ただ、やはりホワイトノイズが少々気になるソースも。小編成オーケストラ、特にバイオリンソロパートはノイズと楽器の再生帯域が似たような所なので、ノイズがあまり紛れないんですわ。チェロなどの低音系楽器ならノイズと帯域が違うので楽器の音に集中できるのだけれども。

 テクノでも、アンビエントやドラムンベース系は少々鬼門。意図的に無音部分や単音パートを作ってメリハリにする音づくりをしているアーティストいるんですわ。その上ノイズを意図的に取り込んでる作品なんてのもあるのです。

 MOBY「HYMN」(古くてすいません)ではアナログレコードの再生ノイズのみのパートがあり、ココはホワイトノイズと再生ノイズのダブルパンチ状態。確かにホワイトノイズは目立たないけどさぁ……。

 しかし、ホワイトノイズが気になるのは上記のような状況のみ。カルテット編成以上のオーケストラ程度になれば「耳をすませば」というレベルでしか聞き取れない。当初はそのノイズも気になったけれども、そのうち耳の方が慣れます。つまり、ノイズがさほど気にならなくなるのです。ま、ずっとノイズがのっているのだから、慣れてしまうのは必然といえば必然。無音状態でノイズのみを聞いていても、イライラすることもありません。

 「どうしてもノイズはNG」という耳の敏感な方には向きませんが、自分としては「気にならないからいいんじゃない?」と思います。


地下鉄、雑踏、自室でノイズキャンセリング

 さて、要点に入りましょう。これは「ノイズキャンセリング」を目的にしたイヤフォンなのです。ざっと試したところ、結構いい感じで騒音が減って「1/3に低減」というコピーに偽りはない感じ。しかし、いろいろな場面で試さないとキャンセル効果云々は語れないでしょう。ということで、各ケースでの静粛感を試してみました。

 まずは「地下鉄の場合」。いつも地下鉄を使って通勤している自分にとって、ここでのノイズキャンセリング性能はとっても重要。

 地下鉄って閉鎖環境だから、地上の鉄道よりも騒音がうるさいんだよね。とりあえず、耳につっこんだままの電源OFF/無音状態では、「耳栓に比べれば少々うるさい」、といったところ。ONにしたところ、確かに騒音が小さくなった。ただ、車輪や車体のきしむ高音域の音はOFF時と同等。しかし、これは「40~1,500Hz」外の音だから仕方ないでしょう。

 リスニング時のノイズキャンセリング効果はかなり良好。今まではディティールまで聞こえなかった音量で、明確に聞き取ることができる。TDK「MOJO」の場合なら、20程度(MAXの半分)でかなりクリア。それでも金属のきしむ音は少々気になりますが、これまでに比べればかなり良好なリスニングができる。ん~、かなりいい感じですよ。

 次は「職場の場合」。職場では空調のファン、PCのファン、キーボードの打鍵音などが主な騒音源。無音状態/電源ON時は、空調のファンがわずかに聞こえるだけであとはホワイトノイズしか聞き取れない状態に。レーザープリンターの印刷音、人の会話はかなり明確に聞き取れるが、キーボードの打鍵音は不思議なくらい聞き取れなくなっている。自分でキーボードを打っていても、その実感がないくらい。

 リスニング時は、音楽の音に紛れて空調の音や会話も聞き取れなくなった。集中してリスニング可能といっていいでしょう。

 で、「交差点の雑踏」の場合。こちらは日曜の池袋駅前で試してみたが、無音状態/電源ON時では会話音もそこそこ低減。車の通行音は近づいてくれば聞き取れる、という感じ。人の会話音は近くだとさほど効果ないですね。ただ、遠くから聞こえる音はかなり減っていて、全体的にはかなり軽減されている印象を受けました。

 リスニング時は「まあ、こんなもんでしょう」という感じ。「MOJO」の音量で15程度の小音量時に近くで会話されると、やはり会話が聞こえてしまいます。

 最後に「自室の場合」。我が家の騒音源は、エアコン、PCのファン、そして隣室の会話音(壁薄いんですわ)。ただ、今の季節エアコンはあまり使っていないし、隣室の方も比較的静かに暮らしているので気になるノイズはPCのファンのみ、といったところ。ADSL引いてからは電源入れっぱなし状態なんですわ。

 無音状態/電源ON時は、かなりいい感じにファンの音を低減してくれるが、少々聞こえてしまう程度。職場は空調の音などのノイズもあったため、PCのファンはほとんど聞き取れなくなっていたが、ノイズ源が1つだけだと耳の注意もそちらに向いてしまうようだ。

 しかし、リスニング時には音楽に紛れてファンの音はほとんど気にならなくなり、実用的なレベル。オープンエアのAKG「K501」だとリスニング時にファンの音がかなり気になっていたのだけれども、これならば音楽に集中できそうです。

 振り返ってみると、ノイズキャンセリング効果はかなりく、ホントに「聴感上1/3」といっていいでしょう。騒音が完全に聞こえ鳴るわけではないけれども、小音量でも音楽に集中できるレベルまでは低減してくれる、という感じ。

 騒音が減ると普段見慣れている場所でも「異世界」な雰囲気になり、そういう意味でもかなり面白い体験ですよ。


とっても長い電池持続時間。エージング効果も良好

 さて、ノイズキャンセリング効果は良好だけれども、ほかにも電池持続時間と音質は気になるところ。

 音質面では、ユニットは「迫力あるサウンドを再生するネオジウムマグネット採用」。パッケージを開けて最初に聞いた印象は、低音がガンガン響いて低音過多気味。再生周波数帯は「10~22,000Hz」ということだが、高音の伸びはカタログスペックに比べると少々伸びないかな~、といったところ。

 30時間ほど再生してエージングしてみると、低音が落ち着いてきて、高音域とのバランスもかなり良好に。けれども高音の延びはやはりいまいち。しかし、各帯域のバランスは良いので聞きやすい音です。

 音場感も良好で、オープンエアタイプより上だと感じる。映画DVD「U-571」とか聞いていても上や前から音が聞こえてきます。

 ただ、音量を上げると低音が少々ビビリ気味になってしまう。ん~、エージング中にそれほど高いレベルまで上げた記憶はないんだけどな……。その上、電源ON時に音量を上げるとホワイトノイズがはっきり聞き取れるレベルまで上がってしまう。つまり、このヘッドフォンは「小/中音量で楽しむもの」なのですね。

 それにしても驚いたのが電池の持続時間。説明書には「マンガン電池で30時間、アルカリ電池で60時間」とあって、「ホントかいな?」と思っていたけれども、ホントでした。

 とりあえず、付属の単4型マンガン電池を入れて、電源OFF時の効果を試す時以外は常時電源を入れていたのだけれども、丸1日経っても電源が切れる気配なし。カタログスペックの30時間経過した辺りで「少しノイズキャンセリングの効果が落ちたかな?」、40時間くらいで「電源ランプは発光しているが、ほとんどノイズキャンセリング効果が感じられない」状態に。おお、すごいわ。これなら電池を気にすることなく使っていけるんじゃないかと。


「騒音を1/3」に偽りナシ。しかし人を選ぶかも

 ノイズキャンセリング効果、音質、電池の持続時間といった基本機能はとても満足できるレベル。「異世界」が楽しめて面白いし、騒音の多い環境でのリスニングには効果絶大。電車の中で音漏れナシにクリアなサウンドが楽しめるメリットは大きいです。自宅でもPCの電源を入れた状態でもクリアだし、「騒音を1/3」というコピーに偽りはありません。ハイ。科学的な耳栓に、ヘッドフォン機能が付いたという感じの製品かも。しかし、他にちょっと気になる点があるんですな……。

 実は、耳に押し込む密閉型だから骨振動を拾ってしまうんです。歩いたりモノを食べたりしている時に「ゴツゴツ」という骨の響きが耳孔内に反響して聞こえてしまうんですね、これが。要するに耳栓しているのと同じ状態。耳栓して歩いてみると、ほぼ同じ感覚が体感できます。ただ、耳孔内の気圧を上げないようにゆっくりと挿入すれば、この骨振動もかなり低減します。それでも気になることは気になりますが。

 「骨振動? 別に気にならないよ」という方ならば歩きながらの使用でも気にならないかと。あとは慣れの問題かな。まあ、「電車の中で立ちながら」や、「イスに座ってじっくりと」と、動かないユースならば問題にすべきことではありませんが。でも、せっかくインナーイヤータイプなのにポータブルの環境を選ぶってのもなぁ。……ちなみに、自分は未だに慣れてません。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Models/Current/MDR-NC10_J_1/index.html

(2001年6月5日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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