気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第32回:今更だけどなんだか気になる腕時計
腕時計型MP3プレーヤー「カシオ WMP-1V」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

腕時計の電池が切れてふと気づく

 5年ほど使ってる腕時計の電池が切れました。結構お気に入りなので、電池交換してまだ使うつもり。なので、「めんどくさいな~」と思いつつ、量販店をぷらぷらしている時に、ソレを見かけてしまったのであります。

 それが、カシオの腕時計型MP3プレーヤー「WMP-1V」。これって、発売当初は35,000円くらいしたヤツなのに、今では19,800円とお買い得プライス。脇にあるカタログを見てみると、ちゃんと時計としても機能するみたい。見た目も同社の腕時計「G-SHOCK」のようで、まあ、悪くはない(特に良くもないとは思いますが)。

 発売当初は「いらねぇ~」と思っていたけれども、腕時計の無い身になってみると、なかなか魅力的に見えてきました。価格も標準価格37,000円から大幅割引き。むむ、ちょっとカタログを見て検討してみます。

 記録メディアは、内蔵されたMMC32MBオンリー。PCからの転送は同梱のクレードルに据えてUSB接続。対応ビットレートは128kbpsで、同ビットレート時の最大録音時間が約33分。電源は内蔵充電池で、クレードル接続時に充電され、最大4時間の再生が可能。といったところ。

 ふむ、MP3プレーヤーとしては至って普通のスペックじゃないスか? 気になる点は、対応ビットレートが128kbpsと低いことと、内蔵メモリが32MBと少ないこと、そして再生時間が少々心もとないことくらい。ん~、「ちょっと高いG-SHOCK」と思って買っとくか。そういや、これっていつ発売されたブツだっけ?


歴史を感じさせる渋い外箱

 「すいません、これください」と店員さんに話し掛けてみると、「色はどうなさいますか?」とブラックとカモフラージュのベルト柄2タイプを陳列棚から出してきました。製品は、箱から出した状態でディスプレイできる梱包になってるみたい。

 へぇ、カラーバリエーションあったのね。どれどれ、とりあえず見せてください。……う~ん、ブラックでは芸が無さ過ぎるから、ここは迷彩っすな。「青がかったタイガーパターン風」てな迷彩で、そこそこ雰囲気出てます。

 「じゃ、そっち」と指定すると、なぜか陳列棚から取り出したそのブツを梱包しはじめたじゃないですか。おいおい、それ展示品じゃないの?

 事情を聞いてみると、「WMP-1V」は生産完了品で、在庫は陳列棚にあるだけ。デモ機とは違って使用していないから、割引きなどはできない。とのこと。う~ん、まあ、未使用品だからいいけどさ、ちょっと気分悪いわな。っていうか、いまさら生産完了したブツを買ってしまうことにも引け目を感じますわ。あ~、「買うと」と言った手前、今更「止めます」とは言いにくいしなぁ。

 梱包作業を見守っていると、最終段階でトドメをさされた気分になりました。目に入ったのは外箱。いい感じに擦り切れていて、見た限りではまさに「中古品」。……渋い、渋すぎるよ。歴史の流れを感じるよ。……まあ、いいけどね。本体は無事だろうし。多分。

歴史を感じさせる外箱 ディスプレイ展示もできる梱包


完成されたインターフェイス

 家に帰って最初に確認したのが、なにはなくとも発売日。なんせ外箱だけ見れば「中古品」そのものだけに、「歴史」が気になったのです。姉妹サイトPC Watchで検索をかけると記事がヒット。で、発売は2000年3月。そうかぁ、1年半以上も前ならば外箱の「歴史」も納得。っつーか、そんなに売れない商品だったのね。

 ともあれ、気を取り直して内容物の確認。構成は、本体、イヤフォンアタッチメント、ステレオイヤフォン、インターフェースボックス、ACアダプタ、USBケーブル、CD-ROM。あとは取り扱い説明書、注意書きが数枚といったところ。本体、その他付属品は梱包材やフィルムで保護されていたため、特に「歴史」は感じず、新品同様。よかったよかった。

 本体は、一見しただけでは普通の時計。イヤフォンアタッチメントを本体左側に取り付けることで、ステレオミニプラグが増設される、というスタイルを取っている。

 「本体でのMP3録音」などという高等な機能はもちろん備えておらず、PCからMP3ファイルを転送する必要がある。PC接続には、同梱のインターフェイスボックスを使用。ボックスにはACアダプタを接続し、本体との接続時は自動的に充電される。

 転送は専用ソフトを使用。当然のようにストレージクラスには対応せず。ついでに言うとMP3作成ソフトは同梱しない。と、こんなもんでしょうか。

 う~ん、やはり2年も前の製品だとちょくちょくと気になる部分もありまさぁね。ま、ストレージクラスは現在でも対応してない製品がほとんどだし、構成自体は悪くは無いです。イヤフォンアダプタが取り外し式なのはMP3プレーヤーとして使用しないときの外観を腕時計ライクに保つための工夫かも。たた、もともと本体デザインがゴツイ上に、イヤフォンアダプタも小さめでフィットしたデザインとなっているので、付けたままでもさほど気になりません。

 インターフェイスボックスとの接続も簡単。ボックスのトレイ上に本体を乗せ、トレイをスライドさせると本体がロック。PCとインターフェイスボックスはUSBで接続。本体がロックされているときに転送が可能。ロック状態では同時に充電が行なわれ、充電時にLEDが点灯。完了すると消える、という仕組み。腕時計本体には端子を設けず、無理なくまとめたナイスな構成だと感じます。これ以上はない、ってくらいに完成された感じ?

 そんじゃ、ま、充電しながら、PC側のセットアップをしますか。

同梱品一覧 インターフェイス

インターフェイスとの接続 イヤフォンアダプタの接続


転送ソフトもわかりやすい

 転送ソフト、USBドライバ等は同梱のCD-ROMに収録。が、これらに関する記述は取扱説明書にはなく、注意書きに「CD-ROM内のPDFをご参照ください」とあるのみ。むむ、これは少々めんどくさい。まあ、転送用ソフトのインターフェイスは大抵同じだからマニュアル参照することもないでしょ。

 CD-ROMを入れると、自動再生でインストーラが起動。あとは「次へ」のステップをクリックするだけでインストールが完了しました。かなり前の製品で、箱にも「Windows 98専用」と書いてあったので、Windows 2000でインストールできるか不安でしたが、なんの問題もなし。後から製品情報を確認してみると、ダウンロードサイトがあり、そちらからMacintosh版ソフトもダウンロード可能。対応OSは、Mac OS 8.6以降だそうな。なかなかキメ細かな対応かと。

 転送ソフト「Wrist Audio Player Link Soft」を起動すると、左がエクスプローラー風のPC側参照領域、右がMP3プレーヤー本体に転送するファイルの参照領域、という構成。

 で、中央にはプレーヤーに追加の矢印アイコン、Delete、Update、Formatのアイコンを配置。プレーヤーウィンドウ上部には、トータル/フリーメモリの参照領域と、再生順の指定アイコンが配置されている。ちなみに、左下はID3タグの表示領域、右下には、プレーヤー本体で表示されるアニメーションキャラクタの選択領域になっている。

 ふむ、プレイリストこそ対応してないけれども、ほかの機能は一通りはそろえてありますな。それに、一般的と思われるビットレート128kbpsではCD1枚も入らない約33分が最長録音時間となるので不要かと。あ、もちろんID3タグは英語表示のみ対応です。転送ソフトのID3タグ領域には日本語で表示されてるのにねぇ……。

 それでは、転送してみますか、とUSBケーブルを接続。ここで初めてUSBドライバの導入ダイヤログが表示され、CD-ROMからドライバを導入してインターフェイスボックスを認識。そんじゃ、最近聴いてるクラシックのオムニバスCD「クラシックの殿堂」からテキトーにいれてみますか(クラシックは好きだけど、組曲全部聞き込むほど集中力ないので、こういう「いいとこ取り」のCDが性に合ってんですわ)。

転送ソフト 転送中のダイヤログ。転送は32MBで約10分


音質は良好。だたし、装着感は……

 128kbpsで録音したソースを転送を終えて、4時間ほどでフル充電。さて、いよいよ腕に装着です。ベルトは2重のマジックテープで腕に固定。少々めんどくさいけど、こういうタイプの腕時計もあると思えば気にはなりません。腕時計としての装着感は、いわゆる「ごっつい腕時計」と全く同じ。ここまではよろしい。大変よろしい。

 イヤフォンを接続した段階で、どうも違和感が……。薄々感づいてはいたものの、腕にコードがからみつく感触とでも申しましょうか。これまでにない経験だけに、コードが腕から離れない感覚は、やはり違和感は大きいです。う~ん、トランスミッタを内蔵するには本体が小さすぎるし、電源の負担も大きいだろうからなぁ……。ここまでまとめただけでも賞賛すべきか。とりあえず、これは無視無視、っと。

 本体のデフォルトモードは時計モード。プレーヤーモードへの切り替えは、再生/停止ボタンを2秒以上の長押しで、音楽の再生が始まる。ボタン自体は小さめで、確かに押しにくいことは押しにくい。けど、まあ、慣れで対処できるレベル。再生/停止ボタンが大きめで、その回りにスキップボタンを配し、ボリュームも独立したレイアウトで配置。モードセレクトボタンは細長く、唯一押しにくいけれども、慣れがすべてをカバーしてくれるでしょう。「腕時計」という限定されたレイアウトに、表示領域を設けながら、よくここまで詰め込んだ、と感心します。

 で、音質はというと、これまたなかなか良好ですよ。音量は20ステップで調節、最大音量はポータブルCDプレーヤー「ソニー E-D700」の10段階中で8といったところ。音量も充分ですわ。

 スキップだけでなく、早送り、巻き戻しも可能(ただし、音なし)。演奏モードは、シャッフル、ループがあり、ループ機能は全曲ループ、シャッフルループ、1曲ループ、1曲の1パートを切り出すパートループを装備と、なかなか多彩な再生機能を持っている。ID3タグは、表示部左下にアーティスト名、曲名の順で1文字づつ表示。読みにくいけど、表示領域を考えれば表示するだけでも立派。ホント、これだけ小さなボディによく押し込めたもんだ。

 で、音楽を聞き込んでみたところ、ヴェルディ「レクイエムより -怒りの日」は、ホルン、ティンパニーなど低音系の音が中心なだけに、迫力を損なうことなくリスニングできる。バイオリンの鮮鋭感が少々不足気味だけれども、ポータブル環境で聞く分にはほとんど違いがわからないレベル。アルト声域にソプラノ声域の重なる合唱もそれぞれのパートを聞き分けられます。

 エルガー「威風堂々」の弦楽器のアンサンブルも、チェロなど低音域の表現はバッチリ。ポータブル環境で聞くCDの音と大差ないです。もちろん、集中して聞けば音が混ざってたり、痩せてたりしてるのですが、雑音の中では全く気にならない。けど、曲間に「プチノイズ」が乗ってますな。これはちょっと不満。

 うん、音は大変よろしい。腕時計としての装着感もよろしい。操作性は、慣れが必要なことを思えば及第点。できれば時計側面にボタンを配して欲しかったけど、側面はイヤフォンアダプタと、インターフェイスボックスの接続端子があるので不可能なんだよね。

 で、街中を歩きながらのリスニングを続けてみたけれども、やはり、「腕にコードがからみつく感触」というのは払拭しにくいわなぁ。街角の人々の視線は時に痛く、思わぬところでコードを引っ掛けてイヤフォンを落としもしました。当初こそは自分を騙してみましたが、やはり自分は騙せませんな。……なんとかならないものかね、このコードは!

 その問いに対する答えは当然のごとく「なんともなりません」なわけで、自前でトランスミッタを用意するくらいしか解決策が浮かばない。って、そんなことしたらせっかくの腕時計型のメリットが相殺されるじゃんか。

 どうすべぇなぁ、と思っている間に、あ、電池切れみたい。再生時間は、3時間と45分ってとこですか。まあ、これだけ小型なプレーヤーだと思えば優秀だわなぁ。けど、「腕時計」という必須アイテムに付いている機能にしては少々短く感じます。身近なだけに「いつでも使える」と勘違いしやすいんだよねぇ。最初に理解したつもりになってても。

ベルトはこのように2重構造 イヤフォンを接続した状態。コードが邪魔 操作ボタンのアップ

再生時の表示情報は、曲順、再生時間。左下の「S」がID3タグ表示 再生中も時計表示可能


時計としての機能はどうなのかね?

 この製品のもうひとつの顔は紛うことなく「腕時計」。MP3再生中でも、モードボタンを長押しすることで、時計表示も可能で、腕時計としての機能性も損ないません。もちろん、曲順、再生時間の表示に戻すことも可能。

 再生するだけのバッテリがなくなると、プレーヤーは停止し、自動的に時計モードに移行する。うんうん。ちゃんと「腕時計型」の意味が活用されてます。邪魔なだけのイヤフォンを外せば、あとは完璧に時計。アラームや、ストップウォッチ、カレンダーといった、デジタル時計の必須機能は当然装備してます。ついでにサマータイム切り替えも可能なんだとか。サマータイムのある地域にいっても安心。バックライトも付いてます。時計機能はなかなか充実しているかと。

 けど、惜しむらくは、時間が見にくいこと。本体サイズに比して表示が小さいんだよね。パッと見て理解するのは難しく、腕を顔に近づけてようやく理解できる程度。あ~、操作ボタンにスペース取られてるから狭くなるのは仕方ないのか……。

 気になる点がもうひとつ。時計表示は、プレーヤーのバッテリが上がってから4日程度しか持たないんだそうな。以降は時計表示もされなくなり、ただのオブジェとなるわけ。それって「時計としてはどうよ?」と思いませんか。いや、MP3プレーヤーなのですが、外観は腕時計そのもの。4日プレーヤーを起動しないことはあっても、時計は毎日使うからねぇ。ま、充電すればよいのだけれども、4日というと忘れるか、思い出すか、かなり微妙なライン。必要な時に表示できなくなる危険を思うと心もとないと思うのですが、どうか?

バックライトはオレンジ色 本体に比して小さめな時計表示。素早い確認は難しい


完成されすぎて改善点が浮かばない製品

 え~、振り返ってみると、とても優秀な製品だと思います。プレーヤーとしての機能を、腕時計の中に詰め込む、というコンセプトを見事に詰め込んでいると言っていいでしょう。

 本体に関しての不満はあるけれども、それはきっと検討され尽くされた結果、最良と判断されたからなのです。例えば側面のインターフェイス端子。

 インターフェイスを本体に内蔵すると、「腕時計」というサイズには収まらない。なので、端子のみを装備する。側面には操作ボタンをつけたいところだが、端子を底面に置けば装着感が悪くなるし、上/下部にはベルトがある。故に端子は側面に置くしかない。と、推察するわけです。うん、こう考えると端子が側面にあるのも納得できます。

 発売後1年半を経過して、思いつく改善点といえば内蔵MMCの増量くらいですな。他の項目はいろいろ考えてみましたが、現状がベストだと思います。いやはや、最初の製品にしてもう完成されたジャンルだったのね、「腕時計型プレーヤー」ってのは。

 しかし、実際に使ってみると、プレーヤーとしても時計としても中途半端。腕にコードがからみ付いて違和感があるし、いつ切れるともしれない時計機能も使いづらい。……なるほど、発売後1年半を経過してなお在庫のある状態、しかもその後は新製品の気配が全く無い、というのは理由があってのことだったと、想像してみる次第であります。

□カシオのホームページ
http://www.casio.co.jp/
□製品情報
http://www.casio.co.jp/ww/WAP/
□関連記事
【2000年1月6日】カシオ、世界初の腕時計型デジタルカメラと腕時計型MP3プレーヤー(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000106/casio.htm

(2001年10月2日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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