先週、ヤマハの新CD-R/RWドライブ「CRW3200」に搭載された高音質記録モード「Audio Master」とはどんなものなのか、開発者のインタビュー記事を掲載した。
実はその帰りに、まだ発売前の「CRW3200」を借りることができた。担当者によればプレスへの貸し出しはこれが初とのこと。せっかくお借りすることができたので、自宅に持ちかえり、さっそくマシンに組み込んで使ってみた。
■ Audio Masterを試す
Audio Masterの仕組みなど詳細は前回の記事に譲るとして、今回はまずAudio Masterで焼くための手順を追ってみよう。
借りてきたドライブはCRW3200シリーズのATAPI接続タイプ「CRW3200E-VK」だ。手元のマシンはE-IDEで接続されたHDDが2台、それにATAPI接続のDVD-ROMドライブが1台接続されているので、セカンダリのスレーブにCRW3200E-VKを接続した。
その後、添付のCD-ROMドライブにBHAのソフト一式が入っているので、インストーラにしたがってソフトをすべてインストール。もちろん、その中心となるのは「B's Recorder GOLD」であり、そのバージョンは3.12となっていた。
さっそく起動してみると、いつものB's Recoder GOLDのあの画面が現われた。パッと見た目には、とくに新しいところはないようにも思う。しかし、Audio Masterに関する設定がどこかにあるはずと探してみると、どうも見つからない。もしかして、ドライブをきちんと認識していないのではないだろうかと環境設定画面を見てみると「記録モード設定」、「高度なドライブ設定」のタブがあり、ここには大きなYAMAHAのロゴがある。確かにドライブを認識しているようだが、ここにもAudio Masterの設定は見あたらない。
【記録モード設定】 | 【高度なドライブ設定】 |
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そこで、まずは普通のモードでもいいから書き込んでみようと、手持ちの音楽CDからいくつかのトラックを選択してコピーしてみることにした。準備を整え、書き込みボタンを押した。すると、そこに、Audio Masterのチェックボックスが登場。要は、Audio Masterは書き込む直前でチェックするようになっていたのだ。
この画面にも書かれているように、Audio Masterをオンにすると、画面上部にある書き込み速度の設定は無効になり4倍速固定となる。またバッファアンダーラン防止のためのSafeBurn機能も自動的にオフとなるほか、ディスクアットワンスのチェックが外れていてもトラックアットワンスではなく、すべてディスクアットワンスになる。
また、この画面には「74min以上のCD-Rメディアへ音楽CDを書き込む場合、オンにすることで高音質な音楽CDを作成することができます」とあるが、音楽CDに限らずデータCDを焼く際にもチェックすることができる。つまり、Audio Masterと同じモードでデータを書き込むこともできるようになっている。
さて、最初は恐る恐る「テストの後、書き込み」として約50分のデータを書き込んでみることにした。しかし、やはり久しぶりに使った4倍速は遅く、かなりの時間がかかる。単純計算でテストに12分、本番に12分もかかってしまうわけだ。
書き込んでいて目にとまったのは、ドライブの書き込みを示すLEDのランプ。平常時は薄紫で書き込み時は鮮やかな青となる。
ヤマハによると、青色LEDを搭載した内蔵型ドライブは世界初とのことである。
そして、焼きあがったCDをミニコンポのCDプレーヤーにかけて再生してみたところ、問題なく再生されたが、これだけを聞いている限りとくに際立ったものは感じられない。オリジナルCDと比較してみても、そう違いはない。
引き続き、比較のため、今度はノーマルモードでも同じデータを焼いてみることにした。24倍速で焼いてもいいのだが、そうするとスピードによる違いということも出てきそうなので、同じ4倍速で焼いてみた。
さて、これでオリジナルのプレスCD、Audio Masterで焼いたCD-R、ノーマル4倍速で焼いたCD-Rの3つが完成したので、再度試聴。今度はもう少し耳を澄まし、違いを聞き分けてみることにした。ちなみに題材としたのはScritti Polittiの「Provision」というアルバム。
こうして聴いてみると、微妙な違いが見えてくる。どれが好きかは個人の趣向にもよると思うが、高音域の音の広がり具合いにおいてAudio Masterで焼いたCD-Rがベストで、プレスCD、ノーマルCD-Rという順であった。おそらくプレーヤーを変えると、聞こえ方も変わってくると思われるが、Audio Masterの良さというものがなんとなくわかる。
ただ、MP3で圧縮したサウンドとの違いなどと異なり、ごく微妙な差ではあった。どちらかというと、先日ヤマハで聞かせてもらったサンプルのほうが、ハッキリと違って感じられたくらいである。
こうした音の違いはドライブ、メディア、プレーヤー、そして楽曲とそれぞれの複合的要素で現れるため、どうすれば、どんな音になるということは一概には言えない。しかし、Audio Masterにより音が安定するのは確かなようだ。
■ 世界初の「CD Mount Rainier」対応ドライブ
次に試してみたのはCD-RWについての新機能。先日のインタビューの際にも少し話しを聞いたのだが、CRW3200にはAudio Masterとは別に、CD-RWにも特殊な機能を持っている。それが世界初搭載の「CD Mount RAYNIER」というものであり、マイクロソフト、ソニー、フィリップス、ヤマハが推奨団体となっている機能だ。
これは次世代標準パケットライト・フォーマットであり、FDに記録する感覚で、手軽にデータの保存が行えるというもので、主な特徴は以下の4つ。
■ CD-RWをMD感覚で利用する「CD-RW Audio Track Edit」
また、CD-DAを書き込んだCD-RWの使い勝手を向上される「CD-RW Audio Track Edit」という機能も搭載されている。これを利用すれば、スピーディーにトラックを追記したり、削除したりすることが可能になる。
これもB's Recoer GOLDで実現できるというので、画面内を探してみたところ、ツールメニューに「音楽追記CD-RW」という項目があるのに気付いた。これを選択すると「CD-RWにトラックアットワンスで書かれた音楽CDをセットしてください」という画面が現れるので、入れてみると、これまでB's Recoder GOLDでは見たことのない画面が登場した。
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左側には「既に書かれている曲」、右側には「追記する曲」という項目があり、画面下には「最後の曲を削除」、「追加」という項目がある。試しに「最後の曲を削除」をクリックすると、画面上で最後のトラックが消える。
また「追加」をクリックし、ファイルを選択すると右側に新しいトラックが表示されるとともに、画面左側には編集後の状態がグラフィカルに表示される。
ここで「録音開始」をクリックすると、TOCを書きかえる旨のメッセージが表示され、すぐに追加データの書き込みが始まる。このTOCを消す作業などに1分弱の時間はかかったものの、すぐに追記がはじまるため、1、2曲追加するだけなら、ほんの数分の待ち時間である。多少使い勝手は異なるものの、ちょうどMDのような感覚でCD-RWが使えるようになるわけだ。もちろん、こうして書き込んだCD-RWを一般のCDプレーヤーで演奏させることもできる。
もっともこのCD-RW Audio Track Edit機能はMDほど編集機能に自由度はないので、順番を入れ替えるとか、途中の曲を1曲消すといったこともできない。とはいえ、従来のCD-R/RWに対しての音楽CDを焼く機能に比較すると、非常に簡単であり便利。
ちなみに、これはCD-RW専用の機能。また、一方のAudio MasterはCD-R専用の機能となっているため、CD-RWに書き込む際Audio Masterスイッチにチェックを入れようと思っても入れられない。
こうした点からみてもCRW3200は音質のためのCD-Rと、使い勝手のよいCD-RWを用途によって使い分けるようになっている。
以上、CRW3200を実際に使って、使い勝手という面からみてみた。効果がどれだけ実感できるかは、状況によるが、Audio Masterが音質を向上させるアプローチとしては画期的なものであることは間違いない。
今後、これと同等の機能を備えたドライブが登場してくるのか、またプロユーザーにも利用されていくのか、注目していきたい。
□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/01091702.html
□関連記事
【9月17日】ヤマハ、音楽CD専用記録モード搭載CD-R/RWドライブ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010917/yamaha2.htm
(2001年11月5日)
[Text by 藤本健]
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp