2002 International CES基調講演レポート ビルゲイツが語る、AV機器とWindowsの新しい形の融合 |
米Microsoft会長兼CSA ビル・ゲイツ氏 |
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会期:1月8日~1月11日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
Las Vegas Hilton Hotel
Alexis Park Hotel
■ ビルゲイツ氏、「デジタル時代の到来」を強調
米国ネバダ州ラスベガスにて1月8日~11日まで開催される「2002 Internetional CES(Consumer Electronic Show)」の基調講演が、同市ヒルトンホテル内シアターにて行なわれた。スピーカーは毎年おなじみ、米Microsoft会長兼CSAのビル・ゲイツ氏だ。
CEA会長 ゲイリー・シャピロ氏 |
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露払いとして登場した、実質的なCESの開催委員会であるCEA(Consumer Electronics Association)の会長ゲイリー・シャピロ氏は、「2001年は民生電化製品の分野において、Microsoftは大きな偉業をなしとげた。それはユーザーとユーザーを結びつけるようなプロダクトを世に送り出したことだ」と述べ、Windows XPシリーズ、そしてすでに米国では発売となっている新世代家庭用ゲーム機「Xbox」を遠回しに褒め称えた。
その後、シャピロ氏に招き入れられるような形で、ビルゲイツ氏が登場、会場は拍手と声援に包まれた。
ビル・ゲイツ氏は、2001年11月に同じラスベガスで開催されたIT関連イベントCOMDEXでも掲げた「Digital Decade」というキーワードを強調。2001年からこの先10年間はあらゆるメディアがデジタル化する「デジタル時代の到来」を予見した。
シャピロ氏が褒め称えた「プロダクト」であるWindows XPは、発売後2ヶ月間で1,700万本を出荷、Xboxは発売後1ヶ月で150万台の出荷を達成。Microsoftの考えるデジタル時代の実現に向けての滑り出しは快調だといえる。
開演前の舞台風景。左右中央の水槽の映像は3板式DMDリアプロジェクションシステムによる映像。サイズ的には400インチ前後。言ってみれば世界最大級、最高級なリアプロモニタである | 今回も放映されたハリーポッターに扮したビル・ゲイツ氏と、ルーク・スカイウォーカーに扮したスティーヴ・パルマ氏の映像 |
■ Windows CE.NET構想が民生電化製品を変えるか?
Microsoftの考える「来るべきデジタル時代」を支える要素のうち、小型情報機器の分野において中核的存在としてMicrosoftが発表したのが「WindowsCE.NET」構想だ。
Windows CE.NETは、ワイヤレスかつ透過的なデジタルマルチメディア環境を提供する堅牢なリアルタイムOS。Windows CE機に代表されるPocket PC以外のデバイスにおいてもWindows CEアーキテクチャを採用。それにより、機器のジャンルを超えたインタラクティヴかつ、透過的なインターフェイスをユーザーに提供するものになるようだ。
Xboxのあるリビングルームの風景 | Windows CE.NETについて語るスティーヴ・ガッゲンハイマー氏 |
デモンストレーションでは、Pocket PCのブラウザ上でテレビ番組を検索、これを自宅の録画機能付き衛星放送チューナに向けてメール送信。遠隔録画予約を行なう様子を見せてくれた。
Pocket PCで見たい番組を検索 | 衛星チューナにメール転送して予約録画登録 |
家電製品用リアルタイムOSは複数存在するが、Microsoftがこの分野にも進出を開始したと見えなくもない。これまで家電製品のOSは一部を除きスタンドアロン環境が基本だったわけだが、Windows CE.NET構想ではこれをネットワークで結び、相互に有機的な機能を持たせようと言うわけだ。いずれはWindows XPやXboxを中心とした、その他のMicrosoft製品との連携も期待される。しかし、これを「Microsoft支配がいっそう強まるのでは」と懸念する声も聞こえてきそうだ。
とはいえ、メーカーの壁を超えた連動性、データの透過性を追求すると、こうした1つの標準化が必要になってくるのは避けられない成り行きではある。これまであまり家電製品向けのリアルタイムOSが注目されることはなかったが、Windows CE.NET構想は大なり小なり、この分野へ波紋を投げかけることになるだろう。
なお、現時点でソニー、日立製作所、カシオといった国内有名家電メーカーがこれに賛同することを表明している。
Pocket PC + 携帯電話の複合機機も当然Windows CE.NETの範疇となる | WindowsCE.NETに賛同するメーカー一覧 |
■ AV機器とコンピュータの新しい形の融合?
デジタル時代をになう、メディアジャンルとして最重要項目といえるのがホームコンピュータの分野だ。この分野において、Windows XPが中核的な存在となることはCOMDEXの基調講演でも強調された部分だが、今回、実際の応用例(アプリケーション)が2つ示された。それが「フリースタイル(Freestyle)」と「ミラ(Mira)」だ。
Freestyleとは、デジタルコンテンツを共有する仕組みを提供し、直感的なユーザーインターフェイスをワイヤレスリモコン環境で実現するもの。
デモンストレーションでは、それまでマウスベースで動いていたWindows XP搭載PCを、リモコンを用いてあたかも家電のような操作感覚で、PCに収録された音楽、動画、写真といった各種メディアを自在に再生していく様子を披露した。
Freestyleは、Microsoft eHomeコンセプトに含まれるプロダクトだ | FreestyleはAV機器ライクなPCの新基準となり得るのか | 上の画面に出ているのがメニュー画面。リモコンでWindows XPパソコンがAV機器感覚で取り扱える。 |
このテクノロジーをいわゆるテレビパソコン的な製品に組み込めば、パソコンをインターフェイス面において、AV機器的に取り扱えるようになる。テレビチューナ付きパソコンが数多く製品化されているが、そのインターフェイスは各社まちまちで、今ひとつ機能とインターフェイスの融合がうまくいっていないものが多い。Freestyle技術はこの問題について1つの模範解となる可能性を秘めている。
また、Freestyleにはメディアデータの共有機能もあり、ネットワーク内のある各種メディアデータを透過的に取り扱うことができる。オーディオメーカーや電子楽器メーカーがAV機器や電子楽器をIEEE 1394で接続しデータ共有ネットワークを形成。相互にデータのやりとりが行なえるコンセプトを提唱しているが、Freestyleの共有機能はこれらにかなり近い。
共有した音楽から映像までのメディアコンテンツを透過的に取り扱える | 同じリモコンで別のFreestyle PCを次々に制御できるのも特徴の1つ |
一方のMiraは、Windows XPを家庭内のあらゆる場所で使えるようにするテクノロジーを包括したインテリジェントなディスプレイデバイス。Microsoftでは「Windows CE.NETとワイヤレスネットワークを統合した次世代ディスプレイモニタのコンセプト」として位置づけている。
外観がこれまでアナウンスされてきたペン入力ベースのPC「TabletPC」にかなり似通っているが、コンセプトは全く別物と考えていいようだ。
基本的にはディスプレイという位置づけであり、表示デバイスを持たないWindows OS搭載機器の映像をワイヤレスで表示できるようになる。逆にMiraを対応機器の近くに持っていって使うといったこともできる。「持ち出せるインテリジェントなディスプレイ」といったところだろうか。
公開されたデモムービーでは1台のホストPCが設置してある家庭で、1台のMiraを家族がそれぞれの活用スタイルで楽しむ様子が描かれていた。父親はビジネス用途に、娘は音楽を楽しみ、母親はオンラインショッピングを楽しむ……。といった具合にそれぞれのユーザーが、あたかも自分専用のコンピュータとして使っているという内容だった。
これがMiraだ。スタンドから取り外したところ | 左のガッゲンハイマー氏は、Windows XP機の近くでMiraを使用中。大型ディスプレイではホストPCにてDVDビデオを再生中 | FreestyleとMiraに賛同する企業の一覧 |
これまで1台のPCを家族が使う場合には、設置してある場所に行って使わなければならなかったが、Miraを自分の部屋に持っていけばそこでPCが使えるということになる。ホストPCはWindows XP、マルチユーザーOSなので、プライバシーやセキュリティの問題もない。ホストPCが1台、Miraが複数台という環境では、家族やグループ内のデータの共有、同時使用なども容易に行なえる。
ディスプレイというと、表示しかできないデバイスのように思えるかもしれないが、入力インターフェイスや基本的なコンピューティング機能は備えている模様だ。それこそOSはWindows CE.NETになるのではないだろうか。
□2002 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
(2002年1月8日)
[Reported by トライゼット西川善司]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp