扇形のだだっ広いホールにひたすら延々とブースが立ち並んでいるだけだ。常に方向を確認しながら歩いていかないとすぐに迷子になってしまうのが、NAB Sandsの特徴でもある。
■ 5D、マルチ解像度対応の合成ソフトウェア「CYBORG」
5Dといえば、AfterEffectsなどの合成ソフトのプロ用プラグインの開発で有名なイギリスのメーカー。そのノウハウを活かし、Windows 2000およびIRIX上で動作するスタンドアローンの合成用アプリケーション「SYBORG」が登場し、人気を集めていた。 SDからフィルム(2K)までの映像素材を混在してのコンポジティングが可能。解像度だけではなく、フレームレート変換機能もある。プラグイン譲りの優秀なキーヤーや、カラーコレクタを装備し、タブレットを使用してのペイント機能などもある。 また3DCGのオブジェクトモデルデータフォーマットの1つ「OBJ」を直接ロードでき、5D SYBORG上でテクスチャマッピングも可能。さらに3Dカメラ環境を搭載し、自由度の高い画面合成が可能になっている。 各エフェクトにはレンダリングが必要だが、プレビューは2K素材でもリアルタイムで再生できる。 また、国内総販売元である株式会社IMAGICAデジックスのスタッフによる日本語のデモンストレーションも行なわれ、盛況だった。
□5Dのホームページ(英文)
■ Matrox、DigiSuite MAXを展示
PCユーザーにはビデオカードでおなじみのMatroxだが、プロ用ノンリニアの世界でも老舗の1つ。 「DigiSuite MAX」は、放送/ポストプロダクション用のビデオ編集システムで、リアルタイム3Dエフェクト、リアルタイムMPEG-2エンコードを特徴とする。
サポートするフォーマットはDV、DV50、MotionJPEG、MPEG-2 I Frame 50Mbps。アナログコンポーネント、コンポジット、Y/C、IEEE 1394の入出力を標準装備し、オプションでSDIおよびAES/EBUのモジュールもある。
また新製品として、小規模なTV放送やストリーミングの制作、管理、送出を行なう「Matrox InfonetTV」を発表した。
このようなコンセプトの製品はなかなか具体的な形の見えにくいものだが、Matroxが従来のポストプロダクトオンリーから脱却して、放送の送出管理までを総合的に手がける意味合いは大きい。
□Matroxのホームページ(英文)
■ Apple、Sandsにも出張
今年AppleのブースはLVCC South Hallにあるが、ここSandsでも来場者のためにFinal Cut Pro3やDVD Studio Proなどのクラスルームを開設し、人気を集めていた。 放送関係者はいわゆる一般のパソコンユーザーとは違い、プラットフォームをあまり気にしない。自分の仕事に使えるかどうかが問題なのである。
今回のスクールでは実際のソフトウェアに触れる貴重なチャンスを逃すまいと、熱心に取り組むユーザーで常に満席。またブースの外側にも真剣に聞き入る人で、二重三重の人垣ができていた。
□Appleのホームページ(英文)
■ Adobe、Photoshop 7.0を発表
コンピュータで映像を扱う人間にとって、Adobeのソフトウェアに無関心な人はいない。毎年ブースにはたくさんの人が詰めかけ、熱心にデモンストレーションに耳を傾けている。 今年の目玉は、Photoshopの新バージョン、7.0。革新的なファイルブラウザや映像のノイズ消去に効果的な「Healing Brush」などのデモンストレーションが行なわれた。Macintosh版はこのバージョンからOS Xに正式対応となる。
また、すでに発売されている「Illustrator 10」や、「After Effects 5.5」も、展示会としてはNABが初登場ということで、新製品として展示されていた。
□Adobeのホームページ(英文)
■ Eyematic、FaceStationのデモが好評 ゲームや映画の分野では、CGキャラクターが実物のようにリアルにしゃべるアニメーションを作成するためのフェイシャルアニメーションツールが需要を増している。 Eyematicは、従来のフェイシャルアニメーション制作のようにモデルの顔にマーカーを貼り付けることなく、アニメーションの作成を可能にするソフトウェア「FaceStation Ver1.5」をデモンストレーションした。 デモでは来場者の女性を撮影したカメラの映像に対してダイレクトにポイントを指定し、リアルタイムでフェイシャルアニメーションを作成し、好評を博していた。価格は1,995ドル(米国のみ)。
□Eyematic Interfacesのホームページ(英文)
■ Sonic Solutions、数多くのプロ用ツールを一同に展示
コンシューマでは「DVDit!」などで知られるSonic Solutionsだが、ここNABでは一般に知られていないプロ用ツールを一同に展示していた。
「DVD Fusion」は、Macintoshのプロ用DVD制作ツール。Media100やAvid上のコンテンツから直接トランスコードして、DVD-RやDLTに書き出せる。
「DVD-Audio Creator」は、まだプロ用でも珍しいDVD-Audio用のオーサリングソフト。レコード会社系列の音楽スタジオなどに納入が進んでいるという。 「SONICSTUDIO HD」は、オーディオ全般のマスタリングツール。音楽CDやDVDビデオの音声、DVD-Audioなどのマスタリングができる。 そのほかにもおなじみの「SCENARIST」と「ReelDVD」、イベント映像などの特殊用途DVDオーサリングツール「DVD Producer」などを展示し、各分野のプロフェッショナルたちが熱心に説明を受ける光景が見られた。
□Sonic Solutionsのホームページ(英文)
■ Canopus、米開発のマルチエンコーダ、ProCoderを発表
日本ではPCユーザーにおなじみのCanopusだが、米国ではコンシューマとプロの中間を行くベンチャー企業という見方が強い。 今回初めて発表された「ProCoder」は、さまざまなレゾリューションの映像ソースを、Canopus DV Codecや、Canopus MPEG Codecなどを含むあらゆるコーデックに平行してエンコードするツール。1つのコンテンツから、さまざまなメディアソースを同時に作成できる。ストリームの強い米国のニーズから生まれた製品のようだ。国内での発売は未定だが、およそ5月頃になる見込み。 またDVStormの上位バージョン「DVStorm SE」を発表し、こちらも好評だった。最大の特徴は、プラグインを用いてPremiere上で最大5レイヤーのリアルタイムレンダリングを実現する点。
パソコンベースで同時に5レイヤーのリアルタイムレンダリングできるのは世界初。既存DVStormユーザーには、後日アップデータが配布される模様。
さらに米国向けに、TVキャプチャカード「MTV1000」からチューナーユニットを外し、ハードウェアエンコーダカードとして販売する。名称は「MVR1000」。
価格は699ドルと、日本で販売されているMTV1000よりも若干高めに設定されている。ソフトウェアはMTV1000と同じく、MEDIACRUISEで対応する。
Sandsの展示は、デバイスではなくソフトウェアの展示がほとんどであるため、何をやっているのか非常にわかりにくい。したがって来場者も1つのブースに立ち寄る時間が長いため、人の流れが停滞してかなりの混雑ぶりだ。 3日目となる明日は、またLVCCに戻り、今度はSouth Hallでの模様をお伝えする。
□NAB2002のホームページ (2002年4月10日)
[Reported by 小寺信良] |
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp