展示は、2FがTV/Video/Film系、1FがMultiMedia系に分かれており、本日は主に2Fの模様をレポートする。
■ SONY、新フォーマットのVTRを参考出品ほか
South Hall2階の入り口から延々と続くのがSONYのブースだ。従来のNABでは、ブース展示はコンセプトのみで実機はプライベートルームで展示していたSONYだが、今年はブース内にすべて実機を展示していた。放送の全分野をカバーするだけに、展示物の数は異様に多い。 今年のSONYのテーマは、「ワークフロー・イノベーション」。ビデオ部分のAVと、コンピュータ技術のITをネットワークで連結し、よりスムーズなコンテンツ作成をめざそうというものだ。例としては、撮影時に高解像度のテープ記録と同時に低解像度の映像をPCカード型HDDなどに記録し、そのデータを既存ネットワークを使って局に転送。先にオフライン作業を行ない、テープが実際に到着したらオフラインデータを元にすぐオンライン編集を行なう、というような運用も可能になってくる。
ニュースばかりでなく、テープの到着が遅い海外取材などでもある程度の事前作成が可能になるため、便利に使えるだろう。 ● DSR-PDX10
「DSR-PDX10」は小型DVCAMの新ラインナップで、従来機の「PD100A」よりもさらに小型化、軽量化、低消費電力を実現した。ネットワーク ハンディカムのDCR-TRV950がベースとなっているようだ。
最大の特徴はカメラ本体にUSBポートが装備され、そこから撮影時やテープ記録した映像のMotionJPEGデータが取り出せるところ。撮影現場で簡単にパソコンにストリームデータが取り出せ、ワークフロー・イノベーションの実現に貢献する。 ● HDW-730 HDCAMにも新モデル「HDW-730」が登場した。機能としては既存モデルの「HDW-750」とほぼ同じだが、1台のカメラで記録フォーマットを50iと60iに切り替えができる。リリースは今年秋口を予定しており、価格はHDW-750よりも若干下がる模様。 またオプションとしてカメラにGPSユニットが搭載できるようになっており、撮影時の場所情報をテープに記録することができる。このGPSデータは、パソコンの地図上にも情報を表示でき、これも1つのワークフロー・イノベーションの流れだと言える。 展示では、ナビゲーション情報を表示しているパソコンはもちろんVAIOで、ソフトウェアは日本語版のNavin'Youだった。表示されている位置情報はプロ用機を開発している厚木のSONY 第2TEC周辺を何度も往復した軌跡を指しており、開発の苦労が忍ばれる。
● 高解像度記録のVTR(参考出品) また参考出品の段階だが、MPEG-4スタジオプロファイルを採用し、現状のHDCAMを上回る22:11:11、10bitの高解像度記録が可能なVTRが発表された。フィルム解像度の記録を目指しているためフォーマットは24Pで、1本のテープに2時間半記録できる。2:3プルダウン出力や既存フォーマットへのダウンコンバータが内蔵でき、オーティオトラックもサラウンドを意識して8ch程度まで拡張される見通し。 テレシネ時の収録用、映画などのマスタリング用VTRとしての使用が想定されている。一般的にMPEG-4といえばストリーミング用低解像度フォーマットというイメージだが、スタジオ品質のプロファイルも存在する。レゾリューション的にMPEG-2よりもさらに広範囲の規格となりそうだ。 ブースの展示モデルはモックアップだが、すでに実働する試作機も存在するという。
● 360度撮影が可能なカメラシステム また会場には、8つのカメラが一体化した特殊なカメラユニットを使用し、360度の映像を一度に撮影するカメラシステムが展示され、人気を集めた。収録には8台のVTRを使用し、カスタムのオーサリングシステムによりそれぞれの映像の境目をシームレスに連結、プレイステーション 2上で動作する特殊コンテンツとして作成する。完成したコンテンツは、PS2のコントローラを使ってユーザーが自由に360度見回すことができる。 すでに制作システムサービス事業として実働しており、収録にデジタルベータカム8台にSONY PCLの専門エンジニアが3人付いて、1日180万円から。
■ 独ツァイス、同社初のHDCAM用レンズ「DigiPrimes」
独ツァイスは、SONYのHDCAM 24Pブランド「CINEALTA」用の単焦点レンズを開発した。ビデオ用3CCD用レンズとしては、同社初。展示はNorth Hallだが、SONY関連ということでここでまとめて紹介する。 5mm、7mm、10mm、14mm、20mm、40mmといったラインナップがあり、すべてソニーマウントで設計されているため、リレーレンズを使用することなくSONY HDW F900などに直接装着できる。 最短の焦点距離(MOD)はどのレンズも0.5mまで。アイリスおよびフォーカスギアの位置はどのレンズも同じになっており、レンズ交換時にフォローフォーカスユニットなどの取り付け位置を再調整する必要がない。 またレンズ径がすべて95mmに統一されており、レンズ交換の際にもステップアップ/ダウンリングなしで単一のマットボックスが使用できる。
ツァイスのレンズの特徴は、エッジが起たない柔らかな輪郭が表現できること。国産メーカーのレンズはシャープな映像は得意だが、24Pの世界ではツァイス独特のマイルドなタッチが求められてきたこともあり、撮影関係者の注目度は大きい。
またプロトタイプとして、レンズの前に装着するだけで簡単にバックフォーカスの調整ができるユニット「DigiPrimes BFA」も展示されていた。 日本ではSONYのハンディカムでおなじみのカールツァイスレンズ。もともとフィルム用のレンズメーカーなので、原理的にフィルムレンズの設計と近い1CCD用レンズには採用されてきたが、今まで3CCD用のレンズがなかった。
ハンディカムシリーズでも3CCDモデルのレンズがカールツァイスではないのはこのためだ。DigiPrimesの技術により、いつの日か3CCDハンディカムにもツァイスのレンズが乗る日が来るのかもしれない。
□Carl Zeissのホームページ
■ DPS、LEITCHブースで展示
数年前に同じカナダの放送機器メーカーLEITCHに買収されたDPSだが、それでも今まではLEITCHブースとは別に出展していた。しかし今年はLEITCHブースの一角でノンリニアセクションとしてデモンストレーションを行なった。 DPS RealityHDは、PCベースのHD対応HDDレコーダとして機能する製品。DPSといえばかつてCG制作者にSDのHDDレコーダ「PerceptionVideoRecorder(PVR)」が大ブレイクしたが、RealityHDはちょうどそのHD版に相当する。 コーデックにはSONY HDCAMのものを採用し、同VTRからSDTI経由でダイレクトにキャプチャ可能。PVR譲りのバーチャルファイルシステムも健在で、OSのファイルシステムにフックすることでキャプチャした動画データから、TGA、TIF、SGI、PIC、BMPといった静止画連番ファイルを取り出すことができる。またその逆に、上記連番ファイルを入力することで、動画として再生や出力が可能になる。 レゾリューションの変更などは、HD対応の画像合成ソフト「DIGITAL FUSION HD」と連携し、ユーザーが意識することなく自動的に変換を行なう。
□DPSのホームページ
■ Grass Valley Group、THOMSON MULTIMEDIAブース内で出展
初日のレポートでお伝えしたとおり、米国の老舗スイッチャーメーカーGrass Valley Groupは今年3月にTHOMSON MULTIMEDIAに買収された。同社はすでに去年、Philipsの放送機器部門を買収しており、今回のGrass Valley Groupのラインナップを合わせて一躍巨大放送機器メーカーに急成長した。
日本国内ではTHOMSON製品もPhilips製品もあまりなじみがないだけに、筆者も初めて見る製品が多かった。 ● KalypsoにKurl搭載 すでに販売されている巨大ライブスイッチャー「Kalypso」に、新たにKurlオプションが装備された。Kalypsoはスイッチャーながらも内部にDVEを内蔵したオールインワンシステム。このDVE部分に、かつてKaleidoscopeで人気を博したKurlオプションが装備されることにより、スイッチャーだけでページターン、リップルといったエフェクトが使用できるようになる。 またKalypsoは、1台の本体を複数のコントロールパネルでシェアして使用することができる。今回は新たに1MEの小型コントロールパネルを展示。多くの来場者の注目を集めた。
● リアルタイムエンコードユニット「AQUA」 AQUAは、1つの映像ソースから複数のストリーミングフォーマット、また複数のビットレートに対してリアルタイムにエンコード可能なユニット。内部のモジュール1つ1つが小型の独立したPCになっており、このモジュールを増設することで同時にエンコードできるフォーマットが簡単に増やせるのが特徴。エンコードは専用ソフトウェアで一元的に管理できる。
South Hallの2階は、入り口近くにあるSONY、THOMSON、LEITHの3ブースでほとんどの来場者が立ち止まり、なかなか奥にまで人が流れていないような状況であった。ブースの配置には今後工夫が必要だろう。 最終日となる明日は、MultiMedia関連企業が出展するSouth Hall1階の模様をお伝えする。
□NAB2002のホームページ (2002年4月11日)
[Reported by 小寺信良] |
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp