~ デジタルミキシングスタジオ「01X」の仕様も固まる ~ |
とはいえ、発売日が多少延期になっただけで仕様はほぼ決まっているそうだ。正式発表のMOTIFとともに、01Xについても紹介する。
■ 20周年を記念した高級シンセ「MOTIF ES」
大々的に紹介されたMOTIF ES |
ヤマハの初のデジタルシンセサイザは、FM音源の大ヒット機「DX7」だ。当時、高校生だった筆者にはなかなか手が出せず、楽器店に行ってデモ機を触っていた記憶があるが、あれから20年もたったのかと思うと感慨深い。発表会では、DX7以降のヤマハのデジタルシンセの歴史を振り返っていったが、それ以降はほとんどがPCM音源が中心。ヤマハがAWM2音源という呼ぶものだ。ヤマハからは'94年に「VL1」というバーチャルアコースティック音源(物理モデリング音源)が登場しているが、PCM音源中心なのは、現在も変わらない。
今回発表された「MOTIF ES」もPCM音源。もちろん、従来のものと比較するとサンプリングデータの容量が膨大になったり、DSPの処理速度が向上してエフェクト機能が強化されるなど機能・性能は大きく向上している。MOTIFはちょうど2年前に発表されたシンセだが、その上位機種として位置付けられるのがMOTIF ESというわけだ。
ラインナップは従来と同じく3種類で、発表されたのは「MOTIF ES8」(335,000円)、「MOTIF ES7」(270,000円)、MOTIF ES6(235,000円)。いずれも8月1日に発売される。
MOTIF ES8 | MOTIF ES7 |
各機種の違いは、ES8が88鍵バランスド・ハンマー鍵盤搭載であるのに対し、ES7は76鍵FS鍵盤、ES6は61鍵FS鍵盤となっているだけで、シンセサイザーとしてはまったく同じものだ。
さすがに最高級シンセとして打ち出した機種だけに、ウェーブデータの容量は175MB(16ビットリニア換算)。音色数的には1,024ノーマルボイス+65ドラムキットがプリセットされている。エフェクトは最大8パート同時使用可能なインサーション、8タイプのマスターエフェクトそして3バンドパートEQなどが搭載されている。また、デモ演奏で面白かったのはアルペジエーター機能。1,787タイプのアルペジオが組み込まれており、ワンキーを押すだけでそれっぽい演奏ができたり、それらのアルペジオを組み合わせて新たなパターンを作ることなどが簡単に行なえる。
一方、PCとの連携も非常に強力になっている。MOTIF ES自体にシーケンサ機能を搭載するため、単体で完結させることも可能だが、USB端子でPCと接続することでいろいろなことができる。MIDIデータを送ってシーケンスコントロールできるのは当然として、このMOTIF ESはフィジカルコントローラとしての機能をもっているため、ここに搭載されているフェーダーの動きをPC側のシーケンスソフトに伝えることが可能。
SQ01 V2 |
またMOTIF ES自体にスマートメディアスロットが標準装備されており、オーディオデータやMIDIデータのやりとりができるほか、USB端子にHDDやフラッシュディスク、カードメモリなどを接続すると直接MOTIF ESとのやりとりが可能になるというのもユニークな点だろう。
そして、「TOOLS for MOTIF ES6/MOTIF ES7/MOTIF ES8」、「Sound Library for MOTIF ES6/MOTIF ES7/MOTIF ES8」、「TOOLS for Modular Synthesis Plug-in System」の3枚のCD-ROMが添付されているというのも大きな特徴となる。
TOOLS for MOTIFには、前出のSQ01 V2が入っているほか音色エディタのVoice Editor for MOTIF、ソング/パターン再生に必要なミキシングやエフェクトの設定をパート毎にエディットできるMulti Part Editor for MOTIFなどが入っている。
またSound Library for MOTIFには本体にはプリセットされていないMOTIFやS90のピアノ音色など197音色+6ドラムキット(約150MB)やリズムサンプルWAVファイル(約220MB)などが収録されている。さらに、TOOLS for Modular Synthesis Plug-in Systemには『MOTIF ES』に装着した各プラグインボード用の音色エディタが収録されているのだ。
Voice Editor for MOTIF ES | Multi Part Editor for MOTIF |
■ 明らかになった「01X」のスペック
さて、今回のもう1つの目玉は01X。3月にドイツのフランクフルトで開催された楽器ショー「musikmesse2003」で参考出品されたこともあって、注目されていた製品だ。ただし、今回は参考出品にとどまり、発売は年末近くなるとのこと。サイズは453×391×116mm(幅×奥行き×高さ)、重量は6.3kgで、見た目はHDD搭載のDAWのよう。機能としては、デジタルミキサー、オーディオ/MIDIインターフェイス、リモートコントローラーの3機能を統合したもの。それぞれの機能を単独で利用することもできるし、統合して利用することも可能。
デジタルミキシングスタジオ「01X」 | 背面の入力部 |
それぞれの機能を簡単に紹介していこう。まずデジタルミキサーは44.1/48/88.2/96kHzをサポートし、最大24bit(内部処理は32bit)に対応している。チャンネル数は24入力+2ステレオ入力=28入力、バスが4ch、Auxが4chというスペック。入力はアナログ8ch(Mic PreAmp、Line-Mic Gain付/1-2ch=XLR:Phantom対応、3-8ch=TRSフォン)、デジタル入力(Coax、SRCオン/オフ可)、出力はステレオアウト、モニターアウト、デジタル出力(Coax)およびヘッドフォンとなっている。さらにマルチエフェクトを2基搭載しており、録音時にエフェクトを掛ながら録ることもできる。
そして、01Xでもっとも注目される機能はmLANを通じてのオーディオ/MIDIインターフェイス機能だろう。このmLANを利用することで、IEEE 1394ケーブル1本で最大同時24chの録音、最大同時18chの再生が可能となっている。加えて、MIDI IN/OUTそれぞれ2ポート持っているので、これらを利用することも可能だ。対応OSはWindows XP、Mac OS 9.2、Mac OS Xとなっている。
さらにもう1つの特徴はmLAN経由でリモートコントロールできるということ。ムービングフェーダーにも対応しており、Cubase SX、Logic Audio、Digital Performer、前出のSQ01やSOLで利用可能とのことである。
ちょっと面白いのは、VST/Audio Unitプラグインとして、「Pitch Fix」、「Vocal Rack」、「Final Master」、「01X Channel Module」の4つ同梱されている。01X Channel Moduleを除く3つのWindows版は先日のSOL2の記事の中で紹介したものと全く同じ。つまり、ボーカル用エフェクト2つとマスタリングエフェクト、コンプ/EQ系エフェクトという構成で、01Xではもちろん、WindowsのほかMac OS 9版とOS X版も登場する。また、Pitch Fix、Vocal Rack、Final Masterの3つは単品発売も予定している。
いずれもVST/Audio Unitが使えるホストであればどれでも利用可能であり、これらは01X内蔵のDSPを利用して動作するのではなく、01Xとは完全に独立して動作する。01X Channel Moduleでは、01Xのハードウェア本体に持っているチャンネルモジュールをそのままソフトウェア化したもの。ユーザーがハードウェア/ソフトウェア、どちらでもミキシングできるような環境が用意されるという。
Pitch Fix | Vocal Rack | Final Master |
さらに、「Studio Manager for 01X」というソフトもバンドルされる。これらは01Xの各操作子をコントロールするもので、スタンドアロンで動作するとともにOPT(Open Plug-in Technology)プラグインとしても動作する。
01Xに添付される「Studio Manager for 01X」、「01X Channel Module」 |
このOPTとは、昨年ヤマハが発表したプラグインの仕組みであり、SOL2などが対応しているほか、SONARやACID4.0などがすでに一部対応済みとのことだ。
さて、ここで気になるのはその価格だ。具体的な価格は明らかにしてくれなかったが、musikmesse2003においては1,699ユーロとアナウンスしていたとのこと。1ユーロ=135円で計算すると約23万円。やや躊躇する値段だが、今から発売が楽しみだ。
□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース(MOTIF)
http://www.yamaha.co.jp/news/2003/03070201.html
□musilmesse 2003開催時の01X解説ページ
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/news/messe03.html
(2003年7月7日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
00 | ||
00 | AV Watchホームページ | 00 |
00 |
|