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地味に革新的なPC内蔵型スキャンコンバータ
カノープス 「SSC100」
発売日:7月上旬発売

標準価格:13,800円



■ パソコン内蔵型スキャンコンバータ登場

 テレビチューナ付きや、D端子装備、コンポーネント出力対応、液晶表示に最適化など、「高機能」を謳ったスキャンコンバータが増えてきたような昨今。いらなくなったパソコン用ディスプレイをテレビとして使いたい、その逆にテレビをPCディスプレイとして利用したいなど、ニッチなように見えて、注目度は高いようだ。

同梱品

 そんなスキャンコンバータ市場に突如異彩を放つ製品が現れた。それが、カノープスの「SSC100」。なんといっても特徴的なのはPCIバスに装着するパソコン内蔵型ということ。さらに選択領域のテレビ出力に対応など、説明を聞くだけだとイマイチ何に使っていいのか良くわからない機能も搭載している。

 しかも、このSSC100は、カノープスが新たに展開するエントリーユーザー向けシリーズ「QUOSYS」の第1弾となる製品。ヘビーユーザーに強い同社による新しい取り組みだけに、その使い勝手も注目される。



■ 初の「QUOSYS」製品。パッケージも一新

パッケージ。QUOSYSシリーズ共通のデザインを採用している

 パッケージは、MTVシリーズなど従来の同社製品と比較すると2回りぐらい小さめで、QUOSYSシリーズ共通のデザインを採用している。パッケージでも従来製品と差別化を図ろうとする意図が伝わってくる。

 同梱品は、SSC100カードのほか、二股RGBケーブルと、S映像/コンポジット二股ケーブル、USBケーブル、CD-ROM、マニュアルなど。

 カードには、コントローラチップにFOCUS Enhancements製の「FS401」を搭載。専用出力端子と映像出力、映像入力を装備する。専用出力端子を二股RGBケーブルで、パソコンとディスプレイに接続し、S映像/コンポジット出力でテレビに出力する。また、映像入力端子に外部映像機器を接続し、テレビにスルー出力することもできる。

 SSC100のコントロールのために、カード上面にミニUSB端子を装備し、パソコンのUSB端子と接続する。


カード本体 コンバータチップはFOCUS Enhancements製の「FS401 25ピンVGA出力とビデオ入力/ビデオ出力を装備

二股RGBケーブル カード基板にUSB端子を装備。パソコンとUSB接続し、コントロールを行なう 接続例



■ さまざまな出力設定が可能

SmartCommanderの左クリックで表示設定を変更できる

 接続するだけで、テレビ出力は簡単に行なえる。「パソコン内蔵型」という大きな特徴を有する「SSC100」だが、さらに、変わっているのが、「最前面ウィンドウだけ」、「マウスカーソルの周囲だけ」と、範囲を指定しながらテレビ出力が行なえるということ。

 出力設定はタスクトレイ上の専用ソフト「SmartCommander」から行なう。出力画面は、「全画面」、「ウィンドウ選択」、「領域選択」、「4分割」、「外部S映像入力」、「外部コンポジット入力」が選択できる。ここで、ウィンドウごとの出力や全画面などの切り替えが行なえる。

 例えば、通常は全画面表示でPCディスプレイとして利用し、MPEGの録画映像などを視聴する際は、「ウィンドウ選択」で、表示画面だけをテレビに出力するといった利用が可能となっている。画面を4画面に分けて表示する「4分割」はどういったシチュレーションで利用するのかよくわからないが、キーボードの方向キーの上下左右で出力画面を切り替えられるのはなかなか面白い。

コントラストや明るさを変更できる 4分割 ウィンドウ選択

コントラストや明るさを変更できる テストパターンの出力も可能

 また、領域選択出力などの拡大表示時には、表示領域の切り替えモードも変更できる。切り替えモードは、常にマウスカーソルを追跡する「モード1」、マウスカーソルが画面の外に出ると次のエリアを表示する「モード2」、中央の領域では画面が動かず、画面の端にマウスカーソルを持っていくとマウスカーソルの追跡を行なう「モード3」が用意されている。個人的にはモード3が一番使いやすく感じた。


■ 出力画質は今ひとつだが、操作は簡便

 一度つないでしまえば、設定することはほとんど無いので、気になるのは画質。SC100で搭載しているコンバータチップ「FS401」は、メルコの「SC-1」などでも採用しており、さほど珍しいものではないのだが、三菱の28型テレビ「28W-FR1」に1,024×768ドットで出力してみると、一見きれいには見えるが、アイコンの文字の滲みや歪みはそれなりに目立つ。

 コントラストや、シャープネス、明るさ設定などが行なえるので、きちんと設定を行なえば、Webブラウズやメールの送受信など、実用レベルでは十分に使えるが、PCディスプレイの代替として数時間連続使用するといった用途には向いていないと思う。

UXGAで全画面表示

 最大対応解像度は1,600×1,200ドット(UXGA)。試しにUXGAで出力して見ると、全画面表示で文字を読むのは不可能といったレベル。ゴーストの発生はなどの顕著な乱れは感じられないが、Webブラウズなどの用途ではやや使いづらい。

 それより実用的なのは、PC上にアーカイブしたDivXやWMVなどを簡単に見たり、DVDビデオを視聴したりする、といった用途だろう。

 DVDビデオの視聴では、全画面表示出力は非常にシンプルでPowerDVDやWinDVDなどのDVDソフトで再生するだけ。ただし、4:3のパソコンのディスプレイの再生画面から、16:9のテレビに出力する際には、場合によってはアスペクト比が崩れてしまうことがあるので注意が必要だ。

 480p/iのDVDビデオを最も「正しく」出力できると思われるのは、ウィンドウ表示もしくは範囲選択表示。ただし、ウィンドウ表示では4:3/16:9などのアスペクト比のまま表示しようとすると、ウィンドウの枠まで含んで表示してしまい、うまく表示できないこともある。ウィンドウ/範囲選択は、16;9/4:3/任意の3つのアスペクト比が選択できるので、DVD再生ソフトで再生し、任意のアスペクト比で再生画面を選択する必要がある。全画面との画質差はあまり感じられず、全画面表示でアスペクト比に問題が生じていなければ、一番お手軽かもしれない。

 画質については、やや色が淡い印象。ある程度の補正は可能だが、それでも市販DVDプレーヤークオリティとはいかない。やや眠い画になりがちなので、シャープネスを強めに設定したほうがいいと思う。

 TVキャプチャカードで録画したMPEG-2/D1/5Mbps程度の地上波テレビ番組であれば、かなりのクオリティで再生できるので、元ソースさえしっかりしていればそれなりの画質で視聴できる。もっとも、320×240ドット程度のDivXファイルなどでは、28型のテレビで見るとかなりあらが目立ってしまうが、VCD/SVCD程度の画質であれば、まずまずのクオリティで視聴できる。画質的にも使い勝手的にも、こうした利用法が一番しっくりくるといえそうだ。



■ リビングルームPCに最適?

 QUOSYSシリーズの第1弾ということもあり、操作は非常に簡単で、機能もシンプル。パソコン内蔵型ということで、余計なスペースをとらないのも大きなメリットだ。

 実売11,000円程度と比較的安価に購入できるので、「パソコン上のメディアファイルをテレビで見たい」というユーザーには比較的手軽な製品の登場といえそうだ。カノープスでは、同様にメディアファイルをテレビ出力できるキットとして、「DigitalVideoPlayer」を発売している。しかし、DigitalVideoPlayerではMTVシリーズとの親和性を高めて、「キャプチャカードをより家電的な方向で利用する」といった方向で開発されていいるのに対し、SSC100では「とにかく簡単にテレビ出力」という開発姿勢がうかがえる。

 SSC100はダウンコンバータゆえ、DigitalVideoPlayerで行なえなかったDVDビデオの出力にも対応しており、より汎用的かつ気軽にテレビ出力が行なえる。それなりの品質でPCデスクトップも出力できるので、ビデオサーバーとして利用するパソコンをテレビ脇に設置し、テレビ出力や、簡単なWebブラウズやメールチェックなどを行なうといった用途には最適だろう。

□カノープスのホームページ
http://www.canopus.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.canopus.co.jp/press/2003/ssc100.htm
□製品情報
http://www.canopus.co.jp/catalog/ssc100/ssc100_index.htm
□関連記事
【6月6日】カノープス、パソコン内蔵型のスキャンコンバータ
-全ての操作がマウスで可能。選択領域のテレビ出力に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030606/canopus1.htm
【7月5日】今週見つけた新製品(AKIBA)
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【5月16日】【デバ】PC上の映像データをテレビで視聴
MTVとの連携で家電並みの操作感を実現
カノープス 「DigitalVideoPlayer」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030516/dev025.htm

(2003年7月18日)

[usuda@impress.co.jp]


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