■ クリエをお手軽ビデオウォークマンにしてみる クリエのオプションとして11月に発売された「PEGA-VR100K」は、クリエユーザーにとって今最も気になる製品だろう。 基本的な使い方は、クリエ上のアプリケーション「Video Utility」で録画日、録画時間、録画チャンネル、画質モードなどの設定をメモリースティックに記録。そのメモリースティックをVR100Kにセットすると、VR100Kが録画スタンバイに入り、設定に準じた録画を行なうというものだ。録画終了後のメモリースティックは、クリエ内のアプリケーション「MoviePlayer」で再生できる。 パソコンを介することなく予約から録画までのプロセスを終了でき、これまで面倒だった動画ファイルの変換作業やメモリースティックへの書き込みを省略できる。あくまでもメモリースティックへのテレビ録画に特化した製品といえ、これまでありそうでなかったコンセプトがユニークだ。
■ 構成はシンプル。30fps再生にも対応してほしかった
搭載チューナは地上アナログ(VHF/UHF/CATV)のみ。外部入力からの録画も可能で、コンポジット入力とアナログ音声入力を装備している。スルー用のRF出力はないが、コンポジット出力でTVチューナの受信映像のモニターも可能だ。 もっとも、単体ではメモリースティック内のファイルを再生できないため、外部入力からの録画をしないのなら、無理をしてテレビのそばに置く必要もない。チャンネルが正しく設定できているか確認したら、テレビとは別の部屋に設置するのも良いだろう。 対応メモリースティックは、メモリースティックPRO、メモリースティックPRO Duo、メモリースティック、セレクト付きメモリースティック、メモリースティックDuo、MGメモリースティック、MGメモリースティックDuo。対応するクリエは「PEG-UX50」、「PEG-NX80V」、「PEG-NX73V」、「PEG-TG50」、「PEG-NZ90」。このうち、UX50以外はMovie Playerのアップデートプログラムが必要になる。なお、2001年12月発売の「PEG-T600C」では録画したファイルを再生できなかった。
録画はMPEG-4 Simple Profileの「Movie Player」形式で行なう。録画モードはHQ(320×240ドット、384kbps)、SP(320×240ドット、216kbps)、LP1(160×112ドット、96kbps)、LP2(176×144ドット、64kbps)の4段階で、すべて15fps。
今回試したUX50は30fpsの動画再生に対応しているので、15fpsまでというフレームレートに多少の不満が残る。また、対応クリエのうち、PEG-TG50を除くすべてのディスプレイ解像度が320×480ドット(UX50は横画面の480×320ドット)のため、フル画面表示だと拡大表示になってしまうのが残念だ。 メモリースティックのサイズごとの録画時間は以下の通りとなる。
■ クリエがないと録画予約できない? クリエ側には事前に「Video Utility」を導入する必要がある。今回試したUX50には添付されておらず、VR100K付属のCD-Rからインストールした。ファイルサイズは130KB。 Video Utiltyでまず行なうことは、地域設定、受信チャンネル設定など。設定したメモリースティックをVR100Kのスロットに挿入すると、VR100Kに設定がダウンロードされる。 録画設定もVideo Utilityで行なう。設定内容は、録画の開始・終了時間、録画チャンネル、録画画質モードなど。このとき、録画の繰り返し(毎日/月~土/月~金/毎週)を設定でき、それぞれに上書きするかどうかを指定できる。 また、インターネットから番組表を取得するアプリケーション「TVscape」からも録画予約が可能。GigaPocketとの連携に用いられるソフトだが、ここではVideo Utilityへの入力を支援する。ただし、VR100Kで使うには最新のVer.1.3が必要。
なお11月19日に、パソコンからVR100Kの設定や予約が行なえる「ビデオレコーダー設定ツール」が公開された。これまでVR100Kはクリエなしでは使用できなかったが、これでモバイルムービー対応の携帯電話などでもVR100Kの利用が可能になる。
■ サイバー度は高いものの、眠気を誘うのがタマに傷? 実際にUX50を使い、録画した番組を戸外で視聴してみた。HQとSPは、仮想シルク(画面横のグラフィティ入力部)を閉じた状態で拡大すると、ほぼ全画面表示となる。画面をある程度離した状態でも視認可能で、たとえば、電車内でひざの上に載せた状態でもテロップ類をはっきりと確認できる。やはり画面はこれくらいの大きさがほしい。 ただし、拡大した場合、HQでもブロックノイズがかなり目立つ。スポーツ中継などの動きが激しい場面では、画面全体がブロックノイズに覆われて不快だ。また、白飛びも激しく、映画などをじっくり鑑賞するには向いていない。出勤前に録画した情報番組やニュースなどを通勤時に視聴する、という用途が一番しっくりくると思う。このところ早朝の情報番組を通勤時間の20分に合わせて録画し、毎朝地下鉄内で視聴している。画面左上に映る3時間も前の時刻表示が間抜けだが、様々なジャンルの情報を一通りチェックできることもあって、結構気に入っている。
一方、LP1やLP2の場合、拡大表示しても画面に大きな黒枠が残る。解像度の高い最近のクリエでは、もはや拡大しても何が映っているか判別すら難しい。テロップ類はつぶれ、出演者の顔も判別できない。残念ながらとても常用する気になれなかった。
また、これは私だけかもしれないが、電車内で動画を見ていると猛烈に眠くなることがわかった。15fpsという荒いフレームレートのせいかもしれないし、動画の視聴が完全に受動的な行為のためかもしれない。徐々に耐性が付いてはいるものの、試用開始から4、5日たった現在でも苦行が続いている。
バッテリ持続時間は思ったより良かった。フル充電の状態でHQの映像を拡大表示でリピートさせてみたところ、1時間2分で残量警告が表示された(画面輝度は最大、Bluetoothオン)。とはいえ、通勤・通学の行きと帰りに使うことを考えると、片道30分程度の再生時間では足りないという人も多いだろう。運用に当たってはオプションの拡張バッテリも考慮しなければならない。
■ 追加投資がネック。メモリースティックがもっと安ければ…… PDAで動画を持ち歩き、戸外で再生する――カタログでも派手に取り上げられている機能だが、再生品質やバッテリ持続時間などの問題から、いま1つ利用者に浸透していなかったのが現実だ。VR100Kなら、パソコンでのファイル変換やメモリースティックへの書き込みがない分、これまであきらめていた「モバイル動画生活」を習慣化できるかもしれない。 ただし、実際にレコーダ感覚で利用するとなると、「1枚は自宅で録画待機させておき、録画済のもう1枚を持ち歩く」という、メモリースティック2枚体制にしたいところ。しかも、大容量のメモリースティックが必要に。さらに拡張バッテリを追加するとなると、かなりの投資額になる。 たとえば、128MBのメモリースティック2枚を新たに購入したい場合、VR100K本体で約3万円、128MBメモリースティック×2で約14,000円、拡張バッテリで約13,000円。しめて約57,000円となる。なお、帰宅後の番組や出かける前の早朝番組を録画して持ち出せば、メモリースティックが1枚で済むためお勧めだ。 パソコンを介さずに利用できる利便性はVR100K独自のものだが、場合によっては、20GB HDD搭載のポータブルAVプレーヤー「PCVA-HVP20」(実売5万円前後)など、ほかの製品と比較検討するのも良いだろう。
□ソニーのホームページ (2003年12月3日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
|
|