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スタンド・スピーカー一体型の23V型液晶テレビ
ナナオ 「FORIS.TV」
 (SC23XA1)
発売日:3月15日
標準価格:236,000円


■ 第1弾はデザインコンシャスな23V型

SC23XA1

 パソコン用ディスプレイのナナオが液晶テレビを発売する――デルやHPなど、パソコン業界からの家電参入が話題となる昨今だが、2月5日に行なわれたナナオの発表も様々なメディアで大きく取り上げられた。なにしろナナオといえば、パソコン用や業務用のモニター分野で古くから知られた存在。デザインや出版など、各業界でその名が特別視されていたブランドだ。

 そのナナオが液晶テレビの新ブランド「FORIS.TV(フォリス)」を立ち上げ、3月15日に発売する。同社企画部の北拓朗氏によると、「造られすぎた画質への疑問、飾られすぎた音への抵抗、薄型だけを強調することへの疑問」を追求。同社が業務用モニターで培った画像処理技術を投入し、あくまでも自然な画質を求めたという。第1弾は23V型という中型サイズの「SC23XA1」。価格は1インチ1万円を切る236,000円となっている。

 特徴は、スピーカー内蔵のスタンドをディスプレイと一体化したデザインを採用したこと。良く似たコンセプトの製品として、これまでにもシアターアクオスなどが存在したが、どちらかといえば希少な部類といえる。機能面でのメリットとしては、ラックを購入する必要がない点と、画面サイズの割には大き目のスピーカーを搭載できることが挙げられる。反面、すでにあるラックや机の上に置くことは難しい。

製品発表会で展示されたSC23XA1

 さらに本機は、ディスプレイの下にDVDプレーヤーを内蔵している。DVDプレーヤーを内蔵したフラットテレビといえば、以前より松下電器などが製品化しているものの、主流とはいえない形態だ。しかし、テレビ、DVD、音楽CDを1台でまかなえる利便性は大きい。23V型という手ごろなサイズを考えると、リビングよりも、6畳間程度のパーソナルルームで威力を発揮しそうだ。

 本体には「映像のナナオ」のシンボル、「EIZO」ロゴが付いてる。静止画では定評のあるナナオだが、動画では違った技術と見せ方が求められる。今回は、テレビとしての実力を検証した。


■ スタンドは回転・伸縮が可能

側面

 直販がメインとなる本機の場合、ユーザーが設置作業を行なうケースが多くなる。開梱後の本体はディスプレイとスタンドに別れており、まずそれらを取り付けることになる。ディスプレイ部の重量は結構あるものの、背面に簡単な取っ手があるため、作業自体はそれほど難しくはない。取り付け後は、上下200mmの範囲で高さを変えられる。また、360度に回転させることも可能だ。

 組み立て後、多少のぐらつきが気になったが、円形の台座が重いため、それほど不安定ではない。説明書には転倒防止措置として、背面の取手にワイヤーなどを通し、壁面に設けたフックに引っ掛ける方法を推奨している。

 外観は、パンチングメタル風の前面が印象的だ。実際にはメタルではなく樹脂製だが、質感は高い。また、押し出しの強いインディゴブルーのカラーリングも斬新。なお、ブルーのほかに、ブラック、シルバーも選べる。

 スタンド背面にはケーブルカバーを取り付けられるので、すっきりした配線が可能。また、背面の入力端子パネルもカバーで隠すことができるなど、設置時のデザインに配慮している。

 液晶テレビの割にはディスプレイ部の奥行きが145mmと結構あるが、これはDVDプレーヤーを内蔵したことと、背面に据え付けられた大きめのエンクロージャのためだ。そのため、実物を見た際に、現在主流の薄型テレビのデザインイメージとは少し異なる印象を受けるかもしれない。また、円形の台座もそれなりに場所をとる。とはいっても奥行きが最大370mm、幅が544mmと比較的コンパクトなので、同サイズのCRTテレビや、大型パネル採用のフラットテレビに比べれば、置き場所に困ることは少ないだろう。

円形の台座 背面 台座後方のケーブルカバー

 チューナは地上アナログのみで、ゴーストリダクション機能もついている。地上デジタルチューナやBSデジタルチューナなどを増設する場合は、背面のD4入力に接続することになる。その場合、テレビラックとの組み合わせを考えたデザインではないため、チューナの置き場所に困るかも知れない。

 入力端子はD4、S映像、コンポジット、アナログ音声端子を1つずつ搭載。シンプルな利用法を前提としているためか、DVDプレーヤーを内蔵しているものの、多数の機器をつなげたい人には物足りなく感じるだろう。

 リモコンの入力切替ボタンは、「テレビ」、「DVD」、「ビデオ」(S映像/コンポジット)、「D端子」の入力ごとに設けられている。目的の入力までボタンを何度も押さなければならない順送り方式ではなく、ワンボタンで切替られるので便利だ。切替も瞬時。

入出力端子 リモコン

 アスペクト比モードは「フルサイズ」、「標準サイズ」、「パノラマ」、「ワイド」、「字幕ワイド」、「パノラマズーム」を選択可能。手動のほか、自動判別モードとして「信号判別」、「映像判別」を指定できる。

 そのほか、2画面表示機能(PinP、あるいはPsideP)、消音機能、静止画メモ機能、オフタイマーなどを装備。中型テレビとして他社に見劣りしない付加機能を備えている。

 なお、2画面表示はPinP、PsidePとも副画面のサイズを大/中/小に変更できる。また、PinPでは副画面の位置を右上/右下/左上/左下から選択可能。ただし、テレビとビデオ(S映像、コンポジット)、DVDとD4の組み合わせは指定できない。

PinP表示。左から大(1/2サイズ)、中(1/3サイズ)、小(1/6サイズ)
PsideP表示。左から大(1/2サイズ)、中(1/3サイズ)、小(1/6サイズ)

 DVDプレーヤー部についても、通常の用途に過不足はない。リモコンに字幕言語、音声言語、アングルの独立ボタンを搭載し、早送り/早戻し、スロー再生/スロー戻しはそれぞれ4段階。一時停止時に「一時停止ボタン」を押すことでコマ送りもできる。ただし、民生用レコーダで記録したVRモードのディスクや、MP3を記録したCD-R/RWの再生には対応していない。

 音楽CDの再生機能もある。この場合、テレビを見ながら音楽CDを再生することも可能だが、2画面表示とCD再生は同時に利用できない。

 リモコンはカーソルボタンの中央をくりぬいた大胆なデザインを採用。編集部では穴に指をかけ、西部劇のガンマンのようにクルクル回す人が多かった。くりぬかれた部分を持つことで、さっと取り上げやすいのが利点。その代わり、決定ボタンがカーソルの中央にないことに違和感が残る。また、良く使う音量やチャンネル順送りボタンはもう少し大きくても良かったと思う。


■ 画質と音質

 液晶パネルの解像度は1,280×768ドット。D4入力を使ったハイビジョン映像の表示にも対応する。パネルの製造元は明らかにされていないが、カタログやプレスリリースによると、「IPSモードを備えた国産パネル」と記されている。視野角は上下左右170度となっており、よほど横斜めから覗き込まない限り、色調の変化は感じられなかった。

 画質調整は「映像モード」で行なう。プリセットとして「標準」、「ソフト」、「ダイナミック」、「お好み」を選択可能。「お好み」はいわゆるユーザー設定で、「明るさ」(0~100)、「黒レベル」(0~100)、「コントラスト」(0~100)、「シャープネス」(-7~+7)、「色の濃さ」(-50~+50)、「色合い」(-50~+50)といった基本項目を調整できる。

映像設定 映像設定(詳細設定) イコライザー

 さらに「詳細設定」メニューに入ることで、「黒伸張」(オン/オフ)、「デジタルNR(ノイズリダクション)」(オフ/弱/中/強)、「色温度」(高/中高/中/中低/低)、「映像ガンマ」(標準/ダーク/ハイライト)を設定できる。

 デジタルNRの効力は高く、DVDビデオなどの暗部ノイズを低減できる。強にするほど階調が失なわれるが、一部のプレーヤーに見られるように、大きな破綻をきたすほど極端ではない。また、映像ガンマ中のダークは暗部階調を持ち上げ、ハイライトは明部を階調を重視した設定になる。なお、標準のガンマは2.2に設定されている。

 また、IP変換処理については、詳細設定の中で「自動」、「動画1」、「動画2」、「静止画」を指定できる。動画1がフィルム、動画2がビデオ映像用だ。

 中型テレビにしては画質関連のパラメータが豊富で、設定ステップも細かい。パネルそのものの能力はともかく、追い込みがいのあるディスプレイといえるだろう。また、「お好み」はテレビ、ビデオ、DVD、D端子入力ごとに設定を保存できる。

 内蔵プレーヤーを使ったDVDビデオの画像は、にごり感の少ないさらっとした印象。液晶テレビ特有の輪郭の弱さは感じられるが、コントラストや色の濃さを下げることで気にならないレベルまで低減できる。また、設定がうまくはまったときの階調と解像感は十分満足できるレベル。「自然な画を目指した」というナナオの主張も納得できるものだった。ただし、プリセットの標準、ソフト、ダイナミックは今ひとつ。また、もう少し白ピークやコントラストが高まれば、調整幅が広がると思う。

 気になるIP変換や動画のレスポンスについても、現在市場に出ている中小型の液晶テレビと遜色ないレベル。さすがにCRTに比べると、地上アナログのスケーリングの甘さや、動画の残像ボケが気になるものの、他社の同価格帯の液晶テレビに対して、とりたてて見劣りしているわけではない。

 また、地上デジタルチューナを接続し1080iを表示してみたところ、地上アナログやDVDビデオとは別物と思えるほどきれいな映像が楽しめた。NTSCでは使えなかったダイナミックも、放送内容によってはしっくりくる。また、コントラストを自然なレベルまで高めても破綻は少ない。このテレビが本領を発揮するのはHD映像だろう。

 音質の設定項目も多い。まず、高音/中高音/中音/中低音/低音の5バンドイコライザー(各-6~+6)を備えている。さらに、中高音を補い位相補正を行なう「BBE」も適用可能。サラウンド機能も搭載しているので、DVDビデオのサラウンド感を本機のスピーカーだけで味わえる。もちろん、バーチャルサラウンドなので、リアルスピーカーを使ったサラウンドの臨場感とは比較にならない。それでも、横方向への広がりは感じることができた。

スピーカーユニットは10cm径のフルレンジ ディスプレイ上端に達する2.7lのエンクロージャ

 スピーカー自体の音質も、中小型のテレビにしてはF特や解像度のレベルが高い。さすがにLFEに関しては物足りないが、光デジタル音声出力端子があるので、AVアンプを増設するのも手だろう。できればサブウーファ端子が欲しかったところだ。


■ まとめ

 サイズ的にも、リビングだけでなくパーソナルルームやキッチンなど自由な設置が考えられる製品。たとえば、窓際において、部屋の中にいるときは内側、テラスに出ているときは外側に向けるといった自由度がある。テレビとDVDプレーヤーのリモコンが一体化していることもあり、家族にとって操作も分かりやすい。ただし、画面の高さを考えると、基本的にソファーや椅子に座って視聴することを前提としているようだ。

 残念なのはPC入力がない点。これはナナオの「家電宣言」と受け取るしかない。個人的には地上デジタルチューナを搭載していないことが不満。しかし、2台目のテレビ+DVDプレーヤーとして魅力を感じた。

 直販がメインになるが、ナナオのショールームのほか、ヤナセやカッシーナの一部店舗でも常設展示している。デザインが気に入れば、また、デザインが部屋に合うようなら、最初のフラットテレビとして検討しても良いだろう。


【SC23XA1の主な仕様】
画面サイズ 23V型(対角584mm)
解像度 1,280×768ドット
明るさ 450cd/m2
視野角 上下左右170度
搭載チューナ 地上アナログ(VHF 1~13ch、UHF 13~62ch、CATV C13~C63ch
対応メディア DVDビデオ、DVD-R、音楽CD、CD-R/RW
スピーカー 10cmバスレフ型フルレンジ×2
入力端子 D4、S映像、コンポジット、アナログ音声
出力端子 光デジタル音声、ヘッドフォン
外形寸法(幅×奥行き×高さ) 544×370×873~1,073mm(スタンド含む)
重量(スタンド含む) 19.5kg

□ナナオのホームページ
http://www.nanao.co.jp/
□製品情報
http://foris.tv/
□関連記事
【2月5日】ナナオ、DVDプレーヤー一体型23V型液晶テレビ
-今夏には地デジチューナ内蔵の大画面製品も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040205/nanao.htm

(2004年3月11日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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