■ ほぼ全フォーマットに対応 PC周辺機器メーカーも、AV環境作りをテーマに、いろいろな製品をリリースするようになった。技術の進歩には目的が必要なわけだが、最近のPC業界はそのターゲットをAVの世界に求めているようである。 展開の早いPC系の様々なフォーマットに対応したネットワークプレーヤーは、もはや家電メーカーよりもPC周辺機器メーカーの十八番となりつつある。このジャンルにはアイ・オー・データ、バッファロー、バーテックス リンク、長瀬産業など多くのメーカーがひしめき合っているが、現状はどの製品もできることが似ている。 それもそのはずで、使用しているデコーダがみんな同じSigma Designsのチップなのである。去年まで使用されていた「EM855x」シリーズは、MPEG-1/2、DivX(XviD)の再生をサポートしていたが、今年に入って代替わりし、新しい「EM8620L」ではそれに加えてWMV、WMV HDをサポートするようになった。
したがってネットワークプレーヤーもこのチップの量産化に合わせて、ほぼ一斉に代替わりしてきたというわけだ。そこで今回は同チップを搭載したモデルとして、今月16日に発売されたバッファローの新LinkTheater「PC-P3LAN/DVD」をテストした。
■ 豊富な出力端子と再生フォーマット まず外観から見てみよう。正面から見ると、まったく普通のDVDプレーヤーにしか見えない。センターラインのミラー部は、左右にも少し出っ張っており、デザイン的にすっきりしていた前モデルから比べると、ちょっとごちゃごちゃした印象だ。ボタン類は大きめで、かなりしっかりしたクリック感がある。
右側にはUSB 2.0端子があり、ゴムカバーで保護されている。このポートはUSB HDDがバスパワーで接続できるように、電源部が強化されているという。推奨モデルは、同社サイトの製品スペックに情報がある。その左側に空いている小さな穴は、謎だ。本体にはデザインとして特筆すべき要素は少ない。
背面を見てみよう。映像出力はコンポーネント、Sビデオ、コンポジット、D4端子の4種類。前者3つまでは台湾製DVDプレーヤーなどでよくある仕様だが、D4端子までがあるのは、日本の市場に合わせたものだろう。 音声出力はアナログLR、同軸デジタル、光デジタルの3系統。映像・音声とも複数出力されるわけではないが、種類が豊富なので、現状のシステムに組み込む分には困らない。 ネットワーク端子は100BASE-TXで、無線LANは内蔵されていない。ここが競合製品に対してマイナス要因だが、バッファロー自体が無線LANでシェアを取っている会社なので、そのうち無線LAN搭載製品が出てくる可能性は高い。
リモコンも見てみよう。シルバーを基調としたバー型のもので、ボタン類が大きく飛び出している。文字は若干小さいものの、すべて日本語表記となっており、認識性は悪くない。
面白いのは赤外線送信部で、リモコン本体から水平ではなく、若干下に折れ曲がった形になっている。さらに裏面から見ると、LEDが飛び出したようなデザインになっている。 見た目には違和感があるものの、これは意外に実用的だ。リモコン操作するときに、わざわざ本体に向けてボタンを押すのではなく、自分の顔と平行に持った状態でボタンを押してもちゃんと反応する。リモコンのボタンがもっとも見やすい位置で押してもちゃんと操作できるのは、アイデアとしてなかなか面白い。 次に、再生可能フォーマットを整理してみよう。再生可能なディスクとしては、DVD-Video、ビデオCD、SVCD、CDDAの4種類。DVD-Videoは、VRフォーマットには対応していない。なお同社のサイトには、対応コンテンツとして「DVD-Audio」の文字も見えるが、わずかに期待しながら実際にDVD-Audioのメディアを挿入してみたものの、再生できなかった。再生可能ファイルフォーマットは、オーディオがMP3、WMA、AAC、Ogg、WAVの5種。むろんDVDやMPEGが再生できるので、潜在的にはAC-3やdts、MPEG-1 Layer1/2も再生可能である。WMAにはハイエンドコーデックとして、「Windows Media Audio9 Professional」があるが、これには対応していない。 映像のほうは、動画がMPEG-1/2、DivX(XviD)、RMP4、WMV9(HD含む)、静止画がJPEG、GIF、TIF、BMP、PNGとなっている。なおWMV9 HDは最大解像度が1,280×720ドット、すなわち720pまでとなっており、1,080iには対応していない。だが静止画のほうは、JPEGならば最大で2,048×1,532ピクセルまでとなっており、1,080iの解像度を超える。 このあたりの仕様は、EM8620Lで対応しているフォーマットということになる。同チップを使った製品なら、対応状況も同じと考えていいだろう。
■ NASを使ってノンPC再生 では早速映像を再生してみよう。とはいうものの、LinkTheaterのようなネットワークプレーヤーは内部にストレージを持たないため、コンテンツはすべて外部から供給するしかない。方法としてはCD/DVDメディアか、ネットワーク経由のPCやNAS、新しい手法としてはUSB接続のHDDやメモリカードといった選択肢がある。 DVDやUSB接続HDDの場合は、ある意味LinkTheaterにストレージを直結してしまうわけで、方法としては簡単だ。だがストレージに見たいコンテンツを仕込んでおかなければならないという点を考えると、ネットワーク対応の面白みはない。 そうなるとやはりPCかNASを使うということになる。ネットワーク経由でコンテンツを見る場合、PCやNAS側でサーバーソフトを常駐させる必要があるわけだが、相手がPCならどうということもない。しかしNASが相手では、組み込みLINUXと格闘することになるため、なかなかやっかいな作業だ。 しかし同社製のNAS、LinkStationシリーズであれば、本製品付属のCD-ROMからファームウェアをアップデートするだけで、ほとんどユーザーは何もせずにメディアサーバーとして使えるようになる。今回はこの方法で試してみよう。 LinkTheaterのログインページには、DVDメディアを始めアクセス可能なサーバーが表示される。ここでは2番目がLinkStation(NAS)、3番目がPCとなっている。2番目のNASを選ぶと、LinkStation内のサーバーソフトに接続して、GUI画面を表示する。動画、音楽、写真の3カテゴリだが、同様のボタンがリモコンにもあり、これを押すことでそれぞれのモードに切り替わる。
相手がPCの場合は、サーバーソフトで各カテゴリルートフォルダを決められ、リモコンのボタンを押せば同時にそれぞれのルートフォルダにジャンプする。だがLinkStation側のサーバーソフトではそこまでの細かい設定はできないようで、全体のルートが1つ決められるだけだ。
動画のフォルダに移動すると、内部の映像ファイルが閲覧できる。実際にこれらのファイルはDivXとWMVが混在している状態なのだが、拡張子やアイコンなどでファイルタイプを識別する方法はない。気にしなくてもOKということなのだろう。
試しにWMVにエンコードした動画を再生してみたところ、DivXなどとまったく変わりない。早送りなどのトリックプレイでは、DivXが最初にインデックスを作成してから早送りが始まるのに対して、WMVではボタンを押すとすぐに早送りが開始される。このあたりに、ファイルフォーマットの構造の違いが現われている。
■ HDはどうか
WMV HDが再生可能ということで、当然HD対応テレビに接続するケースもあるだろう。LinkTheaterでは、映像出力は720pや1,080iにも設定可能で、メニュー画面も高解像度表示に切り替えることができる。D3あるいはD4端子付きのテレビならば、メニューも精細画面で操作することができるわけだ。またEM8620Lには、SD解像度の映像をHD解像度にアップコンバートする機能もあるので、HD対応テレビでもSD映像を画面いっぱいに拡大して表示させることができる。
では本機の目玉とも言える、WMV HDの再生を試してみよう。とはいってもHDのソースなんてそう簡単に転がっているわけではないので、今年のCESでMicrosoftが配布されていた、「WMV HD Sampler」というDVD-ROMを使ってみることにした。
このWMV HDファイル、PCでは再生条件が非常に厳しく、720pのファイルは最低でもCPU速度が2.4GHz以上、1,080iに至っては最低でも3.0GHzという重さである。筆者手持ちのPCで、もっとも高速なのがPentium4 2.8GHzなのだが、720pのファイルはそれでも時々ひっかかって、スムーズな再生は難しい。
このDVD-ROMをPCにマウントして、LinkTheaterで再生させてみたところ、720pの動画はまったく引っかかることなく、非常にスムーズに再生できた。さすがハードウェアデコードの威力である。ただしWMV HD Samplerは、オーディオがWindows Media Audio9 Professionalでエンコードされているため、残念ながら音が出ない。試しに1,080iのファイルを再生しようとしたところ、720p以上のファイルはサポートしないというエラーが表示された。
なお今回の画面キャプチャは、すべて低解像度モードの480i出力をキャプチャしている。今はHD画像をラインキャプチャする手段がないからだ。今後のビデオ製品のレビューでは、このあたりで苦労しそうである。
■ 総論 なるほどSigma DesignのEM8620Lを使えば、720pのWMV HDのソースは快適に再生できるのはわかった。だが今後、そのWMV HDのソースをどうするのかという問題が残る。 もっとも身近なHDソースはデジタル放送だが、ご存じのようにコピーワンスであり、せいぜい解像度を落としてのムーブが許されている程度では、WMV HDの出番はない。また次世代メディアと称されるブルーレイ、HD DVDではWMV HDがサポートされているが、それはメディアと完全に一体でなんらかの著作権保護機構がかけられているだろうから、リッピングしてLANに流せるわけではない。 可能性としては、自分でHDVカメラで撮影した映像を、WMV HDにエンコードするということも有り得る。だが720pで撮影できるのは、現状コンシューマではビクターの「GR-HD1」のみで、先日鳴り物入りでデビューを果たしたソニーのHDV「HDR-FX1」は、HD解像度では1,080iしかサポートしていない。 米国では、WMV HDを使って映像配信を行なおうとする動きはある。その場合は、最初から放送が関係しないコンテンツであるため、インターレースではなくプログレッシブの720pがメインとなる可能性は高い。だが仮に映画レンタルのような商用コンテンツだとすれば、オーディオのほうもマルチチャンネル対応のWindows Media Audio9 Professionalが採用される可能性も高く、これも現状の仕様では対応できないことになる。 廉価な装置でHD動画が再生可能という、技術としての可能性は高く評価するが、どうも現状のコンテンツのあり方と製品がうまくかみ合ってこない感じだ。少なくとも今期のネットワークプレーヤーは、DivXとWMV両対応プレーヤーという用途をメインに考えていくことになるだろう。
□バッファローのホームページ (2004年9月22日)
[Reported by 小寺信良]
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