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第172回:E-MU音源の集大成「Proteus X」
~ 最高のソフトサンプラーが18,000円で! ~



Proteus X

 クリエイティブメディアからCreative Professionalブランドの製品が続々と登場している。そんな中、先日発売されたのは「Proteus X」という製品。DTM系の人、またシンセサイザ好きな人なら、おや? と思うこの製品名。そう、あの音源モジュールProteusが新たな形で帰ってきたのだ。

 しかし、腑に落ちないのがクリエイティブの価格設定。10万円くらいに設定したほうが売れるように思うのだが、たったの18,000円弱。こんな値段では、かえって誤解を生むようにも思う。そんなとんでもない製品、Proteus Xを紹介しよう。


■ 機能を考えると安すぎる?

 Creative Professionalブランドにおいて、これまで「E-MU1820m」を筆頭に、「E-MU1820」、「E-MU1212」、「E-MU0404」とさまざまなバリエーションのオーディオカードをリリースするとともに、「Emulator Xソフトウェア」という、Emulatorのソフトウェア版も発売してきた。Emulator Xはオーディオインターフェイスとのバンドルパッケージもラインナップしているが、今度はProteus Xという製品が登場してきた。

E-MU0404

 これは、「Proteus Xソフトウェア」というソフトサンプラーとオーディオインターフェイスである「E-MU0404」を組み合わせたパッケージだ。Proteus Xソフトウェアというのはプロ御用達のMIDI音源Proteusシリーズ(Proteus 1/2/3、VintageKeyシリーズ、Protues2000など)をソフトウェアで完全に再現するとともに、プレイバックサンプラーとして多彩な機能を搭載した、まさにE-MU音源の集大成。

 すでに生産は中止されているが、Proteus2000は現在でも中古市場で7、8万円で取引されているようだが、このProteus2000に用意されていた1,024の音色すべてがそのまま収録されているのに加え、数多くの音色が入っているのが大きなウリ。以前EmulatorXで紹介したGigaPiano対抗のピアノ音源などを含め2GB(CD-ROM4枚分)の音色データが用意されているのだから、それだけでも何万円もの価値があるといっても過言ではない。

 もちろんすべての音色をチェックしたわけではないが、どれもかなり使える音で、音を鳴らすだけでも楽しくなってくる。そして、ライブラリだけでなく、この音源そのものがあまりにも強力なのだ。この音源部分については、これからもう少し詳しく紹介するが、今あるプレイバック型のソフトサンプラーとしては最強といっても過言ではない。

 そんなすごいソフトとともにE-MU0404という24bit/96kHz対応で4IN/4OUTのオーディオインターフェイスまでセットとなっている。そもそもE-MU0404自体の価格設定も安すぎると思っていたが、この実売価格18,000円程度との差額を考えれば、Proteus Xソフトウェアは3,000円弱。どう考えても、その実力・性能の価格のバランスが悪すぎる。安いことはいいことではあるけれども、世の中に誤解を与えるだけのようにも思うのだが……。


■ スタンドアロン/VSTインストゥルメントで動作可能

 話を戻して、Proteus Xソフトウェアについて詳しく見ていこう。これは完全にソフトウェアとして動作するソフトサンプラーであり、スタンドアロンでの動作もするし、「Cubase SX」などのDAWで利用可能なVSTインストゥルメントとしても動作する。

スタンドアロンで使用する際は、E-MU0404のミキサー部を利用する

 またスタンドアロンで利用する場合は、E-MU0404などのオーディオインターフェイスとASIOドライバを利用して非常にうまく連携がとれる設計となっている。具体的には、E-MU0404などがハード的に装備しているエフェクトをうまく利用できる。E-MU0404のミキサー部である「PatchMix DSP」を上手に使うというわけだ。

 いずれのモードでも基本的には同機能ではあるが、とりあえずスタンドアロンモードで起動すると、音源モジュールのパネルのような画面が登場してくる。Emulator Xにも似ているが、こちらはサンプリング機能は持たず、あくまでもプレイバックサンプラーとしてのみ動作する。もちろんデータ的にはEmulator Xのものと完全互換であり、バンドルされているライブラリも基本的に同じで共通なのだが、実はProteus Xにバンドルされているもののほうが、より強力なものになっている。

 というのは、Proteus Xにはソフトウェア上で起動するエフェクトが搭載されており、各MIDIチャンネルごとに自由に設定できるのだ。そのため、このエフェクトを利用したチューニングが施されている。Emulator X側もバージョンアップが図られて同じエフェクトが使えるようになっているとのことだが、これによりさらに音色作りの自由度が高まった。ただし、このエフェクトはE-MU0404などに搭載されたDSPで動作するものとは異なるため、CPU負荷はかかる。

スタンドアロンモード時のメイン画面。プレイバックサンプラーとしてのみ動作する ソフトウェア上で起動するエフェクトをMIDIチャンネルごとに設定できる


■ 音作りもとことん楽しめる

 シンセサイザ機能は超がつくほどの強力さ。1つのプリセットサウンドは複数のVoiceから構成され、各Voiceでは51種類も用意された「Z-Planeフィルタ」、3つの「6ステージエンベロープジェネレータ」、2つのLFOを備えており、それぞれのコントロールが可能。これだけパラメータが多いと何をどう扱っていいのかちょっと戸惑うほどだが、本当に自由に音作りができるようになっている。

1つのプリセットサウンドは複数のVoiceから構成されている Z-Planeフィルタ Z-Planeフィルタ、6ステージエンベロープジェネレータ、LFOなどは個別にコントロール可能

 USB-MIDIキーボードなどを使えば、リアルタイムに演奏できるので、実際にプリセットサウンドを読み込んだ後、これらのパラメータを変えながら鳴らしてみたが、かなり面白い。そして、これらのパラメータをフィジカルコントローラーに簡単に割り当て可能というのも嬉しいところ。試しに手元にあったEDIROLのPCR-30を接続し、コントロールチェンジ情報を設定すると、即使えるようになった。ほかのコントローラーでも簡単に使えるはずだ。これで音を作りながら演奏していたら、時間が経つのも忘れてしまう。

パラメータはフィジカルコントローラーに簡単に割り当てられる

マニュアルに記載されたエフェクトのダイアグラム

 また、先ほども触れたがエフェクトのほうもすごい。マニュアルを見るとエフェクトのダイアグラムが載っているが、これを見ないとどうなっているかわかりづらいのだが、Proteus X自身が持っているソフトウェアエフェクトが「FX A」、「FX B」に位置付けられるもの。それに対してAUXが1~3まで出せるようになっており、これをASIOで振り分けるため、E-MU0404側の各バスにエフェクトを設定しておけば、それぞれ組み合わせて利用できるわけだ。

 ここまで使いこなすのは初心者ユーザーにとってはかなり難しいが、音作りを楽しみたいという人にとって、これほどすごいものはないだろう。ソフト、ハード含めてほかに探してもまず見当たらないはずだ。各パラメータを解説していたらきりがないが、ぜひ一度使って試してみてほしい。

 なお、すでにE-MU1820mなどのオーディオインターフェイスを購入していた人のために、Proteus Xソフトウェアのみ「Proteus X ソフトウェアアップグレード」として12,800円で12月中旬から販売される。ソフトウェアだからオーディオインターフェイスなしで購入して使おうと思う人もいるかもしれないが、それはできない。Proteus X自体は完全なソフトウェアだが、E-MUのオーディオインターフェイスがあるかどうかを確認してから起動するようになっている。つまり、コピープロテクトのためのドングルとしてもオーディオインターフェイスが機能しているのである。

 そのほかオプションとして専用サウンドライブラリー「Vintage X Proシリーズ」も登場する。たとえば「Vintage X Pro Volume 1」は、ARP 2600、Roland JD800、Jupiter 8、Mini Moog……といったビンテージシンセ音色を収録、「Volume 3」は、Hamoond B3、YAMAHA CP-70、Rhodes Electric Piano……といったビンテージキーボード類を収録したものとなっている。

Vintage X Pro Volume 1 Synthesizers Vintage X Pro Volume 2 Synthesizers Vintage X Pro Volume 3 Keyboards


■ バンドルソフトが変更になる可能性も

Cubase LE

 最後にもうひとつ。このProteus XにはE-MU0404が丸ごと入っているため、E-MU0404にバンドルされているソフトも同梱されている。「Cubasis VST」や「WaveLab Lie」などだが、今後ここにちょっと変化が出てくるかもしれない。というのはSoundBlaster Audigyシリーズなどでも同様のソフトがバンドルされていたが、最新のAudigy4には「Cubase LE」というものがCubasis VSTの代わりにバンドルされるようになったからだ。

 クリエイティブメディアではこの辺の事情について明言していないが、Cubase LEは、Cubase SX(初期バージョンのタイプ)の機能制限版にあたるもの。ユーザーインターフェイスも、またDAWとしてのオーディオ機能なども格段に向上しているから、ぜひ早くこれに切り替わってくれることを期待したいところだ。

□クリエイティブのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=11894
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(2004年12月13日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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