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フラットパネルディスプレイ関連の展示会「第2回国際フラットパネルディスプレイ展(Display 2006)」と、研究開発・製造技術展の「ファインテック・ジャパン」が19日、東京ビックサイトで開幕した。会期は4月19日から21日まで。 初日の午前中には「FPD産業を勝ち抜くためのビジネスモデル」と題して基調講演が行なわれ、シャープの液晶事業を統轄している片山幹雄常務取締役と、パナソニックAVCネットワークス社役員で上席副社長の森田研氏、ソニーのテレビ事業本部長の井原勝美副社長が登壇。薄型テレビの事業戦略や今後の展望について語った。
■ シャープの考える10年後のテレビ
シャープの片山常務取締役は、液晶テレビの世界市場でのサイズ別需要について「2006年から30型や40型の需要が大幅に伸長するだろう」と予測。解像度の面では国内市場での販売実績で、2005年度下期に38%だったフルHD(1,920×1,080ドット)の割合が、2006年上期の見込みでは約60%になると説明。「2006年下期は100%を目標にしていきたい」という。
さらに、4月から本放送がスタートしたワンセグ放送や、次世代DVDソフトなどを例に挙げ「コンテンツが多様化することで、今後も液晶化、大画面化、フルHD化を要因としたテレビ市場の拡大は続く。シャープはそこで開拓者として、業界を牽引していきたい」と語った。
各工場の生産能力については、亀山工場が32型換算で2005年10月に約40万台、2006年3月に約48万台。今後については「台湾メーカーからの外部調達も行ない、需要の増加に応えていく。ただし、国内向けの製品はこれまで同様に亀山製パネルを搭載したモデルがメインになる」という。 亀山第2工場では、40~50型パネルをメインに生産。45型換算で2006年10月に月産12万台を予定。2007年3月には24万台、その後も2008年頃までに72万台まで増産。「それ以降の生産には新工場が必要になるだろう」と予測。海外での生産に関しては、4月13日に発表したポーランド共和国、トルン市での工場建設計画を改めて紹介した。
最後に片山氏は、「放送の多様化が生んだテレビの新しい視聴スタイル」や、「大型化/フルHDで映像の窓としてのテレビ」というキーワードを踏まえ、2006年を「21世紀のテレビ革命のはじまり」と表現。さらに「10年後のテレビとして、等身大サイズを越えた超大型ディスプレイが出現するだろう」と予測。壁や住宅と一体化し、あらゆる情報を一元化できるという「情報ディスプレイ」や、壁一面に映像を表示し、新しい空間を創造する「環境ディスプレイ」など、これまでのテレビの概念を越えた、未来のテレビ像を描いた。
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■ 松下は103型のプラズマテレビを国内販売
続いて登壇したパナソニックAVCネットワークスの森田氏は、30型以上の大型テレビの需要の増加や、テレビの高付加価値化のためにも大型化が必要であると説明。液晶やPDP、CRTなど、各デバイスの特徴と弱点も説明し、「大画面では消費電力や色再現性、高速応答性に優れるPDPに利点がある」と語る。
さらに、2006 International CESで発表され、Display 2006で国内初展示をしている103型のプラズマテレビを紹介。米国では2006年内の発売がアナウンスされていたが、「国内でも2006年下期に発売を予定している」という。価格などは未定。パネル解像度は1,920×1,080ドットで、ドットピッチは1.182×1.182mm。画面サイズは2,270×1,277mm(幅×高さ)。コントラスト比は3,000:1。50型の約4倍のサイズとなっている。
生産体制では、2007年に尼崎に第4工場を建設。2006年5月に着工し、2007年7月の稼動開始を予定。総投資額は1,800億円。なお、第3工場は現在月産約30万台で、今後42万台に増産。第4工場を合わせると96万台まで増加し、年生産で1,000万台以上を目指す。
なお、海外向け製品についてもパネル生産は国内で行なうが、セットの組み立ては欧州や北米の工場で実施。来月にはシンガポールにも組み立て工場を建設し、東南アジア向けテレビを生産するという。
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■ ソニーはS-LCDの生産ラインに約280億円投資
ソニーの井原副社長は、テレビ事業の不振が響いて2005年度の業績が悪化したことを振り返り、「テレビの復活なくして、ソニーの復活なし」という中鉢社長の言葉を説明。不振の原因について、ブランド面から説明を行なった。 井原氏はシャープと松下の講演を振り返り「シャープは“AQUOS”で吉永小百合、松下は“ビエラ”で小雪と、各社新しいテレビのブランドイメージ戦略が上手い」と評価。「反面、ソニーはCRTで成功した“ベガ”を引きずったまま、薄型テレビの戦いを始めてしまった」と説明。 「BRAVIAというブランドを新設したのは、ベガのままではどんなに良いテレビを作っても“ソニーの新しいテレビが登場した!”という感覚に乏しいと判断したため。当初は社内からも反発があったが、現在では疑問を持つ人はいない」という。ブランド戦略の方向転換の甲斐もあり、世界市場での金額ベースのシェアではBRAVIA導入前の2005年上期で9%だったが、2005年下期は19%まで上昇したという。
さらに商品力を高めるため、大画面化と差異化技術の開発に注力。「液晶の高画質化技術では開発の着手が遅れてしまったが、現在では力をつけてきた。だが、まだまだと認識している。ソニーならではの技術を開発していきたい」と決意を述べた。 また、製品ラインナップとしては、北米で大きな支持を集めているリアプロジェクションテレビにも注力。北米における40型以上のデバイス別市場構成比では、CRT式のプロジェクションテレビが2004年度の50%から2005年度には20%に減少。代わって、SXRDや3LCDの液晶プロジェクションテレビが40%に増加。液晶テレビと合わせて、2006年度も大きな比率を占めるという。 生産体制については、同日に発表した韓国サムスン電子との合弁会社S-LCDの生産体制強化を解説。第7世代液晶パネルの生産能力を拡大に向け、約280億円の設備増強投資を自社調達にて行なうことを明らかにした。これにより、2005年の月産6万枚から、2006年7月までに月産7万5,000台、今回の投資で約1万5,000枚増加し、2007年2月頃に月産9万枚の体制を確立するという。
さらに、約20億米ドルの投資をサムスンとソニーの2社で分担して出資し、第8世代液晶パネルの製造も進めており、2007年秋には量産を開始。生産能力はガラス基板ベースで月産5万枚になるという。井原氏は「2007年秋も可能なかぎり前倒ししたい。また、他社からのパネル供給も検討し、今後の需要に応えていきたい」とした。
□Display 2006のホームページ
(2006年4月19日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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