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耳に合わせた音になるAKGヘッドフォン、500万円以上の超弩級システムなど

 東京・中野のフジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「秋のヘッドフォン祭2016」が開幕。10月22日(土)と23日(日)の2日間、東京・中野の中野サンプラザで開催されている。入場は無料。ここでは、6階と14階の展示から、AKGやオーディオテクニカ、ソニーブースなど注目の展示をレポートする。

AKG「K872」

ハーマンインターナショナル

 ハーマンのブースでは、AKGブランドの密閉型モニターヘッドフォンの最上位モデル「K872」(10月28日発売/オープンプライス/直販188,000円)が注目を集めている。2014年に発売したリファレンス・オープンエア・モニターヘッドホン「K812」に搭載した最新技術や音質を継承しつつ、ハウジングを密閉型にしたモデルだ。

 また、その隣には未発表の金色のヘッドフォン「N90」が展示されている。近日、限定数を発売する予定で、詳細は後日発表されるという。価格も未定だが、前述の「K872」よりも少し低価格になる見込み。

「N90」

 最大の特徴は、装着したユーザーに合わせた音質に変えるオートキャリブレーション機能を備えている事。装着後にボタンを押すと、トーン音が鳴り、ヘッドフォンがマイクでそれを集音し、耳の形状を計測。それを踏まえた再生音にチューニングして再生してくれるというもの。

金色のボタンがオートキャリブレーション用ボタン

 ハウジングにはダイヤルが埋め込まれており、片側を回すとボリューム調整、反対側のハウジングを回すと低音の調整ができる。サウンドステージの切り替えも可能で、ユーザー好みの音に積極的にカスタマイズができるヘッドフォンになっている。

ハウジングにはダイヤルが埋め込まれ、音量調整などが可能

FiiO

 オヤイデ電気のブースでは、FiiOのハイレゾプレーヤー「X1 2nd generation」と、ポータブルヘッドホンアンプ「A5」を展示。どちらも発売日や価格は未定だが、「X1 2nd generation」は「X1と大きく違わない見込み」だという。

X1 2nd generation

 名前の通り「X1」の後継機種で、一回り小さく、薄くなっているのが特徴。操作面でも、中央のダイヤルがタッチパネルに変更されるなど、大幅に進化している。

左からX1 2nd generation、X1

 ハイレゾデータは、PCMが192kHz/32bitまで対応。DSDの再生はサポートしていない。DACはTIのPCM5242を採用。ストレージメモリは内蔵しておらず、256GBまでのカードが利用できるmicroSDスロットを1基搭載する。ヘッドフォン出力は90mW(16Ωm)。適応インピーダンスは16~100Ω。

 ポータブルアンプの「A5」は、E12、E12Aの後継機種。E12Aのオペアンプ「MUSES02」、バッファ「LME49600」という組み合わせをそのまま採用。その他のパーツを見直し、歪率の低下や最大出力電圧の向上などを実現。サウンドもE12、E12Aの“いいとこどり”になるという。

ポータブルアンプの「A5」

オーディオテクニカ

 ブース内の目玉は、11月25日に発売されるBluetoothヘッドフォンの「ATH-DSR9BT」(実売6万円前後)、「ATH-DSR7BT」(33,000円前後)だ。どちらも、デジタル信号をデジタルのまま、ユニットまでダイレクトに伝送して再生する「Dnote」技術を採用、Bluetoothで受信したデジタル信号を、そのままユニットに入力する「ピュア・デジタル・ドライブ」が特徴だ。

Bluetoothヘッドフォンの「ATH-DSR9BT」

 Bluetoothのコーデックにもこだわり、SBC、AAC、aptXに加え、aptXの上位バージョンで、24bitの伝送が可能になるaptX HDもサポート。対応端末がまだ少ないが、Astell&Kernのハイレゾプレーヤー「AK70」、「AK380」、「AK320」、「AK300」がアップデートされて対応するなど、今後の普及が見込まれている。新時代のBluetoothヘッドフォンを体現したようなモデルだ。

 さらに、ケーブル着脱が可能になった有線接続のハイレゾヘッドフォン「ATH-SR9」(実売5万円前後)や、バランスド・アーマチュア(BA)ユニットを搭載した「ATH-LS400」など、イヤフォンの新LSシリーズ5機種も注目を集めている。

イヤフォンの新LSシリーズ

ソニー

 ソニーブースの注目は、10月29日に発売されるハイエンドウォークマン2機種。アルミニウム筐体で内蔵メモリ128GBの「NW-WM1A」(12万円前後)、無酸素銅を筐体に使った256GBの「NW-WM1Z」(30万円前後)だ。

ハイエンドウォークマン2機種

 DSDのネイティブ再生をサポートするほか、新たな端子である4.4mmの5極バランス接続に対応するなど、強化点が多い。情報量やパワー感の向上をテーマに開発された、新たなS-Master HXのサウンドに注目だ。

 ヘッドフォンでは、4.4mm 5極バランス接続にも対応したフラッグシップモデル「MDR-Z1R」が10月29日に発売予定。実売は20万円前後。70mm径と大型のユニットを採用。ハウジングは、メッシュ状のフレームの上に、通気性のある音響レジスターをかぶせるように配置。その上にプロテクタを配置して構成。ハウジングに反射する共鳴を限りなく除去する事で、微小な音も知覚できるという「レゾナンスフリーハウジング」となっている。

右がフラッグシップヘッドフォン「MDR-Z1R」

OPPO/エミライ

 OPPOの新製品として参考展示されているのは、ネットワークオーディオプレーヤー機能を備えたDAC「Sonica DAC」。11月の発売を予定しており、価格は未定。USB DAC、DLNA対応のネットワークプレーヤー、USBメモリ再生に対応するほか、DACプリアンプとして使うこともできる。

Sonica DAC

 ESSの最新フラグシップDAC「ES9038PRO」を搭載し、同軸/光デジタル入力も装備。USB DAC利用時は12.2MHzまでのDSD、PCM 768kHz/32bitまでサポート。

 iOS/Androidアプリの「Sonica」を利用して、楽曲選択などの操作が可能。インターネットラジオにも対応予定。出力として、RCAとXLRを各1系統備えている。

Sonica DACの背面

 エミライブースには、今後の取り扱い開始を目指し、協議中というCavalli Audioの製品を参考展示している。「Liquid Carbon」はコンパクトな据え置きのヘッドフォンアンプで、フルディスクリート、フルバランス設計。小型ながら、音の純度、シンプルな美しさの追求、音楽信号が通過する回路にオペアンプを使わないという、Alex Cavalli博士の設計フィロソフィが貫かれている。

 「Liquid Lightning」は、静電型ヘッドフォンをドライブできるアンプ。フルディスクリート、フルバランス設計で、フォトレジスターを使ったボリューム調整機構も搭載。カスタムメイドのStax用出力端子も備えている。

奥にあるのが「Liquid Lightning」

 さらに開発中というA級動作の次期フラッグシップヘッドフォンアンプ「Liquid Tungsten」も、ケースに入っていない状態だが展示されていた。

「Liquid Tungsten」

 ポータブルアンプも開発。「Liquid Spark」というモデルで、ポータブルだがフルディスクリート、フルバランス設計かつA級動作。DACは搭載していない。2系統のアナログリアン入力を備え、ゲイン切り替えも可能。カットが美しい、インパクトのあるデザインを採用しているが、仕上げも含めてこのデザインが最終ではないという。

「Liquid Spark」

ゼンハイザー

 ゼンハイザーブースでは、11月10日より発売するヘッドフォン「HD 500シリーズ」の新製品「HD 599」、「HD 579」、「HD 569」、「HD 559」が体験できる。オープン価格で、店頭予想価格は「HD 599」が32,000円前後、「HD 579」が26,000円前後、「HD 569」が24,000円前後、「HD 559」が19,000円前後。

 HD 599は、開放型HD 500シリーズのトップモデル、HD 579は開放型のミドルモデル、HD 559は開放型の入門モデルと位置づける。HD 569はHD 500シリーズ密閉型のミドルモデル。

HD 599
HD 579など「HD 500シリーズ」

final

 S'NEXTブースの注目モデルは、金属の3Dプリンタを使ってチタンの特殊形状を作り、それをイヤフォンのハウジングにした「LAB II」だ。10月22日発売で、価格は45万3,600円(税込)。世界200台の限定生産となる。

「LAB II」

 「今までに無いものを作る」をコンセプトとした「LAB(laboratory)」シリーズの第2弾製品で、3Dプリンタ造形にしかできないメッシュ形状のチタン筐体に、3Dプリンタで造形したメカニカルイコライザーを組み合わせ、高域特性を改善している。ユニットは15mm径のダイナミック型。

 このモデルを開発するために、新たな治具などを用意したため高価になっているとのことだが、「LABシリーズの開発で培った知見を活かした新しいシリーズを、来年に発売したい」という。

メカニカルイコライザーも3Dプリンタで造形

HIFIMAN JAPAN

 新フラッグシップヘッドフォンシステム「シャングリ・ラ」を出展している。海外で近日発売予定で、日本では年末か、来年の年初に発売予定。米国では5万ドル前後での販売を予定しており、日本でも500万円を超える見込みの超弩級システムだ。

新フラッグシップヘッドフォン「シャングリ・ラ」

 静電型のヘッドフォンと、真空管ヘッドフォンアンプをセットにしており、ユニットには、歪率が「ほぼゼロ」で、超高速応答を実現するというナノテクノロジーを使った超薄型振動板を採用。そこにナノ粒子を均一に分布しているという。再生周波数帯域は7Hz~50kHz。

真空管ヘッドフォンアンプ
静電型のヘッドフォン

ミックスウェーブ

 Campfire Audioの新製品を一気に展示している。ハウジングに液体金属を採用したのが特徴で、いずれもユニバーサルタイプ。発売日は後日発表予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は「VEGA」が146,100円、「LYRA II」が79,800円、「DORADO」が112,500円。

 VEGAは非結晶カーボン(ADLC)をコーティングした8.5mmダイナミックドライバを、LYRA IIはベリリウムPVDダイナミック型ドライバを採用。「DORADO」は、8.5mmベリリウムPVDダイナミックと、バランスド・アーマチュア(BA)ドライバによるハイブリッド型となる。

DORADO
VEGA

 Unique Melodyからは、ユニバーサル型イヤフォン「MASON II」のバリエーションモデルである「MASON II - Fujiya Avic Collaboration Model」が登場。イベントのために50台限定で生産されたもので、フジヤエービック物販ブースで販売。50台のカラー内訳は、クリアカラーが20台、ワインレッドが30台。価格はオープンプライスで、実売は約21万円。BA×12基構成。

「MASON II - Fujiya Avic Collaboration Model」に使われるクリアカラーの筐体

 日本市場向けに、中国のqdcとミックスウェーブが共同開発した「SEシリーズ(スペシャルエディション・シリーズ)」第1弾「2SE」が登場。半透明シェルのカラーに、Astell & Kernの小型ハイレゾプレーヤー「AK70」を意識したという暗緑色を採用しているのが特徴。数量限定で、300台が生産される。BAの構成は高域×1と中低域×1。周波数特性は20Hz~20kHz、入力感度は98dB。インピーダンスは25Ω。

「2SE」

その他

 ヤマハブースでは、製品化に向けたクラウドファンディングが9月29日より「Makuake」でスタートしている、耳に直接触れない独自構造のBluetoothヘッドフォン「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」が体験できる。耳の周りを覆うように3Dデザインされた「エアーフレーム」をハウジングに取り付け、「オープンエアで音楽を聴いているような自然な音楽体験をもたらす」というもの。実際に装着してみると、意外なほど安定度が高く、開放的。低音もしっかり聴き取れた。

「VIE SHAIR」
耳の周りを覆うように3Dデザインされた「エアーフレーム」

 シースピリッツのブースでは、米BLUE EVER BLUEブランドの新製品「Model 1200EX」を展示。10月28日より発売する。価格は12,000円(税込)。ボーカルなど中音域の音質にこだわったモデルだ。

BLUE EVER BLUE「Model 1200EX」
BLUE EVER BLUEのブースには、初のマルチドライバモデル「Model 2000」も参考展示されている
Atomic Floydの新イヤフォンも参考展示。チタンも素材として取り入れた「HiDefDrum 2」
mophieの「Power capsule」はイヤフォンなどを収納できるケースだが、内部にバッテリを搭載しているのが特徴。Bluetoothイヤフォンなどを充電しながら持ち運べる
モダニティブースには、ケーブルレスで左右が完全に分離したBluetoothイヤフォン「EARIN」のマイナーチェンジモデル「EARIN M-1」を展示。10月下旬発売で、従来は実売約29,800円だったが、24,800円に実質的に値下げされる。イヤフォンとしてのスペックや機能に変更はなく、付属カプセルがブラックのバージョンも用意する