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ソニー、新型コロナ影響も「PS5は予定通り発売」。2019年度の営業利益は5%減

2019年度 連結業績

ソニーは13日、2019年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結業績を発表。この中で、2020年の年末商戦期に発売を予告している次世代コンソールゲーム機「プレイステーション 5」への新型コロナウイルスの影響について、「遅滞なく準備を進めている」とし、予定通り年末商戦に発売するとした。また、外出自粛の影響により、ゲームソフトウェアのダウンロード売上やPS Plus、PS Nowの会員数は、大幅に増加しているという。

2019年度の売上高は前年度比マイナス5%、4,058億円減少した8兆2,599億円。前年度の為替レートを適用した場合、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の大幅な増収があったが、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の大幅な減収が響き、売上高は同約3%の減収になるという。営業利益は、前年度比5%減、488億円マイナスの8,455億円で、G&NS分野の大幅な減益が要因となった。

新型コロナウイルスの、製造事業所への影響は、中国にある4つの自社工場で、1月24日に春節休暇に入って以降、2月9日までは現地政府の指導にもとづく休暇の延長で、全ての工場の稼働を停止していたが、2月10日以降順次稼働を再開。「部品の供給問題は完全には解消していないものの、稼働は感染拡大前の水準に戻りつつある」という。

マレーシアには2つの自社工場があり、3月18日から稼働を停止していたが、4月16日に現地当局から稼働を条件付きで承認され、部分的な稼働を開始。イギリスのウェールズにある自社工場は3月26日から稼働を停止していたが、3月31日より現地当局の合意を得て、段階的に稼働を開始している。

国境を越えた人の移動の制限により、新製品の立ち上げや生産指導のために生産拠点である中国及び東南アジア諸国へエンジニアを派遣することが困難になるなどの影響が出ているという。

なお、2020年度の連結及び分野別業績見通しは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現時点で合理的な算定が困難であるため、未定としており、「今後、合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示する」という。

ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)

売上高は、前年度比3,333億円(14%)減少し、1兆9,776億円となった。PS Plusの増収はあったものの、PS4のハードウェアの減収、ゲームソフトウェアの減収、及び為替が影響した。

営業利益は、前年度比727億円減少した2,384億円。PS Plusの増収及びコスト削減などがあったものの、主に前述のゲームソフトウェアの減収及び為替の悪影響が響いた。為替の悪影響は122億円。

新型コロナウイルスの影響で、PS4のハードウェア生産において、部品のサプライチェーン上の問題により、生産に若干の影響は出ているという。しかし、現状の在庫で足元の需要には対応。「販売は堅調に推移している」という。

プレイステーション5の立ち上げについては、社員の在宅勤務や海外渡航制限などにより、一部の検証作業や生産ラインの確認などに制約が出ているものの、必要な対応策を講じており、「2020年の年末商戦期での発売に向け、準備を進めている」という。

また、自社スタジオ及びパートナー各社のゲームソフトウェア開発スケジュールに関しては、「現時点で顕在化している大きな問題はない」とのこと。

音楽分野

売上高は、前年度比424億円(5%)増加した8,499億円。モバイル向けゲームアプリ「Fate/Grand Order」の減収などによる映像メディア・プラットフォームの減収があったものの、主にEMIを連結したことで音楽出版において売上が増加したこと、ストリーミング配信の売上増加などによる音楽制作が増収となった。

営業利益は、前年度比901億円減少した1,423億円。大幅な減益は、前年度においてEMIの持分約60%の取得にともない持分法投資損失116億円を計上したこと、及び前述の増収の影響があったものの、前年度においてEMIの連結子会社化により再評価益1,169億円を計上したことなどによるもの。

新型コロナウイルスの影響で、米国をはじめとする世界各国で、アーティストによる楽曲のレコーディングや音楽ビデオの制作に影響が出ており、新曲のリリースに遅れが出ているという。

ストリーミングの普及率が高い米国などでは、現時点でこの新曲リリースの遅れによる収益への影響は限定的であるものの、まだ普及率が低い日本やドイツなどでは、外出制限の影響により、CDなどのパッケージメディアの販売が減少している。

また、イベントが延期又は中止となっている日本などで、ライブ興行や物販、映像ビデオの制作・販売などが減少。世界的な広告活動の縮小により、広告型ストリーミングサービスからの収入や、テレビCMなどからの楽曲使用料も減少。映画の製作やテレビ番組の制作の遅れも楽曲使用料を減少させているという。

映画分野

売上高は前年度比250億円(3%)増加した1兆119億円。米ドルベースでの増収要因は、主に「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」、「ジュマンジ/ネクスト・レベル」及び「バッドボーイズ・フォー・ライフ」の貢献により全世界での劇場興行収入が増加したこと、及びテレビ番組作品のライセンス収入が増加したため。

一方、メディアネットワークにおける、前年度に実施したチャンネルポートフォリオ見直しの影響などによる減収の影響もあった。

営業利益は、前年度比136億円増加した682億円。前述のチャンネルポートフォリオ見直しの効果、及び映画製作におけるカタログ作品の収益性の改善などによるもの。

新型コロナウイルスによる全世界での映画館の閉鎖などにより、映画興行ビジネス全体に影響が出ており、ソニーでも「既に製作が完了している一部の作品について劇場でのリリースができない状況にある」という。

人の移動が制限されていることで、米国をはじめ世界各国において、新作映画の製作やテレビ番組作品の制作スケジュールに大幅な遅れが発生。映画製作においては、劇場興行収入や、それに続くホームエンタテインメントやテレビ向けライセンスなどの収入の減少が見込まれる一方で、新型コロナウイルス感染拡大前にソニーが劇場公開した一部の作品のデジタルのビデオレンタルやビデオ販売などの収入は好調に推移しているという。

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野

売上高は前年度比3,294億円(14%)減少した1兆9,913億円。主にスマートフォン及びテレビの販売台数の減少、為替の影響によるもの。

営業利益は、前年度比108億円増加した873億円。分野全体の減収の影響及び為替の悪影響はあったものの、主にモバイル・コミュニケーションにおけるオペレーション費用の削減や、モバイル・コミュニケーションにおける長期性資産の減損損失の減少によるもの。為替の悪影響は230億円。

このEP&S分野は、「ソニーにおいて、新型コロナウイルス感染拡大の影響が最も大きい事業」だという。

テレビを製造する主力4工場のうち、マレーシアの自社工場、メキシコとスロバキアの生産委託工場で、現地政府の方針により3月中旬以降順次稼働を停止していた。これらの3工場では既に部分的に稼働を再開しているが、「一部で供給が需要に追い付いていない状況が続いている」とのこと。

中国やタイにあるデジタルカメラやスマートフォンの自社工場については、現時点では通常どおり稼働。ただし、複数の製品カテゴリーに部品を供給しているマレーシアやフィリピンの一部のパートナーの稼働率が低いことで、「一部の製品で部品不足による生産遅延が発生している」とのこと。

世界的な販売店舗の閉鎖・休業により、店頭売上が大幅に減少。足元では特に欧州での市況悪化が顕著だという。

テレビについては、欧州に加え、ソニーの事業規模が大きいインドやベトナムなどで影響が大きくなっており、デジタルカメラについては、全世界で需要が大幅に減少。売上・利益共に大きな影響を受けているという。

イメージング&センシング・ソリューション分野

売上高は、前年度比1,912億円(22%)増加した1兆706億円。大幅な増収は、為替の影響に加え、製品ミックスの改善や、販売数量の増加にともなうモバイル機器向けイメージセンサーの大幅な増収などによるもの。営業利益は、前年度比917億円増加した2,356億円となった。

新型コロナウイルスについては、イメージセンサーの国内の各製造事業所は、現時点で大きな影響を受けておらず、通常どおり稼働しているという。イメージセンサーの販売先である主要なスマートフォンメーカー各社の工場の稼働やサプライチェーンも回復が進んでいるとのこと。

一方で、最終製品であるスマートフォン市場の減速については、「その度合いを注視している」という。