NHK、曲がる有機ELディスプレイ実現に向け、寿命7倍の新デバイス


有機ELデバイスの構造

 NHK(日本放送協会)は4日、超薄型で曲げられるフレキシブル有機ELディスプレイ実現に向けた進展として、消費電力を従来の1/3に、寿命を7倍にした赤色発光有機ELデバイスの開発に成功したと発表した。

 有機ELデバイスの中で光を発する発光層は、発光材料と、それを分散させて電気エネルギーを発光材料に受け渡すためのホスト材料で構成されている。この発光材料には、一般的にイリジウム錯体が、ホスト材料にはカルバゾール誘導体が使われている。イリジウム錯体とは、イオンを中心に、その周囲に他の分子が規則正しく配置された化学物質で、イリジウムイオンを中心とする場合に「イリジウム錯体」と呼ばれる。

 NHKでは抜本的な性能改善に向け、イリジウム錯体以外の発光材料として、白金錯体を採用。さらに、ホスト材料として新たにベンゾキノリン誘導体を用い、この組み合わせ1/3の省電力化と、7倍の長寿命を実現したデバイスを開発した。具体的な寿命は、従来のデバイスが2,200時間のところ、新デバイスは15,000時間(初期輝度1,000cd/m2が50%に落ちるまでの推定時間)。


ベンゾキノリンとカルバゾール誘導体の分子骨格比較

 白金錯体とは、白金イオンを中心とし、その周囲に他の分子が規則正しく配置された化学物質。ベンゾキノリン誘導体は、ベンゾキノリンを分子骨格に含む化学物質のこと。

 なお、今回は赤色発光デバイスが開発されたが、今後はこのデバイスの省電力/長寿命特性向上に加え、緑色や青色発光の有機ELデバイスも試作予定。これらのデバイス開発を通じ、フレキシブルディスプレイの早期実現を目指すという。

 今回の研究成果は、第73回応用物理学会学術講演会(9月11~14日)で報告予定。9月25日に発行されるAdvanced Materials誌にも掲載予定となっている。



(2012年 9月 4日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]