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ソニー、DSD録音/FLAC再生も可能なレコーダ「PCM-D100」

マイク強化、新ノイズ低減モードも。実売10万円

PCM-D100

 ソニーは、リニアPCMレコーダの新モデルとして、DSD録音にも対応した「PCM-D100」を11月21日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は10万円前後。

 最高24bit/192kHzのリニアPCM(WAV)と、MP3に加え、新たにDSD 2.8MHz録音にも対応したレコーダ。'05年に発売したシリーズ初代モデル「PCM-D1(生産終了)」のマイク性能と、'07年モデル「PCM-D50」のコンパクトさを継承したという。再生機能も24bit/192kHzまでのPCMやFLACなどに対応し、同社の“ハイレゾ対応”が持つ「Hi-Res AUDIO」ロゴも冠している。なお、DSD 5.6MHzには録音/再生とも対応しない。

斜めから見たところ
背面

DSD用とPCM用に個別のADC搭載。ヘッドフォンアンプ強化も

DSD録音時の画面

 録音モードは、DSDが2.8MHz、PCMが16/24bit、44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzに対応。MP3は128/320kbps。記録メディアは、内蔵の32GBフラッシュメモリとメモリースティック PRO Duo/PRO-HG Duo(最大16GB)に加え、新たにSD/SDHC/SDXCカード(48GB以上対応)も利用可能になった。

 内蔵マイクはPCM-D100専用に新開発した15mm径ユニットを搭載。感度/固有雑音ともに従来モデルのD1/D50より優れた特性を実現したという。従来モデルと同様に、左右マイクを個別に角度調整できる可動式ステレオマイクを採用。奥行きのあるステレオ感を実現する「X-Yポジション」や、オーケストラなどを広い場所で録音するときに広がり感のある音を録れる「ワイドステレオポジション」などを選べる。

【マイク性能比較】

製品ユニット径感度固有雑音最大入力音圧
PCM-D10015mm-31dB/Pa19dB SPL(A)約128dB SPL
PCM-D5010mm-35dB/Pa20dB SPL(A)約120dB SPL
PCM-D115mm-32dB/Pa20dB SPL(A)約130dB SPL
マイク部は可動式。写真はX-Yポジション
ワイドステレオポジション
まっすぐ前方に向けることも可能
左から、新モデルのPCM-D100、現行モデルのPCM-D50、初代のPCM-D1
3モデルのマイク部

 DSD専用、リニアPCM専用のADコンバータ(ADC)を個別に搭載。PCMのデジタルリミッタ用にもう1つADCを備え、1chあたり3つのADCを採用する。PCMとDSDのADCを兼用としないことで、各録音モードに特化した性能を発揮できるよう設計したという。

 デジタルリミッタはPCM-D1/D50と同様に、過大入力時でも-12dBのバッファ範囲内で自動でレベル調整して歪みを防げる。

 さらに、-100dBまで低ノイズ化できるという「S/N 100dBモード」を新たに搭載。前述のデジタルリミッターの仕組みを応用し、AD変換時の内部ノイズを低減させる仕組みを新開発した。通常の録音時に小さい音がノイズの中に埋もれてしまい、聴こえづらくなる場合でも、S/N 100dBモード時は、原音と同じ振幅を保ちながら、小さい音でのノイズのみ低減できるという。このモードは、1つのADC(ADC1)でボリュームを大きくして録音し、2つ目のADC(ADC2)ではそのままのボリュームで録音。DSP内部でADC1の出力を縮小して元のボリュームに戻すとノイズも縮小され、ボリュームを上げたことでクリップした部分をADC2の出力と重ねることで、前述のノイズ低減効果が得られるというもの。

 回路基板は入力用回路、出力用回路、記録用デジタル回路、電源回路の4つで構成。それぞれに独立した電源を備えることで、電流の干渉を防ぎ、ノイズ発生を抑えている。

 ノイズ混入や音質劣化を抑えるため、各パーツも厳選。PCM-D1でも使用した2軸4連ボリュームによる可変ゲインアンプ方式によって、より広いダイナミックレンジに対応したという。

 また、32bit PCM/DSD対応DACを新たに採用。24bit音源に対しても、より正確な再生を実現するという。DAC用LPFオペアンプ電源の平滑コンデンサーに、低ESPRの導電性高分子コンデンサを採用することで電源変動を抑え、デジタル回路からオペアンプ電源へのノイズ混入を防いでいる。ADC/DAC用のマスタークロック制御にはFPGAを使用し、ジッターの発生を抑える。

 ヘッドフォンアンプの電源も強化。電源回路に0.33Fの大容量/低インピーダンス電気2重層コンデンサを採用。安定した電源供給を行ない、より忠実な再生が行なえるとしている。

 操作性も従来モデルから変更が加えられている。PCM-D1と同様にLR独立ボリュームを備えており、D100では新たにボリュームガード機構を装備。レベル調整した後に誤って触れることで誤操作することを防ぐ。また、コンサートホールやライブ会場など暗い場所でセッティングする場合でもボリューム値を確認できるよう、RECボリューム用バックライトを新たに搭載した。

LR独立ボリュームを装備。レベル設定後はボリュームガードで固定できる

 録音機能では、新たにピークホールド機能も追加。録音レベルの最大値を保持することで、リハーサルなどでボリュームを決める際などに利用できる。また、1度の録音でPCMとMP3を同時録音する「デュアル録音」も可能。なお、DSD録音時は他の形式で同時録音できない。また、内蔵メモリや記録メディアの残量が途中で無くなった際に、自動でもう一方のメモリへ引き続き録音する「クロスメモリー録音」にも対応した。

 そのほか、従来モデルと同様に、16bit録音時に20bit相当の高音質を実現するという「スーパービットマッピング」(SBM)や、録音の5秒前へさかのぼって記録する「プリレコーディング」も搭載する。なお、本体でのオーバダブ機能は搭載しない。

ハイレゾのFLACも再生可能に

 再生対応ファイルは、DSD/PCM/MP3のほか、FLACやMP3/WMA/AACもサポート。FLACの24bit/192kHzファイルも再生できる。PCMのサンプリング周波数を2倍/4倍にするアップサンプリング機能も新たに搭載。44.1kHzのファイルを88.2kHzまたは176.4kHzで、48kHzを96kHzまたは192kHzで再生するなど、最大192kHzまでのアップサンプリングが可能。「CDからリッピングした音源も、ハイレゾに近い音で再生できる」としている。また、再生時のキーコントロール(半音ずつ、上下6段階)も可能になった。デジタルピッチコントロールやエフェクトも従来と同様に利用できる。

 本体での編集機能では、新たにトラックマーク(区切り)を録音/再生中に付けられるようになった。また、従来の分割、メモリー間コピー・移動、保護、削除に加え、結合やフェードイン/アウト(PCMのみ)にも対応した。

 パソコンとUSB接続して、録音ファイルを転送可能。付属するPCソフト「Sound Forge Audio Studio 10 LE」で、波形編集やファイル分割/結合、フェードイン/アウト、ノーマライズ、サンプリング周波数変換、CD作成などが可能。ただし、同ソフトで編集できるのはWAV/MP3ファイルで、DSDファイルは再生/編集できない。対応OSはWindows XP/7/8。

 ステレオミニのヘッドフォン出力を備えるほか、本体だけで確認できるようにスピーカーも新たに内蔵した。光デジタル/ライン兼用の音声入出力を各1系統備える。電源はACアダプタまたは単3電池4本を使用。外形寸法は約156.8×72×32.7mm(縦×横×厚さ)、電池を含む重量は約395g。

側面の入出力端子部

 付属品も充実。D50などでは別売だったウインドスクリーンやキャリングケース、ワイヤレスリモコンを同梱。「購入したその日からすぐ使ってもらえる」としている。

 メニュー構成は、同社の小型ICレコーダなどと同様にHome/Option構成を採用。録音時の設定などが簡単に行なえるようになったという。また、ユーザーがよく使うボタンを割り当てられるF1/F2ボタンも新たに備えた。ディスプレイは従来モデル同様に低電圧で動作し、ノイズ発生を防ぐモノクロ液晶で、D50に比べ大型化。日本語メニュー/メッセージ表示を採用している。

ウインドスクリーンを装着したところ
キャリングケースやリモコンも付属する
リモコンの使用イメージ

(中林暁)