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NHK、立体ホログラフィーTV実現に向け新要素技術。“触った感覚”再現も

 NHKは、特殊なメガネをかけずに立体映像が楽しめる電子ホログラフィー・テレビを実現するための要素技術として、立体映像を生み出す干渉縞を表示するSLMの光変調素子を、トランジスタで駆動する技術を開発した。

 さらにNHKと東京大学が協力、物体の形状と硬さの両方を非接触で測定し、物体を触った感覚を仮想的に再現するシステムも共同で開発した。どちらの技術も2014年5月29日~6月1日に開催する「技研公開 2014」で披露する。

電子ホログラフィー・テレビに向けた要素技術

 ホログラフィーテレビの基本原理は、空間光変調器に光を当てて反射させると、立体像が浮かび上がるというもの。空間光変調器には干渉縞が表示されており、これを電気的に高速に書き換える事でホログラフィーの動画を再生できるという。

ホログラフィーテレビの基本原理
アクティブ・マトリクス方式による二次元スピンSLMの素子構造

 NHKではこれまで、電子のスピンを利用した一次元配列のスピンSLM(Spatial Light Modulator)を独自に開発し、基本動作を確認してきた。一方で、立体像を動画表示するには、多くの光変調素子を二次元に並べて駆動する必要があり、それぞれを正確かつ高速に駆動する技術の開発や、消費電力を抑えるために、駆動に必要な電流を低減する事などが課題となっていた。

 今回、駆動電流の低減を図った光変調素子を用い、素子ごとにトランジスタを配置することで正確かつ高速に各素子を駆動できるアクティブ・マトリクス方式による二次元スピンSLMの試作に世界で初めて成功。電界効果トランジスタ(MOS-FET)上にトンネル磁気抵抗効果(TMR)を利用した光変調素子が形成されているもので、トランジスタのスイッチング動作で個別に素子を制御。高速で正確な駆動ができるという。

物体を触った感覚を、仮想的に再現

 NHKは、物体の形状を再現する触・力覚ディスプレイの研究を進めている。多点刺激型と呼ばれるもので、触れた人間の指先に対し、複数の刺激点から三次元方向のちからを加える事で、物体に触れた時の皮膚の変形を伴う感覚を再現できる。その際、物体を触った感覚(触感覚)を伝達するには、硬さの分布も併せて再現する必要がある。

 そこで、東京大学が新たに開発した、物体の形状と硬さの両方の分布を測定できる装置を活用。レーザー変位計と超音波を使用し、離れた場所から形状と硬さの分布を非接触で測定、そのデータをNHKの触・力覚ディスプレイで活用。人間の指先に、複数の点の刺激与え、測定した物体を触った感覚を再現できるとする。

形状や硬さの分布を非接触で測定、そのデータを触・力覚ディスプレイで再現する

(山崎健太郎)