レビュー
小型でアンプ内蔵で音が良い、これぞ“最新オーディオ”「POWERNODE 2i」
2021年3月19日 08:00
スマホの便利さはそのままに、高音質な音を楽しめるオーディオシステム
自宅で過ごす時間が増えている昨今、オーディオ熱が再燃している人も少なくないようだ。若い頃に取り組んでいた単品コンポーネントで本格的に楽しむのもいいし、もっと手軽にそれでいて音の良いシステムを探すのもいいだろう。手軽に音楽を楽しむという点において、スマホは非常に使い勝手のいいもので、定額制のストリーミング音楽サービスにも幅広く対応しているし、インターネットラジオなども楽しめる。その便利さや使いやすさはそのままに、優れた音質を楽しめるオーディオシステムはないかと思う人は意外と多いのではないだろうか。
いかにもオーディオ然としたデザインも少々大げさに感じる。もっとモダンな外観で、「これがオーディオ機器?」と驚かされそうなスマートなオーディオ機器を探している人がいるとしたら、ここで紹介するBluesoundの製品は、ぴったりのものと言えるだろう。
一見するとオーディオ機器には見えない、シンプルでモダンなデザイン
今回使わせてもらったのは、Bluesoundの「POWERNODE 2i」(オープンプライス/実売約12万9,800円)。Bluesound製品に共通する高機能なネットワークオーディオ再生機能を備え、そこにアンプを内蔵している。さらにHDMI入力も備え、テレビなどと組み合わせることも可能だ。
スピーカーには、デンマークのスピーカーメーカーであるDALIの「OBERON I」(実売ペア4万7,000円)を組み合わせた。どちらもホワイトのカラー仕上げで揃えたこともあり、セットで販売されていても不思議ではないくらいうまくまとまっている。試聴室に置いていると逆に浮いてしまうくらいで、リビングルームなどで洒落た家具に置いて使いたくなる。
POWERNODE 2iを詳しく見ていこう。操作ボタン類はほとんどなく、天面にタッチ操作式の再生操作ボタンとボリューム操作ボタンがあるだけ。シンプルでムダのないデザインで、リビングはもちろん、自室の机の上など、どんな場所に置いても邪魔にならないデザインだ。
後ろ側を見ると、本格的なオーディオ機器であるとわかる。POWERNODE 2iはアンプを内蔵するので、スピーカー端子がある。そのほかは入出力端子で、HDMI(ARC)入力端子、アナログ/光デジタル兼用のオーディオ入力が2系統(ステレオミニ端子)、USB端子、ネットワーク端子、サブウーファー出力などがある。Bluesoundの製品はネットワークオーディオ主体で使う現代的なオーディオシステムだが、薄型テレビなどと組み合わせることもできる。
デジタル入力のデータは最大192kHz/24bitまでサポートし、DSD音源はFLAC変換で対応可能。DACチップとしては384kHz/32bit対応のバーブラウン「PCM5242」を搭載。MQAフォーマットにも対応している。十分な性能と言えるだろう。
内蔵するアンプは、姉妹会社であるNAD ElectronicsによるHypex社のUcDをベースとしたHybridDigitalアンプを内蔵。出力は45W+45W(8Ω)。最新のアンプ技術が盛り込まれ、コンパクトなサイズながらも優れた音質と高いスピーカー駆動力を実現しているという。
なお、手に持った写真でわかるように外形寸法は220×190×70mm(幅×奥行き×高さ)と非常にコンパクト。特に奥行きが短いので、デスクの上にノートパソコンやスピーカーなどと一緒に置きやすい。本格的なオーディオをやりたいけれど、設置するスペースが……という人にはうってつけだ。
スマホに「BluOS」をインストール、Amazon Music HDも楽しめる
ネットワークプレーヤー機能とDAC、アンプを内蔵しているので、電源の接続のほかは、スピーカーと接続するだけ。あとは、スマホやパソコン用に無料提供されている「BluOS」をインストールすればいい。音楽サービスの利用はもちろん、設定などもすべてBluOSで行なうのだ。ネットワークオーディオというと、ネットワーク接続や設定が面倒と感じる人がいるかもしれないが、ほとんど心配はない。ネットワーク接続を有線とすれば、家庭のLAN回線と接続するだけでOKだ。スマホでBluOSを起動して、ネットワーク接続をしたPOWERNODE 2iを選択するだけだ。
後は、多彩な音楽サービスを選ぶ。Amazon Music HDやDeezer、Spotifyをはじめ、TIDALやTuneInなどのさまざまなサービスに対応している。残念ながら、mora qualitasには非対応だが、圧縮音源によるサービスだけでなく、CD品質やハイレゾ品質の高音質な音楽サービスにも幅広く対応している。
今回は筆者も加入しているAmazon Musicを試してみた。BluOSからAmazon Muisicを選択すると、Amazon Musicへのログイン画面に切り替わるが、ログインが完了すると、以後はBluOSから楽曲検索や再生などが操作できるようになる。このように、加入しているサービスや使用したいサービスを追加していけばいい。
Amazon Musicで、お気に入りのヨルシカの楽曲を聴いてみたが、クリアな音でなかなかエネルギッシュなサウンドだ。DALIのOBERON Iの色づけの少ない素直な音とあいまって、明るくハツラツとした音を楽しめる。リズムはキビキビとよく弾み、45W+45Wといえども、なかなかにパワフルだ。
基本的に色づけの少ない現代的な音だが、中高域に輝きのある音は色彩感があり、少し洒落た感じのサウンドになる。明るいキャラクターながら、シャカシャカと耳障りにならない上質さもあり、質の高さと楽しさを合わせ持った音になっている。
Amazon Music HDにも対応しているので、ハイレゾ品質の音源ならばさらに質の高い音を楽しめる。楽曲の選択などもプレイリストやステーション、人気ランキングなど、さまざまな切り口から曲を探すことができるし、見た目の違いを別にすれば使い勝手は専用のAmazon Musicアプリと同等。いちいちアプリを切り替える必要がないので実に快適に使える。
しばらく、プレイリストや人気の曲を聴いてみたが、スマホで音楽を聴いているのと同じ感覚で、快適に自在に音楽を楽しめた。それでいて音質的には本格的なオーディオ機器のクオリティなので、満足度は非常に高い。スマホで音楽を聴くスタイルに慣れている人にとっては、かなり親しみやすいシステムと言えるだろう。
その他のサービスでは、Spotifyは選曲などの操作はSpotifyの専用アプリで行なう。このあたりは、音楽配信サービスの仕様によって違いがあるようだ。また、POWERNODE 2iはAirPlay2に対応しているので、その他の音楽アプリなどでも、その音をPOWERNODE 2iで再生することができる。例えば、スマホの音楽再生アプリは好みのものを使いたいという場合でも、AirPlayで出力先をPOWERNODE 2iにすれば再生できる。また、動画アプリなどで音声だけをPOWERNODE 2iから再生するようなこともできるだろう。
もちろん、NASなどに保存した手盛りの楽曲の再生も可能
さまざまな音楽サービスを利用するだけでなく、ネットワーク共有機能で、NASやパソコンに保存した手持ちの楽曲の再生も可能だ。設定の「ネットワーク共有」から、楽曲を保存しているNASなどの機器を選択すればいい。手持ちのCDをリッピングした音源はもちろん、ハイレゾ音源の再生も可能だ。
ネットワーク共有でNASなどのサーバーを選択したら、以後はメニューにある「ライブラリ」から楽曲の検索・再生が可能になる。こうした機能もきちんと備えているので、音楽サービスだけでなく手持ちの音楽も楽しみたいという人も存分に楽しめる。
どうせならば、CDのリッピングや楽曲の保存もできたらいいのに、と思う人もいるかもしれない。そんな場合は、「VAULT 2i」というモデルがある。こちらは、ネットワークオーディオ機能は同等で、2TBのHDDを内蔵したモデル。CDドライブを備え、リッピングをすることもできる。CDリッピングはFLAC(ロスレス圧縮)、MP3(ロッシー圧縮)、WAV(非圧縮)などさまざまなフォーマットで行なうことができる。購入したハイレゾ音源を保存することも可能だ。VAULT 2iの場合はアンプを内蔵しないので、再生にはアンプとスピーカー(またはアクティブスピーカー)を組み合わせる必要があるのが、POWERNODE 2iとの違いだ。
このほか、Bluesoundでは、ネットワークオーディオ機能だけの「NODE 2i」、WiFi/Bluetoothでの接続ができるワイヤレススピーカーなどもラインアップされており、使いたいスタイルに合わせて機器を選ぶことができる。たとえば、リビングでは小型スピーカーを組み合わせるので、POWERNODE 2iを使う。自室では楽曲管理をするので「VALUT 2i」を使う。ベッドルームではコンパクトにワイヤレススピーカーを使うという具合だ。そして、各部屋に置いたBluesound機器はシームレスに連携し、BluOSでまとめて操作ができる。BluOSではなんと最大64台まで機器を登録でき、自在に使い分けができるのだ。こうした家中のオーディオ機器をまるごとネットワーク化し、スマホで手軽に操れるのも、Bluesoundの大きな特徴なのだ。
HDMI入力搭載でテレビサウンドのアップグレードにも使える
前述の通り、POWERNODE 2iはHDMI(ARC)端子を持ち、対応するHDMI(ARC)端子を持つ薄型テレビと接続して、HDMIオーディオ入力として使える。POWERNODE 2iはコンパクトなので、薄型テレビを置いたラック内にも収納できるし、幅の広いラックなどを使っているなら、薄型テレビの横に置いてもいい。薄型テレビの両脇に再生用のスピーカーを設置すれば、立派なテレビ用のオーディオシステムとして使える。
小型スピーカーとはいえ、薄型テレビの内蔵スピーカーとはケタ違いの音質だ。左右のスピーカーの距離が広いので、ステレオ感やサウンドのスケールも雄大だ。今回はプロジェクタのある試聴室で使っているが、テレビ番組だけでなく、映画の再生でも威力を発揮してくれる。また、ゲーム機と連携して楽しむのもいいだろう。薄型テレビの空いているHDMI入力にゲーム機を接続すれば、その音声をHDMI(ARC)経由でPOWERNODE 2iに出力できるのだ。これで、アクションゲームや映画のようなムービーのあるRPGなど、迫力たっぷりに楽しめる。
最後にもう1曲、手持ちのハイレゾ音源である「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2202」を聴いてみた。自宅のシステムでもよく聴いている曲だが、オーケストラ編成にドラムスやベース、ギターなども加えており、「第三章 白色彗星」は、序盤のオーケストラ演奏では重厚な弦楽器で奏でていた「白色彗星のテーマ」が、オルガンに切り替わり、そしてアナログシンセサイザー風の音に切り替わる頃にはプログレッシブ・ロックを彷彿とさせるハードな演奏へと展開していくのが面白い。そうした音色の違い、オーケストラ主体のときは厚みのある音色を明瞭に慣らしつつ、ロックへと転じていくと、エネルギー感たっぷりにハードな音をクリアに楽しませてくれる。なかなか聴き応えのある演奏を楽しめた。
また、最新のデジタルアンプ技術が盛り込まれているせいなのか、小音量でも音が痩せず、クリアでよく弾むサウンドを楽しめたことも特筆しておきたい。低音はさすがにやや軽い感触になるが、しっかりと音域は伸びていて非力さを感じないし、中高域のクリアさはそのままだ。デジタルアンプというと、コンパクトさや効率の良さばかりが注目され、音質はまだまだと感じている人が少なくないが、優れた実力を持つものも続々と登場してきている。POWERNODE 2iは、その意味でも注目のオーディオ機器と言える。
見た目はシンプルでスッキリ。スマホで自在に使えて音もいい。これが現代のオーディオ
オーディオのスタイルにはさまざまなものがあるが、BluesoundのPOWERNODE 2iによるシステムは実に現代的なスタイルだと思う。スマホ主体で使える快適さで、しかもコンパクトで手軽に使える。オーディオ機器らしくないモダンなデザインは、男性だけでなく女性にも受け入れられやすいと思う。インテリア家電のような感覚で部屋に置ける本格的オーディオ機器というのは、現代的どころか、新しいスタイルなのではないかと思う。
もちろん、そうしたコンセプトの機器はこれまでにもあったが、肝心の音質が後回しになっていた感じがある。Bluesoundは本格的なオーディオコンポの音質をきちんとキープしながら、コンパクトさと優れたデザインを実現していることが素晴らしい。まだまだ、家の中で過ごすことが多い状況は続くと思うが、こうした機器で音楽を聴く環境を一新すると、気分も変わってくるのではないかと思う。
(協力:PDN)